アイアンコングMK-II限定型はなぜ量産されなかったか

アイアンコングは紛う事なき傑作機だ。

ゴジュラスの様に一長一短あるが総合的に見て強力な戦闘ゾイドであるというものではなく、各能力のバランスが極めて高い数値で構成されているのは見事だ。
アイアンコングは長らく生産され続け、一線に留まった。その活躍はゼネバス帝国滅亡後にも及んでいる。

また、アイアンコングは初のゴリラ型ゾイドである。この後、帝国はハンマーロック、シルバーコング、ゴーレムと多数のゴリラ型ゾイドを誕生させている。
この事からも、いかにアイアンコングが傑作機だったかが伺える。

さてゼネバス帝国史上最強のアイアンコングはアイアンコングMK-II(限)であろう。

その能力はウルトラザウルスに迫る。
大氷原の戦いでは、ゴジュラスの妨害が無ければ確実にウルトラを仕留めていただろう。

キット的には、コングMK-II(限)はメカ生体ゾイド開始3周年を記念して特別限定販売されたものだ。同時発売はゴジュラスMK-II(限)
共に一瞬で売り切れたそうだ。

余談だが、1986年においてはまだ「限定キット」というものは非常に珍しかった。トミーの先見性が伺える事情だ。
またもう一つ、限定キットとはいえコングMK-II(限)とゴジュラスMK-II(限)は共に4980円という高額キット。
そして1986年と言えば、ウルトラザウルス(5980円)が発売された年でもある。
超大型ゾイドが3つも揃って新発売された1986年という年。ゾイドの昇り年だった事が伺える。

さてアイアンコングMK-II(限)の話に戻る。このゾイドには当時大きな疑問があった。
それは「これ量産しとけよ」と思っていたという事だ。
何故、アイアンコングMK-II(限)は量産されなかったのだろう。

ゴジュラスMK-II(限)は、限定生産でいいと思う。何故ならウルトラザウルスが居たから。
ウルトラザウルスが居るという状況下であったから、必ずしも重武装の限定型は必要じゃなかったと思う。
しかし帝国側は、打倒ウルトラのゾイドは直ちに必要だっただろう。
デスザウラー完成はいまだ遠い。
強化されたアイアンコングを量産してウルトラに抗する必要があったと強く思える。

さてこれに対し考えた事を下記。

最近、アイアンコングシリーズの線画を描いた。その中で思ったのは、限定型のビーム兵装の充実だ。
  
改めて比べると凄い。
特に大型ビームランチャーは、さすがに消費エネルギーが甚大だろう。コングの力をもってしても。
そして高機動ブースターも、ノーマルタイプに無い動きを発揮できる反面、エネルギー消費が甚大だと思う。

おそらく、高機動ブースターにより総出力は大幅向上している。
そのうえ大型ビームランチャーとパルスビーム砲により、ミサイルよりも汎用性が向上したと思う。
反面、アイアンコングというゾイド生命体由来のエネルギー総量は変化していない。
これを考えるに、おそらく稼働時間はかなり短縮しているのは否めまい。

この時期、共和国軍はウルトラザウルスの投入によって更なる稼動時間の向上…、それに伴う作戦範囲の拡大を達成している。
対し、行動半径の縮小によりしょせん局地戦の働きしかできないMK-II(限)は、大局を見た時の実用性は低いかもしれない。

更に、操縦性能を考えると、ここまで複雑化した装備はエース級の技量を要求するだろう。
それは、ほんらいのコングの目指した操縦性に優れ一般兵でも十分に扱えるというコンセプトからは大きく外れる。

MK-II(限)は、量産されるようなものではない。
それでも、もはやノーマルタイプでは戦闘力が陳腐化しつつあるのは否めなかった。

MK-II(量)は、ビーム系の火器を撤去しノーマルと同じ火力に戻した。
    
これによりエネルギー消費量は抑えられ、稼働時間も許容範囲に何とか収まった。
操作系統もノーマルより複雑化したとはいえ、このレベルならば問題ないものであった。

こうしてノーマルと限定型の中間とも言えるコングMK-II(量)が生産の主流となったのである…。

ちなみに暗黒軍編の頃を見ていると、最初の頃は改修された暗黒タイプのコングが頻繁に登場している。

これらは、おそらく暗黒軍のテクノロジーで強化されている。ディオハリコン搭載型なんかも居たかもしれない。

しかし何らかの理由があったのだろう。中盤以降はあまり登場しない。
そしてやはり、MK-II(量)が登場する事が増えてくる。また量産型と共に、ノーマルタイプも同じくらい登場するようになっている。

これはオルディオスが参戦した頃のスナップ。奥の方に注目。
…メタフィクションな事を言えば、この時期にJr.ゾイドのアイアンコングとアイアンコングMK-IIが発売されている。
その為、宣伝用に出す必要があったのだろうが…(この時期の遠景の主力はJr.ゾイドである)。

コホン。バトスト的に考えよう。

暗黒大陸は広大なバトルフィールドで、その地形も中央大陸より複雑である。
なので、稼働時間が長い機体は重宝され、それゆえにノーマルタイプが再び戦場に返り咲く事になったのではないだろうか。
もちろん内部的には暗黒軍の技術がある程度フィードバックされた新造機であり、帝国の初期型よりは性能的に向上している。
ノーマルタイプの復権と性能向上は、50年後の戦いに繋がっていると考えても良いと思う。

さて、そんな感じで限定型の「限定」たる理由を考えてみた。
キット的な事情とバトストの描写。メカ生体ゾイドから機獣新世紀ゾイドへ。
なかなか上手い具合にミックス出来て考えられたと思うが、いかがだろうか。

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