君はゾイド少年隊を知っているか

メカ生体ゾイドのバトルストーリーの登場人物の年齢は基本的に皆高い。大人ばかりで渋い世界観を描いている。
「少年」が戦ったエピソードは唯一、バトスト3巻に描かれた孤児たちがコマンドウルフのパイロットを守る話くらいじゃないだろうか。

また、ヘリック大統領など一部を除いて登場人物は巻を終えればもう出ない。
トビー・ダンカンもマイケル・ホバートも、その後どうなったかは不明だ。
その事は寂しい反面、その後どうなったんだろうという想像がふくらむ面もある。
登場人物が入れ替わる事で戦場の広大さ、個ではなく面で動く戦場という感じが壮大さを出している気がする。

この辺りは、やはりアニメではなく玩具独自の展開ができたゾイドゆえのものだろう。
しかしそんなメカ生体ゾイドのストーリーも、初期のまだ世界観が固まりきっていなかった頃は色々と試行錯誤していた。
そして一時期は、「少年少女が主人公」という展開で行こうとした事もあった。
黒歴史的なものかもしれないが、今回はあえてそれを掘り起こしてみようと思う。

小学三年生は、ゾイドを最も早く特集しはじめ・そして最後まで掲載した雑誌だ。
そんな小三が最初にゾイドを掲載したのは、まだ帝国ゾイドが登場する前の時期。
この頃はゾイド・ワールドの紹介といった感じで、改造ゾイドの紹介や探検の末に新たな生息域を発見したぞといったものだった。
しばらくすると帝国ゾイドが登場し、ようやく共和国VS帝国という図式で繰り広げられるようになっていった。

この頃から、徐々に戦記としてのゾイドが始まった。
今回紹介するのは、戦記が始まった最初期のものだ。

1985年1月号。
「対決!ゾイド少年隊」との題で特集されている。
「ゾイドが紹介されるようになった」→「帝国軍が登場した」 そしてそこに「グローバリーIIIで地球人が飛来した」という要素が加わった。それを受けた展開がこれだ。

~ゾイド星に来た地球人の少年たちがゾイド少年隊を結成したぞ。ゾイドを友達にして一緒に帝国軍と戦うんだ~

ゾイド少年隊。最初期はこんな路線で行こうとしていたらしい。
まぁ、メインターゲット層…小学生には分かりやすいし共感しやすいだろうなぁとは思う。
けど、この路線で行かなくて良かったなぁと正直思う。

キャラ紹介。


リョウ&ミキ。乗機はビガザウロ。頭部に乗ってるのはどちらだろう。
それにしても、ゾイド初のヒロイン(?)の乗機がビガザウロだとは驚きだ。
リョウは地球人なのにゾイド星の地形や気候に詳しいとは凄まじい事だ。


ケンタ。乗機はゴルドスでビガザウロと共に後方支援をするのだろうか。
一見するとノーマル機に見えるが、よく見ると首に小型ミサイルランチャーが付いている増設タイプのようだ。
ところで余計なツッコミだとは思うが、このシーンの写真はケンタの似顔絵や文字欄で隠れている部分がある。
この写真は別の号でも使われているので、そちらも紹介してみよう。


おおぅレッドホーンにモロにやられているではないか。あやうしケンタ。
無事だろうか。いや無理そうな気がする…。レッドホーンだけでもマズいのにマーダまで居る。


ジェシー。乗機はマンモス。
巨漢系キャラでマンモスが似合っている。しかし、輸送用であり戦闘用ではないようだ…。
…ところで、後の号には下のような描写があったりする。


なんとレッドホーンに勝利。
断っておくが、この描写においてはジェシーの機とは描かれておらずパイロットは不明だ。
ただ、もしかしてケンタの仇を討つべくジェシーが輸送任務から戦闘要員に志願し見事目標を達したのだとすればとてもアツいと思う。


ジョー。乗機はゴジュラス。ジョーはリーダー格の少年でもある。
ちなみにこの改造ゴジュラスは、ジョーとケンタが共同で完成させたとの事。

ちなみに、

こんな敵も登場している。

「俺たちがゾイド少年隊を倒すぜ!」
個人的にはこの三人衆の絵、なんだかロックミュージシャンがノリノリでライブをやっているように見えて笑ってしまった。


悪役前回な名前が凄い。後にゾイドの戦争は善悪ではないものになったが、この頃は帝国は絶対的な悪だったのだ。

さてこれはこれで心踊る側面もあるが、どうも不評だっただろうか。すぐに方向が変えられ我々がよく知るハードなものへと変わっていったのであった。
この号では、帝国レッドホーン三人衆がゴジュラスと交戦しはじめ「あやうしジョー、どうなる!?」という感じで終わっている。
しかし、次の号にこの続きが掲載される事はなかった。

この号は初期の固まりきっていない頃の感じが見えてとても面白い。

 

さて、ここからは考察。
上記したように、この号は初期ゆえの描写というか後の展開と比べるとかなり変わったものになっている。
ただ、一応は解釈を試みる事もやってみたい。

さて改めてゾイド少年隊。少年なのに凄いなあと思う描写がわんさかある。

まずゴジュラスの改造を任されている点。
そのパイロットを任されている点。
地球人なのに、「ゾイド星の地形や気候に詳しい」とされている点。
何とも凄い。どんな少年だ。

しかし、これはよくよく考えれば割と容易に解釈できる気がする。
なぜかというと、ゾイド星人の寿命は驚異的に長いのだ。
ヘリック大統領など89歳でローザと結婚。
そこから考えると、たとえば20歳や30歳なんかはゾイド星人の感覚で言えば「少年」と言ってもおかしくないかもしれない。

「ゾイド星の地形に詳しい」とされているのも、グリーバリーIIIからの観測データを持っていたという事かもしれない。
多分…、グローバリーIII飛来前のゾイド星人には上空からの正確な観測は難しかったと思う。
とすれば、この号の少年隊の描写はあながち間違いでもない・整合性があるものとも言える。

帝国が悪とされている点も、次のように考える事ができると思う。
グリーバリーIIIの乗員は帝国側と共和国側の双方が確保した。
地球技術を欲する両国は、熱心に技術提供を求めただろう。
技術を求める理由として説明された中の一つがおそらく「帝国はゾイド星の支配をたくらむ悪い国だ。帝国を倒せばこの星は平和になる。我々はその為に戦っているんだ」というものだったのだろう……。

 

さてさて、最後にジョーについてもう少し。
ジョーという名前で「おっ」と思われた方も多いと思う。
後に同名のキャラが「History of Zoids」に登場する。
「神風ジョー」だ。おそらく同一人物だろう。
ちなみにHistory of Zoidsでは、

こんなお顔で登場している。

ところで、「神風ジョー」というのは凄い名前だなあと思われるかもしれないが、これは少し違う。
ジョーというのは名前だが、「神風」という部分は彼の勇猛な戦いぶりから付けられたニックネームなのだ。
分かりやすくいうと、ロイ・ジー・クルーガーが「クレイジーホース”暴れ馬”」の異名を持っているのと同じだ。

別の資料…フィギアセット<地球人一般兵>のキット箱裏(初期版)を見ると、「ジョー日乃本」という人物が載っている。

おそらく、こちらが本名なのだろう。

更に、ゾイドグラフィックスには「アーサー日乃本」なる人物が登場した事もある(文章のみ・イラストなし)。
これも同一人物だろうか・・・?
とすると、アーサーというのはミドルネームみたいなものなのだろう。
ジョー・アーサー・日乃本。通常はジョーと呼ばれている。勇猛な戦いぶりから「神風」の異名も持つ。その為、神風ジョーの呼ばれ方をする事もある。
という解釈にすれば何とか説明は付くだろうか……。

今回の資料からは、ゾイドが元々はジョーを中心とした少年団という展開をしようとしていた。
それは早期に撤回され方向転換をしたが、ジョーという人物だけは色々なメディアで一定期間にわたって登場し続けたという事が分かる。

そして…、ジョーという人物も後には登場しなくなる。
ゾイドはよりハードな群像劇へと突入していく事になるのである。

個人的に、ゾイドは本当にハードな世界観を描いてくれたなと思う。奇跡だとさえ思う。
初期の描写を見ていると、後に築かれたハードな世界観がより奇跡的なものと思えてくる。

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