水性アクリル塗料をひっぺがす

塗装。
好きなシリーズのカラーを再現、バトストに出てきたあのカラーを再現、自分だけのオリジナルカラーに、その他色々。
多くのユーザーがゾイドの塗装をした事があると思います。

ゾイドはマルチカラーなので組んだだけで設定通りの色に仕上がります。パーツ数が少ないのに的確に分けられている事は職人技を感じます。
ただあえて塗装する事で自分だけのものとなり、思い入れがどんどん増してくるものでしょう。
大胆な変更、ワンポイント塗装、シリンダーなど細部の塗装、etc.
このゾイドをどう塗ろうか。どんな色にすればもっとカッコ良くなるだろう。それを考える時間も大きな楽しみです。

ただ「失敗した」あるいは「時間が経ってから見直すと違和感を覚えてきた」ような場合もあると思います。
この塗装をひっぺがしたい。
そんな時もあるのではないかと思います。

さて、ゾイドは水性アクリル塗料を推奨しています。
水性なので扱いが楽だし発色も良い。エナメル塗料やラッカー塗料に比べて匂いがキツくないのも利点。
代表的なのはクレオスのMr.カラーやタミヤのタミヤカラーです。

今回は、この水性アクリル塗料をひっぺがす方法を記載します。

 


こちらは機獣新世紀…2000年に発売されたムンベイ仕様グスタフをメカ生体版風に塗ったものです。
当時グスタフの再販を喜ぶ一方、色はやっぱり地味な灰色がいいなぁと思って塗ったのでした。


当時としては割とキレイに塗れていて旧大戦共和国仕様をよく再現していると思います。
が、やはり当時としては。
塗膜がかなり厚ぼったい。特に灰色で塗ったところが分厚い。色合いも微妙に違う。
これは鮮やかな赤パーツの上に薄い灰色を塗っているから、下地が透けないように何度も塗りを重ねた結果です。

…ただ余談ですが、私は厚ぼった塗膜はそれはそれで良いと思っていたりもします。
工場で完成した直後の新品ならキレイな塗装でしょう。
が、「現場で酷使されて塗装がはげる→現場で塗りなおす」事を繰り返せば、汚くなったり色合いが多少変わったり塗膜が厚ぼったくなったりもすると思います。
そういう機体なんだと思えばこれはこれで。

・・・ただし、今回はひっぺがします。

 

さて、水性アクリル塗料の塗装を落とすには塩素系漂白剤を使います。
パーツをばらしてフタ付きの箱に入れ、塩素系漂白剤を用意します。


私はキッチン用のブリーチを使っています。理由は安いからです。1本600mlが薬局で60円くらいで買えます。

パーツを入れた箱にブリーチを注ぎます。

「パーツは大丈夫なのか?」という事ですが、基本的には大丈夫です。
ブリーチの表記を見れば「使用できるもの:プラスチック」と書いてあります。
というか、キッチン用ブリーチはプラスチックまな板の漂白にも使用できるのでプラスチックが大丈夫なのは当然でもあります。

※ただし一切希釈しない原液をドバドバ注いでいる事、そこそこ長時間漬けることから絶対に大丈夫とは断言しかねます。
 同じようにする方がいらっしゃれば自己責任でお願いします。

ブリーチをパーツがひたる位にそそげたら、フタを閉めてそのまま放置します。
ちなみにフタ付きという事を強調したのは、これがないと部屋中が塩素臭くなるからです。

私は半日くらい漬けています。厳密に「この時間が最適!」というものがあるわけではありません。
私の場合は「出勤前にブリーチを注ぐ・帰ってきてから取り出す」くらいの作業をしているのでこの時間になっているというだけです。

半日経過した状態がこちらです。

液の中で塗料が剥がれているのが分かると思います。剥がれた塗料が下にあるパーツに積もっています。
ブリーチは安いのにこのような超強力な力を発揮してくれます。

パーツを取り出します。ブリーチの液はこの段階で捨てます。

塩素系漂白剤に直接触れると肌が荒れます。必ずビニール手袋などをして作業しましょう。
肌荒れを抜きにしても溶けた塗料でパーツ表面はベトベトです。素手で触ると指が汚れて後の作業に支障をきたします。

また、漂白剤なので作業時には周囲に飛び散らないよう気をつけましょう。
特に服にかかったら確実に色落ちするので大変です。汚れてもいい作業着でやった方が無難だと思います。

次に、パーツをぬるま湯に入れて洗います。水でも構いませんが、ぬるま湯の方がより良いでしょう。

ぬるま湯の中でパーツを泳がせれば、あらかたの汚れはそれで落ちます。
ブリーチ脅威の洗浄力が分かると思います。

「ぬるま湯で洗う→湯を捨てる→新しいぬるま湯で洗う」
これを何度か繰り返します。

するとこんな感じになります。

だいぶキレイになってきました。
そして……、

ここまでで95%くらいはキレイになっているんですが、ディティールの奥に詰まった塗料は頑固にこびり付いています。
これも綺麗にしましょう。
こういう場所は歯ブラシでかきだします。
私はこの段階では中性洗剤で泡立てながら作業しています。
ディティールが多いゾイドの全体を磨くのは大変ですが、ゾイド愛で頑張りましょう。

これで全体がキレイになります。
こうして洗浄を完了したものがこちらです。

こんなにもキレイになりました。あとは乾かせば完了です。

乾いた後にもう一度パーツをチェックしましょう。
この洗浄で99%はキレイになっていると思いますが、ディティールの複雑なゾイドなのでどうしても磨き残しは発生しがちです。
磨き残しが発生しているパーツがあれば、面倒ですがもう一度ブリーチに漬けて二周目の洗浄をしましょう。
こうして細かいミスまで補えば、新品同様とは言いませんがかなりキレイな状態にまで復活します。

ちなみにこのグスタフを塗ったのは2000年です。そして塗装を落としたのは2017年。
実に17年も経ってから塗装を落としたのにこのキレイさ。
その効果の高さが分かると思います。

…ただし!
何が原因かは分かりませんが、極めて稀ですが、染み込んでとれない汚れが発生している場合もあります。


グスタフのパネル。これだけは何故か塗料が染み込んでこれ以上はとれませんでした。何度ブリーチに漬けてもです。
理由は分かりませんが、極稀にそういう事もあるのでしょう。そういう場合は表面を薄く削るなどするしかないと思います。
かなり大変な作業ですが…。

ちなみに、かなり多くのゾイドで同じことを試しました。

ストームソーダーもこの通りキレイになりました。

この作業をした中で汚れがとれない問題が発生したのは、今のところグスタフのパネルだけです。
まさか落ちない事があるとは思ってもみませんでした。
このパネルだけ何か特別な事がされているのだろうか…?
現在のところ、理由は分かりません。

まぁ、極めて稀にこんな事が起こる可能性はありつつも、基本的には凄く使い勝手の良い塗装ひっぺがし術だと思います。

水性アクリル塗料にのみ使える技ですが、私はよく使っています。
ジャンクで塗装済みゾイドを買った際にも、塗料が水性アクリル塗料だった場合はこの方法で落とす事ができます。
微妙な難はありつつも、かなりオススメできる技術だと思います。

ただし、今回も同じ方法を試みる場合はくれぐれも自己責任でお願い致します。

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