キャノン砲の射程距離を考える

ゾイドの華は格闘戦だ思う。肉弾戦の迫力。なんとも野生らしく荒々しく、メカ生体である。
しかし一方、巨大な砲を持ち、その大火力でもって戦場を制圧する砲戦型ゾイドも非常に力強く、同じくらい魅力的だと思う。

 
願わばもっと活躍してほしい。
そして最近は砲といえば荷電粒子砲に偏向しがちだ。そうじゃなくて実弾砲をもっともっと魅力的に描いてほしいと願う。

さて、ゾイドの架空戦記を書いたり読んだりするのが好きだ。
その戦記を書くにあたって、非常に厄介なのが砲の取り扱いだと思っている。もっと具体的に言うと、各砲の射程距離の問題だ。
射程距離が一体どの位なのか。それによってだいぶ書く内容が変わってくる。

例えば、アウトレンジ戦法という戦術がある。
簡単に言うと、こちらが30km先まで届く大砲を持っていて、敵が20km先まで届く大砲を持っていたとする。
この場合、こちら側が30kmの距離をとって攻撃すれば、相手は反撃のしようが無い。
デメリットとしては、遠距離砲撃になるのでそれだけ命中率は落ち、無駄撃ちが多くなる。だが味方の被害が無いという意味では優れていよう。

実際の戦場では、この理論そのままに推移する事はまず無い。
相手は距離を詰めるだろう。詰められた分だけ下がれば良いといわれそうだが、下がるにも限界はあろう。
というか侵攻…、前に進みたくて攻撃しているのに下がりながら撃つとはこれいかに。
また、最大距離での砲撃というのは、本当になかなか当たらない。それも併せて考える必要があるだろう。
砲弾というのは、一点を狙って弾を撃ち出しても、常に同じ所に落ちるわけではなく、どうしても微妙にズレてしまう。最大射程ならなおのこと誤差が大きい。
それこそ弾が尽きるまで撃って当たるかどうかという命中率になってしまうので、結局距離を詰めることになり、双方の弾が届く状況での撃ち合いになる。

それでも、長射程砲に意味が無いわけではない。
最大射程で撃っても、相手が動かない巨大な地上物、たとえば要塞などであればそこそこの命中率を発揮する。
また互いに弾が届く距離で撃ち合ったとしても、相手は限界射程で撃ちこちらは余裕ある距離で撃つとなれば、命中率は我が方が俄然有利となる。

こういう事を考えると、いかに射程距離の設定が欲しいかが分かると思う。
ゾイドは設定が適度に少ないことが逆に想像力をかきたてており素晴らしいと思う。しかし同時に、無いゆえの歯がゆさもある。
どっちが良いとはなかなか決めにくい、難しい問題だろう。

という事で今回は射程距離を考えたい。
ただ今回はいつもにも増して主観が強い事は先に書いておく。

 

さて長距離砲というと、ゾイドでは3大ゾイドが居ると思う。アイアンコング、ウルトラザウルス、ゴジュラスMK-IIだ。
このうち、アイアンコングは射程距離がハッキリしている。
背中の巨大な二連装ミサイルは200kmの射程距離を誇る。右肩の6連発ミサイルは50kmだ。左肩の小型ミサイルは残念ながら不明となっているが…。

ウルトラザウルスの射程はどうだろう。
キャノン砲は正式名称「36cm高速キャノン砲」通称「ウルトラキャノン砲」だ。
このゾイドの射程距離に設定があるかどうか というのは微妙な問題だ。というのも学年誌では射程距離が100kmとハッキリ書かれている。

ただ、再編されたゾイドバトルストーリーの方では明記されなかったから、これを決定的な公式設定として良いかどうかは非常に迷う。
個人的には、100kmという距離は「正しい」と考えて良いと思っている。
その理由はゴジュラスMK-IIを踏まえつつ説明したい。

さてゴジュラスMK-II。

背中に大型のキャノン砲をプラスし、砲戦に対応した改・ゴジュラス。キャノン砲の名称は「長距離キャノン砲」だ。
口径の設定は不明だが、「42cm砲」と書かれた事がある。
キットを見ても36cmウルトラキャノン砲より一回り太いので、42cm砲というのは決定的な設定と思いつつ進めたい。
ゴジュラスMK-IIは対アイアンコング用に改造されたゴジュラスだ。そのコンセプトは「アイアンコングに先制攻撃を浴びせる」事とされている。
では200km以上なのだろうか?正直、それはかなりありえない距離だと思う。

一応、学年誌では、テスト時において「数十キロ先の目標に弾を撃つゴジュラス」という解説文が載った事がある。
ただ、これだけでは分かりづらい。数十キロなら20kmでも90kmでも当てはまってしまい、誤差が大きすぎ参考にならないのだ。

個人的に、ゴジュラスMKIIのキャノン砲の射程は60km程度とするのが妥当と思う。
これには一応の根拠がある。

まず、射程距離60kmでは、「アイアンコングに先制攻撃を浴びせる」と矛盾しているように思える。
ただ、これもまた学年誌の資料だが、対アイアンコング用改造ゴジュラス9バリエーションのうちの一つ「重防御タイプ」を見てみたい。
このタイプの解説、ゾイドバトルストーリー1巻の解説では「コングの二種類のミサイルに耐える」とある。
学年誌の方では、この二種類のミサイルが「6連発ミサイルおよび左肩の小型ミサイル」とされている。
背中の大型連装ミサイルではないのだ。

この二種類のミサイルというのは、初めて9バリエーションのページを見た時から、何となく背中のミサイルと6連発ミサイルの事だと思っていた。
だから学年誌を見た時はかなり衝撃的だった。「そっちかい」と。
しかしよくよく考えると、そりゃそうだとも思った。
さすがにコングの背中のミサイルはでかすぎる。そりゃあ、ちょっとやそっと装甲を加えた所でどうしようもないだろう。
それに、背中のミサイルは2発しかない上に大きすぎて機動力に欠けそうに見える。
つまり、弾数は少ないし避けるのも不可能ではない。この巨大ミサイルに関しては、よほどの事がない限り当たらないと踏んだのではないだろうか。
むしろ脅威はそれ以外。
弾数が多く命中率の高い…、しかもちょっと頑張れば防げない事もないその他のミサイルに対応した方が合理的と考えた方が、合っている気がする。

射程距離60kmの砲でアイアンコングに先制攻撃を浴びせるというのは、同じ理由から導いた。
すなわち6連発ミサイルの射程距離50kmよりも少し長い=先制攻撃できる。

この説に、もう少し肉付けしたい。

先に、ゴジュラスの長距離キャノン砲は42cm砲であるとした。
地球の旧日本海軍が運用した戦艦に「長門」がある。実はこの艦の主砲は41cm砲だ。ゴジュラスのキャノン砲に極めて近い。
そして長門の主砲の最大射程距離は約38.5kmだ。ここからもう少し考えよう。

さてゴジュラスの長距離キャノン砲をよく見ると、後部に4基のノズルが付いている。おそらくこれは弾丸発射時の衝撃を吸収する装置だろう。

ゴジュラスの長距離キャノン砲は、無反動砲であると思う。
42cm砲なんていうドでかい大砲を撃つと、通常とんでもない発射衝撃がある。
ゴジュラスのキャノン砲は、基部が背部ロケットエンジンのナセルに直結してあり、それのみで支えている。
この点は子供の頃から疑問だった。撃ったら衝撃でロケットエンジンが壊れないのか?大丈夫なのか?と。
今こうして考えると、大丈夫な理由が、「無反動砲だから」なのだろう。

無反動砲は、弾丸発射時にその運動量と同じだけの要素(ガスなど)を反対側から撃ち出す。
作用反作用の働きによって衝撃が和らげられ、限りなくゼロに近くなるというわけだ。

ただ良いことばかりではない。
前後に撃つわけだから、どうしても砲弾の運動エネルギーが低くなる。同一の砲弾を使用した場合、通常の砲より弾速と射程が低くなってしまう。
さて、ゴジュラスのキャノン砲を42cm無反動砲と仮定した場合、戦艦長門の主砲41cm砲の最大射程距離38.5kmよりも、少し短くなりそうだ。

しかしゾイドの世界は、地球が既に宇宙開拓をしているような時代だ。そこは加味する必要があろう。
戦艦長門の主砲は確かに先に書いた通りの射程距離だが、同戦艦が居たのは1940年頃の世界なのだ。
「相変わらず昔ながらの火薬砲ではあるが、少なからずテクノロジー進化の恩恵を受けて作られている」事を、バランス良く加味したい。
とすれば、ゴジュラスの長距離キャノン砲…、42cm無反動砲の射程距離が60km程度と導いたのは、まあまあ妥当な線かなと思うのだ。

ウルトラザウルスの射程距離についても補足したい。
先に射程100kmで良いのではないかと書いた。
まず、ウルトラザウルスのキャノン砲の射程距離は、ゴジュラスの長距離キャノン砲よりは長いと思っている。
何故ならば、ウルトラザウルスは、その登場時に圧倒的な火力を謳われた。
「かつてない砲力」
就役時期は、ゴジュラスMK-IIとほぼ同時。プロトタイプまで含めるならゴジュラスMK-IIの方が少し先になる。
「巨大なキャノン砲を4門も搭載している」のは確かに凄い。凄いが、だがゴジュラスMK-IIが二機揃えば追いつかれるのでは少し圧倒感が少ない。
あれだけ騒がれたからには、性能で大きく上回ると思いたい。

注目すべきは口径だろう。
ウルトラザウルスのウルトラキャノン砲は36cmで、ゴジュラスMK-IIの長距離キャノン砲は42cm。
単純に考えると弾丸の質量は長距離キャノン砲の方が大きい=破壊力も上となる。
が、それはありえないだろう。
これは理屈ではなくて心象的な意見であるが、圧倒的砲力こそが取り柄のウルトラザウルスを、たかだか強化改造した程度でゴジュラスがあっさり上回ってしまってはいけないと思う。
射程距離も破壊力も、やはりウルトラキャノン砲の方が上だと思いたい。

様々な事を考えて、そもそもウルトラキャノン砲と長距離キャノン砲は構造からして違うのではないかと思った。
すなわちゴジュラスMK-IIの長距離キャノン砲は火薬砲であり、ウルトラキャノン砲は電磁誘導(ローレンツ力)により弾丸を加速して撃ち出す砲、すなわちレールガンではないかという事だ。
レールガンは構造上、発射には大電力が必要となるが、実現できたとすれば火薬砲よりもはるかに高い初速が期待できる。
初速というのは弾丸の飛ぶ速さと思って相違ない。
すなわち速いから小さい弾丸でもより破壊力が増すし、より飛距離も出る。
大電力を必要とするレールガンを4基も搭載できたのはウルトラザウルスの巨体あってこそと思えば、納得できるように思う。

という事でウルトラキャノン砲はレールガンであり破壊力は長距離キャノン砲より上。また射程距離も上だと思った。
また100kmなのは、あれだけ「圧倒的な砲力」と宣伝されたのだから、射程距離のケタ一つ増えたと思った方が凄味が増すからという事で、まあこれは完全に心情的な推測だ。
単にそう思う方がスッキリするというだけものだ。

という事でゾイド界の長距離砲の砲力は、私的には以上のように推測してみた。
我ながら根拠が弱い部分が多いとは思うが、とにかく妄想は楽しいという事が伝われば幸い。










実はひとつオチがあったりする。
長距離キャノン砲の「アイアンコングに先制攻撃を仕掛ける」を6連発ミサイルおよび小型ミサイルより射程が長いものとして解釈したが・・・、その根拠は、重防御タイプのゴジュラスの学年誌記事だった。

ただ、実はゴジュラスMK-IIプロトタイプも、学年誌で紹介されていたりする。
そしてその記事は…、

なんと、あっさりと「コングの巨大ミサイルよりさらに射程が長い」と書いてあったりする。

今回、非常に苦しいがこれは「誤記」と捉えた。
でないと、アイアンコングの射程は200kmでゴジュラスMK-IIはそれ以上。ウルトラザウルスは射程100km。
ウルトラだけが1/2以下の射程距離という事になってしまう。
これではウルトラがあまりにも可哀想というのと、長距離射撃にはウルトラザウルスが引っ張り出されることが多いので、やはりこのゾイドの射程は共和国最大と捉えたかったからだ。
もちろん、「ゴジュラスの方が上」という解釈の元で考察する事も可能ではある。ただ先に描いたように今回は心情的なものをかなり優先してしまった。

今回は主観が強い考察であると書いたのは、このような通り。
まあ、それでもなかなか自分としては妄想していて楽しかったので、こういう矛盾ある結論が出たとしてもどんどん妄想したいと思う。

Back
index

inserted by FC2 system