火器かくあるべし

今回のコラムは、前回のコラム(モチーフから導く性能)の続きになる。

前回のコラムで書いた通り、元である生物の力を活かしてこそゾイドは魅力的であり、なおかつ種の多様性を保てるものと思う。
また、そうしてこそ、インフレをある程度防止出来ると思う。

種の多様性というのは、空戦を行うならライガーでは勝てない。空に適したモチーフが必要という事だ。
「ある特定の場面」という戦術レベルの展開なら、勝ってしまうのもアリだ。
だが戦略レベル…、量産機としてのゾイドを考えると、やはり各分野の専門家が強いのが良いと思う。

なぜ機獣新世紀以降でモチーフからの逸脱が進んだかを考えると、メカ生体時代にリリースされたMK-IIタイプの存在が大きいと思う。
ゾイドゴジュラスを例にすると、ノーマルは格闘戦メインのファイターであった。火器は付いているがあくまで補助であった。
だがMK-IIは格闘戦と全く対極にある、射程距離を限界まで伸ばした長距離キャノン砲を装備する砲戦ゾイドであった。

メカ生体の時代における基本は「モチーフ優先の能力」であったと思うが、MK-IIタイプに関しては、「外付けの武装を優先する能力」であった。
「モチーフに忠実なノーマル」があった上で「より兵器的な側面を強調した強化タイプ」が存在するのは良い事だと思う。
あくまで、ノーマルがあった上での強化タイプだ。
ただ、シリーズが長く続く内にその感覚は薄れ、次第にMK-IIタイプの能力が「当初は強化された特別仕様」だったのに「当たり前」と化してゆく。
それゆえに、「MK-IIゾイドが基準」のようになってしまい、それでモチーフを越える能力を持ったゾイドが多数誕生したのではないだろうか。

機獣新世紀ゾイドばかりを例に出してしまっているが、これはメカ生体ゾイドの暗黒大陸編以降に言える事だ。
ジークドーベルやハウンドソルジャーは、なぜ自前の装備でなく外付けのヘルブレイザーやクロスソーダで戦う。
数が少なければ、「例外」として捉える事も可能だっただろう。
だが次第にモチーフを越える能力を持ったゾイドが標準化し、そしてそのままのノリで1999年以降に展開したように思える。
更に、機獣新世紀ではその傾向が加速した。
まぁ、確かにカッコいいし難しい所であるとは思うが…、この辺のバランスは今一度見直して欲しいと強く願う。

 

さて、今回は、前回のコラムの続きだ。こんな疑問が出てくるのではと思った。
「モチーフを活かせモチーフを活かせと言ったら、砲戦なんて出来ないのでは?」
砲戦。すなわち投射武器。
砲である。「砲」という機能をモチーフから導くのは一見難しそうだ。
ゾイドにはノーマルタイプの段階で、既に強力な火器を備えているものもある。

「ノーマルタイプの段階で既に強力な火器を備えているゾイドが居てはいけないのか?」

今回は、この事に対して考えたいと思う。

さて、モチーフから砲を導く事は可能だと答える。
まず火器であるが、そりゃあ戦闘兵器ゾイドだから付けるべきだと思う。
こういう議論をすると0か100かみたいに受け取られる事があるけどそうじゃなく、全てはバランスの問題であると思う。
ゴジュラスギガは確かにモチーフを活かしている意味では良いと思うが、極端すぎる。

モチーフの能力を活かしてた格闘力こそ至宝な機体は、火器はそれを越えない程度に付ければ良いと思う。
例としてはゴジュラスやサーベルタイガーだろう。火器を持つがあくまでメインは格闘力なのは間違いない。

これは分かりやすい例だ。

次に、そこそこの大きさの火器を積んでいるゾイドを見てみよう。
例えばレッドホーンやマッドサンダー。

これは、確かに強力な砲を積んでいる。だが結局のところ、最大の武器はモチーフ由来の突撃だ。
「強力な火器を持つが、あくまでメインの戦法はモチーフ由来」
この辺りが、搭載する火器のバランスとしてギリギリの所だと思う。

ではウルトラザウルスのような砲戦こそ命なゾイドを考えたい。

大型の火器を積んでおり、それで戦う。ウルトラザウルスは砲力こそが存在意義なゾイドだ。
だが、ウルトラザウルスの砲力はモチーフを上手く活かしたものだと思う。
何故か。
言うまでも無くモチーフのカミナリ竜は大砲を持っていない。
だが巨大だ。最大級の恐竜をモチーフとしているのが最大の特徴と言える。

さて大砲。
巨大な大砲を撃つと、凄まじい反動がある事をご存知だろう。
ハンドガンですら、そこそこの反動がある。大砲は比べ物にならない反動がある。
戦艦は概して巨大な巨艦であるが、なにゆえに大きいかというと、主砲を撃つ為だ。
小さな船に乗せようものなら撃った反動でマトモな操舵が出来ない。
砲を撃つ反動を受け止める母体が無い限り、砲を搭載する事は出来ない。

こちらは米戦艦アイオワの主砲発射シーン。アイオワの主砲口径は40cmである。
これを見れば小さな船に搭載しても撃てない事がよく分かると思う。

大砲を撃つには十分な母体が必要だ。
この点で巨大な4足恐竜ほど適任なものはあるまい。
恐竜の巨大さは改めて説明するまでもない。中でも、カミナリ竜。角も無ければ帆もない。格闘にも電子にも活かしづらい。
いよいよもって巨体こそが強調された存在で、大砲を持つに相応しいものだと思う。
もう一つ加えると、首が長く高いのも特徴的で、これは射撃管制の点からも最適だ(高い位置に測距儀を付けないと正確に射撃できない)。

火薬砲ではなくレールガンなどの電力で放つ砲であったなら、どうだろう。
レールガンを充分な威力で発射するには相応の大電力が必要であるから、やはりパワーがある巨大ゾイドにこそ相応しいだろう。

以上から説明できるように、ウルトラザウルスは火器を持つに相応しいモチーフを選んだと思う。

こんな風に考えて大砲を持つゾイドを考えて欲しいなぁと思う。
簡単に言うとモチーフを見ると「確かに大砲付いててもいいと思うわ」と言える・直感できるモチーフが望ましい。

 

この論から考えると、例外となるのはMK-IIタイプやデスザウラーだろう。
MK-IIゾイドは先に書いた通り、外付けの武装を優先したものだから仕方の無い所だろう。
そしてデスザウラーは、先のコラムに書いた
「基本的には「生物の生態に忠実な機能」の機が多いからこそ、たまに出る生物からかけ離れたような装備を持つゾイドが引き立つものでもある」

この部分に該当する例外的なカリスマゾイドだと思う。

矛盾した事を言うが、基本的にはモチーフに忠実なモチーフが望ましい。そして火器搭載機もモチーフから説得力が感じられるものであって欲しい。
だが一方、忠実な機体ばかりでは意外性が無く少々弱いとも思う。
だから「ごく稀に」「例外的に」という範疇で、デスザウラーのような特別機を出してアクセントを与えるのも重要だと思う。

改めて惜しいのは、次第に何となく、MK-IIタイプやデスザウラーのようなものがゾイドの標準的なものとなっていった事だろう。
次第に、ノーマルタイプでも火器をふんだんに搭載し、それを最大の特徴とした機体が増えていった。
そんな中、ディバイソンは光るものがあった。

このゾイドはとんでもない重武装を誇り、ゴルドスの主砲と同じ口径の砲を17門も持つ(砲身が短いので単発での威力は劣るだろうが)。
だが設定が目を引く。「突撃砲」だ。
ディバイソンはあくまでパワフルなバッファローであり突撃する事が最大の戦法だ。
この強力な砲は、その突撃の威力を更に強調するものとして付いている。火器であるが突撃を強調しているという、素晴らしい設定の砲だと思う。

ただ暗黒大陸編以降は、モチーフ無視が飛躍的に加速度的に増えていった。
その先陣はガンブラスターであったと思う。

ガンブラスターだけなら、「例外」と捉えることも可能だったと思う。
だが外付け装備を強調した方向性は以後加速してしまい、モチーフから導く性能とは隔離が激しくなっていった。

機獣新世紀ゾイドのライガーゼロは、その名の通りいちど原点を確かめた機体だったと思う。

基本状態ではモチーフの持つパワフルさを前面に押し出しており、しかしそれで物足りないユーザーにはCASで追加武装を提供した。
だが、原点を見直したのは良いが、その後またモチーフとの隔離激しい機体が多くでてしまい、その効果は局地的に留まってしまったと思う。

このコラムを書いている時点で最新シリーズであるところの、ゾイド30周年記念・ゾイドオリジナルでも、モチーフへの忠実さは全く無視されていたと感じる。
そのモチーフからの隔離は、メカ生体暗黒大陸編や機獣新世紀シリーズの物と比べても、飛躍的に加速しすぎている。
その上でパイロットとの絆云々はストーリーや設定に出てきていたので、どうもアンバランスな印象を持ってしまった。

どうも、自分の思いと公式の提供がかなりズレてるなと思うところが強い。
もちろん、これは自分の意見を正しいと主張するものではない。
ただ正直、最近の公式は、深い考えなしで暴走している感じは否定しきれないと思う。

今現在、ゾイドは休止中だ。
だからぜひとも、休止している今だからこそ出来る事として、ゾイド本来の装備とは何かという議論が活性化することを強く願っている。

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