色の事

1999年、機獣新世紀ゾイドシリーズで多くのゾイドが復活を果たした。
多くの新規ユーザーと共に、多くのメカ生体ゾイドファンがキットを買った。

私はメカ生体ゾイド世代からのファンで、ゾイドの再販を凄まじく喜んでいたクチだ。
あの頃買えなかったゾイドが今は買える…!!!!

再販日、それは8月28日だった。

数日前から眠れないほど興奮していた。
当日、自転車を全力でこいでハローマックに行った事をよく覚えている。
より正確に言うと、最初は駅前のデパートに行って見つけられなかった。次に個人経営の模型店に行って見つけられなかった。
半ば諦めつつハローマックに行ったらあった。

最初に見つけたのはブラキオスの箱だった。パッケージの長い首が見えてゾイドだと気付いた。
「ホントに再販してる…」
その事に感動しつつ、その日はシールドライガーとバリゲーターとレドラーを買ったのであった。

 

再販の日、この頃のゾイドは生産数が少なかったらしい。これは個人経営の模型店のオッチャンが言っていた事なので真相は不明だが…。
「昔はうちでもよく扱っていたんだけど、今回のは生産規模が小さいからうちでは入荷できなかった」と言われた。
その後、アニメが始まって爆発的に人気が出て、生産数がメカ生体シリーズと同等かそれ以上にまで膨れたのだから凄い。

 

ゾイドは「再販」された。
ただ再販と言っても幾つかの仕様は変更されていた。
完全な「復刻」ではなく新シリーズとしてのリニューアル再販であった。
中でも最も大きな違いは色だった。

メカ生体シリーズの色に大変な思い入れを持っていたので、再販でキットが手に入り喜ぶ一方で、「色が変わってるのかよ……」と嘆いたのは正直な所だった。
なので、必死でタミヤカラーで色を塗ってメカ生体仕様を再現していた。

ただ、完璧な色の再現などできる筈もなかった。技量の未熟さゆえ塗った面が厚ぼったくもなった。
キャノピーやキャップはそもそも変更ができなかった。

それでも、果敢に挑戦した。
似た色を必死で探した。
オレンジのキャノピーにクリアブラックを塗ってスモーク風に近づけたり…、ただし透明度が下がって失敗したと思った。
キャップにも無理やり色を塗って極力触れないようにしたりした。触れると剥がれるからだ。でも永遠に触らないなんて事はできない。そのうち剥げてしまった…。


これらは挑戦したゾイドの一例。
シールドライガーは、当初はキャップや銀パーツにも塗装をしていた。だがしばらくして剥げてしまった。
レイノスはキャップをアーバイン仕様コマンドウルフから拝借している。

微妙にメカ生体の色に近づいてはいるものの…、完全な再現には程遠い。
自分の中でかなりモヤモヤした気持ちがあったのを覚えている。 

「ガルタイガーのような色の評価が低い機体なら変更もアリだろう。だが元より評判の良い機体は同じ色のまま再販したら良かったんじゃないか?」
とは当時から比較的最近までずっと思っていた。
しかし今、色変更はあえてだったのかなとも思うようになった。

 

メカ生体時代からのユーザーは、1999年には10代後半から20代前半になっている事が多かったと思う。
メカ生体ゾイド当時、小学生だった頃はゾイドキットをそのまま遊ぶ事が多かったと思う。
塗装とはあまり縁がない感じで。
色を塗るにしても、完全に一人でやるより「お父さんにやってもらう」あるいは「一緒に」というパターンが多かったと思う。

1999年の再販で色が変わったのは、トミーから「そろそろ次の段階に行っては?」というメッセージがあったからかもしれない。
塗装を促したい。模型的な楽しみをより模索して欲しい。君たちは成長したのだから、その力でゾイドの新しい可能性を開いて欲しい。
そんな風な想いで色を変えたのかも…。
時に不満を抱きつつ、必死で色を再現しようとあがいていた私は、トミーの掌で踊っていたのかもしれない。

そういえば、必死で色をいじる中で、少しずつ技量は上がっていった。

次第に、ウェザリングのテクを未熟ながらに覚えていった。また、塗装もそれなりに満足できるものも徐々に増えてきた。グスタフはなかなか上手くいったと思う。

 

色変更。
1999年の再販から長い年月がたった今では、変えて良かったのかなとも思う。
メカ生体ゾイドシリーズの色は、とにかく部隊として並べた際の統一感に気が払われている。
対して、機獣新世紀ゾイドの色は個として栄える・目立つ事を目指しているものが多いと思う。
「郡」としての魅力には欠けるかもしれないけど「隊長機」等の仕様として捉えればちょうど良い気もする。
どちらも同じ機だが、メカ生体シリーズは部隊の一般カラーで再現している・機獣新世紀シリーズは隊長機やエース機を再現している…ような解釈の余地もあると思う。
自分なりの解釈を盛り込む中で、ゾイドへの能動的な働きも生まれて想いも高まる。

まぁ、クリアパーツとキャップくらいはカラバリを提供して欲しかったという想いはないわけではないけど…。
それでも、総合的にあれで良かったのかなと今は思う。

もちろん、これは完全復刻を否定するわけじゃない。トイズドリームプロジェクトは格別に嬉しかった。
「欲しかったあのキットが色まで当時のままで帰ってくる」というのは本当に大きな喜びだった。
サラマンダーやマッドサンダーのように、極一部には色変更をせずに再販されたものもあった。月刊ゾイドグラフィックスやリバースセンチュリーも嬉しかった。
完全復刻と色変更。全体的に、割とバランス良くやっていた気もする。唯一だけ言えば、黒いウルトラザウルスをどこかで復刻して欲しかったという位か…。

 

さて、これからはどうなるだろう。
もちろん、またどこかでゾイドは大復活するだろう。いずれ大掛かりな再販が行われると信じている。
その時、色はどうなるだろう。
もちろん、変更があってもなくても、できるだけ肯定的に捉えたいと思う。
積極的に楽しみつつ、自分の中で一番好きな色を探していきたいと思う。

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