空白期間のifを妄想する

2013年、ゾイドは30周年を迎えた。
玩具主体で始まったシリーズとしては、なかなか異例な事であり、玩具界の奇跡とも呼ばれる。
とはいえ、水をさすようで申し訳ないが、活動期間で言うと30年では無い。
83年度に始まり90年度一杯まで展開したメカ生体ゾイドシリーズはちょうど8年。
91年度から99年度上半期までは、8年半にも及ぶブランクを挟み、99年下半期から再び始動した。

メカ生体ゾイドシリーズが衰退した理由はよく語られる。
様々なことの複合だとは思うが、良い終わり方だったとは思う。
隕石衝突はともかく……。

強い恐竜や強い動物が居て、それらを凌駕する最大級の大きさを持った恐竜が出て、最大級の大きさをも捕食する最強肉食恐竜が出て、 最強肉食恐竜に唯一対抗できる最強草食恐竜が出て…、そして恐竜を越える幻獣が出て、それに対抗した神獣が出て………。

正直、これ以上最強に相応しいモチーフは、この時代には居なかったと思う。
キングゴジュラスは、最後だからこそ出来た先祖がえりだったと思う。

その後、8年半の長い休止期間を迎える。
先に良い終わり方だったと書いた一方、この期間も展開してほしかった…、とは純粋な願望として思ってしまう。
それはどういったものだろうと想像する。
もし、そうあった時、そこにどんなアイテムがあっただろうと思うと………、妄想は止まらない。

メカ生体ゾイド衰退の理由として「世の中の流れ」が語られる事も多い。

1989年から、ゾイドは暗黒大陸編に突入した。しかしこの頃から世の中は空前のSDブームを迎えた。
ゾイドのメディア展開の主戦場であった学年誌でも変化が起こる。

学年誌には、もちろんだが、ゾイド以外の男子向け玩具も多く掲載されていた。
ラジコンやミニ四駆などは特にプッシュが大きく、改造とか大会とかラジコンと一緒に山登りとか、非常に熱かった。
だがしかし、ことジオラマストーリーはゾイドの独断場だった。
毎号掲載、しかもほぼ全ての学年に載る。カラーページを使用しページ数も多い。そんな凝りに凝ったジオラマ展開をしていたのはゾイドだけだった。
しかしこの時期ついに変化が起こり、ゾイド以外のジオラマストーリーも、多く掲載されるようになった。
それらは、いずれもSDメカだった。

魔神(魔神英雄伝ワタル)や、ペタモ獣(まじかるハット)など、多くのSDメカが掲載され、大プッシュされた。

トミーも、ある意味SDと言って差し支えない「ネンダーランド」を展開し、やはりジオラマストーリーを展開した。
余談ながら、魔神もペタモ獣もネンダーランドも、全てジオラマはゾイドと同じスフィウスLabの製作だったりする。
これらは、ゾイドの本格的なライバルとなった。

学年誌にSDブームが到来した。
そして世間的には、何といってもSDガンダムの大ヒット・大ブームが凄かった。
個人的な思い出になるが、近所の友人がこれに大ハマりしており、遊びに行くといつも大将軍というお気に入りを見せられていた。
…かなりどうでもいい話だが、彼と遊ぶ時、私のグスタフで彼の大将軍を運んで遊んでいた事がある。何故…、そしてどういう設定で遊んでいたんだろう…………。
もはや淡い記憶の中で、かすかにしか映像が浮かぶだけである………………。

…話を戻す。
これらのSDは、可愛らしさや親しみやすさからヒットしたと言われる。
もちろんそれはあるだろう。ただ一つ加えたい。
SDモデルとは単に頭を大きくしたものではない。
リアルメカの持つカッコ良さをよく保ちつつ、小型化・デフォルメする事で、より強調したものだ。 その上で、SDならではのアレンジを加えられてはいるが。
オトコノコが本能的に持つ「カッコいいものに惹かれる」部分に一切の妥協をせず、SDであるからこそ、より分かりやすく示せていた。だからこれだけヒットしたと思う。
あと、SDは安かった。

最近、D-Styleの素晴らしい出来を見ていると、当時そういう方向は無かったのかなぁ、と思ってしまう。
ゾイドとSDの相性が良いのはD-Styleや、他にもワンブロックス等から明らかだろう。

メカ生体ゾイド当時のスタッフが描いた、SDゾイドのイラストがあったりする。
1990年12月…、メカ生体ゾイドのまさに末期に発売されたFCソフト「ゾイド黙示録」には、多くのSDゾイドのイラストが載っている。

…目が入っているのは、やはりSDガンダムの影響かと思う。ただのこのSDデザインのクオリティの高さは伝わると思う。

当時もし、リアル世界のゾイドはキングゴジュラスで一旦終わらせ、SDシリーズとして再出発していたらどうなっていただろう…と思った。
もしかしたら小型ゼンマイでトコトコ歩く、D-Styleとは別のSDゾイドがあったかも…。

SDゾイドをリリースするという概念が当時のトミーに無かったのかいうと、実は何度か試みられてはいる。
それは初期と末期にあった。
まず初期を見よう。

ゾイコロ。発売は本家トミー。85年頃。

これは良い出来で一定の成功はしたが、この当時はリアルメカブームが到来していたこともあり、長期シリーズにはなれなかった。
プルバックゼンマイを搭載しており、各機特有のギミックを行いながら高速で前進する。
特徴なのが、小型ゾイドをSDにしていた事で、いわゆる骨ゾイドや重装甲SP級の一部がチョイスされている。
大型ゾイドをSDにした方が効果的だったように思えるが…。
なお99年~00年にかけて復活が予定されたが、後に白紙撤回されたという残念な一幕もあった。

 

ゾイドベストコレクション。発売は本家トミーとトミー子会社のユージン。85年頃。


ガチャガチャで展開されたシリーズに、こんなものがあった。
簡単な組立キットになっており、ゴムを使ってリング弾を飛ばす事ができる(主に口から)。
撃ち合いをして遊ぶ事を推奨している。
ただ、デザイン的に完成度が高いとは言い難く、全く注目されないまま終了してしまった。
挿絵のガイサックが凄い。悪い意味で。

思うに、先にヒットしたSDの要素を書いた。
「カッコいいに妥協せず、むしろSDだからこそ強調し分かりやすく示したもの」
その定義からすると、これは単に幼児向けのような感じに見える。
なお現在はハイパープレミア化している。

ただゴルドスの絵だけは凄いカッコいい。

何故、このテイストでやらなかったのだろう…………。

この2つが思った程の成果を得なかったからか、リアル路線の本家が絶好調になったからか、あるいは両方か。
これ以降のゾイドはSDを一切排除した。
ゴム製モデルなどSDにしやすそうな商品も出たが、あくまでリアル寄りのデザインだった。

余談ながら、このゴム製モデルは、ジオラマの遠景の主役を務めている。ジオラマの奥を探してみると非常に面白い。

 

次に登場したのはゾイドがもう終焉を見せ始めていた90年のことで、戦国武者風のゾイドが「CDゾイド-恐雄戦闘伝-」の名で発売された。

「CD」は「コミカルデフォルメ」の略で、要するに「SD」と同じ意味であると思って相違ない。
当時はバンダイが「SD」という単語を積極的に使用していたので、それに対抗して別の語にしたというわけ。

これは、ガチャガチャ版と食玩版が一緒にリリースされた。
発売はガチャガチャ版はトミーの子会社ユージンで、食玩版はカバヤだった。なお内容物は同じで、同じキットを異なる流通で展開していた事は注目に値する。
実験的要素が強かったものかもしれない。

デザインは、明らかに当時大ヒットしていた武者ガンダムが意識されている。
販売形態もそうだが、デザインも実験的な要素が多かったキットと言えるのではないだろうか。

小さな安価なキットであるものの、当時のトミーとしては激しく注目する一品だったのではないだろうか。
ただヒットしなかった。全く。
それもその筈で、正直かなり無理のあるアレンジで、ゾイドファンは魅力を感じにくいだろう。いわんや、ファン以外は…。
だいたい・・・、これを見てマッドサンダーだとまず分かりにくい。

もう一つ、「ガタローガム」というのも、この時期に発売された。
こちらはカバヤから出た食玩で、江戸時代を舞台にしたようにアレンジしてあるが…、

「2段階スピードに手足も動くカラクリたぁ~?許せね~! 御用でい!!」
「三太雄!三太雄はおらぬか!? 2段階スピードに手足も動くとは!?ぶれいもの!!」
とのこと。
正直目を覆いたい…。

ただ一応良い部分も書いておくと、食玩でありながらゼンマイを持ちギミックがある。
全て二足歩行(Z-ナイトより前に直立歩行!)するし、腕も振る。

しかしデザインがこれでは……………。

ウルトラは特に、どうしちゃったのだろう……………………………………………………。

この二つのキットがどれほどの影響を与えたのかはわからない。
ただトミーはメカ生体ゾイドの後釜には、SDゾイドではなくリアルメカ・Zナイトを投入し勝負を挑んだ。
思うに、この二つの失敗から、やはりSDの土俵に踏み込むより、自分たちが得意なリアルを突き詰めたほうが良いし個性を出せると踏んだのではないだろうか。
個人的にはCDゾイドやガタローガムが失敗したのは、そのままSDにすれば良いのに、二匹目のどじょうを狙って余計な要素を詰め込んでアレンジしすぎて破綻してしまっただけだとは思うが…。

もし、この時、素直なストレートなSDデザインになっていて、そういったモデルが食玩でテスト販売されていたらどうなっていただろう。
好調なセールスに興味を示したトミーが、メカ生体ゾイドの終了後にSDゾイドシリーズを展開していたら…。
もしかしたら、小型ゼンマイを使って、可愛らしく歩くギミックを搭載したゾイドの一大シリーズや、ワンパク元気・コミカルだけどカッコいい、そんなジオラマゾイドストーリーが、そこにあったのかも…。

決して可能性がゼロではなかった話だと思う。
そんな風にブランクの期間を想像するのも、また楽しいものだと思う。

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