ゾイドを洗浄する

ゾイドを組み済みで手に入れた場合、様々な問題がある事があります。
その中でも、「汚れ」に関するものは多くあると思います。

先日、組み済みのスナイプマスターを入手しました。

モノ自体は良好で、パーツは欠品なく、キャップの硬化もなく、ゼンマイも生きていました。
ただ、かなり汚れていました。

正直どうやったらここまで汚せるのだろう?というレベルで汚れており、茶色い汚れが各所にベッタリと付いています。
更に、埃もかなりの量をかぶっています。

さすがに、ここまでのレベルで汚れているものは少ないと思います。
しかし、多かれ少なかれ汚れている事は多く、そんな時は洗浄してやると綺麗になります。

今回は、私が組み済みを入手した際に行っている洗浄方法を説明します。
かなりお手軽な方法だと思います。

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-洗浄の手順-


洗浄には、食器用の中性洗剤を使用します。
パーツはバラしてボールの中に入れます。動力以外のパーツは全て入れます。キャップも入れます。

中性洗剤を使用する理由を、少し解説します。
一般的な家庭用洗剤は「中性」「弱アルカリ性」「アルカリ性」「酸性」に分けられます。
中性洗剤は一般に食器洗浄に使用されているような洗剤です。 汚れを落す力は、飲食後の食器を思い浮かべて頂ければ想像出来ると思います。
汚れを落す力はあまり強力ではありませんが、そのかわり手やプラスチック、塗装済みパーツに優しい洗剤です。

弱アルカリ性洗剤やアルカリ性洗剤は、こびり付いた頑固な油汚れを落す強力な洗剤です。
中性洗剤よりも落す力は強いのですが、かわりにゴム手袋をしないと手が荒れます。
更に、落す力が強すぎるゆえに、塗装済みパーツがあればそれを剥がしたり変色させたりする事があり、避けた方が賢明と思います。
酸性洗剤は更に強力で、プラスチック自体を確実にかなり痛めますので論外です。

他、洗剤ではありませんが、塩素系の漂白剤も洗浄に使用されることがありますが、これはあまりお勧めしません。
ゴム手袋をしないと手が荒れるのと、塗装済みパーツを剥がしたり変色させたりする事がある為です。
また、メッキパーツを使用したゾイドを塩素系漂白剤で洗うと、メッキが剥がれてしまいます。
(逆に、剥がしたい時は塩素系漂白剤に漬け込んだりもします)

中性洗剤を使用する理由は、ゾイド洗浄に対し必要にして充分な上に、この中では最も安全だからです。
おそらく、頑固な油汚れがパーツにこびり付いている場合というのは、ゾイドではまず無いと思います。

さて、そんなわけで中性洗剤で洗います。

ボールにぬるま湯をはり、中性洗剤を入れます。
水では汚れが落ちにくいので、必ず、ぬるま湯~お風呂の温度程度の湯を使用します。
洗剤の量ですが、充分に泡立つ程度であればOKです。

そしてパーツを軽くかき回します。ほとんどの汚れは、この段階で落ちます。
このスナイプマスターの汚れも、半分以上はこの段階で落ちました。
ただ、べっとり付いた汚れや、パーツに付着した埃は、この程度では落ちません。なので、歯ブラシを使用し、パーツを一つ一つ磨いていきます。
こうする事で、パーツが元の美しさを取り戻します。

先ほど、動力パーツ以外をボールに入れると書きましたが、それはもちろん湯や洗剤で動力が破損する(錆びる)可能性があるからです。
動力が汚れていた場合は、内部に水分が入らないように注意しつつ、洗剤を染み込ませたフキン等で磨くと良いでしょう。

洗い終わった後の湯は、こんな感じでそうとう汚れています。

これだけの汚れがゾイドを覆っていたのです…。

パーツが全て磨けたら、乾かします。私は、パーツをタオルの上に並べて自然乾燥させています。
補足ですが、乾いた後にゲート処理も併せて行うとより良いでしょう。
さて、乾いたら、あとは組むだけです。

たいていの組み済みゾイドは、これで見違えるほど綺麗になります。

しかしながら、この方法を使ってもなかなか綺麗にならない場合があります。
それは、パーツが変色していた場合です。
中性洗剤で洗う方法は、所詮は表面を綺麗に洗い流すだけのものなので、パーツ自体が変色していた場合は、別の方法を試す必要があります。

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-変色の対処-


先日、メカ生体ゾイド版のガンブラスターを手に入れました。
もの自体はしっかりとしており、パーツの破損も無かったのですが、やはり汚れが酷かったので洗浄しました。


同じように、ぬるま湯と中性洗剤、歯ブラシで洗浄します。
中性洗剤の利点は、メッキパーツを洗ってもメッキが剥げない点でもあります。

しかしこのガンブラスターですが、洗浄前から嫌な予感がしていました。

組み済みを入手した場合は、シールが張られている場合も多いのですが、貼り方が汚かったり、隅っこに埃が入り込んで汚くなっている事がほとんどです。
こういう場合、はがしてから洗浄します。


はがした段階で嫌な予感がMAXです。

洗浄完了したら、その嫌な予感は見事的中していました。

汚れ自体は綺麗に落せたのですが、パーツが黄ばんで変色している所までは対処できなかったのです。
白いパーツがかなり黄ばんでしまっています。もはや白ではなくクリーム色です。
シールが貼ってあった部分だけが変色を免れているので、妙な模様になってしまっています。

保護されたシール部分と変色している部分の差が凄い。
ガンブラスターが発売されたのは1989年。20年以上の長い年月は、パーツをこうも黄ばませてしまったようです。

パーツの黄ばみは、ゾイド以外でも、古いPCやゲーム機等でもよく見られる現象です。
ガンブラスターと同じ1989年に発売された初代ゲームボーイなんかも、黄ばんだものをよく見ます。

黄ばむメカニズムというのは完全には解明されていないようです。
ですが、「パーツの表面についた皮脂や埃などが明所や暗所で化学反応を起こして黄ばむ」というのが典型的なパターンです。
明るい所に置いても暗い所に置いても黄ばむというのは厄介なことです。
特に、大事に冷暗所に仕舞っておいたのに黄色く変色…というのは精神的ダメージが大です。

黄ばみを防ぐ方法としては、仕舞う際に表面を綺麗に洗って、出来る限り皮脂や埃をふき取ってやるのが有効と思います。
このガンブラスターは、シールが貼ってある部分だけは変色を免れていました。「シール部分=皮脂や埃が付いていない」という結果であると思います。

といっても、既に黄ばんでしまったものは、今更黄ばませない方法を分析したところで仕方が無い。
何とかして黄ばみを除去し、綺麗にしたいところです。

 

「黄ばんだプラスチックを元の色に戻す」というのは長年謎とされており、不可能とも言われていました。
しかしついに2008年、ドイツのとある団体が特殊な液体を開発し、黄ばんだプラスチックの色を元に戻す事に成功しました。
これはドイツの博物館でデモンストレーションされた直後から大きな話題となり、更には国を越え、イギリスでも話題沸騰となりました。
ついに科学者や技術者が力を合わせ、液に改良が加えられ、翌年2009年、「Retr0brite(レトロブライト)」という高性能黄ばみ除去液を開発する事に成功します。
(更にその後に、液体は高く付くという事でジェル状に改良されました)

この液体(ジェル)を黄ばんだプラスチックに散布し、日光(正確に言うと日光に含まれる紫外線成分)に当てると、みごと黄ばみが取れるという画期的なものでした。

しかし悲しいかな、これは遠くヨーロッパでの出来事。レトロブライトを日本で購入する事は不可能。
しかも仮に手に入ったとしても、「液体が高いからジェル状に改良した」所から察するに、安くしたといってもかなり高そうです。

しかし世は我々を見捨てなかった。救世主は現れたのです。
2010年、日本のとあるネットユーザーが、黄ばみの原因やレトロブライトが黄ばみを除去するプロセスを科学的に検証。
結果、みごと日本でも使用可能な代用品の発見に成功したのです。しかも、わずか数百円で黄ばみが除去できる代用品を発見、です。
というか、ネットユーザー凄すぎる件。

 

さて、黄ばみ除去には、ワイドハイターEXを使います。

これこそが、レトロブライトの代用品です。価格は、480ml詰め替えパックが、だいたい200円前後です(2013年7月現在)。
科学的な説明は略しますが、ワイドハイターEXにはプラスチックの黄ばみを除去するのに最適な成分がバランス良く入っています。

黄ばみを除去する手順ですが、
①「黄ばんだパーツにワイドハイターEXを塗る」
②「パーツを日光にあてる」

というものになります。

といっても、日光にあてた瞬間除去が完了するわけでも無いので、実際は「塗って日光に」というより、「沈めて日光に」となります。
(塗って日光にあてた場合、液が蒸発するので、結果的にまだら模様に黄ばみが除去されて、除去前より悲惨な状況になります)

ワイドハイターEXに沈める為には、ジップロックなどのフリーザーバッグか、透明なフードパックを使用すると良いでしょう。

この中にワイドハイターEXを流し込み、その中にパーツを沈めて日光に当てます。
今回は、透明のフードパックを使用しました。

フードパックにワイドハイターEXを注ぎ、その中に黄ばんだパーツを沈めます。そして日光の当たる場所へ置きます。

画像では撮影の為にフタを空けていますが、当然、普段は液の蒸発を防ぐ為に閉めておきます。
入れた直後では、当然、パーツの黄ばみがまだまだ確認できます。

一日後と二日後…、

天候はいずれも曇りで、正直充分な日光が得られたとは言いがたいものでした。
しかし目に見えてパーツが白くなっています。

そして更に二日。四日後…、

ほぼ完璧に黄ばみが落ちました。
厳密に超細かく見れば差が無いわけでもありませんが、ぱっと見では分からない/気にならない程度に充分な効果が得られました。

実は今回の黄ばみ除去では、左右のパーツを別々に作業していました。
黄ばみ除去完了したものと除去前のものを比べると、この通りです。

これぞワイドハイターEXの威力!

また、実験前は、黄ばみが除去出来てもパーツが脆くなっていたらどうしよう…と心配していましたが、どうやらそれも無いようでした。
元のパーツと変らない強度を維持しています。

そんなわけで、これにてガンブラスターの黄ばみ変色を含む洗浄が、完了しました。

ほぼ新品同様の状態にする事が出来ました。

 

また、ワイドハイターEXを使用した別の実験もしました。

黄ばみというとプラスチックもですが、ゾイドの場合は、キャップが黄ばんだというのも多いと思います。
そこで、同じ方法でキャップも黄ばみ除去できないものかと試してみました。
シールドライガーの白キャップとレッドホーンの灰キャップ、共にかなり黄ばんだものを用意し、1日沈めて日光に当ててみたところ…、

見事、黄ばみが除去できました。
灰キャップは、意図的に、一つ黄ばんでないキャップも混ぜていました。
これは漬ける事で本来の色から変わってしまわないかを確かめるためのものでした。
結果的に、黄ばみだけが綺麗に除去され、もとの色が変化する事はありませんでした。
素晴らしい結果です。

結論として、この方法は、
■黄ばみだけを強力に除去する
■強度的に劣化する事は無い
■元の色を取り戻すだけで、変色する事は無い
という、素晴らしいものになってくれました。

ワイドハイターEX様様です。
なお、EXじゃない方のワイドハイターや手間なしブライトでも同様の効果を出せますが、効き目が最も強いのはワイドハイターEXの様です。

 

なお日光は強ければ強いほど効果が良く出ます。
なので、冬よりも夏の晴れた日にやると良いでしょう。
このガンブラスターの黄ばみ除去は、5月の曇りがちな頃にやっています。
夏の晴れた日なら、もっと早くに完了していたかもしれません。
逆に、冬場は日光が弱いので、もっと長い時間がかかると思います。

季節や天候に左右されたくないという場合は、日光を使わない方法もあります。
先にも少し書きましたが、日光をあてるというのは、厳密に言うと「日光に含まれる紫外線成分にあてる事が必要」という事です。
すなわち、日光でなくとも紫外線を含んだものを当てれば良いのです。
ブラックライトでも代用できます。

ブラックライトは電気店に行くと様々な価格で売っていますので、必要に応じて調達しても良いと思います。

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-注意事項-

さて大成功した洗浄および黄ばみ除去ですが、同じ事をされる場合は必ず自己責任でお願い致します。
今回の検証、実験しきれていない部分や、この方法では除去できないケースがかなりあります。

 ■パーツごとの素材の違い
   特に黄ばみ除去に関しての注意です。
   ゾイドのパーツはプラスチックですが、プラスチックにも細かく見れば様々な種類があります。
   機種により、パーツにより、生産時期により、生産国により、etc.…、その素材は異なっています。
   ですので、全てのパーツで同じような素晴らしい結果が出るわけではない可能性があります。

   塩素系漂白剤のようなキツい液体に長時間プラスチックを漬け込むと、中から気泡が浮き出してくる事があります。
   プラスチックによっては全然大丈夫な場合や、数日程度で気泡が浮き出てくるものなど様々です。
   ワイドハイターEXでも、同じように、種類によってはパーツを破損してしまう可能性が無いわけではないと思います。
   特に、セイスモサウルスの赤いパーツなどは脆く危険そうに見えます。

   この危険性が怖いので、実のところ、私は極力、使用しないようにしています。
   青や赤のパーツに関しては、少々黄ばんでいても元が濃い色なのでほとんど分からないと思います。
   ただ、白や薄い灰色のパーツに関してだけは、黄ばんでしまったら異様に目立ちます。
   そういう場合のみ、まず余りランナーなどで実験をした上で、実際のパーツの黄ばみを除去するようにしています。

 ■黄ばみによっては対処できない
   今回の方法は、「皮脂やホコリがプラスチックと反応して変色した」というケースに対応しています。
   変色の原因がその他の場合…、例えば、油性マジックで書いたものとか、タバコのヤニの色がプラスチックの中まで染み込んで変色したといったケースには
   対応できませんので、注意して下さい。

その他にも何があるか不明な点が多いものである点は留意して下さい。
今回のものは、あくまでこういったやり方もあるという提示だと思って頂ければ幸いです。

繰り返しになりますが、洗浄も漂白も、行われる場合は必ず自己責任でお願い致します。
また、事前にランナーやパーツの裏側なのでテストした上で行う事をお勧めします。

それにしても、黄ばみを除去する方法が2008年になって発見されたというのは驚きです。
なので、今後もっと画期的で確実な方法で綺麗にできる方法が生まれる事も願っています。

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