カノンフォートの角は砲撃用か格闘用か
RHI-12 カノンフォートは、メカ生体時代としては最後のHiユニット級ゾイド。
攻・走・防のバランスに優れた理想的な機械獣であったが、就役のタイミングが致命的に悪く活躍シーンがほとんど無いのは無念である。
さてカノンフォート。
割と影の薄いゾイドな気がするが、個人的には割と好きだ。ディバイソンと並べると、より良い。
影が薄いというのは、「活躍シーンが少ないから」という要因が非常に大きい。
カノンフォートの就役時期は最悪と言って良く、同タイプでより強力なダーク・ホーンとほぼ重なっている。
従って新鋭機でありながら敗戦に次ぐ敗戦という、非常に悲しいものになってしまった。
好きな機体だから、せめて脳内バトルでは活躍させたい。
パワフルに暴れまわるカノンフォート。そんな妄想をしたい。
さすがに最後のHiユニット級ゾイドという事で、同クラスのゾイド相手には存分に暴れまる実力は秘めていると思う。
ダーク・ホーンは相手が悪すぎたのだ……っ!
しかし、脳内バトルを繰り広げるにあたって、ひとつ大きな障害がある。
カノンフォートには「これなに?」な装備があるのだ。
カノンフォートの頭部には「ビームホーン」なる武器が搭載されているが、これの具体的な機構が謎だ。
「ビーム」という位だからビーム系の何かという事は確かだろ。だがそれ以上は具体的な記述が無い。
考えられるものとして2つある。
一つは、機動戦士ガンダムで言うところのビームサーベルのようなものではないか という説。
「角の前方に力場を形成しビームサーベルを作り出す格闘用装備」
もう一つは、単純にビーム砲の類であるという説。
「口径相応の中距離用ビーム砲である」
「技術的にビームサーベルは製作可能か」というと、まぁ可能じゃないかなと思う。
ここで引き合いに出したいのはエネルギーシールドだ。
具体的な機構は不明であるが、簡単に言ってしまえば「機体前方に力場を形成し敵の攻撃を跳ね返す」ものだ。
エネルギーシールドは展開した力場を防御に回している。
攻撃用装備として転化したものがカノンフォートの装備であるとすれば、まぁ出来なくも無いと思う 。
(ただ機構に関しての詳しい考察は別の機会に譲りたい)
さて、そんなわけで、カノンフォートのビームホーンはビームサーベルかビーム砲か。
どちらで考えてもそこそこ納得できるような気がする…。
今回は、その両方の説について考え、出来る限り検証してみたいと思う。
まず、「ビームホーン=ビームサーベル」説側で考えてみたい。
カノンフォートのビームホーンは、ビームサーベルであると考える。
その根拠は幾つかあるが、まず、共和国Hiユニット級ゾイドの特性という面から考えたい。
共和国Hiユニット級ゾイドを見ると、極一部の例外を除き、汎用性のあるオールラウンダーとして設計されている。
コマンドウルフ、ベアファイターは、このクラスとしては大型の砲を持ち、砲戦にもある程度対応する。その一方で格闘戦もこなせるのは言うまでも無い。
アロザウラーは、やや砲力がおぼつかないだろうか…。
だがゴドスと比べ門数こそ劣るものの、前方・上方・後方まで広くカバーする砲を備えている。門数は少ないが汎用性の高い砲だ。なので実用面ではさほど劣っていない。
中距離以下の砲戦に対応し、対空もOK。もちろん格闘もOKな万能機だ。
レイノスも、空戦が強い一方で対地性能も高い(ライジャーを追い詰めた事がある)。これは空戦能力のみに特化したレドラーとは大きな差だ。
ゴルヘックスは電子能力に特化している…が、この機体は汎用性を持たせてもしょうがない機体だろう。
ただ、特化しているなりには、ある程度の汎用性は設けてある。ミサイル類が多いので、防空機としては大いに活躍するだろう。
中央大陸は変化に富んだバトルステージだ。山岳も平原も市街も。様々な所で戦う必要がある。
そして開発するゾイドには、いかに共和国といえども限度はある。
出来れば少ない種類で全ての戦線をカバーできる事が望ましい。
そのような思想が汲み取れる。
さて、この延長線上で考えると、カノンフォートにもある程度の汎用性があると考えるべきだろう。
「砲力だけ」ではなく「砲力と格闘」という風に、二つ以上の能力を確保したいところだ。
ビームホーンがビーム砲だったら、カノンフォートは撃つ事のみに特化した機体になってしまう。
やはりビームホーンはビームサーベルと捉え、格闘用として使用できると考えた方が良いと思う。
…カノンフォートは対暗黒軍用ゾイドの第一号であるが、その期待にそえず散々な目にあい敗退した。
その後、暗黒軍にようやく抗し得るゾイドとして現れたのはガンブラスターだ。
ガンブラスターは汎用性は捨て、とにかく前方に撃つ事だけに特化している。
かつてない強敵・暗黒軍に対し、既存ゾイドのような汎用性を求めた仕様では勝てなかった。
「汎用性は捨ててでも特化型ゾイドを開発し戦線に穴を開けねば…」
そういった思惑があるように見える。
暗黒軍編以降の共和国ゾイドは、特化型があんがい多いと思う。
ハウンドソルジャーも特化型だと思う。
その体格は、おせじにもシールドライガー以上のパワーがあるとは思えない。また爪や牙の形状から考えても、格闘戦では大きく劣ると思う。
だがハウンドソルジャーは、超スピードで敵陣を駆け抜け、クロスソーダで敵を突き刺しそのまま離脱する…。一撃離脱戦法をするなら、最適な機体だと思う。
サラマンダーF2も、ノーマルタイプが持っていた爆撃能力は省かれ、空戦に特化した仕様になった。
(学年誌資料だが、爆装したノーマルサラマンダーを護衛するF2が確認できる)
カノンフォートの「汎用性のある仕様」は、これまでの中央大陸戦役では「器用な万能機」として扱われただろう。
だが、より激しい暗黒大陸戦役では「器用貧乏で決定打が無く破壊されるばかり」なものになってしまったのだろう。
その反動こそ、ガンブラスターやハウンドソルジャーを生んだと考えると、一定の説得力もある。
まとめよう。一つ目の理由は「汎用性」だ。
そして理由は二つ目もある。
カノンフォートを見ていると、その設計は「ディバイソンの小型化」「ブラックライモスへの対抗機」という要素が読み取れる。
まず、ディバイソンと比べよう。
同じバッファロー型で、構造にもかなりの共通性が見られるディバイソンとカノンフォート。
これで「突撃力だけは受け継がなかった」というのはちょっと納得しかねる。やはり、突撃から格闘までこなすと思いたい。
次にブラックライモスと比べよう。
ブラックライモスとの共通性は、そのデザインから明らかだ。脚部の装甲などはほぼコピー品と言える酷似ぶりだ。
ブラックライモスはHiユニット級としては初期の機体だが、中央大陸戦役終了時まで「同クラス中では最強」を誇った傑作機だ。
共和国軍は大いにこの機体を恐れ、対抗機あるいは同コンセプトの機体を開発する必要が出た。
ブラックライモスは、
●超硬度ドリル=格闘 ●大型電磁砲=長~中距離砲撃 ●接近戦用ビーム砲=近距離砲撃 ●誘導ミサイル=対空 ●レーダー・ビークル=策敵
と、素晴らしい能力を誇るオールラウンダーだ。
さてカノンフォートのビームホーンがビームサーベルだとすると…、
●ビームホーン=格闘 ●重撃砲=長~中距離砲撃 ●二連ガンランチャー=近距離砲撃 ●四連速射砲=対空
と、攻撃面では同程度のオールラウンダーになる(四連速射砲の実物は仰角がとれると推測する)。
レーダーやビークルは持たないが、その代わり尾部がジャミングテイルになっており、敵の策敵を妨害する能力を持っている。
ちなみに「このクラスとしては珍しく2人乗りで、複数人で操縦するから能力向上に繋がっている」という点でも両者は一致する。
もう準姉妹機といっていい。
まとめよう。二つ目の理由は、「ディバイソンやブラックライモスと比べ時の対比からそう思える」というものだ。
以上の様に、「ビームサーベル説」は、なかなか説得力があると思う。
では次に、「ビーム砲の類である」側に立って考えてみたい。実はこちらの立場でも、そこそこ説得力のある考察は出来る。
カノンフォートのビームホーンは、ビーム砲だと考える。
口径から考えて、重撃砲よりやや射程距離の劣る中~近距離用の砲だろう。
理由は幾つかあるが、まずは胸部の装備から考えよう。
まず、下部に二連ガンランチャーがある。ここに注目しよう。これは近距離用の装備と見て間違いないだろう。
注目すべきは、その装備そのもの……ではなく、「下部に衝撃砲がない」事だ。
こちらのコラムで書いた通り、衝撃砲は「腹部にもぐりこんだ敵を前方に吹き飛ばし、格闘兵装で倒す為の補助装備」と考える。
ビームホーンがビームサーベルであるなら、ここには衝撃砲が欲しいところだ。
胸部に入った敵を吹き飛ばしビームホーンで仕留める。
衝撃砲を積んでいるのは大型ゾイドに多い。中型以下で積んでいるのは唯一ブラックライモスだが、カノンフォートならパワー負けするまい。
搭載は可能だったと思う。にも関らず、無いのだ。
しかも二連ガンランチャーの付き位置は少々問題だ。首を下げた時、あごに少し触れる位の位置だ。
この通り。
頭部を振り回しての格闘戦には、少々使いづらい配置な気がする。
胸部が衝撃砲になっていたら、ビームホーンは=ビームサーベル状の格闘装備で決定的だったと思う。
しかしそうなっていない事が、どうにも引っかかる。
次に、もう一つの胸部装備に目を向けよう。ガンランチャーの後ろには、大きな物資格納コンテナがある。
「胸部は格納庫になっており、弾薬などの物資をつみ、単独での長期作戦行動が可能である」と設定にある。
要するに輸送機としてもけっこう優秀な事が伺える…のだが、胸部に弾薬をしこたま抱えたまま格闘戦をするものだろうか?
出来れば避けたい気がする。
まあ、この点はディバイソンの例がある以上、ゾイド星の考え方としては間違っていないのかもしれないが…。
それでも、「後方から味方を支援する砲撃に特化したゾイド」という考え方は、このゾイドに非常に似合う。
この時代、既にベアファイターやコマンドウルフ、アロザウラーといった、格闘戦で十分な能力を発揮するゾイドは存在し、生産数としても十分なものがあった。
なので、「それらを後方から支援する為の砲撃に特化ゾイドとして開発されたのがカノンフォートである」と捉えても十分な説得力はある。
このカノンフォートこそが、共和国ゾイドの開発における「特化型」のはしりである。
その後のガンブラスターやハウンドソルジャーは、その「特化」を、より推し進めて開発されたゾイドである。
就役時期を考えても、カノンフォートとガンブラスターにそこまでの差は無い。
カノンフォートが先であるのは確かだが、「カノンフォートの失敗から学んだ設計思想を反映して開発された新鋭機」が、そんなにすぐに開発できるものでも無いだろう。
新兵器の開発にはかなりの時間がかかるはずだ。
そんなわけで、ビーム砲説もなかなか納得できる気がする。
双方の意見をもう一度整理しよう
■ビームサーベルである説
→共和国Hiユニット級は汎用性を持たせる傾向にある為、格闘装備も持つべきである。
そして、その汎用性を求めたがゆえの失敗から後のガンブラスターなどが作られた。
→ディバイソンやブラックライモスと並べた時、格闘装備が無いというのは考えにくい。
■ビーム砲である説
→衝撃砲が無い。また二連ガンランチャーは頭部の動きを制限してしまうので、ビームホーンを思い切り振り回せないのではないか。
→この時期のHiユニット級は、既に格闘力十分な機体は多く存在しており、むしろ支援に特化する機体が望まれた。
そしてその特化型思想の延長線上にあるのがガンブラスターなどである。就役時期を考慮すれば、この方が説得力が高い。
正直、どっちも捨てがたい。
いっそ「内部で2モードの切り替え可能」と捉えた方が良い気がしてきた。
ここからは「内部で切り替え可能」説で考えたい。
「切り替え可能」と考えたのは、角の形状を見た時に思い浮かんだものでもある。
「角をビーム砲にした」機体としては、メガトプロスが思いつく。
さて両者を比べると、カノンフォートの角はビーム砲としてやや大げさな造りをしている。
基部の大きさが妙に大きい。
単にビーム砲を搭載するだけなら、もう少しアッサリした形状・規模で出来たはずだ。
そうなっていないのは、何か別の用途が仕込まれているからだと思う。
それこそが2モード切り替え機能。砲&ビームサーベルである…と思った。
砲として使用した場合、大きさ相応の威力を持つ中距離用ビーム砲となる。
ビームサーベルとして使用した場合、なにしろ高エネルギーの力場を展開し「その場所のみ」に特化したものを作るので、威力は素晴らしく高いものとなる。
反面、高エネルギーの展開はエネルギー消費が激しく、この機構が搭載できたのはパワーのあるカノンフォートならではと言える。
しかしカノンフォートのパワーをもってしても、展開は短時間に限られてしまうものであった。
衝撃砲が搭載されなかったのも、「ビームサーベルの展開に高負荷がかかるから」と考えれば納得できないわけでもない。
二連ガンランチャーは火薬式の実弾砲だ。だからエネルギー消費量的には、ビーム砲よりずいぶん経済的と言える。
衝撃砲だと、どうしても火薬砲よりエネルギーを喰う。
そういえばカノンフォートの角を除く装備には、ビーム系が一切無い。
重撃砲はもちろん実弾砲だし、後部の4連速射砲も実弾砲だ。
「そうやってエネルギー消費を抑えつつ、ビームホーンの出力に回している」と考えれば割と説得力があると思う。
あと、二連ガンランチャーが格闘戦で首を振り回すときの邪魔になるのでは?というのも考えねばならない。
こえはちょっと苦しい説になるものの、砲身を横に向けておけば一応干渉はしない。
また、この砲は「キット的には固定だが実物は俯角も取れる」と思えば解決できる(形状から考えて俯角が取れるのは確実と思う)。
さて、まとめよう。
カノンフォート。
この機体の目的は、①ブラックライモスへの対抗 ②味方部隊への支援砲撃 である。
格闘力でブラックライモスを上回るのは、相当な困難が予想された。
そこで、リーチと威力を共に伸ばすものとして、ビームホーン(力場を形成しビームサーベルを作り出す格闘用装備)が考案される。
エネルギーシールドの開発ノウハウを活かし、ビームホーンの機構は完成する。
しかしビームホーンはパワーのあるバッファロー型機械獣をもってしても、展開時間が限られるものであった。エネルギー消費量が段違いに激しいのだ。
当然ながら、ビームホーンの他にも各種装備は搭載しなければならない。
それら各種装備をビーム系にしては、いよいよビームホーンへ供給するエネルギーが枯渇する。
そこで、この当時としては既に古典的な装備となりつつあった実弾砲を満載した姿で完成する事となった。
機体は、旧式の実弾砲を満載し、しかし一方で最新技術のビームホーンを併せ持った個性的な姿で完成したのであった。
ビームホーンを念頭に置きエネルギー節約を意識して実弾砲が満載されたカノンフォートであるが、もちろんビームホーンを使う機会ばかりではない。
実際の戦場では、格闘戦よりも砲戦を行うケースが多いであろう事が開発段階から予想されていた。
そうなると、常に余剰エネルギーを抱えさせる事になり非常に勿体無い。
そこで、「純粋な砲撃戦、支援砲撃の際はビーム砲としても使用可能なように」内部で2モードの切り替え機構が設けられたのだった。
以上のように考えてみた。
カノンフォートのビームホーン。個人的には「両方の機能を備える」でファイナルアンサーと考えたい。
蛇足。
心情的なものであるが、共和国Hiユニット級の最終号機ということで、これ位の万能さは付加させてあげたいと思ってしまうというのもある。
だからこういう結論を導いたものでもあったりする。
まぁ、そんなわけでカノンフォート。
個人的には良い結論になったかなと思う。この結論の元、脳内バトルを繰り広げていきたいと思う。