突撃ゾイドの戦術

EPZ-001レッドホーン。RBOZ-006ディバイソン。
共に頭部に付けられた角による突撃を得意とするパワフルなゾイド。

この二機を見ていると、ふとレッドホーンVSゴジュラスと、ディバイソンVSデスザウラーの戦力差は似ているなと思った。

レッドホーンもディバイソンも4足の突撃機。
対するゴジュラスとデスザウラーは、格闘戦を得意とする二足歩行恐竜型。
レッドホーン:94t ゴジュラス:230t
ディバイソン:230t デスザウラー:400t
重量のバランスも割と似てる。

ただディバイソンはデスザウラー相手にそこそこ善戦しているのに対し、レッドホーンはいい所が無い。
いつもゴジュラスに捕まって散々な目にあっている。
これは何でだろうなあと考えた。
これに対し、レッドホーンとディバイソンでは、戦い方が違うのかなと思った。

レッドホーンの背中の砲は、見た目からして中・長距離用の砲だと思う。

恐らくその設計思想は、「遠距離から砲撃しダメージを蓄積させる→相手が弱ったところで突撃し角の一撃で止めを刺す」というものだろう。
これがゴジュラスに通用しなかったのは、「予想以上にゴジュラスが頑丈で砲撃で有効なダメージを与える事が難しかったから」だと思う。
まさにバトルストーリー1巻冒頭の、ゴジュラスVSレッドホーンの戦いだ。

ディバイソンの砲は、見た目からして中・短距離の砲だと思う。砲身が短いので長距離は厳しかろう。

その戦い方は「まず最初に角で突撃し、体勢を崩した相手に砲撃で追い討ちをかける」というものだろう。

 

レッドホーンはまず砲撃しダメージを与えようとする事がミスだったのかもしれない。
なぜなら、砲撃を仕掛けたら、当然自分の位置がバレる。
それでも有効なダメージを与えられるのなら良い。だがそれが、ゴジュラス相手にはままならなかったのだ。
結局、レッドホーンが取った戦術は、自分の位置をいたずらに知らせ、あまり有効でない砲撃を放った後に突撃するというものでしかなかった。

レッドホーンを開発していた時期における帝国は、ゴジュラスがどの程度頑丈かなど知らなかっただろう…。だから、まぁ無理からぬ事だと思うが。
しかし結論としては、レッドホーンは相手に充分な迎撃体勢をとらせた上で突撃するという、わざわざ負けに行ったような戦い方をしていたと言わざるを得ない。
波状攻撃を仕掛けたつもりが、戦力の逐次投入になってしまっていたわけだ。

もしも同じような戦術でディバイソンがデスザウラーと戦っていたならどうだろう。
17門突撃砲が有効なダメージを与えるとはあまり思えない。むしろ前もって自分の位置を知らせるだけの効果しか生まなかっただろう。
位置を把握したデスザウラーは、ディバイソンの突撃を容易に止める。

ディバイソンは賢かった。
17門突撃砲を見舞ったところでさして有効じゃない。突撃をかますにも事前に察知されれば捕まってしまう。
それをよく知っていた。
デスザウラーから絶対に見つからないように潜んで、ふいに全力の体当たりを見舞う。
さすがに何の構えも無いところに全力の体当たりだ。思わず体勢を崩す相手に追い討ちで17門突撃砲を浴びせかけ、体勢を立て直す事すら阻害する。
砲は近距離で撃つと威力が倍加する(飛べば飛ぶほど砲弾の速度が低下する為、撃ち出した瞬間が最も威力が高い)。
デスザウラーに比べれば非力なディバイソンがあれだけ活躍できたのは、この戦い方の差にあると思った。

 

何故こんな戦法の差が生まれたのだろう。
しかしこれは深く考えると当然であると思えた。
ディバイソンの就役はZAC2046年後半で、デスザウラーの就役から2年ほど後。
デスザウラーはこの間、共和国が誇るゴジュラスMK-IIやウルトラキャノン砲の猛烈な砲撃に耐えている。
「砲撃で倒す事は無理だ…」
かくしてディバイソンは、とにかく超硬角を使用した突撃に特化する事となり、搭載する火器は全て突撃の補助として撃ち込むようにしたのであった。

ではレッドホーン。
レッドホーンは帝国初の大型ゾイドである。
就役時はゴジュラスが猛威を振るい無敵神話を築いていた時代だ。
だがレッドホーンは帝国初の大型ゾイドである。
帝国は初の大型ゾイド開発に成功し、またレッドホーンの砲は当時としては両軍通じて最大の大きさだった。
帝国軍は自信満々でこう思ったに違いない。
「この砲で貫けない敵など居ない。万一、敵がしぶとく生き残っていたとしても弱りきったところを突撃すれば仕舞いさ。レッドホーンは最強だ!」

実際はゴジュラスの頑丈さは呆れるほどであり、その戦術は全く通用しなかった。
むしろレッドホーンが負けるための戦い方であったのだ…。

 

逆に言うと、ディバイソンのような戦術を使えば、レッドホーンがゴジュラスを倒す事も夢ではないと思った。
とにかく潜んで奇襲の機会を狙う。
レッドホーンは全高が抑えらえれているので、まあ可能だろう。
いきなり体当たり。さすがによろけたゴジュラスに追い討ち。全砲を飽和状態で撃ち込む。
突撃機仕様として、背中の方は若干の装備変更を行おう。こうすれば、少なくとも多少マシな戦いはできるだろう。
あわよくば倒せる可能性も大いにある。

これは凄く重要だと思う。
今までの問題点というのは、「どうあがいてもゴジュラスを倒すに至れなかった」という点だ。
ゴジュラスは傷ついても結局倒れない。戦いの後は自軍基地で再び整備と補給を受け復活する。
対しレッドホーンは常に何機ずつか損失してゆく。

しかしこの戦術を使う事で、苦戦しつつも何割かのゴジュラスが完全撃破に追い込まれるとしよう。
そうなると、ゴジュラスとレッドホーンの生産性の差が重要さを増してゆく。
今までは、レッドホーンが生産数で勝りつつも、生産した分だけゴジュラスに壊されていた。
ゴジュラスは生産数は少ないが、なにしろ破壊されないので数が減らなかった。
このサイクルがあり、共和国は優位性を会得していた。

生産性の良いレッドホーンが何割かだけでもゴジュラスを完全撃破させる事が出来たなら、最終的に両軍の戦力差を大きく変えたかもしれない。
あんがい、帝国にとって必要な対ゴジュラス用決戦兵器はアイアンコングでなくレッドホーン改だったのかもしれない。
もちろん、「待ち」の戦術はいつでも使えるわけではない。
帝国領土に攻め込んできたゴジュラスを迎え撃つ分には良かろう。だが共和国領土に侵攻する時はやはり苦戦しただろう…。

ともかく二機の突撃機。そしてそれに相対した二機の二足歩行ゾイド。
その戦い方を見比べると非常に興味深いと思う。

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