私とガンブラスター

既に繰り返すまでも無く、個人的に最も好きなゾイドはダントツでマッドサンダーです。
ただ二番目に好きなゾイドを決めるのはなかなか難しいものです。
シールドライガーかゴルヘックスかゴジュラスかメガトプロスかレイノスか……。この辺でなかなか悩みます。
頭の中で比べると、どれも大好きなポイントが幾つもあってニヤついてしまいます。
多分、一生結論は出ないでしょう。

では一方、思い入れが強いゾイドというと、これもまた一位はダントツでマッドサンダーです。
しかしこの「思い入れ」という点に限って言えば二位は割とスッと出ます。

PPZ-11 ガンブラスター
ヘリック共和国軍がZAC252年ロールアウトさせた大型ゾイド。
強力なビーム砲を無数に搭載し、しかもそれらが全て前面に向けられた、超攻撃型ゾイド。

当時、猛威を振るっていたデッド・ボーダーは、ウルトラザウルスやゴジュラスを全く寄せ付けない強さをみせました。
共和国最強のマッドサンダーさえ苦戦する姿は、敗戦という言葉さえ思わせました。
そこへ登場してデッド・ボーダーを含む暗黒ゾイドをまとめて蜂の巣にしてみせたガンブラスターは、最高にシビれるゾイドでした。
ガンブラスターは、当時の共和国派にとって救世主でした。
正直、後のオルディオスの比じゃない程、このゾイドはインパクトがありました。

そんなガンブラスターへの思い入れが、とても強くあります。
理由は上記のような所も大きかったと思います。自分が大好きな共和国軍を救ったという所です。
ただそれに加えて、このゾイドは手に入れた経緯がとても印象深いものでした。

今回は、その辺のとりとめもない思い出を書いていきます。

 

それは1989年。私が小二、季節は夏でした。
前年のクリスマスにマッドサンダーを手に入れた私は(詳しい経緯はこちら参照)、マッドサンダーに肩入れする一方で、当然ながら新しいゾイドも欲しいと思っていました。
マッドサンダーを買った頃……、1988年の暮れの共和国はまさに無敵の軍団でした。
ひとたびマッドサンダーが突撃すれば、敵のあらゆるゾイドは容易に蹴散らされました。
あのデスザウラーさえ例外ではありません。

<小学一年生88年11月号より>

自分が持っている最強ゾイドが大活躍する姿にご満悦でした。
しかし年が明けた1989年3月、暗黒軍が参戦すると共に自体は一変します。


<小学二年生89年4月号より>

新たなる敵を前に、共和国軍は大苦戦を味わいます。マッドサンダーをもってして、苦戦は免れませんでした。
小二の純粋な折、本気で暗黒軍に恐怖を覚え、共和国に強力なゾイドが誕生することを願いました。
その思いを見事に叶えてみせたのがガンブラスターでした。

私が購読していた学年誌(小学二年生)では、ガンブラスターの初陣はVS暗黒デスザウラーでした。
(正確に言うと前哨戦としてデッド・ボーダー部隊を葬り、その後に暗黒デスと対戦しています)。


<小学二年生89年7月号より>

デスクラッシャー。このゾイドは新ゾイドバトルストーリーの改造ゾイドリストに収録されていません。
おそらく、そのとんでもない設定や姿から掲載を見送られたのでしょう。どれくらいとんでもないかというと、大きさを見てもらいましょう。


<小学二年生89年7月号より>

ゾイドゴジュラスがつぶされる!
デスクラッシャーは規格外の大きさを誇ります……。
規格外巨大ゾイドを初めて出したのはアニメではなかった。足だけでゴジュラスより大きい……。
機体解説には「2倍」とありますが、それで済んでいない気がします。
余談ですが、ジオラマ的にはデスザウラーは通常と同じ大きさで、ゴジュラスの方が小型モデルであるところのJr.ゾイドを使っています。

このとんでもないデスザウラーが新ゾイドバトルストーリーに掲載されなかったのは、「いくらなんでもやりすぎ」だったからでしょう。
ただ当時、超猛威を振るっていた暗黒軍の勢いからすれば、こんな無茶な改造ゾイドでも「暗黒軍ならやりかねん……」と思わせるものでした。

デスクラッシャーは上陸を開始した共和国軍を襲撃し、ゴジュラスMK-II部隊を壊滅に追い込みます。
さてガンブラスターの小二での初陣は、このデスクラッシャーとの対戦でした。
しかし戦いは一方的なものとなります。


<小学二年生89年7月号より>

ガンブラスターが吠えた!
ガンブラスターは、キャノン砲の全てを、この超巨大ゾイド、デスクラッシャーに向けた。
「発射!!」1秒間に1000発の弾が襲いかかる。
デスクラッシャーの全身が爆発に包まれ、やがて崩れ落ちた。

ハイパーローリングキャノンの前にあっけなく沈むデスクラッシャー。
……今にして深く考えれば、巨大化の弊害で装甲はかなり薄くなっているでしょう。元のままの強度でこのサイズにしたら重すぎて動けもしないと思います。
しかし当時そんな深い考察など出来るはずもなく、
「すすす・すげえ…、パワーアップしたデスザウラーを一瞬で片付けちまった……、こいつぁ……こいつぁすげええ!!!!!!」
ただただ興奮しました。

そしてまた先にも書いたように、この新型ゾイドはデッド・ボーダーをも簡単に葬ってみせていました。
ガンブラスターをきっかけに、共和国に反撃の狼煙があがったのです。

 

どうしてもこの共和国の強力な新メカが欲しいと思った私は親にねだっりました。
私は自分で言うのもナンだけど割と聞き分けのいい方で、「何かイベントが無いと玩具は買ってもらえない」事を理解していました。
だたそれを押しのけてねだるほど、このゾイドは魅力的でした。

粘った結果、購入は認められました。ただ条件として提示された事がありました。
当時小学校でバトミントン部に入っていて、近々大会が行われる事になっていました。
そこで優勝したら買ってやろうとなったのでした。
その大会というのは部のメンバー全員参加のトーナメントで、全員だから小六まで居ました。
冷静に考えるとかなりの無理ゲーです。断る常套手段だったのでしょう。
ただその答えを得た私は、もう手に入れた気になっていました。

さて試合当日、私はずんずん勝ち上がりました。素晴らしきはゾイドパワーです。
補足しておくと個人戦でなくダブルスで、自分のペアは高学年の割と強い人だった……ような記憶がかすかにあります。
とはいえ自分も大会の日までに必死で練習していました。学校から全力で走って帰って(2.5kmくらい)、そこからは寝るまでひたすら練習。その甲斐でもありました。

最終的に決勝で敗退しました。
これは強烈に覚えているのですが、ペアのミスで最後のポイントを取られての負けでした。
凄く悔しくて泣きました。ひたすら泣いてわめきました。
結局、ゴネ得だったのか最初から買ってもらえる予定調和だったのかは分かりません。ただ、その帰りに無事ゲットと相成ったのでした。

たしか2位の賞状とかもらった筈ですが、そんなのは全然覚えていません。
ガンブラスターの箱を持った感じとか、帰って開けてハイパーローリングキャノンのキラキラ具合に感動したとか、組んだ後にスイッチを入れてガトリングの回転具合に興奮した事ならよく覚えているんですが……。


もう一つ、ガンブラスターは思い出があります。
当時出現したこの強力なゾイドは、クラスでもかなり話題になっていました。
同じ学年。すなわち同じ学年誌を読んでいるので話も通じます。
先に書いた暗黒軍への不安やガンブラスターの衝撃はクラス共通でした。
暗黒デスザウラーを見事撃ち抜いたガンブラスターに話題が集まったのも当然でした。

そしてゾイダー仲間のH君が「持ってる」と言い出した時は興奮を抑えきれませんでした。
当然「是非見たい!」となりました。
彼とは特にゾイドの話をよくする仲でした。
「家に行って見せてあげるよー。そのかわりマッドサンダー見せてね」という事になり、もちろん即座に了承しました。
ちなみにH君は私が持っていないサラマンダーとウルトラザウルスを持っていたという点で憧れでした。
その手持ちランナップからも分かるかと思いますが、彼は私より年季の入ったゾイダーで幼稚園の頃からゾイドに夢中だったらしい。
共和国派であり、私のマッドサンダーと彼のウルトラザウルスで共同戦線を張って帝国の大軍を迎え撃つ”ごっこ”をした事は、いずれ記したい思い出です。

「家に行って見せてあげる」というのは楽しみで楽しみで仕方がありませんでした。
その日の放課後が待ちきれませんでした。

そしてよく覚えている事というのが、今では「バカだなー」としみじみ思えるのですが……、「どうやって持ってくるの?」と問えば「自転車」と答えられました。
その時「カゴに入れたら壊れるんじゃないかな……」と思いました。
「ガンブラスターはどうやって持ってくるの?」と問うと、これは今でも素でそう答えられたのか一杯喰わされたのかは分かりません。
ただ彼は「ゾイドに歩かせていく」と答えました。
それを聞いた当時の私は、何故だか妙に納得してしまったのでした。
・・・ああそうだ、ゾイドって歩くもんなー・・・と。

当時、近所の友達の家によくゾイドを持って行って遊んでいました。その時は絶対にスイッチ入れて歩かせていました。その影響なのだろうか……!?
いやそんなわけないやろと考えるよりも、でもゾイドに歩かせたら結構時間かかるかもしれないなー、早く見たいなー、とか思っていました。
ただ「ゾイドって曲がれないけどどうするの?」とは聞きました。
その時H君は、「ミニ四駆みたいにコースを作る」と答えました。
私はその時も、なるほどそれなら来れるなと納得したのでした。
というかここまで書いて、確実にH君に一杯喰わされたのだろうという確信が持てたのと、当時の自分のバカさ加減が凄まじい事を思い知っています……。

結局、H君は親の自動車でうちに来て、もちろんガンブラスターは車で輸送されてきたのでありました。
バカみたいな話。ただよく覚えているガンブラスターの思い出だったりします。

 

H君にガンブラスターを見せてもらった話は、バトミントン大会よりずいぶん前の事でした。
「学年誌を見た」+「友人の持っている実物を見た」事により、いよいよ私は必死に親にねだるようになり、「大会優勝」という条件と引き換えにガンブラスターを得る権利を得たのです。

余談ながら、H君はどちらかというとワンパクではなく内向的な子でした。
どちらかというと……でもない。ドッジボールをしたら真っ先に狙われるタイプでした。
そんな彼、ある時「遊んでいてウルトラザウルスの首を折ってしまった」と言った事がありました。
大人しい彼がゾイド相手に実はものすごくパワフルでハードな遊び方をしていたというのはちょっとクスッとします。
あと、そこまで熱中させてしまうゾイドもまた凄いと加えるべきでしょうか。

そんなわけでガンブラスターは、私にとって凄く思い出のある機体として在ります。
ちなみにその当時手に入れたガンブラスターは、実は今でも健在です。

ただ当時は他のゾイドともどもハードに遊んでいました。
そのおかげで購入後まもなく角は欠品、脚部装甲欠品、背中のチューブ折れ、というあまり良くない状態になりました。
とはいえそれ以上は壊れる事もなく、手持ちゾイドの中では比較的綺麗なまま残っていました。
しかし個体差だったのか陽に当て過ぎたからなのかは分からないのですが、1999年ゾイド再販頃に久しぶりに見てみると、見事にメッキが剥げていました。
剥げた部分とかろうじて残っているメッキ部分が迷彩状態で、もはや黄金砲と胸を張れる状態でないのは確かでした。
そこで思い切って塗ったのが、上の画像のものです。
黄金砲の異名を持つ派手なカラーもカッコいい。ただ塗ってみて、もともと砲の多いゾイドなので渋みのあるパターンでも栄える機体だと確信できました。
手前味噌ながら、なかなかカッコいいカラーだと思います。

このガンブラスターは、初めてフォトレタッチに挑戦した時に使っキットでもあります。

これを作った時はPhotoshopにも全く不慣れで、ものすごく苦労しながら作った記憶があります。
その意味でも思い出のキットです。

 

私がガンブラスターを塗装した数年後の2001年に、ガンブラスターは再販されました。
そして更に12年後の2013年、初代カラーのガンブラスターも苦労の末手に入れる事が出来ました。メッキも剥げず良い具合に残っています。

3機とも、私にとっては格別の機体です。

ゾイド的に言うと、ガンブラスターはモチーフの生物をかなり無視しています。
メッキの使用に賛否があるのも承知しています。 その辺で議論の必要なゾイドなのは確かでしょう。

ただ私にとってガンブラスターの全てが大好きで、本当に格別の思い入れの詰まったゾイドであるのは絶対です。

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