無敵 デスザウラー

「無敵」という言葉から連想されるゾイドは幾つかある。
その中の一つはデスザウラーだろう。

さしものデスザウラーも、暗黒大陸編以降は強力な新鋭機に苦戦するようになり、苦い敗北を何度も経験した。
ただそれらの新鋭機は、「強い」という印象は持っていても、「無敵」という言葉で語られる事は少ない。
デスザウラーが無敵のイメージを持たれているのは、その描写によるものが大きいと思う。

デスザウラーの「無敵」イメージへの配慮は徹底していたと思う。
周知の様に、ゾイドバトルストーリーは学年誌に掲載されたゾイド記事を再構成して作られている。
だからある意味、描写が優れていて当たり前な所はある。

ではその元となった学年誌はどうだろう。
今回は、「小学一年生」におけるデスザウラー登場~しばらくの様子をお伝えしたいと思う。

 

小一でデスザウラーが初登場したのは、’87年9月号だ。
この号のストーリーのタイトルは「デスピオンの罠」

デスピオン率いる帝国24ゾイド部隊が共和国基地を襲撃した。ゴドスなど小型ゾイドが蹴散らされる。
この事態に、怒りに燃えてゴジュラス出撃する。デスピオンを発見し、巨大な爪で襲い掛かろうとしたその時…、


ゴジュラスは謎の攻撃を受け、一瞬で崩れ去ってしまう。

そして出現する巨大ゾイド。

この敵は一体何者だ……。
呆然と見上げる共和国兵をよそに、謎のゾイドは進撃を始める。

 

続けて'87年10月号。タイトルは「デスザウラーを倒せ」

謎の巨大ゾイドを倒すために、共和国軍が動いた。
シールドライガーが敵を引き付け、その隙にゴルヘックスが敵に接近する。
ゴルヘックスの電子装備が敵の予想スペックをはじき出してゆく。

シールドライガーは攻撃しながら後退し、敵を狭い渓谷におびき出した。
巨大なデスザウラーは満足に動けない。
デスザウラーが身動きを制限された所で、2機のゾイドゴジュラスMK-IIが現れ、猛烈なキャノン砲の連射を叩き込んだ。
しかしデスザウラーは何とキャノン砲をはじき返してしまったではないか。そしてそのまま接近。ゾイドゴジュラスMK-IIを格闘戦でバキバキに潰してしまった。

共和国軍の作戦は完全に失敗した……。

 

続けて'87年11月号。タイトルは「デスザウラー対ウルトラザウルス」

デスザウラーが進撃を続ける。
ついに共和国軍は、切り札ウルトラザウルスを繰り出した。
長い長い格闘戦が起こり、ついにウルトラザウルスはがっくりと膝をついた。

デスザウラーの勝利か!?
だが、シールドライガー部隊が現場に駆けつけ、自らを犠牲にしてウルトラが逃げるチャンスを作った。
シールドライガー部隊は壊滅したが、何とかウルトラは脱出に成功した。

 

続けて、'87年12月号。タイトルは「ウルトラザウルス大逆襲」

無敵の進撃を続けるデスザウラーは、遂に共和国の基地に迫った。
基地防衛のコマンドウルフは、あっけなくデスザウラーに倒された。

この事態に、ウルトラはリベンジをかけ立ち上がった。
幸いにも基地は海に近かった。そこでウルトラは海に出た。
そしてそこから砲撃を開始する。

ウルトラキャノン砲を発射。狙いを定め、デスザウラーに叩き込む。

命中!

上空警護のシンカーが墜落し、デスザウラーもぐらりと揺れる。
海上にいればデスザウラーの格闘戦の餌食になることもない。これは勝てる…!
しかしデスザウラーは背中のファンを高速回転し始めた。
これは何だ…?

次の瞬間、

これぞ荷電粒子砲。
なんとデスザウラーは砲撃力も有していたのだ。
最初に姿を現した時に、ゴジュラスを一撃で破壊した謎の攻撃のはこれだったのだ…。

荷電粒子砲を浴び、海上のウルトラは半身を失ってしまった。

 

最後に、'88年1月号。タイトルは「最後のチャンス」

半身を失ったウルトラザウルスは、何とか岸にたどり着いた。
しかしそこに、新鋭帝国ゾイド・レドラーが現れた。ウルトラにとどめを刺す気だ。
この事態にプテラスが立ち上がった。

激しい空中戦。プテラスはレドラーに次々落とされる。スピードが違うのだ。
だがレドラーもエネルギーを大きく消費し、ウルトラを撃つ事ができなくなった。

そこで、デスザウラー自身が浜へ出向き、ウルトラにとどめを刺す事にした。
ウルトラはもう目の前だ。
いや、とどめを刺すまでもなく、ウルトラはピクリとも動かない。

その時、サラマンダーが現れ、猛烈な砲撃を開始。
思わずデスザウラーは振り向く。

その時、ウルトラが最後の力を振り絞って起き上がった。
サラマンダーに気を取られたデスザウラーを背後から砲撃。みごとファンを撃ち抜いた。

弱点を撃たれ、デスザウラーはたまらず海に逃げた。
しかしウルトラにはもう、追う力は残されていなかった。

以上、小一におけるデスザウラー登場~しばらくの描写だ。
いかがだっただろう。すごく熱い。もう、アツすぎる。

この一連ストーリーは見事という一言だ。

小一は比較的早期からゾイドストーリーを掲載していた。
最初の頃はゴジュラスが主役で、その活躍を描く事がストーリーの軸だった。
その中で強敵・サーベルタイガーが出現したり、頼もしい味方・サラマンダーが現れるといった具合だ。
ゴジュラス=共和国=正義。帝国=悪の図式だった。
ストーリー中で、ゴジュラスは傷つきながらも決して倒れず、苦戦しながらも最後には見事敵を倒すスーパーヒーローだった。
もちろん無敗だった。アイアンコングMK-II限定型を倒した事さえある。
小一におけるゴジュラス神話はかのごとく凄い。

D-DAY('87年4月)以降、ゴジュラスは主役を降りた。
ゴジュラスばかりを描写するのではなく、様々なゾイドが登場する群像的なものになり、また視点も中立になった。
が、そうはいっても小一。非常に低年齢に向けた雑誌だからだろう。まだ何となく共和国が味方という感じではあった。
相変わらずゴジュラスも活躍していた。
そう、D-DAY以降、帝国は無敵の進撃を続けた。
これを止めたゾイドといえば?
多くの方はシールドライガー&コマンドウルフと答えるだろう。しかし小一ではゴジュラスMK-II(限)なのだ。
またこの時期、ゴジュラスを主人公にした漫画も掲載されている。

シールドライガーももちろん活躍しサーベルタイガーを食い止めたりしているが、それはあくまでゴジュラスより後の事だ。

そのゴジュラスを考えると、デスザウラーの描写は本当に凄い。
まず、初陣でゴジュラスをあっけなく破壊する。一瞬で。
この衝撃は計り知れない。
幾多の戦場を駆け抜け、何度傷ついても必ず立ち上がり勝利を得ていたゴジュラスが一瞬で…。

次に、大規模な作戦を敢行した上で、2機の強化型ゴジュラスで挑むも、砲撃も格闘戦も通じず敗北。
パワーアップした砲を跳ね返し、更にゴジュラスが最も得意とする格闘戦で下したのは凄い。
あらゆる意味でゴジュラスでは全く勝てない事を示しており象徴的だ。
余談ながら、小一でゴジュラスMK-II(量)が初登場したのはこの回。初登場からしてこのやられっぷりは、相手が悪かったとはいえ涙を誘う。

更にウルトラザウルスやシールドライガーを格闘戦で下した。
ここまでの一連の描写は秀逸だ。
まず、従来のヒーロー・ゴジュラスを一撃で倒す。
次に、パワーアップしたゴジュラスMK-IIを倒す。
次に、切り札・ウルトラザウルスを倒した。
更に、パワーではなく速度で戦うシールドライガーをも倒した。
ヒーローを下し、共和国が誇る二大重パワー級ゾイドを格闘戦で下し、更に最速シールドライガーすら捉えてみせた。

ウルトラザウルス大逆襲の描写も手に汗握る。
この作戦は非常に合理的だ。
ゴジュラスも、シールドも、ウルトラでさえも、格闘戦ではかなわなかった。
ならばデスザウラーが来れない、たとえ来たとしても圧倒的に有利に戦える海上から一方的に砲撃するというものだからだ。
これほどウルトラの特性を生かした戦い方は無いだろう。
海上から狙いを定めて発射された砲弾は命中。デスザウラーもグラリと揺れ、さすがのウルトラキャノン砲の貫禄を見せ付ける。
しかしここで荷電粒子砲が登場した。

この時はじめて、デスザウラーが砲撃力でもウルトラを上回る事が明かされる。

もの凄い圧巻の描写だと思う。

最初にゴジュラスへ行った「謎の攻撃」を、ここまで引っ張る伏線も凄い。
謎の攻撃を謎としたまま、次々に行われる戦闘は全て格闘戦で描写される。
ゴジュラスもウルトラもシールドもかなわない「圧倒的な強さ」。
デスザウラーの格闘力は無敵だ…。
そう思わせた頃に、荷電粒子砲。

「こいつ、まだそんな奥の手を……」

結局最後に撃退されてはいる。しかしその間に主要な大型ゾイドは破壊し尽くしている。ただの一機で。
大型ゾイド以外でも、導入されたゾイドも前代未聞の量ではないだろうか。
特にシールドライガーがゴルヘックスと共同で予想スペックの割り出しをする所は緊迫したシーンだと思う。

小一では、この時期はまだ何となく共和国=味方という感じが残っていたから、デスザウラーが最後に敗退する事は織り込み済みだったと思う。
それでも、この圧倒的な強さの印象。
敗退しているのに味方はほぼ全滅。敵への恐怖しか残らない。
まさに「無敵」だ。

この時期、小一の他にゾイドを掲載していた雑誌は「小学三年生」「てれびくん」がある。
(コロコロにはストーリーは無かった。また小二は'88年2月号からゾイド掲載が始まったので、デスザウラーの初陣は描かれていない)
それらも見てみよう。

小三のストーリーは、ほぼ再編されたゾイドバトルストーリーと同じだ。
ゴジュラス部隊やウルトラザウルスが敗北し、共和国軍はトンネル作戦を行う。
それまで、どんな状況でも正面から果敢にぶつかっていた共和国軍が、デスザウラーにだけは全軍撤退したのだ。

てれびくんのストーリーは、アタックゾイドによる局地戦を描くものだった。だから大筋の戦況が見えにくいものではある。
しかし、それまでのてれびくんは、「アタックゾイドがこんな戦いをした」とか「基地を襲撃した」とかだった。
それが、デスザウラーが登場する回だけは「共和国軍の撤退をアタックゾイド部隊が支援した」というものになっており、かなり趣が異なる。
しかも戦果も「二時間の時間稼ぎに成功した」とかに留まっている。

やはりデスザウラーがいかに別格だったかが伺える。
デスザウラーは、やはり無敵のゾイドだと思う。

Back
index

inserted by FC2 system