ゲルダーのモチーフの事

先日、ゲルダーのレビューを行ったところ、そこから興味深い議論に発展したので、以下にまとめを。

EMZ-16ゲルダーは、EMZ-13マーダの後継機として開発されている。
マーダは軽装甲ゆえに消耗が激しく、それゆえ機動性をある程度犠牲にしても装甲を分厚く仕上げたのがゲルダーだ。
しかし戦史を見ていると、後々までマーダが活躍しているのに対し、ゲルダーは小規模な運用に留まった事が分かる。

さて、ゲルダーについて興味深い議論が起こったというのは、ゲルダーのモチーフについてだ。
ゲルダーのモチーフは箱表記では「恐竜型」だが、戦闘機械獣のすべてでは「トリケラトプス型」と書かれている。
実はレビュー時、戦闘機械獣のすべての表記を見落としていて、具体的に何の恐竜がモチーフなのか把握しないまま進めていた。
レビュー中に、以下の文章を書いていた(現在は修正)。

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角竜の中で、具体的にどれがモチーフかと言われると迷います。
二対の角が特徴的なので、以前はトリケラトプスなのかなあと思っていました。
しかしよくよく考えると、大型のレッドホーンがスティラコサウルスなのに、小型のゲルダーがより大型でメジャーなトリケラトプスというのはおかしい気もします。
三本目の角が無いというのもあります。
マイナーですが、アヴァケラトプス辺りではないかと推測します。小型の角竜です。
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この部分に対し、ご指摘・ご意見を二通頂戴した。
それについてはこちらのブログ記事を参照。

さて更にここからもご指摘を頂戴し、議論に発展した。
この議論もブログで行われたが、この件に関してはリンクで済ませず、改めて書き起こしたい。

先のブログ記事の内容までを簡潔にまとめると、

・ゲルダーのモチーフをアヴァケラトプスだと推測する
・それに対し異論が出る(アヴァケラトプスはゲルダー発売時点では命名されていない恐竜である)
・改めて考えるも最適なモチーフが思いつかない
・トリケラトプスではないと思う(帝国はマイナーなゾイドを使う傾向が強い)

という感じ。議論に発展したというのは、これに対し更なるご指摘・ご意見を頂戴したから。
「戦闘機械獣のすべてには、トリケラトプス型となっている」
との事で、さっそく同書を確認したところ…、

確かにあった。トリケラトプス型とハッキリ書かれている。 これ以上無いほどハッキリ書いてある。
先のブログで色んなモチーフを検証したが、トリケラトプスだったそうだ・・・が、せっかくあれだけ考えたのだから、もうちょっと考えてたい。

「なんでトリケラトプスを採用したの?」という事だ。
今回のコラムは、レビュー中に書いた「ゲルダー&ザットンは欠陥機説」と、「帝国側はマイナーなモチーフを選ぶ傾向にある説」が重要になってくる。

さて、確定情報としてレッドホーンはスティラコサウルス型。ゲルダーはトリケラトプス型。
スティラコサウルスは、1984年当時としては割とマイナーに属する角竜で、体長は角竜の中では比較的小型。
トリケラトプスは、1984年当時としてもティラノサウルスと恐竜人気を二分する超ヒーロー恐竜で、体長は角竜の中でも最大級。

モチーフが逆だと、まだしも納得しやすい。しかし…、
なんで「より大きくメジャーな」トリケラトプスが小型ゲルダーになり、しかもあまり有効な働きを示せず退役していったのか。
なんで「より小型でマイナーな」スティラコサウルスが大型レッドホーンになり、しかも長らく主力機として君臨し得たのか。

ゾイドの魅力は「メジャーどころを使いつつも、気の利いたマイナー系も忘れない」そんな所にもあると思う。
だからレッドホーンがスティラコサウルスを用いた事は最高だと思う。ではゲルダーの事も、納得できるまで考えたい。

「メジャーどころを使いつつも、気の利いたマイナー系も忘れない」
これが魅力なのは確かだが、それでもトリケラトプスは超超人気恐竜の切り札モチーフだろう。
小型ゾイドに使い、しかもあまり活躍しなかったというのは、納得しかねる所が大いにある。
ただこれに対し、「帝国側はマイナーなモチーフを選ぶ傾向にある」という事を加味すると、なんとなく納得できるかもしれない説が思い浮かんだ。

帝国は共和国よりもひとつマイナーなモチーフを選ぶ傾向が強い。
代表的なところでは、やはり百獣の王ライオンを使う共和国に対し、二番手トラを使う帝国だろう。
また、ゴジュラスとアイアンコング、ゴドスとイグアンなどを比べても、共和国側は最大級に華のあるモチーフを使い、帝国側はマイナーといかないまでもヒーローという意味では少し地味なモチーフを使う傾向は否定できない。
極初期の虫系ゾイドを比べても、帝国側は芋虫やカタツムリなのに対し、共和国側はカマキリやサソリだ。

初期の頃の帝国で超メジャーなヒーロー系モチーフを使ったものは、ゲルダー(トリケラトプス)、ザットン(ブラキオサウルス)…、あとはサイカーチス(カブトムシ)だろうか。
サイカーチスは、ライバルの共和国側ダブルソーダよりメジャーな一番手を使った、極めて珍しい例だと思う。

そしてその三機を見ていると、いずれも「あまり活躍していない」ところで共通している。
ゲルダーはマーダを更新する次世代機として開発されたのに、マーダを更新できなかった。マーダの方が後々まで広く運用されている。
ザットンは登場シーンが少なすぎる。
サイカーチスも登場シーンが少ない。ゲルダーやザットンよりは登場数も活躍数も多いが、ライバルのダブルソーダに比べれば大きく水をあけられている。


もしかして、帝国側がメジャーなモチーフ…、すなわち共和国側の領域に踏み込んだ結果を揶揄していると考えると面白いかもしれないと思った。
帝国側はマイナーモチーフの方が活躍できる…。そんなジンクスがあるのかもしれない。

ただそんな帝国にあって、状況を変えたのはやはりデスザウラーだろう。
デスザウラーはティラノサウルス型である。箱表記は恐竜型だが冊子などではティラノサウルスと明記されている。
(個人的には指などからアロサウルスの方が近い気もするが…、いずれにしろ肉食恐竜型であるのは明白だ)

面白いのは、この機体をきっかけに、帝国はメジャーなヒーロー系モチーフを解禁している。
デスザウラーを支援する24部隊には、かつて共和国側にあったサソリ型やカマキリ型がある。
デスザウラー以降は、再びブラキオサウルス型ブラキオスを開発し、こちらは一定の成功を収めている。
ドラゴン型レドラーはプテラスを圧倒し制空権をもたらした。ドラゴンは幻獣。もはや最高級のヒーローモチーフである事は間違いない。
更に、ライジャーでライオン型をも解禁した。
こうして、ついにメジャーモチーフを勝ち得た帝国軍は、それらのゾイドでもって共和国軍を苦しめるのであった。

というわけで、かなり強引な部分もある説を唱えてみたが、あんがい個人的には納得できるものがあった。
もともと帝国はマイナー系である宿命に縛られていた。それを越えようとしたゾイドはすべからく活躍できなかった。
だがデスザウラーがその状況を変えてみせ、革命児となった。

話が逸れてきた気もするが、初期における苦しい帝国の事情と、それを解放したデスザウラーという事を、「キット的な方向性」「戦場マップ」の両面で捕らえてみると面白いのかなーと思った。

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