ウルトラザウルス遠景モデル

前回、ジオラマ中に出てくる遠景モデルに注目したコラムを書いた。
手前側ではなく奥にあるモデル。目立つものではない。むしろ目立ってはいけない存在。
しかし、改めて魅力的だと思う。

さて、そんな遠景モデル。
今回は、とあるゾイドの遠景モデルを更に詳しく見てみたい。そのゾイドとは、ウルトラザウルス。


言わずと知れた共和国の戦闘司令ゾイド。

ゾイドでは、人気機種は安価な簡易キットが出る事が多い。
例えばゴジュラスやアイアンコングなら「ビッグポーズ」が登場した。
そんな中、不思議な事にウルトラザウルスはかなり後になるまで廉価版キットが出なかった。

だが、ウルトラザウルスは共和国の主力ゾイドの一つとしてジオラマには大いに登場して活躍した。
もちろん、「遠景」の位置に置かれる事も多かった。
廉価版キットがないのに遠景モデルが必要。
そんな状況で、ウルトラザウルスは色々な方法を使って遠景モデルが作られている。
今回のコラムでは、それらを見てみたい。実に様々な遠景モデルがある事に気付かされる。

 

まずは、初期の頃。

ザットンを母体として、スネークスの部品などを加えて構成されている。
初期のウルトラ遠景モデルといえばこれだ。

使用は、D-DAY直後まで確認でる。

ところで、このモデルの「敵軍のゾイドを使って遠景モデルを制作している」事は特筆すべきだ。
「小型ゾイドを遠景モデルとして改造する」のは割とメジャーな手法だ。

・プテラスをサラマンダーの遠景モデルに
・ヘルキャットをサーベルタイガーの遠景モデルに
・レドラーをギル・ベイダーの遠景モデルに

このような例が確認できる。
ただ、小型ゾイドを遠景モデルに改造する場合は、ほとんどが「自軍ゾイド」を改造して制作される。
ウルトラザウルスは、自軍ではなく敵軍のゾイドを改造して遠景モデルにした点が極めて特徴的なのだ。

共和国軍にも、首の長い小型ゾイドとしてはハイドッカーが居た・・・・・・が、スタイルが全然違う。
ビガザウロとハイドッカーは割と似ていると思う。だが、ウルトラのスタイルはどちらかというとザットンに近い。

兵器開発は、互いが互いに影響を与えるものだ。このようなところから開発史を考えても面白い。
話が逸れた。ともかく、初期はザットン改が遠景モデルとして活躍していた。

 

 

次に中期。この頃には、別のウルトラ遠景モデルが登場した。
それは、フロレシオ海海戦で確認できる。

右側の機は何から作られているのだろう…。こちらは、ちょっと解析する事ができなかった。
だが、左側の機は分かりやすい。

左側の機は、ガイサックの尾を使って作られているようだ。首のディティールをよく見ると分かるだろう。

それにしても…、サソリの尾をウルトラの首にしてしまうのは何とも凄いアイデアだ。
だが、たしかにガイサックの尾のゴチャメカ感やパイプがある感じはウルトラと雰囲気が似ているかもしれない。

ここへきて、ようやく自軍ゾイドを使用した遠景モデルが誕生した。
ただし、首はガイサックを使用しているが、ボディはガイサックではなく別のものから作られているようだ。
一体何なのか。
それは、

こちらの遠景モデルと共に紐解いていきたい。
この崖を降りてる遠景モデル、首は別もののようだが、ボディはフロレシオ海海戦で使用されたタイプとおそらく同じに見える。

さて、ボディは何から作られているのか。そして崖を降りてる遠景モデルの首は何から作られているのか。
答えから先に言うと、これはビッグポーズのアイアンコングだ。

脚を見れば分かりやすい。装甲の形状が同じである事が分かると思う。
ボディもアイアンコングのもののようだ。
そして首の方だが、これは凄い。なんと、アイアンコングの腕を使っているようだ。

こんな事をよく思いつくなぁと感心するばかりだ。
作り方を図解しよう。 アイアンコングをまず…、


不要な頭とミサイルをカットする。
そして、ボディを地面に平行にして、四肢は全てコングの後脚に変えて、首にあたる部分には腕を付ける…。
尾も腕を流用していると思われる。


つまり、こういう事。
ここから、調整して完成させている。いやはや、凄い。
誰がアイアンコングをウルトラザウルスにしてしまうなんていう事をひらめいたのだろう。
このモデルは、数ある遠景モデルの中でも最も凄いアイデアの一作だと思う。

 

そして後期。
第二次中央大陸戦争後期頃になると、ようやくウルトラザウルスの廉価版キットが発売された。


Jr.ゾイド版のウルトラザウルス。
また、この頃からゾイドガムやゾイドミニプラモチョコ等の廉価版ウルトラザウルスがラッシュ状態で続々と発売された。
この頃からは、これらが活躍している。


こちらは、そのまんまJr.ゾイド版のウルトラが使われている。
Jr.ゾイドは出来が良いので、塗装も何もされていないがそれなりに見栄えは良い。
余談ながら、これは第一次暗黒大陸上陸作戦の中の一コマだが、シーマッドの巨大さがよく分かるシーンでもある。


第二次暗黒大陸上陸作戦より。このウルトラもJr.ゾイドかなと思う。
ゴジュラスも、おそらくJrゾイド版と思われる。
ただし奥の方で丸まってるゴジュラスは謎。ミニプラモチョコ版か……、ゴドスからの改造にも見えるが解析はできなかった。


こちらはオリプラ版が使われている。
オリプラは造形はイマイチなものも多いが、ウルトラザウルスは極めて出来が良い。

違和感無く使えている感じがする。
ちなみに同じ画面に写っているサラマンダーはプテラスからの改造。


飛翔するオルディオスの奥、ここにはゾイドガム版が使われている。
ウルトラザウルスだけでなく、その他にもゾイドガムが大集合している。
ゾイドガムの造形の良さは今更繰り返すまでもない。ただ造形は素晴らしいのだが…、色が…食玩そのままの状態になっている……。
ここは、せめて塗って欲しかった所だ…。

という事で、ウルトラザウルスの遠景モデルをざっと集めてみた。
実に多彩な遠景モデルがある事に気付かされたと思う。改めて面白いなぁと、そしてよく作ったなぁと思うばかりだ。
ウルトラザウルスの遠景モデルは本当に量が多い。見ていて特に楽しい。
個人的には、やはりアイアンコングから作ってるモデルは強く印象に残った。
これについては、完成した時に作者も嬉しかっただろうなあと思う。いいぞもっとやれ てな感じだろうか。

 

全体を通してみると、さすがに前期のものは再現度が完璧でない。まぁ、そりゃあそうだ。
ザットン、ガイサック、アイアンコング。これらをウルトラザウルスにするのは本当に大変だっただろうと思う。
ハンマーロックをアイアンコングに、ヘルキャットをサーベルタイガーに、プテラスをサラマンダーに。これらより遥かに難度が高かっただろう。

しかし、初期の頃の必死に・でも楽しみながら再現してる感じはとても好きだなあと強く思う。
とても愛すべきものだと改めて感じる。

これからの時代はCGがもっともっと強くなってくると思う。遠景モデルが作られる事も減っていくだろう。
もしかしたら、ジオラマというものさえ作られなくなっていくかもしれない…。
けど、遠景モデルからはもの凄い熱量というか情熱というか……、アツいものを感じる。
時代に応じて表現は変わる。しかし、こうしたアツさだけは忘れる事なく引き継いでいって欲しいと強く思う。

 

ウルトラザウルスの遠景モデルを見ていてもう一つ思った事はもう一つある。
ザットン改やアイアンコング改の遠景モデルは、凄く頑張ってそれらしい雰囲気を出してバトストの画面に溶け込んでいる。
しかし、後期のJr.ゾイドやゾイドガム版を使用した遠景モデルはキットそのままの事が多い。いまひとつ画面に馴染ませようとする感じが薄い気がする…。

Jrゾイドもゾイドガムも、元のモデルの完成度が高い。だからそれで大丈夫だったのだろう。
だが、可能な限り細かい所にまで入念に手を入れている前期のモデルと比べると、ポンと持ってきただけというか…、せめて塗る位はしてほしいなぁと思ってしまう。
「使いやすいモデルが出た…、もう苦労して遠景モデルを作らなくていい」という便利さから出た弊害だろうか。
この事からも、改めてアツさを失わないで欲しいという思いを改めて持ってしまう。

次なるゾイドのバトルシーンも、時代に応じてクオリティアップしたものであり、なおかつ最高にアツいものである事に期待している。

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