ゴジュラスのタフネスを考える
「防御力が高いゾイド」と聞いた時、何が思い浮かぶでしょう。
おそらくマッドサンダーが最も多いと思います。グスタフもなかなか多いでしょう。
共通しているのは装甲の分厚さ。
どちらもモチーフ由来の分厚い装甲を有し、敵弾に耐えます。
もちろん、それは正しい。装甲が分厚いゾイド=防御力が高いゾイドと考えて間違いない。
ですがメカ生体ゾイド初期の時代、装甲はさほど抜きん出ていないにもかかわらず、驚異的な撃たれ強さを発揮したゾイドが居ます。
それはゴジュラス。
…一応、ゴジュラスの装甲は非常に強固です。それは間違いありません。
同じボディフレームを使用したゾイドマンモスは145t。対しゴジュラスは230t。体格は同程度なのに、実に85tもの差があるのです。
この重量差は、装甲の重さも大きな要因でしょう(ちなみに85tといえばタイプゼロ装備時のライガーゼロと同じ重量である)。
ただゴジュラスを見ると装甲部分は少ない。むき出しのメカ部分が多い。
前後脚の関節部などは強固にガードされているものの、それ以外は非装甲部が目立ちます。かなり極端な集中防御方式を採った設計です。
個人的に、前面(腹部)をガードしていないのはとても気になります。なお前面をガードしていないのはデスザウラーにも共通しています。
ゴジュラスは格闘戦を最も得意とするゾイド。基本戦術は、撃たれながらもそれに耐えて接近し、強引に格闘戦に持ち込むというもの。
レッドホーンをその戦術でよく倒している……のですが、この戦術を採るのなら、前面は最も分厚くガードしそうなものです。
なにせ、「撃たれながらも前進する」のだから、撃たれる前提。ガードしたいのは当たり前の考えです。
いくら強固な装甲があっても、それがない部分を狙われたら意味がない。
あのマッドサンダーも、正面ならデスザウラーの荷電粒子砲に耐える。だが飛行タイプのデスザウラー(デスウイング)に空から撃たれて背中に直撃。大破炎上した事があります。
さてゴジュラス。
先にも書居た通り、驚異的に撃たれ強い。
レッドホーンの巨砲に撃たれてもなお接近し、格闘戦でねじ伏せる。サーベルタイガーに撃たれても絶えまくり、最後には捕まえて仕留める。
…MK-II(量)のイメージだとどうしてもすぐにやられる印象がありますが、ノーマルタイプは本当に撃たれ強いゾイドでした。
まさに驚異的なタフネス。
これはどこからくるのだろう。不思議です。前面は全く装甲が無いのに。
これを考えた時、ゾイドの防御力は「装甲」以外の要素でも捉える必要があるんじゃないかと思いました。
学年誌の資料に、このような資料があります。
<小学三年生 1986年5月号より>
アイアンコングが就役した直後くらいの記事で、細かい評価がしてあります。ここから導けそうな気がします。
この表で興味深いのは、「装甲の強さ」「頑丈さ」の項目がある事です。
防御力に関する項目が二つあるのです。
防御力とはこの二つの概念で考える必要があるのでしょう。
一つは「装甲の強度」もう一つは「頑丈さ」で、この二つの総合=防御力。
一つ目は分かりやすいです。
では二つ目は何か。「頑丈さ」とはいったい何ぞや。
これは「内部メカの頑丈さや信頼性」だと思いました。
「内部の頑丈さ・信頼性」
メカニックにも色んなものがあります。例えばエンジンの話をします。
航空機用のレシプロエンジンには水冷エンジンと空冷エンジンがあります。
エンジンは熱くなるとオーバーヒートしてしまうので、常に冷却する必要がある。それを水でやるか空気でやるかの差です。
左が水冷エンジン(アツタ31型)。右が空冷エンジン(ツインワスプ)。
水冷エンジンはとにかく撃たれ弱い。
一箇所に被弾しただけですぐに全体がダメになり、冷却機能が完全ストップする。結果、被弾から数分でもれなくオーバーヒートして墜落の憂き目と相成ります。
対して空冷エンジンは頑丈。
被弾して「当たった部分」が壊れても、出力が落ちる程度でしぶとく回り続けます(もちろん被弾箇所が悪かったり何発も喰らってダメージが蓄積すればその限りではない)。
信頼性は非常に高い。
しかも構造が単純なので整備が楽。対し水冷エンジンは部品点数が多く構造も複雑なので整備士泣かせです。
…もちろん液冷エンジンのメリットもります。
左が水冷エンジン搭載機(飛燕)で、右は空冷エンジン搭載機(零戦)。
見て分かるように、前面の面積は水冷機の方が小さい。水冷エンジンは空気抵抗を抑えた高速機を造るのに向いています。
また駆動時の騒音が低いのもメリットです。ただその代わり、先に書いたように整備性や耐久性は低い。結局、どちらが決定的に良いというのは無く、一長一短と言えます。
高性能と引き換えに整備が難しくなるのは宿命です。
レーダーに映らないステルス爆撃機B-2は、その高性能と引き換えに、劣悪な整備状況があります。
機体表面を常に磨き上げておかないとステルス性が発揮できないのです。その為、この機体は維持するだけで莫大な整備費用が発生します。
B-52は古典的な形状をしていますが、成熟した技術で作られているので整備は非常に容易です。どんな時でもフルに性能を発揮します。
その分、もちろん性能は最高級ではないのですが。
おそらく、ゴジュラスの内側は、成熟した信頼ある技術で作られているのだと思います。
ゴジュラスは当時の最高級の技術を投入された……のは確かですが、基本構造は、ビガザウロから続く巨大ゾイドのボディフレーム製造技術を成熟させたものなのでしょう。
だから非常に丈夫であり、撃たれても完全停止する事が少ないのだと思います。
さてゾイドは生物です。この部分は活かして欲しいと思います。
この部分も踏まえた時、「装甲の強さ」「内部の頑丈さ・信頼性」は、どう捉えるべきなのでしょう。
思うに、装甲の強さは「皮膚や外骨格がどの程度強固か」であると思います。
では「内部の頑丈さ・信頼性」は何かというと、その生物の「生命力がどの程度強いか」だと思います。
トリケラトプスやダンゴムシは、装甲を分厚くすれば良いモチーフ消化だと言えます。
一方で、「生命力がどの程度か」というものも考え、内部的な頑丈さ・信頼性に結び付けて良いと思います。
ゴジュラスに関して言えば全くその通りになっていると思います。
装甲は心もとない程度でしかないが、ティラノサウルスを思わせる圧倒的な生命力の強さ=頑丈さを誇る。
これにより被弾に耐え得る。
「防御力」というと、装甲ばかりに目を奪われがちです。
ですが生物のより深い部分を考えてみると、よりゾイドらしい仕上げが出来ると思いました。
ゴジュラスやデスザウラーの前面装甲が無いのは不思議と書きました。
それはそうです。前面を装甲で覆わないなんて。
ですが、生物の腹部は実際に弱い。それを模して、あえて装甲を廃止しているのでしょう。
その分、ティラノサウルス由来の頑丈さでもって耐える。一見すると不思議なようですが、深く考えると、まさにパワフルなメカ生体な構造だと思えます。
防御力を「モチーフの生命力」とあわせて考えると非常に面白い。
装甲強度の他にも、もっともっと深い部分での耐久性を考えていけば、より魅力的なゾイドが生まれそうな気がします。