知育玩具としてのゾイド

ゾイドは箱に入った新品を購入するもの、というのが当たり前でした。
しかし展開がひと段落している現在、その概念も崩れて久しくなりました。中古ショップなどで組み済みのゾイドを購入する機会も増えています。
その是非はともかく、そうした機会が増える中で思う事があったので、書いてみます。

組み済み現状のゾイドを購入するというのは、状態がまちまちのものを購入するという事でもあります。
割と凝り性なので、結構気になります。
ゲート処理の甘いもの。ホコリまみれなもの。こういうのは中古組み済みの定番です。
こうした際は、可能な限りのゲート処理を行った後、洗浄を行います。

洗浄は、ボールにぬるま湯をはり、中性洗剤と歯ブラシを使うと良いでしょう。
一つ一つのパーツを磨いていると、それはそれで新品購入にはない思い入れが生まれる気もします。

さてこの作業をしていると、どうしてもやっかいな問題が起こります。
パーツを洗浄した後は、当然ですが組む作業が必要です。
しかし組み済みゾイドを買うというのは、たいていにおいて本体のみの購入という事です。つまり何かというと、説明書が無い。

そこでどうするかというと、これはもう根性で組むしかありません。
ネットや書籍でそのゾイドの画像を探して完成系を確認します。そこからだいたいのパーツ区分を行って、あとはトライ&エラーでひたすら組みます。
ゼンマイクラスならともかく、大型電動ゾイドになるとかなり大変でもあります。
ただこの作業が実に面白いと思います。
ゾイドの組み立ての面白さを再確認できます。

というのも、ゾイドは普通のプラモデルとは違って「動く」という要素があるのです。
例えば口の動きを作るために動力伝達用パーツを仕込んであったり、関節の動きを再現するために複雑なパーツ構成になっていたりします。
その為、例えば胴体は完成したと思っていたけど、やっぱり動力伝達パーツを一つ入れ忘れていたのに気付いてもう一度バラす……なんていう作業もよく起こります。

普通のプラモが単純に一軸で取り付けるような部分でも、「連動」の為にかなり複雑にしている部分があったりします。
そういう構造の違いがやはり「動きのゾイド」なんだなぁと改めて実感します。
そしてそれが実に面白いのです。

思うに、ゾイドは「知育玩具」としてみても良いレベルのものだと思います。
組むたびにその思いは強くなります。

 

「立体パズル」というのがあって人気商品になっています。

立体ピースを組みあわせて特定の形を作るというもの。

立体パズルやプラモデルやブロック玩具は、知育玩具としてとても優秀なものだそうです。
子供の頃にこういうのをやっておくと、考える力が強くなり、また立体を把握できる力が大いに増す。大人になってからでも、老化防止に最適との事です。
その辺はゾイドに深く関わるユーザーなら周知のところでしょう。

 

何度か説明書なしでゾイド組み立てていると、ゾイドは知育玩具=難度の高い立体パズルとして使用していいものじゃないかと思うようになりました。
特にメカ生体ゾイド時代のキットは、通し番号順に組めるようになっているので適していると思います。
(機獣新世紀以降のキットは「番号に頼れず更に難度がアップしたもの」として良いとも思う)

それも、ただの立体パズルではありません。
動く立体パズルです。

「動き」があるから構造が難しくもある。でもそれゆえに苦労して組み上げた時、動きの構造を自然と知り、理解する事ができます。
そしてゾイドは、ギリギリで説明書がなくても組める程度の、絶妙なパーツ構成をしていると思います。

大げさでもなんでもなく、ものづくりの国ニッポンとして、これ以上に適した教材があるのか?と思う程に知育玩具だと思います。
凄く真面目な話、学校の教材として使用しても良いんじゃないかと思っています。
無機的なものより学ぶ方もテンションが上がるでしょう。
(ものづくりとは技術などテクニック的な方面も大事ですが、同じくらい情熱やテンションが大事である)

単純な動作のゼンマイゾイドから、複雑な動きのモーターゾイドまで、全て教材たるキットだと思います。
簡素なものは低年齢層に向け、複雑なものは、よりその道を志す者へ。

 

パーツを切り出す所から勉強になるでしょう。
というのも、最近はカッターすら使えない子供が増えています。そこへ、ゾイド。

小学校の頃のプラモ作りというと、ニッパーやカッターなど使わず、ランナーからもぎ取って作る事が多い。
ですがゾイドの場合、それによってギミックがひっかかる部分が出てきたりします。
そこで工具の使い方を教えたりすると良いでしょう。

今は低年齢層に向けてタッチゲート……工具を使わなくても綺麗にパーツが取れるキットも増えています。
が、ものづくりの国の未来を育てるなら、これは逆効果ではないかと思います。
もちろん、そういうのもあってもいい。入門用としては必要です。
ただそれでも、ある程度の器用さは教え育てる機会が必要だと思います。

カッターは切れる。血が出る事もあるでしょう。それは痛いし嫌な事です。
でも、だからといって一切触れないでおくと、後でもっと痛い目を見る事になってしまうでしょう。
無菌室で育てたラットは健康に育ちますが、つまらない病気でころっと死にます。
時に傷を作りながらも、それ以上のものを得てこそだと思うのです。

プラモデルやゾイドは、それを教えるのに最適な教材だと思います。
ゾイドは、組むだけでなく「動き」を考えるものでもあります。
「この機体にギミックを一つ足せる?」と言って考えさせたら、どんなに勉強になるでしょう。
その考えは、今後のものづくりの国を支えていくものにもなるでしょう。
本当に凄く真面目な話、そう思います。

 

ゾイドは「動きを知る」ものとして最適な教材です。
・横軸の回転から、どうやって縦軸の動きを取り出すのか。
・一つのモーターから複数の動きを取り出すにはどうすればいいか。
・付け根の動きに連動して指先が動くのは何故か…、etc.
そんな風にものづくりを教えていくって、とても素敵な事じゃないかなぁと思います。

無茶苦茶な話に思えるかもしれませんが、今やニンテンドーDSが授業に活用される時代です。
私が子供だった頃に「ゲームボーイを学校で……」なんて言ったら馬鹿にしかされなかったでしょう。
私のより少し前の時代は、ゲームセンターやテレビゲームは不良の象徴でさえありました。
それが今や。

少しずつ時代は動いています。
ゲームに倣って、模型だってそうなってしまえばいいのに! と、強く思います。

海外から「日本は未来に生きている」と、よく言われるそうです。
それでいいと思います。

図工の時間はゾイドを作って手先の器用さを養おう。そして動きの構造を知ろう。
カッコいいものばかりでは興味の出ない生徒も出るかもしれない。そこで、そこはリカちゃんにでも登場して頂きましょう。
「この人形の新しい服を作ってみよう」
やはりこれも、素晴らしい教材になると思います。
日本の玩具は、そんな素晴らしいものが沢山あると思います。

ゾイドは、その中でもひときわ輝いているものの一つだと確信します。

日本は数多くの素晴らしい玩具を開発してきました。
次代の為に、それを活かさぬ手はないと思います。
これからの玩具は、もちろん今まで通りの展開をするのは嬉しい。
しかしそれに加えて、更なる発展と可能性を追求するために、大胆な仕掛けをしていい時代に入っているのではないかと思っています。

Back
index

inserted by FC2 system