オルディオスがギル・ベイダーに勝ちガン・ギャラドに負ける話

先の「無敵? ギル・ベイダー」「無敵? ギル・ベイダー2」のコラムでは、ギル・ベイダーにかなり厳しい事を書いてしまった。
今回は、それを受けた上で更に考察してみたいと思う。

さて、とんでもなく活躍したオルディオス。
ではオルディオスは無敵だったかというと、強敵が居た。ガン・ギャラドだ。

ガン・ギャラドは多くの場面でオルディオスに優位を示した。

さて、これはちょっと不思議だなと思った。
というのも、ガン・ギャラドはギル・ベイダーより格下のゾイドである。
オルディオスはギル・ベイダーに勝てるが、ギル・ベイダーより格下のガン・ギャラドには負ける。
ややこしい。

これについて考えた時「相性」なのかなと思った。
以下に、大陸間戦争期の飛行ゾイドに関する相性を考えてみたい。

 

大陸間戦争期の共和国空軍の主力はサラマンダーF2だ。これをゼロ戦のような「制空戦闘機」に例えようと思う。
制空戦闘機というのは戦闘空域一帯の制空を確保する…、すなわち敵戦闘機を排除する対戦闘機戦を主目的とした機だ。
対戦闘機戦が主目的なので、格闘戦にとても強い。甲戦とも呼ばれる。

 

さてサラマンダーF2をゼロ戦に例えるなら、ギル・ベイダーはB-29に例えられると思う。「超重爆撃機」だ。
B-29は凄まじい積載量を誇り敵地を文字通り火の海に変えてしまう戦慄の機だった。
これはギル・ベイダーの性能にとても似ている。共和国首都爆撃を思い出されたし。
ところでB-29を「重爆撃機」ではなく「"超"重爆撃機」と書いているが、これはその性能ゆえ。
普通の爆撃機は戦闘機に襲われれば分が悪い。大きくて速度も運動性も低いので当然である。
…の筈なのだが、B-29は反則的な性能を持っていた。

まず、速度が爆撃機としては驚異的に速い。ゼロ戦よりも速い。
次に、高高度性能が凄い。高度1万mを悠々と飛ぶ。ゼロ戦はその辺の高度だと浮いているのがやっとという有様で、能力をロクに発揮できない。
そして、何といっても防御力の高さが凄い。
ゼロ戦の20mm機関砲は、同クラスの戦闘機に当てれば、一発で撃墜できるほどの威力を誇る。
大型爆撃機でも、これを受ければ危うい。
が、B-29はとんでもない防御力を誇り、この20mm機関砲を明らかに受けながらも悠々と飛び続けたそうだ。
また、燃料タンクを撃ち抜き発火させても、自動消火装置がすぐさま作動し消化、その後は何事も無かったように飛び続ける事も多かった。
まさに凄まじい防御力だ。
この重防御は、サラマンダーF2に追尾され明らかにレーザー砲の命中を受けながらも悠々と基地に帰還したエピソード(新バトスト・黄金の翼は帰らず)を思わせる。

防御力の高さというのはもう一要素あり、B-29は防護火器が凄い事になっている。
例えば日本軍の爆撃機「四式重爆」の防護火器は下図の通りである。

砲は5門。敵戦闘機を迎え撃つにはやや心もとない。死角も多い。
「5門もあるじゃないか」と思われるかもしれないが、実は爆撃機の砲というのは命中率が極めて悪い。
操縦士と砲手が異なっており、機の動きが分からない中で撃たなきゃいけないからだ。だから、こんなのじゃ全然足りない。
しかし、かといって火器を増やせば重くなり飛行性能が低下してしまうので無理である。
(ちなみに四式重爆は日本軍の爆撃機としては傑作機である)

一方、B-29の防護火器は下図の通り。

13門。倍以上ある(連装砲だからでもあるのだが)。これだけあるから死角も極めて少ない。
しかも、有効性はそれに留まらない。
先に爆撃機の砲は命中率が極めて悪いと書いたが、B-29だけは例外で極めて命中率が高かった。
というのも、B29の砲の大半は全周囲に旋回可能な上、最新システムを搭載していた。
全周囲に旋回可能な事が有効な事は言うまでもない(四式重爆の砲座も動くが”ある程度”に過ぎない)。

最新システムについては更に凄い。
最新式の火器管制装置を持ち、これは「目標を照準機に捉えいちどスイッチを押せば、その後はコンピュータが自動的に敵機自機の位置関係を修正しながら射撃を行ってくれる」という凄まじいものであった。
訪問数が多く、かつ凄まじい命中率を誇るので、攻撃する為に近づいたら逆に返り討ちになる事も多かった。

また、配置も極めて優れていたりするのだが、この辺は略する。まぁ、ともかく防護火器による攻撃力が凄かった。
この従来機とは次元の違う極めて高い攻撃力もまた、ギル・ベイダーを思わせる。
という事で、ギル・ベイダーは超重爆であると思う。

 

ではオルディオスは何かというと、雷電や鐘軌のような「局地戦闘機」に当たると思う。
局地戦闘機というのは制空戦闘機(甲戦)に対し乙戦とも呼ばれる。
火力・速度・上昇力に優れた性能を持ち、侵攻してくる敵を迎え撃つインターセプターの役割を担っている。

制空戦闘機は一帯の制空を確保するのが目的だから、当然、格闘戦に強い。
対し、局地戦闘機は侵攻する敵を迎え撃つのだから、いち早く現場(戦闘空域)に到達する為に、速度と上昇力が最も大事である。
敵の侵攻は、戦闘機だけでなく攻撃機や爆撃機を伴う事がほとんどだ。だから大火力も求められる。
大火力があるから対爆撃機能力に秀でる。
ゼロ戦でB-29を墜とすのは難しかったが、雷電や鐘軌ならそこそこ善戦している。
一方で、当然ながら速度や上昇力重視なので対戦闘機能力では制空戦闘機に劣り苦戦するものである。

 

極めて簡潔にまとめると、

このような感じになる。

 

さて、ゾイドに話を戻そう。ギル・ベイダーは超重爆、オルディオスは局地戦闘機であると判断した。
ではガン・ギャラドは何かというと、これは制空戦闘機であろう。
ギル・ベイダーを護衛する制空戦闘機として出撃し、迎撃する局地戦闘機オルディオスを排除する運用が主目的であると思う。
(ガン・ギャラドはこれまでの例えから言うと、P-51ムスタングあるいはF8Fベアキャットのような位置であると思う)

基本能力と機体の性格をいまいちど例えると、
サラマンダーF2:制空戦闘機・ゼロ戦
ギル・ベイダー:超重爆撃機・B-29
オルディオス:局地戦闘機・雷電
ガン・ギャラド:制空戦闘機・P-51ムスタングあるいはF8Fベアキャット
のような関係だと思った。

表にすると…、

このようになるのかなと思った。
つまり、各機は単純に「強い」「弱い」という関係ではなく、細かな「相性」を考える必要があると思った。

どうしても、強いゾイドは誰にでも強い、弱いゾイドは誰にでも弱いと考えてしまいがちだ。
しかし、この点を掘り下げて考えてみると、実に深みが増してくると思った。

 

今回の考察は、主軸として太平洋戦争当時の各機を挙げた使った。それゆえ、分かりにくい部分があったかもしれない…。
しかし、ここで挙げた各機はいずれも魅力的で興味深いものばかりなので、強くお勧めしたい。
また、太平洋戦争の各作戦(特にヨーロッパ戦線)はゾイドにも多大な影響を与えているので、併せて興味を持ってみると凄く面白いと思う事も加えておきたい。

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