ランナーレスの仕様について1

ゾイドワイルドのキット仕様が発表された時、大きな衝撃だった事の一つは「ランナーレスの仕様になる」でしょう。
今回は、ランナーレスの仕様が発表されたときの想い、そして実際にキットを組んでみた感想をまとめたいと思います。


ゾイドワイルド発表! 新型ゾイドが続々登場!!
そんな情報に歓喜する中、新キットの仕様も明かされました。
新キットは「ランナーレスの仕様になる」との事で、これは大きな衝撃でした。

まさかそうくるとは。全く予想していなかったので目が点になりました。
正直に言うと、最初はかなり戸惑いました。
「プラモってランナーからパーツを切り取るのが常識では?」
「ランナーからパーツを取る面倒くささも含めてプラモでは?」
などと初っ端は常識に囚われた思考をしていたのでした。 

ですがよくよく考えてみると、また実際にキットを組んでみると最強の仕様だなと思うようになりました。

 

そういえば、ランナーレスの仕様というのは以前から幾つか存在しています。
パッと思いつくところでいうと
・バラッツ、カスタムブロックス
・クイックキット

です。これらのキットはランナーレスの状態で提供されていました。

今回の仕様はこれの発展形と言えます。
今まで「例外的に一部でやっていたこと」を、今回は「全面的に完全採用する」に変えたわけです。
では何故、そのようになったのでしょう。
それを考えたいと思います。

私はその理由を、「今のキッズに最適化させた」からだと思いました。

 

私事ですが、ゾイドワイルド発表の数日前にガンプラHGの「ガンダム・フラウロス」を組んでいました。

……組んだ理由はちょっとゾイドっぽいと思い、改造してオリジナルゾイドにできやしないかと思ったから……。

しかしこれがパーツが予想以上に多くて細かいので、完成した姿はもちろんキレイなのですが細かくてちょっと疲れました。
まぁこれは心構えの話でもあって、HG=気軽というイメージで始めたから余計にそう思ったのでしょう。
当初からMGやゾイドHMMみたいなヘビー級を組む心づもりならまた違った感想だったと思います。

それでも、やっぱりパーツ数が多いとランナーから切り離してキレイにゲート処理するのが大変です。それは改めて思いました。
まぁその作業が組む楽しさ・醍醐味でもあるんですが、時間はかかりました。
そんな中で、ランナーレスという仕様は「早く完成させたい・動かしたい」という欲求を満たすにはとても良い仕様だと思いました。

もどかしいバランスではあります。
苦労して時間をかけて組むからこそ思い入れが増す面はあります。
でも「手早く完成させられる」「熱が最高潮のうちに組みあがったゾイドが動く」というのも利点はあるのだろうと強く思います。

 

私が印象深く覚えているのは2000年の次世代ワールドホビーフェアです。
2000年のホビーフェアというと、ジェノザウラーとレブラプターが先行販売されました。
何を覚えているかというと、物販ブースでそれを買ったキッズがイベント会場内のトミーブースに入るや箱を開けて組み出していたことです。
パーツをランナーから「もぎとって」作る感じで。

余談ですがトミーゾイドはランナーからパーツをもぎとって……言い換えればゲート処理を行わずとも支障なく組めるように設計されているそうです。
模型はどちらかというと仕上がりの品質を優先して目立たない位置・処理がしやすい位置にランナーを作るものです。
が、ゾイドの場合は荒っぽく作るキッズの立場から構成されています。

メインターゲットの年齢を言うと、「丁寧にジックリ組みたい」よりも「いち早く組みたい」「完成させたい・遊びたい」欲求が強いのかなと思います。
この次世代ワールドホビーフェアの例が象徴しているように……。
丁寧にジックリというのは、ある程度の年齢以上のユーザーに多いと思います。

いち早く。それを満たすにはランナーレスの仕様はとても良い。

ランナー式でも「もぎとって」作ればそりゃあ早く作れるけど……、そこはやっぱり仕上がりが少々みっともなくなります。
まぁキッズはゲート跡なんてあんまり気にしないかもしれませんが……、キレイに越したことはない。

今回のランナーレス仕様について、「ゲート跡がどの程度綺麗に処理されているか」にはかなり注目していました。
予想としては「最低でも、もぎとったパーツのゲート跡よりはキレイだろう」と思っていました。
さて実際に発売後に見てみると、ゲート跡は予想以上に綺麗でした。

矢印の箇所がゲート位置の処理です。
思ってたよりずっと良い。えぐれているとか切り残しがあるとかはなく、極めて適切に切られています。
程度で言うと、
「もぎとる<<<ニッパー使う=ゾイドワイルド<高いニッパーで丁寧に切る<表面処理をする」
位でしょうか。

こだわればキリはないんですが、基本的に手を加える必要はないと思いました。
特にキッズは全く不足を感じないでしょう。とても良い仕事です。

話を戻します。
今回の仕様についての目的・意図は、「いち早く完成させられる・しかもその組み上がりがキレイである」というものなのだと思いました。
また刃物を使わないので、小さな子でも安心して組めるというのも利点です。
チャレンジしやすい。チャレンジさせやすい。親御さんの支持も高く得そうです。
そうした意味で、入門用としてうってつけだなと。最初に組む模型として安心安全な仕様だなと思いました。

模型というか「立体パズル」的でもあります。

 

そういえば、入門用キットといえば思い出すものがあります。
「ゾイドジェネシス」シリーズで、ムラサメライガーなどは「素体部分は完成状態で提供される」「組み立ては外装パーツを付けるだけ」という仕様になっていました。

コチラはムラサメライガー(完成形)と、同じキット仕様をしたハヤテライガーの組み立て前(箱開封直後)の姿。
ゾイドジェネシスのライガーは、このようなキット仕様でした。

半完成キット。
ジェネシスのライガーは素体部分は組んであって、ユーザーは外装(主に装甲)を付ければそれで良いというイージーキットです。
これも低年齢キッズユーザーを見た仕様だと思います。

 

素体部分は組むのに失敗したら動かない。だからそこは完成状態で提供しよう。
そして組み立てる楽しさとして外装のみ付けてもらおう。
そんな思惑でしょう。

ですがジェネシスのキットはまだ刃物を使わせる仕様でした。
また正直に言うと、「装甲を付けるだけ」という組み立てはかなり作業感が強いものでした。

プラモデルは色んな部分を組むから楽しいと思います。
まず頭だ。次はボディだ。脚だ。よし組み合わせるぞ! みたいにドンドン組みあがっていく感じがいい。
ジェネシスのキットはだんだん組みあがる感じは薄かった。何しろボディは既にできているので当たり前です。
あるのは、ただ黙々と装甲パーツを切り取って付けていく作業です。
それはそれで装甲をつける度に素体がカッコよくなる感じがあって悪くはなかった。でも割合としては楽しさよりも作業感が強かったのは否めませんでした。

これを振り返った時、ゾイドワイルドのキットはジェネシス仕様を更に進化させたものだと思いました。
「キッズユーザーを見た入門用仕様である」という点では同じです。
しかしゾイドワイルドは「全て組ませる」ようになっています。
これにより徐々に組みあがる楽しさを体感させています。
一方で作業感の強い部分……ランナーから切り取る作業は省略しています。
完成させるまでの総合的な作業量は同程度ですが、「作業感」を減らし「組む楽しさ」をアップさせてる感じがします。

 

ジェネシスもワイルドもキッズに優しい仕様。ただワイルドの方が好みです。
やはりゾイドは「動く部分を組む」「仕組みを知る」という作業がとても楽しい。
また動力部分まで全て組ませる仕様は、メーカーが子供の組み立てる力を信じているからこそ実現したと思います。

ジェネシスの仕様は、動力部分が完成済みだから動かない心配が一切ない。それはそれで良い。でもちょっと味気ない感じもします。
ゾイドは動くプラモなので、完成状態だけでなく「組み立てる工程」においてもその面白さが伝わる仕様だとより良いと改めて思いました。

 

ということで、ランナーレスの仕様はとても良いものだと思いました。
また昔々は鉛筆をナイフで削っていたような時代ですが、昨今は刃物を使う機会も減りました。
その事情をかんがみると、ますます今回の仕様が今のキッズに最適化されたものだと思えます。

キッズからは熱い支持を得ることでしょう。それを確信しています。

アニメが始まれば、ゾイドはものすごい勢いでキッズに売れるでしょう。
その時の反応が楽しみで仕方ありません。

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