懲罰席を考える -ネプチューン-

ゾイドには「苛酷すぎないか?」なコックピットが稀によくある。
それらをネタ的に受け取る事は出来るしそれはそれで面白い。しかし一方で出来るだけ真正面から受け止め解釈したいとも思う。

そんなわけで以前に、尾部銃座サラマンダーの背中については解釈を試み、一定の見解を持つことが出来た。
今回はそれに続く第三弾という事で、こいつもなかなか理不尽と思えるコックピットであろう。ネプチューンのコックピットを考えてみたい。

ゾイドの多くは頭部にコックピットを持っているが、ネプチューンはそのサイズゆえに頭部にはコックピットを持たない。
機体のほぼ中央、背中にコックピットを持っている。
ネプチューンの搭乗方はかなり特徴的であり、そしてかなり辛そうだ。

辛そうというか、辛いだろうこれは。何だろう、この腹筋が鍛えられるシステムは。
重いボンベを2本も背負い、腕立て伏せのような形で操縦桿にしがみつく…。その姿はちょっとシュールですらある。

ボンベは相当の重さのはずだ。しかも2つも背負っているのだからなおの事。地上では30~50kgほどもあるんじゃないかと予想する。
まぁ、ボンベは主に水中任務時に背負うものだろう。その他の任務の時には取り外す事が多いとは思う(有毒ガス発生域などではあえて地上で背負う事もあるとは思うが)。
おそらく、普段はボンベをコックピット内のどこかに仕舞っておき、必要な際にのみ背負って使用するようなものと思う。

まぁボンベは置いておいて。
それにしても、改めてネプチューンの搭乗方は疑問だ。
素直に「座る」タイプには出来なかったのだろうか。
現在の姿勢は、ボンベを背負ってない状態だとしてもかなり辛そうだ。腕への負担は半端ないものだろう。
いや、座る姿勢にして欲しいというか、もう少し言うと完全防水にして欲しいというのが本音だ。
やっぱり、水の中に入る事が多い機体なので、その方が絶対にいいだろうと思える。

ボンベがあるといっても、無制限に活動出来るものではない。中の空気を使い切れば仕舞いだ。
大きさと2本である所から計算し、おそらく1~2時間程度が活動限界だと思う。それは作戦時間としてはかなり短い。
多少ワニのラインから外れてしまかもしれないが、「座り姿勢」「キャノピーで覆って完全防水」にした方が良かったと思う。
パイロットは楽になるし、活動時間もいくらかは増えるだろう。
良いことだらけじゃないか。何故そうしない。

しかし、現在のような姿になっているという事は、その方が都合が良かったという事ではあるのだろう。
「座り姿勢」「キャノピーで覆って完全防水」ではなく、「腕立て伏せのような辛い姿勢」「活動時間が制限されるボンベ」を選んだ理由が。
それを考えてみたいと思う。

 

それにしてもネプチューン。何とも小さい。24ゾイドの中でも最も小さな部類だ。
同じ小型のワニという事でバリゲーターと並べてみると、その極小サイズがより実感できる。

もしかしたら、このサイズに答えのヒントがあるのかなあと思う。

ゾイドは地球の兵器を参考に開発されている事があるが、ネプチューンはX艇を参考にされているんんじゃないかなあと思った。
X艇は第二次大戦で開発されたイギリスのミニミニ潜水艦で、艦というよりまさに艇というサイズのものだ。
なおX艇という名称は仮称でも愛称でもなく正式名称。

さてどの位小さいかというと、全長15.6m、重量30tという数値である。
これだと実感がわきにくいと思うので、一般的な潜水艦と比べてみよう。
ドイツが誇ったUボートは70~80mほどあり、重量は900~1000t程もある。
この時代の潜水艦としては最大を誇った日本軍の伊400に至っては、全長122m、重量6560tという大きさなのだから凄まじい。
こうすると、X艇の小ささがよく分かると思う。

伊400とX艇を同スケールで並べると下の通り。

遠近法ではなく並べた時の正確な大きさがこれだ。

実は、X艇はもともと川で運用する事を目的に開発された兵器だったりする。なので、ミニサイズなのは当然でもある。
(最も、完成したX艇は川で運用される事は無く全て海で使用されたのだが)

さてこのX艇、その小さすぎるサイズゆえに走破力も航続距離も速力もたいへん低かった。
特に、速力などわずか6ノット足らずだ。そもそも動力がバスと同じものらしい…。
なので運用は、
①通常サイズの潜水艦が母艦としてX艇を曳航し、作戦海域まで輸送する
②X艇を切り離す。X艇は更に進出し作戦を実行
③作戦実行後のX艇は母艦と合流。再び母艦に曳航され帰投する
という、酷く制限されたものであった。

こんな面倒くさい事をしてまで運用されたのは、やはりその小ささゆえに特殊攻撃において有効だったからだ。
大型の母艦は強力だが、やはり大きいので隠密性に劣る。
あまりにも接近しすぎると索敵にひっかかってしまう。そこで、この超小型X艇の出番というわけだ。

X艇最大の戦果は、対・戦艦ティルピッツ作戦で運用された事である。
ティルピッツは第二次世界大戦当時のドイツ軍が誇ったビスマルク級戦艦の二番艦で、全長250m、満載排水量5万tを超える超巨大戦艦だ。

黒いシルエットがティルピッツ。もはやX艇は豆のようである・・・。

ティルピッツは、当時ドイツと交戦中のイギリスにとって大きな脅威であった。その為、どうにかしてこれを沈めようとしていた。
しかしイギリスにはティルピッツに勝てる戦艦は無い。
ここで投入されたのがX艇で、港に停泊するティルピッツに小型という唯一にして最大の特性を活かし果敢に突撃。
見事、ティルピッツに大打撃を与え、半年ほども行動不能にしてみせた。

 

さて、ネプチューンに戻る。
ネプチューンは、このX艇を参考にしつつ、更にその開発コンセプトをゾイドらしく推し進めたものではないかと思った。
ネプチューンは極小サイズで、なおかつ速力も遅い。設定は無いが走破力や航続距離も低かろう。
X艇のイメージに酷似している。

X艇と照らし合わせつつ考えたネプチューンの開発コンセプトは、

①X艇と同じように、母艦に曳航され作戦水域まで(母艦が敵のレーダーに捕まらないギリギリの位置まで)進出する
②そこから射出され更に進出する
③ピンポイントの作戦実行地点に着いたネプチューンは攻撃を敢行する
④あるいは、パイロットが外に飛び出し更なる肉薄攻撃を行う
⑤攻撃完了後、母艦に戻り再び曳航され帰投する

というようなものではないかと思った。

こんな風に考えると、ネプチューンのコックピットも徐々に見えてくると思う。
すなわち、ネプチューンの設計は、
「攻撃力はそれほど無いが、ピンポイントで敵の弱点を攻撃する特殊攻撃機」
であり、
「④のパイロットが外に飛び出し行う超精密攻撃も重要である」
であろう。

そういえば、よくよく考えるとこのゾイドは「パイロットがコックピットの外に出て活動する」事が前提になっている。
何故かというと、背中のボンベだ。

よくよく考えると、なんで背中に背負ってるんだ。背負わなくてもいいんじゃないか。

「コックピットを完全防水にしろ」というのは理想だが、そうでないにしても「コックピット内にボンベを設置しそこからチューブを引っ張ればいい」じゃないか。
ただし、これは「ゾイドから外に飛びさない」前提であるなら、だ。
あえてボンベを背負う…、言い換えれば「パイロット一人だけで独立して行動できる状態」になるのは、「ネプチューンから飛び出し活動する事が前提である」と言える。

「目的地に付いた後、パイロットがネプチューンのコックピットから飛び出し更なる破壊活動を行う」のなら、今のコックピット形状は理想的だ。
何故なら、「目的地に付いた後に飛び出す」これにかかる時間が最も短くて済む形状だからだ。
座り式のコックピットの場合、やはり足を出す必要があるから、いくらか時間が余計にかかるだろう。
キャノピーで完全に覆っていた場合などは言うまでもない。

ネプチューンのような超小型機が活用されるのは、その小ささゆえの隠密性だ。
といってもいつまでも見つからないわけじゃない。敵地のまさにまっただ中。敵だって常に目を光らせている。
そんな一秒を争う作戦において、このすぐに飛び出せる形状は、まさに理想的であると言える。


操縦時の姿勢は、おそらくこんな感じだろうと予想(キットには無いが、もちろん命綱は引っ掛けてあると思う)。

水中なら、陸上と違いこのような姿勢が可能だろう。また操縦法は、バイクの様にグリップの部分でほとんどの操作が完了するようなタイプと想像する。

ネプチューンは水中運用が基本であり、パイロットを攻撃するピンポイントの位置まで運ぶキャリアーであると考えると、コックピット形状にも納得が出来、なおかつネプチューンというゾイドそのものも今まで見えていなかった魅力が次々現れてくると思う。
まぁ、キャリアーというのは獰猛なワニ型ゾイドとしてどうよと思わなくもないが…。

 

さて、X艇が挙げた最大の戦果は、先に書いた戦艦ティルピッツへの攻撃だ。
ネプチューンだと…、ホエールカイザーが喰えれば美味しい役所だと思う。

ウルトラザウルス、あるいは小規模部隊であればバリゲーターが曳航し作戦海域まで進出。
敵のレーダーがあるので、母艦はそれ以上の進出はできない。
そこからは切り離されたネプチューンが泳いで接近する。
港に停泊するホエールカイザー艦隊。内部には強力な戦闘ゾイドがぎっしり積まれている。
ついにホエールカイザーに肉薄するネプチューン。
ネプチューンに搭載できる武器は、その機体サイズゆえに圧倒的に少ない。
しかしパイロットが更にそこから進出し、エンジンや装甲の継ぎ目といったピンポイントな部分に効果的な攻撃を与える…。
これにより、場合によってはかなりのダメージを与える事もできる。

ネプチューンが腹の下に持つ魚雷はこんなサイズだ。

極めて小さい。
こんな大きさだから、直撃させてもウオディックやブラキオスの装甲はビクともしそうにない。
だが装甲の継ぎ目や排気口などわずかな弱点をピンポイントで狙えば、あるいは意外なダメージを与えられるかもしれない。
この魚雷も、パイロットがネプチューンから飛び出し、手で運んでピンポイントの位置に仕掛けたりできそうに見える。

ネプチューンが就役したのは、デスザウラーが猛威を振るっていた時代だ。
開発はいつ頃から始まっていたのだろう。
もしかすると、D-DAY後、帝国軍が猛烈な勢いで進撃していた頃に始まったんじゃないかと思ったりする。
帝国の進撃を支えたのは、ディメトロドンはじめ新型ゾイドと、そして素晴らしい輸送力を誇るホエールカイザーだ。
特にホエールカイザーは厄介だっただろう。
水空両用だから、例えば共和国優勢な状況下でも従来では予想も出来ない方法で増援をよこす事が可能。簡単に戦況をひっくり返してしまうだろう。
どうにかしてホエールカイザーを叩きたい。

飛行可能とはいえ、基本的にはクジラだから港に係留されているものと思う。
ウルトラザウルスで攻め込みたいが、さすがに港ともなれば守りが堅く悪戯に我が方の損害が増えると予想される。
そこで、特殊潜航艇ネプチューンの開発が始まったのであった…。

こんな風に考えると、改めて魅力的に見えてくる。
ホエールカイザーを狙ったネプチューン。他にも、港設備などのインフラを攻撃したネプチューン、発信機を気付かれぬように取り付け諜報に貢献したネプチューン…。
様々な「特殊潜航艇」ならではの活躍を想像したいところだ。

さて、このコックピットは懲罰席でもなんでもなく、ネプチューンの運用を考えれば最も理想的なものであった。

ただ…、問題はバトルストーリーにおける描写だろうか・・・。
中央山脈で戦うシーンはじめ陸上で運用されているスナップが幾つかあるが、この水中以外ではこの辛すぎるであろう姿勢で戦っている…。

ボンベは背負っている時(左)もあれば、背負っていない時(右)もあった。

これは申し訳ないけど、その意味を計る事は出来なかった。
まぁ、ちょっと苦しいものの、
■大多数のネプチューンは上記した説の様に海で適切に運用されている。
■しかしバトルストーリーは派手な戦闘を好んで取り上げるので、地味な破壊活動に焦点が当たる事は無かった。ゆえに掲載されていない。
■極一部のネプチューンは、メガトプロス率いる機甲部隊に随伴し陸上でも辛い戦いをしている。
 バトルストーリーではその場面が「なにしろ派手だから」取り上げられたのである…。

という風に考えたいと思う。
また、デスザウラーの猛威が続いていた当時の共和国にとって、共和国24ゾイドはディバイソンと共に「反抗の象徴」であった。
なので、24ゾイドが揃い踏みしているショットは特に優先的に使用されたのかもしれない。これは国民感情をコントロールする意味でも意義が大きいと思う。

というわけでネプチューンのコックピット。
こんな風に考えてみると、なかなか面白い。

 

~補足~

本コラムは、もともとブログに投稿したものを、コラム用に細部を補足した上で改定したものです。
ブログで投稿した際に、興味深いコメントも頂いたので紹介致します。

「ゾイドを完全なキャリアー扱いするのはゾイドとしてどうよと思わなくもないが」という部分に関し、
●自身より巨大な相手に肉薄する任務であるなら、臆病な生物よりも敵を恐れない獰猛な肉食生物を選ぶのは合理的なんじゃないかなあと思います。

と頂きました。
なるほど、大物を喰う事が最大の目標である所のネプチューンであれば、獰猛なワニを選んだのも納得が出来ます!

もう一つ、水中での姿勢に関し、
●これだと機体が進む際に生じる水流に対し腕力のみで全身を支えなければならず、かなりきつそうなので、どこかで足を踏ん張れればなおよさそうです。
 その、うしろの銀色の枠の部分とか、踏ん張れそうでしょうか?

と頂きました。
確かに、ゾイドとしては鈍足とはいえネプチューンは35ノットの速度を誇ります。捕まるだけでは厳しい…。
しかし仰るように、コックピット後部のバンパー部分に足を引っ掛ければ問題が解決しそうであります!
特に速力を上げる昼用がある際(離脱時等)は、足を後部に引っ掛けて踏ん張ってそうです。

これを聞いて、あぁネプチューンのコックピットって今回のコラムに対し凄く理想的に出来ているんだなというか、今回のコラムに関し自分なりの納得をより固める事が出来ました。

貴重なご意見をありがとうございます。
ネプチューンのコックピットは、今までずっとシュールなものしか感じていなかったんですが、なかなかユニークで魅力的なものに思えてきました。

まぁでも、あえて乗りたいかと言われるとやっぱり微妙ではありますが。

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