頭部デザイン -メカ生体ゾイド 共和国小型-

ゾイドが持つ独特の要素の一つに、共通コックピットがある。
これが、色んな意味で大好きだ。

まず共通規格=大量生産品であるというのは非常にミリタリー的であるという事。
そして個性という意味でも良いと思う。
共通コックピットであるから、それを使用したゾイドには特出した個性が無い。しかしそれがいかにも戦場の「歩兵」という感じで好きだ。

メカ生体ゾイドの頭部デザインは、小型の多くは共通コックピットを用いており、比較的無個性だ。
中型になると個性的なデザインになるが、面構成は単純なものが多い。大型になると、超個性的で作りこみも激しいものになっている。
この、大型になればなるほど作り込みが増してゆく感じがいい。

今回は、共和国小型ゾイドの頭部デザインを詳しく検証し、共通コックピットを改めて考えたいと思う。
リリース順に見ていきいたい。

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ガリウス

記念すべき共通コックピットを使用した第一号ゾイド。
共通コックピットをストレートにそのまま使用している。アレンジは何も無い。

共通コックピットを詳しく考えよう。

デザインは操縦席にキャノピーを貼ったという感じで、非常にスタンダードな形だと思う。
ヘリコプターの操縦席のようでもある。大型キャノピーが美しく優雅である。
ただ正直に言うと、機動戦士ガンダム('79)のガンタンク頭部の影響が多少あると思う。

耳が無い事を除いて、酷似している。

後部にはノズルのようなものは確認できない。従って、緊急脱出装置は兼ねていないと思われる。
このコックピットは戦争が激しくなる前に作られた旧式だから、そのような要素が無いのかもしれない。
あるいは付ける事は可能だがコスト面からオミットされたのかもしれない。

側面にハードポイントを各1で備える。
これにより、後に様々なアレンジが生まれる事となる。

ガリウスは、この共通コックピットをそのまま使用している。
やはりこのコックピットを使用した1号ゾイドなだけに、そのデザインをストレートに見せたかったのだろう。

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グライドラー

第二号ゾイド、グライドラーも、共通コックピットをそのまま使用している。
設定上鳥型であるが、クチバシを付けるという発想は無かったのだろうか。この点は、後にペガサロスで解消される。

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エレファンタス

第三号ゾイド、エレファンタスは「共通コックピットに専用パーツをプラスし個性を出す」ことを始めて行ったゾイドだ。
ゾウ型らしい大きな耳があり、更に牙の形を模したビーム砲が付いている。
これにより、共通コックピット自体も何となくゾウっぽく見えてくるから不思議だ。

ただ何故か、鼻は再現されていない…。ゾウ最大の特徴と言えば耳より牙より鼻だと思うのだが………。
エレファンタス(というか共和国初期ゾイド)は、モチーフが「生物」ではなく「生物の骨格」だ。
であるなら、鼻が無いのは納得できるかもしれない。鼻に骨はないから。

しかし、それを言ってしまったら耳にも骨は無い。
個性を出したのは良いが、若干、中途半端に終わってしまったように感じる。
ハードポイント位置の関係上、「耳は付けやすく鼻は付けにくい」事は分かるが…。
まだまだ、手馴れていない感じだろうか。

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グランチュラ

頭部はストレートに共通コックピットだが、下部にビーム砲が二基ある。
これは蜘蛛の牙を模していると思われる。

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アクアドン

頭部はストレートに共通コックピットを使用している。
モチーフがモチーフなだけに、プラスパーツを付けにくかったのだろうか。

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ゴルゴドス

頭部の両脇にビーム砲を装備し、個性を出している。
しかしながらステゴサウルス的ではない。
ゴルゴドスは「共通コックピットに専用パーツをプラスし個性を出す」事をしているが、その方向がモチーフ再現に向いていないという点で奇異である。

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ハイドッカー

頭部はストレートに共通コックピットを使用している。
「モチーフと関係ないものは付けない」というのはゴルゴドスの反省だろうか?

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ペガサロス

鳥型ゾイド第二号であるが、グライドラーより進化が見られる。というのもクチバシが付いた。設定的にも強力な武器になっている。
クチバシの他にも専用パーツがあり、両頬にビーム砲が付いている。
似合っているとは思うが、クチバシの個性を強調するならば、両頬の装備はいっそ撤去しても良かったような気もする。

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ゴドス

ゴドスは二つの頭部を持つ。
一般仕様機は、従来の共通コックピットを使用している。指揮官仕様機は、別タイプの新型コックピットを使用している。
顔をまるまる取り替え可能というのは、かなり大胆だ。

新型コックピットは、通称「重装甲コックピット」という。

重装甲という割には相変わらすキャノピー式だし、パイプが大きく露出しているので被弾したら脆そうに見える。

デザインは戦闘ヘリのようであるが、それよりも太陽の牙ダグラムのコンバットアーマー・ダグラムの影響が大であると思う。

これはもう、言い訳できない。また、箱裏バリエーションのソルティックに酷似たタイプも有名なところだろう。
今では考えられない程おおらかな時代だったゆえのものであろう。

重装甲コックピットの拡張性は、旧来の共通コックピットに比べて低い。というのもハードポイントが無いので、専用パーツを付加させる事が難しいのだ。
また、造り込みが多く、このコックピットだけで既に表情を持っている。
「基本的に無表情、それゆえに様々な顔に化ける事が出来る」という共通コックピットが目指すべきものとは違う気がする。

機能としては、後部にはノズルのようなものは確認できない。従って、緊急脱出装置は兼ねていないと思われる。

一般仕様機も指揮官仕様機も、余計なものは付けずにストレートにコックピットを使用している。
新しいタイプのコックピットが登場しただけに、両者の違いを分かりやすく示したい意図があったのではないだろうか。

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ガイサック

ゴドスと同じく、二種類の頭部が用意されている。
しかし下部にサソリらしい牙が付いている。これはどちらのタイプの頭部でも同じだ。

重装甲コックピットを使用したゾイドは、ゴドスとガイサックの二種類のみで終わってしまった。
拡張性と汎用性が低い点ゆえに使いづらかったのだろう。

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スパイカー  フロレシオス

頭部はストレートに共通コックピットを使用している。
これら二機が、この共通コックピットを使用した最後のゾイドとなった。

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バリゲーター

バリゲーターは共通コックピットを使用しない最初の小型ゾイドだ。
しかしキャノピー部分のみ、後の新型共通コックピットに流用されている。
もともとは共通コックピットを使用するつもりだったようだが、開発途中で変更になったようだ。

余談だが、このスケッチ通りに作られなくて本当に良かったと思う。

やはりワニといえば口。それを再現するには共通国ピットでは厳しかったという事だろう。
しかし最初に書いたように、キャノピー部分は後に新型共通コックピットに流用されている。
その為、一応は共通部品・規格というイメージもあり、小型ゾイドの中では個性的な顔立ちながら量産型ゾイドに相応しいものも感じさせる。
なおキャノピーの流用というのは特に航空機において地球でもよく行われている。

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プテラス

プテラスの頭部は、新型の共通コックピットが採用されている。
このコックピットは、初代共通コックピットや重装甲コックピットのような、他メディアからのデザイン的影響は認められない。
ここへきてようやく完全オリジナルと胸を張れる共和国共通コックピットが誕生したと思う。


装甲が流麗で、非常にスタイリッシュなデザインだ。
しかしな下部はむき出しのメカが詰まっており、いかにも共和国らしい無骨さも残っており見事な出来になっている。
このコックピットを使用した小型ゾイドは、結論から先に言うと2機しか誕生しなかった。
それはこのコックピットの問題というより、次第にゾイドが大型化していき、マイクロゼンマイを使用したゾイドがそもそもリリースされなくなったからだ。

後部にはブースターがあり、脱出用ビークルを兼ねている。
また、前面に機関銃を持つ。
これは帝国共通コックピットの影響が色濃いように思える。

プテラスは、この新型共通コックピットを、余計なものは付けずにストレートに使用している。
新しいタイプのコックピットが登場しただけに、それを見せ付けたかった思いが強かったと思われる。

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スネークス

新型共通コックピットに、専用パーツを加える事でモチーフを再現している。
やはり初代共通コックピットといい、重装甲コックピットといい、新型コックピットといい、「最初の機はそのまま使用し、二番機以降は専用パーツを加えていく」というのがパターンのようだ。
頭部側面にコブラを模したでっぱりが付いている。

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カノントータス

カノントータスはバリゲーターと同じく、専用のコックピットをもっている。
首が伸縮するギミックを持つゆえに、共通コックピットを使用しにくかったのだろう。
しかしデザインは初代共通コックピットに酷似している。実際、狙っているのだろう。
キャノピー部分は全く同一である。カノントータスのコックピットは、いわば初代共通コックピットのリメイク的な側面もあるかもしれない。

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ダブルソーダ

共和国最後の小型ゾイドで、独自のコックピットを持つ。
キャノピーの流用も無く、唯一、全ての部品を独自パーツとする小型ゾイドだ。
見た感じ、新型共通コックピットを埋め込んで使用する事も可能なように思える。
帝国最後の小型ゾイド シーパンツァーが、かなり無理をしてまで共通コックピットを使用しているのとは対照的である。
「国土・資源に恵まれた共和国、なおかつD-DAY前の平時に設計されたダブルソーダ」「厳しい国土・資源の中で戦時体勢で設計されたシーパンツァー」と考えると納得できるし面白いものではある。
しかし最後の共和国小型ゾイドだけが共通パーツを何も使っていないというのは、少々寂しい気もする。

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番外 グスタフ

グスタフは大型ゾイドだ。当然、その顔は独自のパーツで構成されている…が、キャノピーのみ初代共通コックピットと同じになっている。
これはグスタフ=非戦闘用ゾイド=操縦が複雑でない=大型ゾイドだが小型ゾイド並のコックピットで良いというようなメッセージが込められているのではないだろうか。

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共通コックピットと言っても、そのまま使用しているものから、そのゾイド専用のパーツをプラスして若干の個性を出しているものまで様々だ。
改めて見て思ったのは、共通コックピットとはやはりいいものだなという事だ。
「その軍」という統一感も出ているし、無個性ゆえに大量生産される歩兵ゾイドとしての魅力が出ている。
共和国小型ゾイドは、帝国に比べて、比較的共通コックピットに対するこだわりが弱いと言われる。
確かに、共通コックピットだけで3種類あるし、それを使用していないゾイドも多い。
しかし共通コックピットを使用していなくとも、キャノピーだけは使用していたりして共通性があったりするのは良い配慮だと思う。

今回、こうして共和国側を一覧で見ると、やはり新型共通コックピットの素晴らしさ・可能性を感じた。
この素晴らしいコックピットを持つゾイドが二種類しか出なかったのは惜しすぎると思う。
出来れば今後新たに登場する小型ゾイドの幾つかは、この共通コックピットを使用して魅せて欲しいと思うほどだ。

機獣新世紀ゾイドに出てくる小型ゾイドは、どれも専用の頭部を持っていた。
単純に言えばカッコいいしそれはそれでいい。
しかしながらそれのみに走るのではなく、無骨で、それゆえに魅力のある共通コックピットを使用する小型ゾイドも同時にリリースされるようなものがあれば良かったと思う。
今後、共通コックピットの魅力が更に見直される事を願いたい。

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