衝撃砲を考える

ゾイドの装備には、「どういう機能してるの?」なものがある。
今回はその中で、「衝撃砲」を考えてみたい。

この装備はけっこう昔から謎で、装備した代表的なゾイドはサーベルタイガーやシールドライガーだろう。

その解説は少ないが、バトスト1巻のサーベルタイガーの内部図解によると、
「接近戦の時に用いられる武器で、敵めがけて強力な衝撃波を浴びせる。小型ゾイドなら一撃で吹き飛んでしまう」とある。

「相手を吹き飛ばす」
圧縮した空気を強烈な勢いで撃ち出す空気砲の類…なのだろうかと想像した。昔から何となく普通に火砲なのかなぁと思っていたが、少なくともそれは違うらしい。

余談・・・。
「衝撃砲」というと、どうしても宇宙戦艦ヤマトを知る者としては、ヤマトの主砲を思い出してしまう。
「ショックカノン」「衝撃砲」と呼ばれるヤマトの主砲で、敵艦を一撃で粉砕しうる威力を誇る。まさに主砲と呼ぶに相応しい威力を誇る。
どうしてもこのイメージがあったが、すぱっと切り離す必要があるようだ。

さてゾイドの衝撃砲。
しかし「小型ゾイドなら一撃で吹き飛んでしまう」というのはずいぶん遠慮した威力だ。
「小型ゾイドなら一撃で破壊する」ではなく「吹き飛ばす」のだ。
砲口はかなり大口径なのに、何故。

…とりあえず、衝撃砲を装備したゾイドをすべて出してみよう。
ただ、全シリーズ挙げると多いので、ここではメカ生体シリーズに限る。また「加速衝撃砲」「ショックカノン」というのもあるが、ここでは同列で考えたい。

・サーベルタイガー(三連衝撃砲) ※グレートサーベルも
・シールドライガー(三連衝撃砲) ※シールドライガーMK-IIも
・ブラックライモス(二連装衝撃砲)
・ディバイソン(三連加速衝撃砲)
・マッドサンダー(二連大口径衝撃砲、ショックカノン)
・ダーク・ホーン(大口径三連加速衝撃砲) ※レッドホーンは装備していない
・ガンブラスター(加速衝撃砲)
・オルディオス(加速衝撃砲)
・ガン・ギャラド(三門衝撃砲)
・デスキャット(二連装衝撃砲)

多いと言うべきか少ないと言うべきか…。
だがこうして見ると、何となく衝撃砲の機構と目的が分かったように思える。
四足機に搭載されている事が多い。そして更に、下部に備えているものが多い。

まず四足で下部に搭載した機体を一覧にしよう。
サーベルタイガー、シールドライガー、ブラックライモス、ディバイソン、マッドサンダー、デスキャット
(オルディオスも近い位置に装備しているが、下部でなく胸部に装備しているのでここでは省く)

衝撃砲の機能を「吹き飛ばす」を考えた時、これは非常に上手い装備だと思った。
サーベルタイガーやブラックライモスの最大の武器は、牙や角だろう。
それで噛み付く、突き上げる事こそ最大の見せ場だ。

さて4足ゾイドが最もヤバい状態と言えば、腹の下に潜られたような状態ではないだろうか。
基本的に腹部は下を向いているものだから、装甲は薄くなりがちだ。それは帝国ゾイドであっても例外では無い。
腹の下に潜られたら、牙も角も届かない。そのうえ腹をブチ破られる危機的状況だ。
この状況を一気に覆すのが、衝撃砲だ。
衝撃砲を撃てば腹部にもぐりこんだ敵は吹き飛ばされ、機体の前方に転がる。
そこへ容赦なく牙や角を叩き込むというわけだ。
(ただ、マッドサンダーのショックカノンは極めて小口径なので、吹き飛ばす力があるか少々疑問だが…。名称も変えているし、これは全く別の装備なのかもしれない)

「前方に吹き飛ばす前にそもそも破壊すればいいんじゃない?」という意見もあろう。すなわち同位置に大砲なりを付ければ良い、と。
だが腹部で敵が爆発しようものならそれはそれで危険でもある。
やはり前方に吹き飛ばし、安全なように牙や角で倒すというのは意味がある…と思う。

「衝撃砲とは、猛烈な勢いで圧縮した空気を撃ち出し、敵ゾイドを吹き飛ばす装備である」

 

牙や角を持つが衝撃砲を持たないゾイドも居る…。
レッドホーン、コマンドウルフ、ライジャー、ハウンドソルジャー、ジーク・ドーベル、キングライガー、ガル・タイガー。
一つ一つ見ていこう。
まず、レッドホーンは重要だ。

レッドホーン
 この機体は、資料を見ると、一度共和国軍に鹵獲されている(こちらのコラムの中ほど参照)。
 レッドホーンは解析されているが、その中で興味深いのは「腹の装甲が薄い。土の中からガイサックで攻撃すれば、効き目があるかもしれない」との表記がある事だ。
 この戦法は直ちに実践されたと思われる。そしてそれにより一定の成果を挙げたのだろう。
 後に誕生したサーベルタイガーが衝撃砲を持っていたのは、レッドホーンの苦い戦訓を経てのものと言える。
 つまりレッドホーンの開発時期においては、「衝撃砲を搭載する」という概念がそもそも無かったのだ。しかしその経験が、衝撃砲を生むきっかけとなった。

コマンドウルフ
 共和国で最初に衝撃砲を搭載したのはシールドライガーだ。
 この時期、まだまだ小型化が難しく搭載は見送られたのかもしれない。

ライジャー
 ライジャーは、腹の下まで装甲で覆われている(メカ部分=赤色をしていない)。
 搭載する必要が無かったとも言える。珍しいタイプだ。

ハウンドソルジャー、ジーク・ドーベル
 これらの機体は「格闘戦をする」というより、搭載するランスやブレードを使用した一撃離脱戦法を得意とする。
 なので装備していないのは合理的である。

キングライガー
 キングライガーは格闘戦も行う。今の所、装備していない理由は不明なので後で考えたい。

ガル・タイガー
 ライジャーと同じく、腹の下まで装甲で覆われている。
 (ただしガルタイガーは「装甲」「メカ部」といった単位で色分けされているわけではないので確証は無いが…。形状から判断した)

キングライガーだけは謎のままとしてしまったが…、ひとまず先に進もう。
では次に、「衝撃砲は持っているが下部には付けていない」機体も考えよう。

ガンブラスター(加速衝撃砲)
 ガンブラスターは、ハイパーローリングキャノンの中の一つが加速衝撃砲になっている。
 これは、まぁあれだけ多くの「すべて違うタイプ」のキャノン砲が密集しているのだから、その中の一つが衝撃砲であってもおかしくないだろう。
 また、ガンブラスターはそもそも非常に偏ったゾイドだ。前方火力は絶大だが、後ろを向いた砲が無い。
 機動力も低い。もう前方に向けて撃つ事だけに徹底して特化した機体だ。
 なので、そのようなある目的に特化した機体が下部の防御をおざなりにしていても不思議ではない。

ダーク・ホーン(大口径三連加速衝撃砲)
 ダーク・ホーンの衝撃砲はかなり強力で、「吹き飛ばす」というより、当てればゾイドに大きな打撃を与える事が可能なほどだ。
 (マッドサンダーの背中の衝撃砲も、同様にゾイドを破壊できる程の威力がある)
 おそらく、4足恐竜型ならではの有り余るパワーを活かし、ここまで威力を引き上げる事ができたのだろう。
 すなわち、この両機の背中の衝撃砲は、通常火器と同様、敵ゾイドを破壊する為の装備として良いと思う。

 ダーク・ホーンが胸部に衝撃砲を増設しなかったのは若干気になる。
 先のレッドホーンの例を思い出されたし。ダーク・ホーン時に増設されても良さそうだが…。
 もしかすると、内部的な構造が胸部への搭載を許さなかったのかもしれない。

オルディオス(加速衝撃砲)
 胸部に持つ。サーベルタイガーなどの配置に近いが、下部ではなく胸部なのが特徴だ。
 下部に無いので、腹部にまとわりつく敵を前方に吹き飛ばす事は出来ない。だが、オルディオスは飛行も可能なゾイドなので、無くても良いのかもしれない。

 オルディオスの加速衝撃砲は、新ゾイドバトルストーリーに解説がある。
 「胸部に装備された連装ビーム砲。高エネルギービームを発射して、目標を次つぎと破壊できる」との事だ。
 ダーク・ホーンの衝撃砲と同じく、どちらかというと敵ゾイドを破壊する為の装備として良いと思う。
 しかし…、その解説文はやはり気になる。空気砲ではないのか…?
 ちょっとややこしくなってきたので、いったん置いておいて先に進みたい。

ガン・ギャラド(三門衝撃砲)
 この機体は空戦をこなす。対オルディオス用の切り札だ。
 もしかしてオルディオスの鋭い突っ込みを受け止める用途か、あるいは空中戦で相手の姿勢を崩す為のものとして装備されているのではないかと思う。
 空中戦…、どうしても二足/四足の切り替え機構を有するガン・ギャラドは、純粋な空戦機いは運動性で劣るだろう。
 レイノスやサラマンダーF2だ。
 それらが接近し小回りを活かした格闘戦を挑めば、さすがにガン・ギャラドとて苦戦は免れまい。
 そこで火炎放射だったり衝撃砲だったり、「相手に致命傷を与えるものではないが大きく動きを減じる装備」を装備しているのは上手い。
 恐らくガン・ギャラドはこれらの武器を使用し相手が怯んだ一瞬のスキに仕留めるのだろう。

と、こういう風に衝撃砲を考えてみた。

 

ついでなので、搭載していないゾイドについても考えたい。全ゾイド検証しているとキリが無いので、大型ゾイドに絞る。
…というか、そもそも衝撃砲を搭載しているゾイドを見ると、ほとんど大型だ。唯一の例外はブラックライモス。
ここから考えると、ある程度以上の重パワーが無いと、そもそも搭載できないと考えた方が良い気がする。
衝撃砲は、割とパワーを使うものなのだ。
こう見ると、改めてブラックライモスの重パワーが凄い事が分かる。

また、先ほどキングライガーが衝撃砲を持たない理由を「謎」としていたが、ここで解決した気がする。
「衝撃砲は比較的大きなパワーが必要なので、搭載するのは大型ゾイド(もしくは匹敵するほどのパワーを備えた中型)に限られる」
中型でそこまでパワーが無いキングライガーは、そもそも搭載できなかったと考えたい。

話が少し横にそれたが、それでは搭載していない大型ゾイドを考える。

ビガザウロ、マンモス、ゴジュラス、ゴルドス、サラマンダー、ウルトラザウルス
 これらは、まだ開発時期において衝撃砲が開発されていなかったと思う。
 衝撃砲の初搭載はサーベルタイガーだ。
 そして共和国がその技術を得たのは、サーベルタイガーを鹵獲し解析した時だろう。そしてそれを搭載したのがシールドライガーだ。
 つまり、それ以前に登場したこれらのゾイドが衝撃砲を搭載していないのは当然である。

ディメトロドン
 もともと戦闘用ではなく後方支援用のゾイドだ。戦闘用の兵装が少ないのは当然である。
 というか根本的な事を言うとディメトロドンは脚が短い。胸部に付ける事が、そもそも構造上不可能である。
 仮に付けたとしても「衝撃砲で前方に吹き飛ばす→格闘用の兵装で攻撃する」というコンボがディメトロドンには使えない…。
 やはり装備していないのは当然だと思う。

デスザウラー
 デスザウラーは二足歩行ゾイドだ。運動性能は並の4足ゾイドより遥かに高いだろう。
 つまり地中から奇襲されても、その場で瞬時に対応し避ける事が可能だと思う。
 従ってわざわざ装備する必要は無い。

デッド・ボーダー
 これに関してはデスザウラーと同じ理由になると思う。

ガンブラスター
 ガンブラスターはそもそも非常に偏ったゾイドだ。
 前方火力は絶大だが、後ろを向いた砲が無い。
 機動力も低い。もう前方に向けて打つことに特化した機体だ。
 なので、そのようなある目的に特化した機体に搭載されていなくても、それは不思議ではない。
 もう一つ言うと、脚が短い。ディメトロドンのような理由もあったと思われる。

ギル・ベイダー
 飛行ゾイドなのでそもそも必要ない。
 ガン・ギャラドと同じく運動性ではサラマンダーやレイノスに劣るだろうが、全身に武器を満載しており、衝撃砲を使うまでも無くその武器でそもそも落とせる。

という風に考えてみた。

では、最後に、先送りにしていたオルディオスについて改めて考えたい。
オルディオスの加速衝撃砲は「胸部に装備された連装ビーム砲。高エネルギービームを発射して、目標を次つぎと破壊できる」の解説がある。
「衝撃砲とは、猛烈な勢いで圧縮した空気を撃ち出し、敵ゾイドを吹き飛ばす装備である」としたが、この説明文とは明らかに矛盾する。
しかし、ふと思った。
オルディオスのものは"加速"衝撃砲だ。

「衝撃砲=空気砲」で、「加速衝撃砲=ビームと一緒にハイブリッドで発射できる敵ゾイドに打撃を与え得る威力を持つ衝撃砲」ではないかと思った。
当然、加速衝撃砲の方が高威力だが高エネルギーが必要だと思う。
では、衝撃砲と加速衝撃砲を装備したゾイドを分けてみよう。

衝撃砲
・サーベルタイガー
・シールドライガー
・ブラックライモス
・マッドサンダー
・ガン・ギャラド
・デスキャット

加速衝撃砲
・ディバイソン
・ダーク・ホーン
・ガンブラスター
・オルディオス

マッドサンダーが例外になっているのが多少気になるが…、基本的に加速衝撃砲を装備したゾイドの方が、より重パワーなゾイドである傾向がある。
(ガン・ギャラドについては先に書いたような用途で使用するだろうから、わざわざ"加速"にする必要が無かったと思われる)

加速衝撃砲を持ったゾイドの中でも、ディバイソンの砲はサーベルタイガーやシールドライガーの衝撃砲に近い形状をしている。
対し、ダーク・ホーン、ガンブラスター、オルディオスの砲は、一般的なビーム砲に近しい形状をしている。
「加速衝撃砲=ビームと一緒にハイブリッドで発射できる、敵ゾイドに打撃を与え得る威力を持つ衝撃砲」であり、加速衝撃砲の中でも、
「ディバイソンのものは比率として"吹き飛ばす"事に重点が置かれた構造である」
「ダーク・ホーン、ガンブラスター、オルディオスの砲は、ビーム砲的な効果に大きな比率が置かれている」
のではないか。

「ビーム砲的な効果に大きな比率が置かれている」のなら通常のビーム砲で良い気もするが、それはまぁ、「空気砲でもある」という事で、着弾時に押す力が加わっており、「相手の姿勢を崩しながら砲撃できる」という利点があるのだと思う。

 

以上、衝撃砲。
途中でややこしい部分や、オルディオスの辺りは正直こじつけっぽい部分も出てしまったが…、おおまかにはそのような装備だと思う。
マッドサンダーの事もあり、まだまだ考察が不十分な点も否めないが…。
ただ、衝撃砲の基本が「空気砲」という事は、一定の説得力があると思った。

それは四足ゾイドに搭載される事が多く、牙や爪を活かす為にある。
こうして見ると非常にゾイドらしく、面白い装備だと思う。

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