サラマンダー・マーキュリーを考える①

メカ生体ゾイドのカスタムパーツ、「共和国側改造セット」の箱には、カスタムパーツを使用したサラマンダーが載っている。

巨大な砲はもちろんゴジュラス用の長距離キャノン砲なのだが、それを背負っている。
この形態のサラマンダーは「マーキュリー」と呼ばれている。

大砲はカッコいい。ただ、飛行ゾイドであるサラマンダーにゴジュラス用のキャノン砲を背負わせるとは何とも無茶な仕様だなあと思う。
共和国軍は何にでもゴジュラス用長距離キャノン砲を積む。
マンモス、ゴルドス、ウルトラザウルス、シールドライガー、ディバイソン、マッドサンダー。大型ゾイドの大半がこれを積んでいる。

さすがにビガザウロは積んだ事がない。撃った反動で脚がマズいのかもしれない。
また、ガンブラスター以降のゾイドには搭載されていない。
この時期の新型機は、もはやゴジュラス用長距離キャノン砲を積まずともより軽量で威力の高い新装備があったのだろう。

さてマーキュリー。
メカ生体時代からの方には、共和国側改造セットの箱に載ったものとして有名だと思う。
新世紀時代からの方には、妄想戦記に登場した「ボンヴァーン」として映る方も多いと思う。

それにしても、マーキュリーは何故作られたのだろう。ちょっと謎だ。
ゾイドバトルストーリーには登場しなかった。登場は箱裏のみ。学年誌などにも登場していない。
大々的には運用されていないようなので、試作改造タイプのような位置付けだとは思う。
しかし、それにしても変わった仕様だと思う。

変わった仕様というのは、運用が見えてこないという事だ。
大砲を増設しているのだから、やはりそれがキーワードとなろう。しかし、大砲の意味を考えればマーキュリーの奇異さが見えてくる。

 

地球では「砲弾をより遠くまで飛ばしたい」という事で大砲や戦艦の主砲が発達した。遠距離から攻撃できる事はは大きな利があるからだ。
飛行機が登場すると、「これに弾を積んだらもっと遠くまで飛ばせる」という事になり、爆弾を搭載した飛行機…、つまり爆撃機が誕生した。
射程は、大砲を使うより爆撃機を使った方が圧倒的に伸びる。

ウルトラキャノン砲は100km程度の射程があるとされている。これは大砲としては大変な長距離だ。
しかし、サラマンダーの航続距離は15000km。この距離までを射程に収める事ができるのだから次元が違う。
と考えると、わざわざ飛行機に大砲を積む意味はちょっと不明な事が分かると思う。

いまさら大砲を付けた所で攻撃範囲はさして変わらない。15000kmまで狙えるところが15100kmになったところで大した差ではないと思う。
いや、大砲を積んだ事で重量は増加し空気抵抗も増えているだろう。だから航続距離はノーマルタイプに比して下がっているだろう。
「航続距離が減った」事と「大砲で撃てる範囲」を相対して考えると、攻撃可能範囲はむしろ減っている気がする。
航空機なので搭載量には限界があろう。無理をして大型砲を積むよりも、同重量の爆弾を搭載した方が諸々の利が多いと思える。

…というのが地球的な基準で考えた発想。
なかなか難しい仕様だ。

もし、長距離キャノン砲を積んだサラマンダーがマーキュリーのみだったなら、上記した説に則り「奇想天外兵器の類」「あくまで試作のみで実験的要素の強い機体であった」として捉えると思う。
しかし、後の機獣新世紀ゾイドの時代には、マーキュリーに似た「バスターイーグル」が登場している。この事から考えるに、単なる奇想天外兵器ではなく意味のある機体だったと考えたい所でもある。また「ボンヴァーン」も、妄想戦記とはいえ可能なら否定する事なく考察の材料にも加えたいと思う。
ゾイド星では何らかの事情により航空機に大型砲を積む必要があったのだ…という方向で。

 

という事で、ここまでは前置き。
今回のコラムは、それではマーキュリーの意義とはいったい何だったのかという事を考えてみたい。
私は、マーキュリーについて3つの可能性を考えてみた。

 

運用を思いついた一つ目は、「長距離キャノン砲を運ぶ」事が目的だったんではないかというものだ。
例えば中央山脈山頂にズラリと長距離キャノン砲を並べれば、迫り来る帝国軍を撃てるからかなり有効だと思う。
山脈を必死に登ってくる帝国軍を高所から撃ちまくるというものだ。
しかし、ゴジュラスやゴルドスにキャノン砲を積んで山頂まで移動させるのは大変だ…。
そこで、サラマンダーをキャノン砲を輸送する目的で運用したのがマーキュリーだったのではないかという説を唱えてみたい。

長距離キャノン砲は完全外付けの、しかも火薬式の装備だ。だからキャノン砲だけで独立して運用する事もできると思う。ゾイドを解さず地上砲台として、だ。
全周囲に旋回できる台座を用意できればベストだと思う。ゾイド世界観としてはちょっと味気ない気もするが…。
ただ、PSゾイドのように地上の固定砲台は存在すると思う。

迅速に中央山脈山頂にキャノン砲を運び同地の共和国部隊の砲力を強化せしめるのがサラマンダーマーキュリー…。
この説では、
「マーキュリーが山頂までキャノン砲を輸送する」→「キャノン砲を外して帰還・また新しいキャノン砲を積んで山頂まで輸送」
というループをすると想像している。

ゴジュラス用の長距離キャノン砲だが、ゴジュラスMK-IIの完成はZAC2037年だ。だからこの年に完成したと言える。
ただ、ゴジュラスMK-IIのプロトタイプである”オギータ機”はZAC2033年に登場している。

これは何かというと「大型キャノン砲を作る事はできたが、ゴジュラスに積む為の処理に手間取った」という事だと思う。
その処理とは発射衝撃の低減だろう。
ゴジュラスMK-IIのキャノン砲は背部ロケットエンジンのナセル部分に付いている。
普通に考えれば、この巨砲を撃ったらロケットエンジンは衝撃で壊れてしまう。

”オギータ機”は、キャノン砲を腕に積んでいる。だからこの問題を回避できたと思われる。

しかし、この配置では格闘力に悪影響を与えすぎる。さすがに腕が使いにくいだろう。
やはり付き位置は背中等に移すしかない…が、そうなると撃った衝撃でエンジンが壊れる…。
そこでキャノン砲の発射時の衝撃低減に4年もの年月をかけて改良を加えて…という開発を想像している。

何が言いたいかというと、重要なのは以下の3点だ。
・大口径キャノン砲はZAC2033年の時点で既にあった。
・この時点ではゴジュラスには積めなかった。その理由は発射衝撃である。
・ただし地上砲として使えば問題なく使えた。発射衝撃が強くとも地上なら問題ないからだ。

さて、大口径キャノン砲はZAC2033年の時点で既にあった。
そして翌年のZAC2034年位には「その状態であれば」量産する事も可能であったと考える。
「ゴジュラスに搭載する事はできず地上砲としてしか使えないという状態なのだが…」というものだ。

共和国軍は、キャノン砲の発射衝撃低減の開発を続ける一方で、現段階のものも何か効果的に運用する事はできないだろうかと考えた筈だ。
現在は地上砲としてのみ使える。地上砲として設置するならどこが一番いいか。
「中央山脈にズラリと長距離キャノン砲を並べれば迫り来る帝国軍を撃てるから極めて有効」という部分に行き着く。
ただ、キャノン砲は大きいから山頂までまで運ぶのは大変だ。だから、サラマンダーに運ばせる。

ZAC2032年、帝国軍はアイアンコング150機の大部隊で中央山脈を突破した。その衝撃は凄まじく、共和国に大きな危機感を抱かせたのは周知の通りだ。
この事から考えると、長距離キャノン砲を使って中央山脈の守りを固めたという説には一定の説得力があると思う。

バトルストーリーにに登場しなかった理由は何だろう…。所詮はキャリアーとして「運ぶだけ」の仕様なので、ピックアップされなかったのかもしれない。
これはグスタフがあまり登場しないのと同じだ。

この考察に基づけば、ZAC2034年頃には中央山脈の共和国軍陣地には長距離キャノン砲がズラリと並んでいた筈だ。
そして迫り来る帝国軍を強固に拒んでいたと思われる。

思うに、長距離キャノン砲をズラリと並べればアイアンコング対策として極めて有効そうだ。
ただし、高機動サーベルタイガーが出てからは厳しいかなとも思う。
機敏に動き回るサーベルタイガーを精密に狙い撃つには大口径キャノン砲は大きすぎる。

ZAC2036年(サーベルタイガー就役の年)に、帝国軍は中央山脈南部を突破し共和国領土になだれ込んでいる。
思えば、アイアンコングを擁する帝国軍はもっと早期に山岳を再び突破できていてもおかしくなかった。
なにせ、山岳ではあらゆる面でゴジュラスを圧倒するだろう。
それができなかったのは、共和国軍が中央山脈にアイアンコングを確実に捕捉する長距離キャノン砲をズラリ並べていたからかもしれないと思った。

ただ、サーベルタイガーなら砲撃を避ける事ができた。
避けながらキャノン砲に迫り破壊する。脅威となる砲を排除して、その後にアイアンコングを呼び寄せ形勢の優位を確定的にした。だから突破できた。
という事かもしれない。

第一次中央大陸戦争時、マーキュリーはこのように運用されたのだろう。
長距離キャノン砲のキャリアーとして運用され、中央山脈山頂に砲台をズラリ並べてみせた。それによって共和国軍はアイアンコングを牽制できた。だが、サーベルタイガーを抑える事はできなかった…。

第二次中央大陸戦争時は、運用はあまりされていないと思う。
この時期は既に第一次中央大陸戦争時のサーベルタイガーショックがあった以上、山岳に大砲を設置するよりもシールドライガーで対抗した方が良いという判断が下されたのだと思う。

さて、以上が運用を想像した一つ目だ。キャリアーと言う地味な運用ではあるが、なかなか面白い説になったと思う。
だが、やはりキャリアーではなく「撃つ」「大砲で活躍できる」という方向でも考えてみたいと思う。
思いついた三つの説の内、残り二つは「撃つ」という方向で考えている。

ただし、そろそろ長くなってきたのでここでいったん区切ろうと思う。残る二説…、続きはまた次回に。

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