ゴジュラスとコングの操縦性

兵器の評価というのは難しいお題で、優れた兵器とは何ぞやというと万人を納得させる決定的な事はなかなか言えない事が多い。
地球では結果が評価に直結している事が多い。それは性能で比べてないからフェアとはいい難い。どちらかというと武運だ。
ただ一方で、兵器とは適切なタイミングで必要な能力を発揮する事が求められるものだ。だから結果として戦果を挙げた兵器を高評価する事にも合理性はある。

さてアイアンコングは帝国最良ゾイドと称される。
高い戦闘力もさる事ながら操縦性の良さも大きな要因で、この点でまさしくゴジュラスとは対照的とされる。

平均的な技量のパイロットでも十分に能力を発揮できる。それが兵器として高評価に繋がる事は当然だ。
逆に言うと、操縦に高度な技量が必須なゴジュラスは兵器として高評価はつけにくいのである…。

いや、しかしそうだろうか。

当然そうではあろうが、必ずしも言い切れない場合もある。
なぜなら、大型ゾイドに乗れるのはそもそも平均以上のパイロットだろう。
平均的ならハンマーロックに乗せておけばいい。アイアンコングよりハンマーロックの方が数が多いのだ。

共和国軍はガリウスやゴドスでパイロットを見極め、高い技量の者をゴジュラスに抜擢したと思う。その時点でかなりの技量だから、ゴジュラスは操れよう。
そうして戦場に送られる。ゴジュラスはタフな機体だから簡単には損失しない。
最初の頃はフルに能力を出せなくとも、何度か出撃させ生還させればその内に技量は磨かれエース級に育つだろう。
そうして運用するなら極端な無理はない。確かに操縦は難しい。だがパイロットが育つシステムがあり無理なく運用できるようになっているとも言えるのだ。

開発年で言えば、ガリウスは最初期。ゴドスとゴジュラスは少し遅れて登場している。
おそらく最初のゴジュラスにはガリウス乗りのエースが抜擢されたと思う。
後年はゴドス乗りがゴジュラスに機種転換する事もあっただろう。

一方、アイアンコングは帝国初のゴリラ型ゾイドとして完成した。前例のない機体だ。ハンマーロックはアイアンコングより数年後になって登場している。
アイアンコング完成時に、ゴリラ型ゾイドを経験するパイロットは居なかった。だから操縦性を簡易にする必要があったのだと思う。

もしもハンマーロックが先でアイアンコングが後に完成していたならどんなゾイドに仕上がっただろう。
もっと凶暴で暴れまわる「操縦性に難のある」「ただしゴジュラスにも匹敵する闘争心をみせる」ような仕様でアイアンコングは完成していたかもしれない。
もしかすると「エヴォルツォーネ」がそんなコングなのかも…。

もう少し裏付けすると、サーベルタイガーは比較的高い技量を要求する機体だと思う。
さて、サーベルタイガーより前にはヘルキャットが就役して活躍している。
ヘルキャットで経験を積んだパイロットからサーベルタイガー乗りを選ぶことができた。だから高い技量を要求する仕様で良かったと言える。

 

話をゴジュラスとコングに戻そう。
上記のように考えると、ゴジュラスは確かに操縦は難しいが育成システムがあった上での仕様と言えると思う。
もっとも、長期的な視点で見るならやはりゴジュラスには難がありコングは優れているという評価を下さざるを得ない部分もある。
それはゾイド戦役後期に起こった。
共和国軍はゴドスの後継機にアロザウラーを用意した。当然、アロザウラー乗りから技量の高い者をゴジュラスに転換しようという目算があったと思う。
その目算は当初は順調に機能していた。

だが、アロザウラーと同時期には別の強力なファイターも登場している。ベアファイターだ。
アロザウラーとベアファイター。
ゾイドバトルストーリーを見ると、就役直以後の頃はアロザウラーが配備数で勝っていたと思える。
だが徐々にベアファイターが幅を利かせるようになった。ベアファイターが「new type」にアップデートされてからは、一気に配備数が逆転しているように見える。
戦いの場が暗黒大陸に移ってからは、アロザウラーはほとんど登場しなくなった。一方、ベアファイターnewはコマンドウルフnewと共に末期まで登場している。
同タイプゾイドの配備数減。
共和国軍は、ゴジュラス乗りエースを育てるシステムをここに失った。

さて、一方の帝国軍もハンマーロックの後継機を開発していない。ゴリラ型中型ゾイドは生まれなかった。
しかし、アイアンコングはゴジュラスと違い「同タイプの小~中型ゾイドでの慣らし」のような事をやる必要がない。なぜなら操縦性がいいから。
経験がなくとも短期間で十分に能力を引き出せるようになれるのがアイアンコングだ。

これは大陸間戦争機においてゴジュラスが敗北に次ぐ敗北を喫し、一方のアイアンコングはかなりの善戦を見せている事からも言える。
ゴジュラスは、パイロットが育つ下地を作っておけば間違いなく傑作機として呼べよう。
ただし後期には破綻したのが辛かったと思った。
ベアファイターは強い。まさしく傑作機だったがそれゆえにゴジュラスに影響を与えてしまったのかもしれない。

このような「小~中型ゾイドのパイロットから技量の高い者を選定して同タイプの大型ゾイドに抜擢する」というシステムは極めて優れていると思う。
こう考えると、共和国軍が大陸間戦争で開発すべきは大型の熊型ゾイドだったんではないかと思った。

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