学年誌のゾイド

メカ生体ゾイドのストーリーは渋くてリアル感満載だ。
ゾイドバトルストーリーの本は何度読んでも良い。

最強ゾイドの豪快なプロレス的なぶつかりあいも多い。
でもそれだけじゃなく、小型ゾイドの鮮やかな活躍、捕虜収容所への潜入、山岳への進出、欺瞞作戦といった様々な描写があり多角的な所が大きな魅力だ。

メカ生体ゾイドのストーリーはバランスが良い所が好きだ。
もちろん中には無茶なものもある。ただ、全体的な印象はやはり渋い。ゾイド全シリーズを通してもミリタリーな雰囲気は随一だと思う。

ゾイドの魅力は多方面にあるので、それをもって優れているとは言わない。
ただ私はミリタリーっぽさに特に魅力を感じているので、メカ生体シリーズが特に好きだ。

さてメカ生体ゾイドは渋い。その事は、メカ生体ゾイドが学年誌に掲載されていたという事情を抜きには語れないと思う。


メカ生体ゾイド当時は、これらの学年誌にゾイドが載っていた。

小学館スペシャル・ゾイドバトルストーリーは、学年誌に掲載された記事を元に再編されたものだ。
「そこで大幅なブラッシュアップがされ、高い完成度になった」
それは確かだ。ただし、骨子となる部分は既に学年誌の段階であった。

今回は、学年誌におけるゾイドを考えてみたい。

学年時のゾイドは、実はその段階でかなり高い完成度であった。
例えばバトスト2巻で主役を務めたのはトビー・ダンカンとヨハン・エリクソン。
この両名は、学年誌の段階でも名前が出てきていた。

この渋いパイロットの絵が学年誌(小三)の段階で出ていたとは驚きだ。
ただ、細かな設定は学年誌の段階ではない。それらはバトスト2巻に際して加えらたものだ。

 

チェスター教授救出作戦は、学年誌の段階では「天才科学者救出作戦」だった。

それに細かな設定が4巻に際して加えられた。
(改造ディバイソンの名称も変わっている。「サンダー」の名前は後に控えるトリケラトプス型メカとかぶるので変更されたのだろうか)

 

帝国最高のスパイコマンド「エコー」は、学年誌の段階では「スパイX」だった。

これらを見ると、「学年誌のものはプロトタイプで後のものが完成形」という関係をしているのが分かると思う。
一部には、全く別の話に変わったものもある。ただ、大半は学年誌の内容をそのまま発展させている。
学年誌の段階で、既に確たる骨子が出来ていた事が証明できたと思う。

 

さて学年誌。
学年誌の特殊な所は、「読者のほとんどが同じ年齢」という部分にある。
小一は小一を買い、小五は小五を買う。例外はあまりないだろう。これは極めて重要な要素だ。

子供の好む方向性の一つに「大人っぽいもの」がある。
対象年齢よりも少し上のもの。お兄さんが見ているものに憧れる事だ。
ゾイドは、学年誌の記事の中ではかなり漢字の使用率が高いし、学年によっては文章が長いのもある。内容のハードなものも多い。


例えば上は小五の記事。かなり読み応えがある事が分かると思う。
その学年に向けた展開としては「少し難解なのでは?」という記事も多い。しかし、その事を承知で行われていると感じる。
これは、大人っぽいものに憧れる子供を意識しているのではないかなと思う。

 

大人っぽいものへの憧れ。
ゾイドが、この要素で少年を牽引した部分は大いにあると思う。

ただこれはなかなかバランスが難しい話で、小一にとって大人っぽいとは小三くらいの事で、小三の大人っぽいは高学年で、高学年の大人っぽいは中学生くらいだと思う。
それ以上に離れてしまうと、さすがに難解すぎて付いていけなくなってしまう。
大人っぽいというのは「大人」ではなく、あくまで「っぽい」というレベルだ。
理想的な大人っぽいとは、「やや難解でありつつも読み解こうとすればギリギリで理解できる位のもの」だ。
ゾイドの記事は、まさにそのようなバランスであると思う。

ゾイドは、大人っぽいものに憧れる子供を意識して作られている。
だが、「小学生」というまとめたくくりにする事は不可能だ。
成長著しい年代。一年生にとっての大人っぽいは、高学年にとっては子供っぽいになってしまう。
高学年にとっての大人っぽいは、低学年にとっては難解すぎて分からないものになってしまう。そんな年代なのだ。

学年誌が全学年にあった。それゆえ各学年ごとに最適な展開ができた。メカ生体ゾイドの時代、それが実現できたのは大きな幸運だったと思う。
各学年ごとの理解力に配慮しつつも、追いかけているものが共通して「大人っぽさ」だったと思う。その事があの渋さに繋がっているように思う。

 

機獣新世紀ゾイドのストーリーは華やかさを極めた一方で、全体的にかもし出す渋い雰囲気ではメカ生体ゾイドに叶わないと思う。
しかし、この時期の展開はコロコロを中心に行われた。
コロコロは小学生を全部まとめてターゲットにしている雑誌だ。なので、同じような渋さは元より望めなかったのだろうなとも思った。

「昔に比べてハードさが減った」「渋くない」という批判は当時においてかなりあったし、「だからダメ」という声もあったと覚えている。
当時は私もそのように思っていた……が、掲載誌の事を思えば、展開が少し違うテイストになったのはむしろ当然だなと思った。

むしろ「小学生を全部まとめて取り込む」という極めて難しい要求の中で展開した新世紀ゾイド、それが幾らかハードさは減ったと思えるものの、それでもかつての色を残しつつ新規ユーザーもバッチリついてくる展開を実現したのは凄い手腕だったのかなと思った。
それでも、ゴジュラスギガの活躍しなさっぷりやダークスパイナーの戦わずして勝つ戦法のように、特に後期には幾らか疑問がないわけでもないのだが…。

まぁ、ともかく、学年誌がメカ生体ゾイドに果たした貢献はやはり絶大だったなと改めて思った次第だ。
偉大な雑誌だったと思う。

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