遠景用モデルから見るゾイド

ゾイドと言えばジオラマ! という方も多いと思う。
ゾイドのバトルシーンは、ジオラマから作られるのが基本だ。

さてジオラマと一口に言っても時代ごとに造りはだいぶ違う。
メカ生体ゾイドと機獣新世紀ゾイドでは、ジオラマの造りに大きな変化が生まれた。
それはもちろん「CG」が気軽に使える時代になったからというのが理由だ。

昔のバトルシーンの爆発は、火薬を使用して本物の火を使っていたりした。
土煙も実際に舞い上て撮影したりしている。
ビーム砲の表現などはフィルム合成で作られている。稀に、実際に立体として砲弾まで造り込んでいる場合もあった。
まぁ、大変な時代だったなぁと思う。
新世紀では、これらの多くはCGで処理されている。
こういったものがCGで気軽に出来るようになったのは、なんとも良い時代になったなと思うばかりだ。

それぞれ好みはあると思う。
個人的には、爆発の表現は実際の火を使っているメカ生体時代の手法が迫力があるなと思う。
一方、燃え上がる火の表現や計器類の表現などは機獣新世紀時代はCGの利点が良く出ているなと思う。
CGは、細かい補正ができる点でも優れている。

今(2016年現在)は、機獣新世紀ゾイドが展開していた頃よりCG技術ははるかに向上している。
より多彩な表現が、より容易に出来るようになっている。
もちろん、気軽に出来てしまうがゆえに考えなしで作ってしまう事もできる。その場合は違和感の塊みたいな画面になってしまう。
今後、実物の迫力を知りつつCG技術に長けた方がゾイドの画面を作るときっと凄いんだろうなと夢見ている。

 

さて、ここまでは前置き。
今回は、そんなジオラマのとある部分に注目してみたいと思う。
それは遠景モデル。

戦場を表現した画面は奥行きが大切だ。
当たり前だが手前の機体は大きく、後の機体は小さく映す必要がある。
メカ生体ゾイドの時代はCGが使えないので、小さく写す機体というのは遠景用小型モデルを特別に用意して行っていた。


CG全盛期のこの時代、今後において遠景用小型モデルを特別に用意するなんていう事はまず行われないと思う。
CGでやった方が綺麗に仕上がるし、手間もかからない。
遠景用小型モデルというのは、製作の手間がかかる割に元デザインを完全再現してはいない。
ただ、昔の時代の遠景用小型モデルも実に愛すべきものというか、好きだなぁとしみじみ思う。

遠景モデルは模型としても味わい深い。
今回は、遠景用ギル・ベイダーに注目しよう。


ギル・ベイダーは登場シーンが多いゾイドだ。それだけに使用頻度も高い。


遠景用のギル・ベイダーだが、レドラーを母体にしつつ、様々なゾイドのパーツやプラ板で作ってある。
クローはレイノス、下あごはブラキオスだと思う。その他はプラ版自作だろう。背中のランドセルは特に良くできていると思う。

ところで、ギル・ベイダーの遠景モデルには少し不思議な事がある。
それは、なぜ「自作モデル」を使っていたのだろう? という事だ。
CGが使えないから、遠景用小型モデルを使う事は必須だ。だが、「自作」である必須は必ずしもあるわけではない。
ギル・ベイダーには、当時の食玩として「ゾイドガム」や「ゾイドミニプラモチョコ」で精巧なミニモデルが存在した。
これらを使わなかったのは何故? という事だ。


こちらはゾイドガムバンディバイソン。見ての通り凄まじいクオリティを誇る。
なお大きさは小型ゼンマイゾイドよりも更に小さい。 遠景モデルとして最適な大きさ。
残念ながらゾイドガム版ギル・ベイダーは未所持なので写真が掲載できない…が、だいたいクオリティは同じようなものと思って間違いない。
ゾイドミニプラモチョコ版も、わずか数cmの極小モデルながら精巧な出来だった。

上のシーン。沈み行くマッドサンダーは、ゾイドガム、ゾイドラムネ、ゾイドミニプラモチョコの各食玩が使われている。
こんな風に、ギル・ベイダーも使わなかったのかなぁ…というのは疑問だったりする。
まぁ、初期の頃(ギル・ベイダー出現直後の頃)は、まだ食玩が出ていなかったから仕方がない。
発売順で言うと、「本家キット発売→数ヵ月後に食玩などが発売」という順番になる。
ただ、末期のキンゴジュが登場していた頃は、既にゾイドガム版やゾイドミニプラモチョコ版が発売されていた。
これらに切り替えなかったのは不思議だ。

この事に対して思ったのは、「もしかしたら、あえて使っていないのかも」という事だ。
何故かというと、別の機体でこんなモデルが造られている事を思い出したからだ。


中央の赤い機体は遠景用アイアンコングMK-II限定型。
このモデルは、上のシーンの他にも国境の橋争奪戦で登場した事が有名だろう。

見ての通り、このハンマーロックから作られている。
だが、よくよく考えると「なんでハンマーロックから作った?」という疑問にぶち当たってしまう。
なぜなら、ハンマーロックとほぼ同時期には、


こちらの「ビッグポーズ」のアイアンコングが発売されているからだ。

上に紹介した画像でも、限定型の後ろのノーマルタイプの遠景モデルとしてビッグポーズが使われている。
見ての通りビッグポーズはとても良い出来で、肩のミサイルが無い事を除いては完璧とも言える造形をしている。
大きさは、ハンマーロックと近い。

小型のコングMK-II限定型を作るには、ビッグポーズをを使った方が明らかに楽だと思う。
大きさは同程度。形は、当然ながらより本家キット版アイアンコングに近い。
ビッグポーズ唯一の難点である方のミサイルが無いという点も、限定型を作るのなら問題ないだろう。
それでもあえてハンマーロックから改造してあるのは大きな謎だ。

その理由を考えた時に、これは作り手が楽しんで作ってたのかなと思った。
あえて作りたかったのだろうと思った。多分、それ以外に考えられない気がする。

ゾイドのジオラマを見ていると、作り手もテンション高く楽しんでるよな というのが凄く伝わってくる。
ただ作業として作っているわけじゃなく、楽しみながら作っているんだなと凄く思える。
だから「あえて作った」ようなモデルが存在するのだろうと思った。

遠景ゾイドからジオラマを見てみるのも面白い。
ゾイドのジオラマには、作り手の「好き」がよく表れていると思う。

最初に、「今はCG全盛期の時代だから…」という事を書いた。
作り方は時代に応じてどんどん変わっていくだろう。
古き良きものも大事にして欲しいと思う一方で、固執しすぎず柔軟に新しきを取り入れ進化していって欲しいと思う。

個人的に、良いものを作るには「多くのものを取り入れる柔軟性(一つに固執し過ぎない事)」「作り上げる為のテクニック」「好きという熱意」の三点が必要だと思っている。
今後、「好き」の熱意を強く維持して、その上で時代相応に進化した新しいゾイドの画面が見れる事を大いに期待している。

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