大陸統一への道

今回のコラムは、主に第一次中央大陸戦争の戦史年表を思い返しつつ読まれたい。

さて、ゼネバス帝国とヘリック共和国は、共に中央大陸の統一を目指していた。

互いに理想を抱きながら激しく火花を散らした。
しかし第一次中央大陸戦争の戦史年表を見直すと、目的は「統一」という所で一致しているものの、そこに至る戦略は全く異なっていると思った。
その戦略を考えてみるとなかなか面白い。

ゼネバス帝国とヘリック共和国の保有ゾイドを比べていると、バランスを欠いた部分があるのに気付く。
例えば、共和国は航空戦力が充実しているが、帝国はかなり見劣りする。初期においては顕著だ。
この航空戦力の差は有名な所だろう。
だがもう一つ、大きく差が開いた分野がある。それは海軍力だ。

 

ゼネバス帝国とヘリック共和国は、共に中央大陸の統一を目指していた。
この大陸の統一という同じ目標を達するにあたり、両国は全く別の戦略を用いていると感じる。
そのキーワードがヘリック共和国軍の充実した海軍力だ。

 

中央大陸の統一にとって最大の障害は中央山脈であろう。
標高2千mを越える山々が連なる険しい地帯。中央大陸の真ん中に切れ目なく走っている。
これを突破するのは容易でない。

ヘリック共和国は、この山脈の突破を諦めて迂回する作戦を立てていると思う。
「海上ルートから敵領土への上陸作戦を敢行する」というものだ。

 

共和国軍は古くから海軍力を重視している。
第一号はアクアドン。

ただアクアドンは本格的な戦闘機械獣というより試作型の要素が強い風に思える。

第二号はフロレシオス。

フロレシオスはアクアドンのほぼ完全な上位互換と言える性能だ。
「水面から長い首を出し偵察を行う」というのはHistory of ZOIDSなどで確認できる記述だ。
この能力により「敵を発見する事に威力を発揮した」とあるが、加えて「敵地の沿岸部を偵察し上陸に適した場所を探していた」のではないかと思う。
この敵地偵察が後の大規模上陸作戦に繋がっている…。

アクアドンとフロレシオスは開発機の古いゾイドだ。
これらのゾイドは一応は陸上活動能力もあるが、極めて限定されている。ほとんど水上/水中戦用と言って良い性能だ。
しかし、フロレシオスの偵察により、上陸作戦成功の可能性を感じた共和国軍は、いよいよ本格的な上陸用ゾイドを開発する。

ひとつはバリゲーター。

従来機と違い、陸上でもその能力を存分に発揮できる次世代機。
水上から素早く上陸しそのまま戦闘。沿岸部の守備隊を突破できるゾイドだ。

もう一つはウルトラザウルス。

こちらは言わずもがな。素晴らしい水上航行力を持つ。もちろん陸上もOK。
更に上陸部隊を支援する砲撃力も持つ。

この二つの次世代水陸両用ゾイドの完成をもって、共和国軍は大陸統一の為の準備を整えたと思う。
そして、いよいよミーバロスへの上陸作戦が行われた…。

 

ではゼネバス帝国。
帝国は第一次中央大陸戦争機においてはシンカーを除きマトモな海軍力を持たない。
まぁ通常の艦船などはあったと思う。しかしその能力や規模は大きく見劣りすると言わざるを得ない。
ついでに言うと、シンカーもどちらかというと海より空で運用された実績が多くなっている。
これは何故か。
ゼネバス帝国はどうして充実した海軍力を持たなかったのか。
これは、そもそも大陸統一の戦略が共和国とは異なっていからだと思った。

ゼネバス帝国は、大陸統一を「中央山脈を突破し直接侵攻する」という戦略に腐心していると思う。
それはアイアンコングやサーベルタイガーといった「山岳地帯でも運用できる大型ゾイド」を開発している事が根拠になる。

サーベルは言わずもがな。むしろ山岳地帯でこそ真価を発揮する設計だ。
アイアンコングは山岳で本領を発揮する・・・とは言いがたいものだが、それでも他の大型ゾイドに比べればかなり自由に動ける。
当時はゴジュラスやゴルドス、レッドホーンなど、大型ゾイドは山岳戦には決定的に不向きだった。
「足場が不安定な山岳地帯は小型ゾイドでしかありえない」というのが常識だった。
これを覆す大型ゾイドを開発したというのは、やはり上記した戦略が裏付けられるのではないだろうか。

両国の大陸統一へのアプローチを考えてみると面白い。

何でこんな事になったんだろう。
ひとつは野生体の問題かなあと思う。
ヘリック共和国は飛行可能な野生体に恵まれていたと思う。鳥や翼竜が多数生息するものだ。
対しゼネバス帝国は悲惨だ。ぶっちゃけ、飛行に適した野生体がゼロだったんじゃないかと思う。
だからエイを強引に飛行させたり、必ずしも飛行に適しているとは言いがたい始祖鳥を使わざるを得なかったと思う。
(それでいてあそこまでの性能を出しているんだから、結果的に制空権を奪えなかったとはいえ帝国の技術力はさすがである)

同じように水陸両用で軍用に適した野生体も少なかったんじゃないかなあと思う。
ただそれに加えもう一つ言うと、ゼネバス帝国はそもそもヘリック共和国から分裂した国家だ。
ゼネバスおよびゼネバス派が、中央山脈を越え大陸の西側を制圧しつつ建国したのがゼネバス帝国。
なので、建国した時点で既に、
「いちど中央山脈を突破し制圧する事に成功している」
という事だ。
この実績に自信を持ったゼネバスは、そもそも最初から迂回が必要な海軍力を重視しておらず、山脈を直接突破する事こそ最善の方法と考えていたのだと思う。

逆に、共和国は山脈突破は未経験。
あんな山脈を越えられるもんだろうか。迂回した方がいいんじゃないだろうか。
そこが海軍力増強の戦略に繋がっていると思った。

ちなみにこの思想はD-DAY上陸作戦後は消滅していると感じる。
ウオディック、シーパンツァー、ブラキオス。シールドライガー、コマンドウルフ。こういった、以前は持たなかった分野まで両軍は保有機の幅を広げたからだ。
しかし第一次中央大陸戦争時は、確かに上記した戦略があったと思う。

中央大陸を分かつ二大国家。
その統一への道を比べてみるととても面白い。

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