セイスモサウルスの設定について

好きな方にはとても申し訳ないものの、セイスモサウルスがなかなか好きになれない。
理由はいくつかあり、そもそもデザインが単調な事も一つではある。
ただもう一つ、あまりにも無敵すぎる扱いに疑問を抱いてしまうというのが最大だと感じている。

「体全体を超集束荷電粒子砲を放つための砲身にした」のだから、ゾイド界随一の超高威力、それこそゴジュラスギガを貫通するほどの荷電粒子砲を放てる事は良いと思う。
ただ、弱点は設けておくべきだったと強く思う。

デスザウラーやマッドサンダーの大きな魅力の一つは、圧倒的に無敵ながら弱点があった事だと思う。
それにより攻略の可能性を感じられる点が素晴らしい。
弱点は、荷電粒子砲やマグネーザーと同じくらい、機体の魅力に貢献していると思う。
デスザウラーのインテークを破壊すれば勝機はある…!でもどうする…?
航空ゾイドで攻めればインテーク周りに集中した火砲をかわさねばならないし、地上ゾイドで攻めるならそれこそ格闘戦で餌食になる可能性が大。
それでも分かりやすい位置に弱点が見えており、狙わずには居れない。
そんな構図が面白かったと思う。

セイスモサウルスの好きになれない点の一つは、荷電粒子インテークファンが腹部に付いている所。
設定上「デスザウラーの唯一の弱点であった荷電粒子吸入ファンは腹部に設置し、安易な攻撃の的になることを避けた」との事だが…、うーん………、首を傾げてしまう。

デスザウラーの開発者であるところのドン・ホバート博士も、わざわざ弱点を目立たせたくてあんな位置にインテークファンを付けたわけではないだろう。
弱点は当然無くしたい。しかしながら構造上の問題からやむなく背中にしたと考えるべきであろう。
だから、それを考えた上で位置を選んで欲しかったと思う。

「デスザウラーが弱点を持っていたから無くした」のではなく「デスザウラーが何故弱点を持っていたのか」の検討を行った上で、その弱点の克服の検討を始めて欲しい。
「腹だと攻撃受けないよね!」じゃなくて、「腹に付けたら構造上大丈夫なのかどうか」の検討が欲しい。正直感じられない。

話が少し逸れるが、機獣新世紀以降の強化ゾイドにはそのノリのものが多いように感じる。
「大型の武器を搭載して攻撃力をアップ、そして機動性が落ちた分はブースターでカバー」
正直好きではない。
そんなのが簡単に出来るなら、ノーマルタイプからしてそうなっているのではないだろうか。
ノーマルが何故ノーマルの形になっているかを検討した上で強化改造して欲しい。その検討が無い強化改造はご都合に思えてしまう。

腹にあったら異物を混入してしまうだろう。下手すれば異物どころか周辺の歩兵までどんどん吸い込んでいってしまいそうに思える。
例えば、ジェット機のエンジンが回転している時、エアインテーク周辺に人が居たら簡単に吸い込まれてしまう(また異物を混入するとすぐに壊れる)。
セイスモサウルスのインテークファンはその何倍も大きいし強力だろう。
また、このゾイドは海上航行も可能としている。説明書に掲載された写真では、海上から荷電粒子砲を放っている。

腹にあるのはこの点からも違和感を覚えてしまう。

セイスモサウスルは敵をアウトレンジから砲撃するゾイドだ。
だから撃たれる事自体がそもそも想定外のゾイドだと思う。そう思うとますます、見える位置に弱点を設置しておいても良かったのでは?と思える。
この機体は口腔内の荷電粒子砲の他にも、無数の火器を搭載している。
だから万一攻め込まれた際はそれで必死に守るような感じにした方が、攻める側的にも守る側的にも戦術を想像しやすく想像が広がったのではないかなぁと思う。

 

第二に、超長距離射撃が無敵・万能すぎる点も、どうかと思ってしまう。
こう書くと機体の存在意義まで全否定しているように聞こえるが、決してそういうわけではない。

超長距離射撃は具体的な距離こそ明かされていないものの、レーダー圏外からの射撃というので、そうとうの距離ではあるだろう。
ウルトラザウルスは100km先を砲撃した。アイアンコングの背中のミサイルは最大射程200kmを誇る。
少なく見積もっても、セイスモサウスルの超集束荷電粒子砲の射程がそれ以上な事は確実だろう。
この距離における超集束荷電粒子砲の射撃が可能かどうかを考えると、不可能だと思う。

セイスモサウルスの長い体内で限界まで加速された超集束荷電粒子砲は、超高速で一直線に飛ぶ。
この直進するというのが厄介でもある。
放たれた砲の弾道が真っ直ぐなのに対して、星は丸い。つまり、弾道が直線の砲で敵を撃つなら、おのずと射程限界が決まってしまう。
遠すぎる敵は星の曲面に守られ死角になってしまうのだ。

この死角は、三平方の定理で計算できる。
セイスモサウルスの砲口位置の高さを10m、敵ゾイドの高さを15mとすれば、狙える限界距離はわずか19kmくらいしか無い計算になってしまう。
それ以上離れていれば、星の曲面に守られ、当たらない。
(互いに海抜0mに居た場合の計算)

直線弾道の砲で地上の敵を狙う場合、砲の仰角(上げ角度)をとって撃つ事に意味は無い。
逆に、俯角(下げ角度)をとれば、最大限に狙える範囲が増す。

ちなみに、先に書いた「セイスモサウルスの距離は19km」というのは、俯角をとって撃った場合の計算である。
水平に撃つならさらに短くなり、わずか8.5kmくらいしか射程距離が無い計算になってしまう。

より射程距離を伸ばす為には、高い位置から俯角を付けて撃てば良い。
デスザウラーは全高が21mと、セイスモサウルスより高い位置に発射口があるので、多少遠くまで狙う事が出来る。
同じく敵ゾイドの高さを15mとすれば、22km程先まで狙える。
ただいずれにしろ、実は実弾砲の方が遠距離を狙える結論に達してしまう。

対し、実弾砲は曲射が出来る。
撃ち出した弾は重力の影響を受けて落下するから、星の曲面に守られた位置をも、砲撃できる。

実弾砲の場合、水平射撃ではすぐに弾丸が落下してしまうので射程距離が短い。
一般的には、仰角45°付近で撃つと、最も射程が延びる。

また、炸薬の量を増やすとか、火薬式ではなくレールガン(電磁投射砲)にするとか、弾丸自体に推進力を持たせる(ロケット弾など)事で、射程距離を伸ばす事が出来る。
ウルトラザウルスは100km先を砲撃しているが、実弾砲ならではのものと言える。

ただ欠点もある。曲射なので、当然の事ながら命中率が悪い。
その日の風の強さや大気の乾燥具合などの影響を受け、落下位置は容易にブレる。
100km先のたかだか10m程度のゾイドを狙えと言っても、それはどだい不可能だ。
その為、命中弾を得るためにはとにかく撃って、その度に落下位置の誤差を修正しつつ撃ち続けねばならない。

直進するビーム砲の場合、射程距離は限定されるものの、見える位置を射撃するなら命中率は抜群になろう。
何しろスコープの中央に敵を捉えて撃てば、まっすぐ飛ぶのだから確実に命中する。
また、ビーム砲の初速は亜光速にも達する。発射に気づいてからの回避など不可能だ。
実弾砲の場合は、例えば戦艦大和が主砲を最大射程(40kmほど)で撃つと、発射から着弾までに100秒近くかかる。
これでは発射に気づいてから回避するのも容易い。(例えばシールドライガーが全力で100秒走れば7km近く移動できる)
ますます命中率は下がる。

ただ、セイスモサウルスは、実際レーダー圏外から撃てている。だから何らかの力で弾道を曲げ、惑星の曲面に追従させているのかもしれない。
ビーム砲はその特性上、磁力の影響を受ければ容易に曲がる。
(曲がらないようにする為には、より集束率を上げ、より速く撃出すのが有効であり、セイスモサウスルはその理論に合致する機体と言える)
磁力を使えば曲げること事態は不可能ではない。何らかの技術でこれをコントロールし、自在に曲げているのかもしれない。
ただ…、せっかく体全体を真っ直ぐにしてまで超集束させた砲の弾道を曲げるのは、わざわざ威力を減じているようで、これもまた納得いきかねる。

 

セイスモサウルスは設定の詰めが非常に甘いと思う。その上で無敵すぎる活躍を演じているので、どうも面白くないなぁと感じてしまう。
設定上、弱点が設定されていないわけではない。
一応、「遠距離から狙撃する為に電子戦用ゾイドによる索敵のバックアップが必須」というのが弱点だと、後から追記された。
ただ、これは弱点なのだろうか…?
ウルトラザウルスも、最大射程でキャノン砲を放つ際は着弾観測機を飛ばしている。
長距離砲の運用においてバックアップ機は必須のペアであり、弱点と言えるものではないと思う。
あるいは、「ビーム砲を曲げるために、射線上の地中に強力な強電磁波を放てるグランチャーを大量に配置しなければならない」位のものだったら、運用上の大きな困難であり、弱点足り得るものだと思うが。

以上にセイスモサウルスが好きになれない理由を書いてみた。
ただ同時に、このゾイドは設定を少し変えるだけで、非常に魅力的なものに生まれ変われるとも思う。
個人的にこんな設定だったら面白かったというのを考えてみると…、

■荷電粒子インテークファンは見える場所に装備し、分かりやすい弱点を付加する。
■砲は曲射は不可能で直進しかしない。その事を明記し、超集束荷電粒子砲の威力をより強調する。
■直進弾道ゆえ、超長距離射撃を行う際は、高い位置にセイスモサウルスを置かねばならない。
■発射時には高台を設営しなければならないので、運用が困難を極める。だがその困難に見合う価値をセイスモサウルスの砲は備えている。


高台を設置すれば、その分だけ遠い場所を狙える。

運用上の困難は、ドイツ軍の80cm列車砲グスタフ/ドーラのような感じにすれば面白かったと思う。

列車砲とは、その名の通り列車に大砲を積んだような兵器である。
当然、列車が母体なので、レールの無い場所には行けない。
また構造上、砲を旋回させる事が出来いので、射撃方向のコントロールが難しかった。
射撃希望位置にレールが無い、またはあっても角度が違う場合、新たにレール敷設から始める必要があるという致命的な運用困難があった。

その中でも、グスタフ/ドーラは特大の列車砲なので、ひときわ運用は困難を極めた。
砲を稼動させるには、砲自体の操作に約1400人、防衛・整備等の支援に4000人以上の兵員と技術者が必要となった。
砲の移動には専用のディーゼル機関車2両を使用し、長距離移動の際には分解され現地まで運ばれ、そしてまた組み立てられた。
その巨大さ故に運用には多大な時間がかかり、実際の砲撃に先立つ整地、レールの敷設、砲の移動、組み立てなどに数週間を要した。
この大規模な設営は、敵に容易に察知された。

更に、運用してもまだまだ困難はあった。
砲弾が巨大すぎるので装填に時間がかかり、発射速度は極めて遅かった(1時間にわずか3.4発)。
また100発程度の射撃で砲身命数が尽きるので、400tもある砲身の交換を頻繁に行う必要があった。

それでも、この砲は絶大な威力を発揮した。
要塞攻略等、その運用に適した戦闘においては圧倒的な破壊力を示した。航空機による爆撃より、遥かに高い破壊力と命中率を発揮したのだ。
しかし、既述のとおり使い勝手の悪い兵器であり、最終的には運用国のドイツ軍自らの手で、鹵獲を嫌い破壊してしまっている。

 

このような縛りをつければ、非常に面白かったと思う。
単に無敵砲撃を行えるだけではなく、無敵砲撃を行うためには様々な困難を越える必要がある。
まず高台の設営が必要。多くの人員としばらくの時間が必要。
設営完了後も、超威力の砲を撃ち続けるのは困難で、定期的なメンテナンスも必要。その間は明らかな「隙」となる。
しかし困難を乗り越えた時、セイスモサウルスは新生・塔の上の悪魔、無敵の砲撃ゾイドと化す。

最初の一撃こそ不意打ちが出来たが、共和国軍の解析により、超遠距離から砲撃する究極の砲撃ゾイド・セイスモサウルスの所存が明らかになった。
共和国軍は高台の設営に目を光らせ、そこにこそセイスモサウルスがあると睨む。
高台を設営する帝国軍と、それに気づき設置前に攻略せんと攻める共和国軍。
設営部隊を守るために戦うエナジーライガー。
空から攻めるストームソーダーやレイノスは、いまだ高台に上がれぬセイスモやシュトルヒが果敢に迎え撃つ。
はたして設営完了が先か共和国が攻略するのが先か!?というような感じだったら面白かったのになぁと思う。

この頃のバトルストーリーの新鋭ゾイドたちは、明らかにオーバースペック過ぎたと思う。
ダークスパイナーも、「ジャミングウェーブで敵を支配下に置き、意のままに操ってしまう」ものであり、明らかにやりすぎだったと思う。
ただもしも、ダークスパイナーが複座式であり、片方のパイロットの設定がそれ専用になっていたらどうだっただろう。
長い顔を利用し直列複座形のコックピット、あるいは頭部1・背中1などの配置にしておかなかったのは、非常に悔やまれる事だと思う。

当時はセイスモサウルスやダークスパイナー、エナジーライガーなど、最強を纏いすぎたゾイドたちに対し、かなり感情的な嫌悪感を抱いていた。
今は落ち着いて見直すことも出来るつもりではある。ただやっぱり好きにはなれず上記の様に思う。

個人的には、例に挙げたような運用法をする等すれば、凄く面白かったと思う。
安易に無敵を前面に出し過ぎた事に関しては、やはり反省すべきだと思ってしまう。

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