TFゾイドとブロックスゾイドに関する雑感

先日、トランスファイターゾイドを一気に入手する幸運に恵まれ、我が部隊に編入する事が出来た。


トランスファイターゾイドは、メカ生体ゾイドで特に異彩を放っている一群だろう。
異彩を放つ理由はデザインでもあるが、それ以上に設定である。
「変形し、他のゾイドと合体する」という凄まじい運用がされる設定なのである。

略してTFゾイド。非常にマイナーなシリーズで、語られる事も少ない。
しかしその特異さゆえに、ゾイド史を読み解く上で避けて通れぬと思う。
そんなTFゾイドについて考えてみたいと思う。

今回は、キット的・設定的な視点から迫っていければと思う。

 

~デザイン面での評価~
子供の頃は持っていなかった。ただ新ゾイドバトルストーリーの紹介ページを見て、あまりカッコ良くはないなぁと思っていた程度だ。
ともかく、あまり強く印象に残っているものではなかった。

大人になってから、現物を手に取り体感する事が出来た。
その結果どう感じたか。
デザインに関しては、改めて高評価は付け難いなぁというのが正直な所だった。

やはり従来機と比べて異質すぎるデザインなのは否めない。並べた時の違和感は半端ない。
ただあえて擁護するなら、異質すぎるものの「TFゾイド」という特殊なカテゴリーを設定した上でのリリースだったので、その点は配慮があったと思う。
例えば共和国24ゾイドはSF色の非常に濃い異質なデザインをしている。
しかし「24ゾイド」という特殊なカテゴリーに分けたおかげで、「浮いている」というより「そのクラスとしての統一感や独自性がある」という印象に昇華できている。
(もちろん否定派が居る事も確かではあるが)

そういった意味で、パッと見の異質さに囚われるだけでなく、「TFゾイドという特殊カテゴリーである」という先入観のない目で見て評価した方が良いだろう。
ただその上で、やはりTFゾイドに高評価は付け難いと改めて思った。
メカニックにゾイド特有の「リアル」が全く感じられない。
「実在していてもおかしくない」そう思える程に造り込まれたゾイドのメカニックは非常に魅力だ。
だが、TFゾイドには残念ながら、最低限の言い訳が立つ程度のディティールしかない。
TFゾイドと比べると、ガル・タイガーですらまだ造り込まれている。

もう一つ補足すると、24ゾイドはスケールが違うから、通常の1/72キットと並べる事は比較的稀だったと思う。
その点、TFゾイドは通常ゾイドと同じ1/72スケールだ。
だから、より造りの違いが「目立つ」事は不幸だったと思う。いや、ここは24ゾイドのやり方が上手かったと言うべきか。

当時、猛烈な勢いで押し寄せていたSDメカブームの影響が非常に強いシリーズだと思う。
それでもゾイドとしては高評価を与えにくいなぁというのが正直なデザイン面への感想だ。

 

~キットとしての評価~
TFゾイドは、単体でも戦えるが、変形・合体が出来るのが最大の特徴だ。
入手前に、その変形を見て凄いなと思っていた。
「ゾイドとしてはデザイン的に難があるが、玩具として単体で見れば優れたもの」
というのが入手前の想いだった。

そして、実際に手に取ってみてどうだったかというと、これは予想通り優れたものだった。いや予想以上だと言っても良い。
変形は簡単に出来るし、その姿の変化は大胆で見応えが大きい。
さすが技術に定評のあるトミーのキットだと大いに感心した。

「ただ、変形する必要はあるのか?」という突っ込みは多少感じてしまったが…。
例えばサンダーカノン。

左は変形前。中は変形後。右は合体した姿。

変形後も、砲は前を向いているのが分かると思う。左右に広げただけと言える。
「別に、変形しなくてもいいんじゃないの…?そのままくっついたらダメなのか…?」
そう思ってしまった。
ちなみに、変形前も変形後も、砲に仰角を付ける事や旋回させる事は不可能。正面に完全に固定されてしまっている。
変形したら砲を色んな方向に動かせる…というわけではないのだ。

なんで変形するんだろう…。
「その方がカッコ良く見えるんじゃない?」というだけで、そうしてるんじゃないかなぁと、そう思ってしまった。
この辺も、ゾイドらしい「リアル」と反しているように思えるのが辛い。

まぁ、バスターフューラーのような「乗せただけ」の合体はどうかと思っているわけで、変形して何とか外観を"それらしく"した上で合体しているTFゾイドの方が良いような気がしないでもない。
というか、根本的にゾイドにおいて「合体」という概念はどうなのか という部分から考えた方がいいとも気もするのだが…。

ところで、TFゾイドは「動力が無い」」「変形できる」「既存ゾイドの武器として使える」という点でブロックスゾイドの先祖的に言われる事も多い。

かく言う私も入手前の段階ではそうだと思っていた。が、この部分は入手してみて大きく意見が変わった部分があった。

確かに、「変形する」とか「合体して武器になる」とかはブロックスと同じ要素と言える。
しかしそのアプローチはかなり異なっているように感じた。

TFゾイドの変形は本当に凄い。
なめらかに、しかも簡単に変形する。全て高度に計算されており無駄が無い。
ただそれは素晴らしい一方、どうなのかなぁと思う所もあった。

もともと、ゾイドは改造を推奨するものだったはずだ。
初期の頃の箱裏には多種多様な、中にはトンデモと言えるような作例まで載っており、「キミもゾイド改造計画に参加しよう」なものであった。

ゴルドス(84年7月)以降のゾイドはこのような改造作例は載らなくなった。しかし代わりに機体バリエーションの線画が載るようになっている。

やはりこれも改造を推奨するものと言えよう。

88年以降のゾイドには機体バリエーションの線画は載らなくなり、三面図が載るだけのものになった。

もはや「改造」というより、キットそのままのスペックをより深く掘り下げようという方向に変わっている。

これは極初期においては「ゾイドはむしろ素体であり改造してオリジナル自分仕様を造ろう」というものであり、
その後~中期までは「ゾイドをそのままでも楽しむが、改造もしよう」とうものであり、
後期に行くに従い「そのままのゾイドを楽しもう」というものに変化していった現われだと思う。

TFゾイドは末期に属するゾイドだ。
その構造は変形機構を見ても明らかなように素晴らしく洗練されている。しかし一方、もはや「改造するな」というメッセージを持っていると感じてしまった。

TFゾイドの変形機構は「高度に計算されており無駄が無い」
すなわち余裕が全然無い。
例えば、デザインについてディティールが少なすぎると評した。
これを手っ取り早く解決させるなら、何かしらのジャンクパーツを貼り付けてしまう事だ。
排気口やハッチなどのパーツを貼り付ければ情報量が増え、多少は見栄え・リアルさが上がるだろう。
しかしTFゾイドではそれを行う事が不可能だ。
何故か。
何かパーツを貼り付けてしまうと、変形機構に支障をきたしてしまうのだ。

貼り付けると、当然その場所に盛り上がりが出来てしまう。その箇所が変形する際に引っかかってしまうのだ。
もちろん、武器の増設などもってのほか。
変形時に干渉しない大丈夫な面が無いわけではない。しかしある面にだけディティールアップを貼り付けるとアンバランスになってしまうだろう。
パネルラインを彫るとか穴を開けて内側にディティールを付けるといった、内部を彫り込んでいくものなら大丈夫だ……が、そういったものは非常に難度が高く万人向けではないと言わざるを得ない。

TFゾイドは、与えられたものを「受動的に」楽しむ分には素晴らしいキットだ。
しかし、自分の手を加える事で更に楽しもうという「能動的な面」を、ばっさりと、しかも完全に捨て去っている。これもまた否めない。
そういった意味でゾイドらしいキットではないように感じてしまった。

「すっげえの作ったんだぜ! な、面白いだろ!面白いだろ!!」とメーカーの意思を押し付けられている圧迫感を感じてしまい、「お、おぅ・・・」とたじろいでしまう。
いや、本当に良い部分は多い。洗練されているし。
でも自分で独自に楽しむ幅が無いので、どうも息苦しい。
というのが感じてしまった率直な所だ。

一方、ゾイドブロックス。
ブロックスは正直洗練されているかというと、そうではない。
合体・変形をする際は「それ変形やない、組み替えや」と突っ込まざるを得ない。

ブロックスパーツは外から容易に見える。四角いブロックを繋いでいるので可動も微妙だ。
合体時にパーツが余る事も多い。その扱いはちょっと困る。

だが、こと想像力をこれほど発揮するものはない。
なんたって自分だけのものが作れる。
もちろんパーツの種類には限りがある…けど、限りがある中で、最大限のものは作れる。
組み合わせは自由。各パーツの互換性は抜群だ。

互換性という言葉を出したので、もう一度TFゾイドについて。
TFゾイド各機の脚部は、凹凸のスタンダードな接続ジョイントで構成されている。多くの武器パーツ等でおなじみの構成。

しかし、全ての機体で軸のサイズが違う。つまり互換性がゼロだ。
サンダーカノンの脚をゴルゴランチャーに…なんていうのは無理だ。
わざわざ微妙に軸の太さを変えた設計。ここからも、「そのままで楽しめ」というメッセージ性を強く感じるものである。

ブロックスもTFゾイドも、変形や合体が大きなアピールポイントだ。しかしそこは共通しつつも、仕上げまでのアプローチは全く異なっているなと感じた。

メカ生体ゾイドは、もともとは「キミだけの改造をしよう!」だったのが、だんだん「改造しなくともそのままの状態で楽しむもの」へシフトし、その究極的に行き着いた先がTFゾイドはじめ末期ゾイドたちなのかなぁと思った。
ゾイドブロックスは、発送としては逆で、もっともっとユーザーの想像力に任せてみようというという所に根幹があると思った。
帝国のキメラブロックスのような、こんなのアリなの?と思ってしまうような機体を早期に出した事も、自由に想像・創造せよというメッセージを強く感る。

 

~設定面~
設定に関していえばTFゾイドの方が良いと思う。
というか、そもそもどっちが好きという前に「合体」というのは本当に必要だったのかというのは思ってしまうが…。
こう書いているという事はもう分かると思うが、合体は否定的で居る。
単純な話、する意味が無いように思う。
ゾイドの魅力って、多種多様なものが居る事なんじゃないかなぁと思う。そしてそれら異なった機種が合体ではなく「連携」する事が良いのではないだろうか。

TFゾイドはまだしも「合体して砲台化する」というのみだからマシな気はする。
しかし合体と共にスーパーパワーアップしてしまうブロックスはどうもなじめないところが大きい。
やはりその特性上、バトストとの相性は今ひとつであったと思う。

「戦闘機械獣ゾイドの整備性、量産性を飛躍的に高めるために開発されたのがBLOXシステムである」
というのはミリタリー感抜群。リアルな設定で登場していると思う。
しかしあまりにも便利すぎた。都合が良すぎた。
もはやデメリットは存在せず付けただけで最強になれるかのような描写は、やはり反感が出ても無理からぬものだったと思う。

あれだけ遠距離砲撃に特化したセイスモですらアルティメットになればギガを上回るなんて、そりゃ無理だ。
何かしらの一長一短を付けてバランスを保っていれば良かったと思う。
操縦性が悪化しエースにしか・・・という毎度のもの以外で。
また、合体・変形のプロセスはプロモーション映像で示されているが、あれも凄まじかった。
混乱や反感が出たのは無理からぬものだったと思う。非常に惜しい。

キットとしては想像力を刺激する構成であるにも拘らず、単体としてもそうとう強力なものとして設定されている。これもどうなのかなぁと思う。
単体でもかなり強かった。
「新開発されたブロックスシステムは素晴らしい可能性を秘めている。だが両軍とも、まだ完全と言えるレベルの機体は完成させていない。キミの手で強力なゾイドブロックスを完成させてくれ」
位で良かったんじゃないかなぁと思う。
当時のコロコロではブロックスは相当強力な新型としてライガーゼロをボコボコにして、更に漫画版での無敵ぶりはよく知られる所だ。
こういった所も惜しい。

設定面は難があった。
こういった点をクリアしていればブロックスはあれだけの議論を巻き起こしユーザーを二分するような事も無く、もっと受け入れられていたんじゃないかなあと思う。

ブロックスは玩具としては非常に優秀だ。
また結果から言えば、売れた。とんでもなく売れた。その結果は良く理解すべきだ。
しかしその上で、やはりユーザーが割れた所は反省すべきだったとも思うわけで、今後の見直しが必要だと強く思う。

 

という事で、以上、トランスファイターゾイドについて、途中からブロックスゾイドを交えつつ感じた事を書いてみた。
両カテゴリーとも、従来とは「一線を画する」斬新な設定で登場したゾイドだ。
その解釈は今後行っていく必要があると強く思う。

今回、上記した内容をふまえつつ、今後の解釈に進んでいければと思う。

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