暗黒軍による中央大陸侵攻のシナリオを妄想する①

今回のコラムは、こちらの続き。
今回から、題名を少し変えて書いていきたいと思う。

一連のコラム。前回までのもので「中央大陸の前史」部分はある程度見えてきたと思う。
今回は、「暗黒大陸の前史」も考えていきたい。

更に、暗黒大陸・暗黒軍と言えば、後の大陸間戦争の要素が外せない。
その辺りの事情というか、暗黒軍の思惑のようなものも考えてみたいと思う。
彼らはなぜ共和国に挑んだのか。その理由は。そして戦略はどうだったのか。

なにせ、暗黒軍はずっと「絶対悪」として描かれていた。しかし、そうではないと思う。
彼らは彼らなりの思惑があって行動したと思う。
確かに、戦い続ける民族であった。しかし、それは中央大陸とて同じだったではないか。
彼らからすれば、絶対悪として描かれる事など心外もいいところだろう。中央大陸人こそ、暗黒大陸を利用した卑劣な民族と受け止めているだろう。
という事で、その辺の事情も踏まえて考えてみたい。

さて、前回まではZAC1978年の国家分裂…、大陸の西側がゼネバス帝国となり、東側がヘリック共和国となった所までを考えてみた。
まず、さっと中央大陸の状況をまとめる。ZAC1978~2039年まで、第一次中央大陸戦争が共和国の勝利で終わるまで間を簡易な年表にしてみよう。

ZAC1978年
 ヘリック共和国が内部分裂し、ゼネバス帝国が誕生する。
 以降、ゼネバス帝国とヘリック共和国の対立は始まり、国境(中央山脈)を挟んでにらみ合いが続くようになる。
 そして2年後、ついに開戦に至る。

ZAC1980~2028年
 帝国軍の奇襲攻撃で第一次中央大陸戦争が開戦する。表記はないが恐らく宣戦布告なしでの開戦だったと思われる。
 そこから50年ほども戦いは続いたが、両国とも決定打に欠け、支配域に変化はほとんど無かった。
 それは、かつてのヘリック連合軍VSガイロス連合軍による戦いのような泥沼なものであった。
 しかしこの泥沼状況は、とある事件により一変する。

AC2029年
 地球から巨大宇宙船「グローバリーIII」が飛来し、中央山脈に不時着する。
 帝国・共和国の両軍は地球由来の技術を得る。これにより、かつてない技術革新が起こり、メカの性能は一気に上昇した。

 技術革新、それによる強力新型ゾイドの開発。
 これは今までの「決定打に欠け、支配域に変化はほとんど無かった」状況を変えた。
 帝国側は中央山脈を軽々突破できるアイアンコングやサーベルタイガーといった新鋭メカを開発した。
 共和国側は海上ルートから帝国領に直接上陸できるバリゲーターやウルトラザウルスを開発した。
 これにより戦いは激化し、支配域に大きな変化が現れるようになった。
 そして情勢は、次第に共和国有利に傾いていった。

ZAC2039年
 ついに、共和国は中央大陸全土を支配下に置いた。
 ゼネバスや生き残った残存兵は、遠く暗黒大陸へ脱出した。

以上が第一次中央大陸戦争の超簡易な年表。

 

…ところで、ここまでの期間を「第一次中央大陸戦争」としている。そしてD-DAY~ニガイドス島での戦いまでを「第二次中央大陸戦争」としている。
実際は講和条約を結んだわけでもなく、休戦協定を結んだわけでもない。なので終戦でも休戦でもない。
そういった意味ではこの呼び方はおかしいかもしれないが、「事実上そうであった」という解釈で、この呼称を使用する。

 

さて、この中央大陸の年表はよく知られたものであろう。
ここからは、この期間において暗黒大陸はどうだったのかを考えたいと思う。

 

ZAC1956年、ヘリック王国誕生。それ以降、ガイロスは中央大陸の復興にその力を役立てた。
そして復興がひと段落した頃、ガイロスは暗黒大陸へ渡航した。暗黒大陸の統治と、中央大陸ヘリック王国との友好条約締結が目的だ。
前回、ざっと復興にかかった期間を10年と推測し、暗黒大陸に渡航したのをZAC1966年ごろと推測した。

最初の頃は随分苦労したと思う。
何しろ中央大陸人だ。正体が知れたら私刑は免れないだろう…。
正体を隠しつつ、少しずつ勢力を伸ばしていったのだろう。

あるいは…、かつて暗黒軍が攻め込んできた際、中央大陸で戦っていたのがガイロスだ。
だから、隠すも何も最初から顔が知れていたような気もする。
なので…、自身と、そして引き連れてきた精鋭で堂々と上陸する一行。あえて正面から対峙し暗黒大陸に叫ぶ。

「我が名はガイロス、この地を統治しに来た。だが侵略に来たのではない。私は平和な国を築く方法を知っている」
無論、最初から受け入れられる筈がない。
最初の頃は戦って勝つことで屈服させてゆく。そして負けた者に根気強く意図を説く。
戦乱の地だから、強い者は恐怖の対象である。しかし同時に、ある意味で認められるものでもあった。
次第にガイロスは暗黒大陸で勢力を増し発言力を強めていった。

…まぁ、どっちだったかは不明だ…が、ともかく、ガイロスは暗黒大陸で着実に目的に向かって進んでいた。
そして恐らく、ガイロスは暗黒大陸で嫁を迎え、子、すなわちガイロスII世を授かったと思う。
ガイロスII世は後のガイロス皇帝。我々のよく知る暗黒軍の首領だ。
(ガイロスI世=後のガイロス皇帝としてしまうと、年齢に無理が生じる。いくら長寿のゾイド星人であっても)

慣れぬ地での奮戦。ガイロスは偉大な功績を残したが、やはり無理がたたり志半ばで没した。
暗黒大陸統一と中央大陸との友好条約締結。その夢はガイロスII世に託された。

ガイロスII世は偉大な父の意思を受け継ぎ、暗黒大陸の統一を遂に実現した。
暗黒大陸という特性上、体系は君主制の帝国「ガイロス帝国」となったが、それでも可能な限り民の意見を汲んだ。

厳しい環境ゆえ民の不満は少なくない。
まだまだ前途多難であったが、ガイロスII世…、ガイロス皇帝の意志は強かった。

さて、ガイロスI世の渡航をZAC1966年とした。
そこからガイロスII世が生まれ、彼が成人し父の意思を受け継ぎ遂に暗黒大陸を統一した。これにかかった期間をざっと50年程と推測しよう。
するとZAC2016年。
更にそこから10年かけて政治を安定させたと考えよう。
この時点で、ZAC2026年。

ガイロス皇帝は、ここへきて中央大陸と友好条約を締結する準備が整ったと判断する。
我がガイロス帝国は安定したのだ。
父から聞くには、中央大陸はヘリック王が統一し「ヘリック王国」になっているそうだ。
今はその子供が国を治めているような状態かもしれない。そんな事を思うガイロス皇帝。

ガイロス皇帝は考えた。暗黒大陸は厳しい地だ。
この地だけで豊かになるのは困難。
父の教えの通り、中央大陸と友好条約を結ぶ事は必須だ。
友好条約は平和をもたらすものだが、同時に国家間の交易の始まりも意味する。
交易により暗黒大陸を栄えさせるのである。

ガイロス皇帝は、中央大陸の西側に上陸した。
西側である理由は二つあった。
一つは感情的な事であるが、父の故郷を見ておきたいという事だった。
もう一つの目的は、大陸西側は環境が悪いと聞かされていた事が原因である。
中央大陸は統一されてから60年も経つ。この問題は既に解決されているのだろうか?
ガイロス皇帝は、まず西へ行き、そこから実情を確かめながら東側の首都へ行こうと考えた。

はたして上陸後のガイロス皇帝は愕然とした。
中央大陸は二つの国であるという。
上陸した西側はゼネバス帝国というではないか。そして山脈を越えた地はヘリック共和国である、と。

もしや、あえて国を二つに分け交易による相互発展を行っているのだろうか。
そんな考えも浮かぶ。いや、そうではなかった。両国は対立し戦争をしているという。

「一体、何をしているんだ?」
中央大陸の西側は確かに厳しい土地なのだろう。だがそれは東側と比べてだ。
我が暗黒大陸と比べればどうというものでもないではないか。

西側の国よ。
これで何が不満というのか。それは戦争を起こさねばならない程のものなのか?
だったら、我がガイロス帝国の民は一体何なのだ。

東側の国よ。
お前たちは一体何をしているのだ。豊かさにあぐらをかくだけで西側への支援を何故しなかった。
しているというなら我が目にそれは偽と映る。
死力を尽し支援をすれば戦争が起こるほどの不満にはならなかっただろう。
戦争になる事を黙認したのはお前達だ。

中央大陸は何もかも愚かしく思えた。
ガイロス皇帝は生まれも育ちも暗黒大陸だ。
その地、その民を愛してる。
かつて、こんな愚かな者共に我が愛する地は利用されたのか。

「中央大陸の誰もが平和を愛していた。だが事情によりそれが為されなかった為、やむなく暗黒大陸を利用した」
「暗黒大陸には許されぬ事をした。だがあの時はそうする他なかったのだ」
「その償いとして、中央大陸が平和になった後は暗黒大陸へ行き、その地に平和の尊さを教え豊かな地に導く決意をしたのだ」
父の言葉が思い出される。
その言葉を信じ、今まで辛いことにも堪えガイロス帝国を築いた。だが中央大陸は父の言ったような場所ではなかった。

「父よ、貴方の教えは間違っていた。中央大陸は戦う事しか知らぬ愚かな蛮族だ。放っておけば、やがて我が国を侵略するだろう」
「我がガイロス帝国を平和に保つには、我がガイロス帝国によって中央大陸を統治する他ない」
ガイロス皇帝は豹変した。

東側、ヘリック共和国へ行く事は無かった。
しかし西側には既に来ていたので、ゼネバス皇帝には会っておいた。
そして条約を結んだ。

「我がガイロス帝国は中央大陸での戦争には一切関与しない。が…、貴国に万一の事態が起これば、その時は助力しよう」
「なに、見返りなどいらぬさ。この大陸西側は父の故郷でな」
「我々の国も寒く痩せた土地だ。豊かさにあぐらをかく東側は許せぬので、な」

無論、詭弁。偽りの友好条約である。
ガイロス皇帝はどちらの国も助ける気などない。ガイロス帝国による中央大陸統治、これしかないと固く決意した。
だがその為には、常に中央大陸の状況を把握する必要がある。そうしてこそ、参戦する然るべきタイミングが分かるというものだ。
ゼネバス帝国と条約を結んだのはこの為である。

定期的な行き来が確立された。
こうして、ガイロス帝国は中央大陸を監視する体制を確立した。

帰還したガイロス皇帝は、軍備増強に励んだ。無論、中央大陸侵攻の為である。
暗黒大陸のゾイドは暑さに弱い。その特性上、秋から冬にかけて上陸し、そこから半年ほどで全て制圧する必要があった。
それは困難な道であった。
しかし今、中央大陸では長く戦争が続いている。しかも戦力は互角程度のようだ。今しばらく戦争は終結するまい。
ゼネバス帝国、ヘリック共和国が双方とも長期戦で疲弊した時を狙い、参戦しようと決意した。

ガイロス帝国の軍備は増強され、国民にも中央大陸の事を伝えた。
機は熟すかに見えた。
だが予想外の事態が起こった。
ZAC2029年、グローバリーIIIの飛来である。

中央大陸に墜落したそれは、未知のテクノロジーをもたらした。
ゼネバス帝国、ヘリック共和国は凄まじい技術革新を果たした。
既存のあらゆるゾイドは、その性能を陳腐化させた。
ガイロス皇帝は自軍ゾイドの性能に自信を持っていたが、この事件により無に帰した。
もはや中央大陸ゾイドにかなう筈はない。

中央大陸の制圧には、自分達もグローバリーIII由来の技術を手に入れる必要がある。
だがゼネバス帝国は、技術提供を拒んだ。
今やゼネバス帝国の力はガイロス帝国を大きく凌ぐ。
強者が弱者に理不尽を強いるのは世の常。ゼネバス帝国がその技術を易々と教えるはずは無かった。
屈辱に耐えるガイロス皇帝。

だがガイロス皇帝、ガイロス帝国にとって二つ幸運な事もあった。
一つは、グローバリーIIIが中央山脈に墜ちた事である。
この為、ゼネバス帝国・ヘリック共和国は双方同程度の技術革新を果たし、同程度の強化を遂げた。
両国のミリタリーバランスは崩壊せず、相変わらずの長期戦を続けるものであったのである。

もう一つの幸運は、数年後に起こった。
長きに渡る勢力均衡が遂に崩れ、ゼネバス帝国が押され始めたのである。徐々に劣勢となったゼネバス帝国は滅亡寸前となり、そしてガイロス帝国に条約の実効を願い出た。
かつて結んだ条約。守るつもりなど露ほどもなかった偽りの友好条約。
だがガイロス皇帝は、ゼネバス帝国を助けた。

無論、ゼネバス帝国を助ける事が目的ではない。
これはグローバリーIIIの技術を得る最大のチャンスだったのである。

シンカーで中央大陸を脱出するゼネバス皇帝、そしてゼネバス帝国兵。
ガイロス帝国はそれを暖かく迎え入れた。その裏で、大きな野望を隠しながら…。
かくして、ガイロス帝国もまた、グローバリーIIIの技術を得てゆく事になる。

・・・分かりやすく、年表にしてみよう。

このようになる。

・・・・・という事で、暗黒大陸の前史~第一次中央大陸戦争終結時までの事情を妄想してみた。
このように考えていくと、なかなかつじつまが合ってきたと思う。
次回以降は、この妄想に肉付けを行い、更に第二次中央大陸戦争~大陸間戦争の期間についても考えていきたい。

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