懲罰席を考える-サラマンダーの背部コックピット-

RPZ-001サラマンダー
正式名称であるサラマンダーの他に、「怪鳥」「アイアンウイング」とも呼ばれた事がある。
共通するのは畏怖された呼ばれ方という事だろう。
サラマンダーは空の王者だ。
その圧倒的性能は他の飛行ゾイドの追随を許さず、搭載量・航続距離・上昇力など、素晴らしい数値を示す。
「サラマンダーの大量配備が可能であれば、戦況は一気に共和国側に傾いただろう」とまで言われるのだから、その高性能振りが改めて感じられる。
実際は、翼に特殊な改造が必要だったため、大量配備や大量投入が出来なかった。
この事は、帝国にとって大きな幸いだっただろう。

中央大陸戦争が終わり暗黒大陸での戦いが始まると、さすがに旧式化が目立った。
それでも、改良型の「F2」として大幅な性能アップを果たして蘇り、貫禄を見せ付けた。


さてそんなサラマンダー。
メカ生体ゾイド初期の頃、ゴジュラス、アイアンコング、サラマンダーの3機は、「三大ゾイド」という感じでゾイドの顔として扱われていた。
デザイン的にも設定的にもキット的にも傑作であり、人気上位機種であるというのは確かな所だろう。

ただそんなサラマンダーにも、一つだけ大きな弱点があると言われる。
それは、この機体を知る者なら、必ず一致する意見だろう。

背部コックピット。

むき出しのコックピットがあり、その両脇には大型ミサイル発射管が在る。
なぜ弱点かは言わずもがなだと思う……ものの、一応改めて書いておく。
それは「キャノピーくらい付けようよ…」というもの。

以前に、レッドホーンやゴルドスなどが装備する尾部銃座に関しての考察を行ったことがある。
こちら
今回は、これと同様、サラマンダーの背中のコックピットは何故ああなったかを考えてみたいと思う。

 

背部コックピットの問題を、細かく分けて考えたいと思う。

まず、
「そもそも背部コックピットに座るパイロットは何をやってる?」
と思う。これは難しい。
まぁ、普通に考えたらミサイルを撃つ為の要員だろう。
ただちょっと待って欲しい。それだけの為に、あのコックピットはあるのだろうか…?

2発のミサイルは絶大な威力を発揮するだろう。
対空は放つ相手がいないので、おそらく対地ミサイルだろう。あるいはホエールカイザー出現後は対空ミサイルも装備されたかもしれない。
いずれにしろ、サイズから考えて2発しか積んでいないと思われる。
アイアンコングのような陸上機なら、補給車両などから弾を補給しそれこそ延々と撃ち続ける事も可能だろう。
だが飛行ゾイドでは、どだい無理な話だ。

2発のミサイルは絶大な威力を発揮するだろう。しかし2発しかないので、使いどころの難しい弾とも言える。
サラマンダーが攻撃目標にたどり着いた時、必殺の一撃を放つのだろう。
だが…、サラマンダーの航続距離を考えよう。
「共和国のいかなる基地からでも、無着陸で帝国領土を爆撃し帰還できる航続力を持つ」
とんでもないスペックだ。当然、飛行する時間も長大だろう。
その長い長い時間を、背中のコックピットの人は、はたして何もしないで過ごしているのだろうか。
長い時間を過ごし、目的地に着いたら照準を定めて発射ボタンを押す。そして帰りはまた長い時間を過ごす。
とてもシュールな気がする。

また…、シンカーやシュトルヒなど迎撃機が来た場合もどうするのだろう。
彼は頭部メインコックピットのパイロットの腕に全てを賭け祈るだけなのだろうか。
どうも、首を傾げたくなる。

こう考えると、背部コックピットには何かミサイルを撃つ以外の仕事があると思うのだ。
というか根本、ミサイルを発射するだけなら頭部コックピットで出来るのではないかという疑問もある。
現にペガサロスやグライドラーが、ミサイルを含む全ての火器を頭部コックピットから操作している事から証明できると思う。

「サラマンダーは大型で操作も複雑だから、火器管制員は絶対に必要」だったにしても、それをわざわざ背中にする必要は無いだろう。
ちょっと窮屈になるが、サラマンダーサイズの頭部なら、アイアンコングの様に並列式複座シートに出来なくは無い。
何らかの理由で頭部は無理だったとしても、背中へ配置する事とキャノピー無しにする事は説明できない。

2人以上で操縦する戦闘機のパイロット。そこには最高の信頼が必要とされる。
互いが互いを信頼しベストな能力を発揮しない限り、自分たちの死に直結するのだから当然である。
少しでも互いに信頼が欠如していると判断されたら、その場ですぐにペアが交換されるのが常だ。

そう思うと、サラマンダーのパイロットは大丈夫なのだろうか。
頭部メインパイロットと背中のパイロットはケンカしないのだろうか。
「お前はいいよなキャノピーがあってよぉ…」「いやお前が座ってる間、俺はしんどい思いして必死に機を操縦してるんだぞ」と。

ひとまず、ここではまだ結論は出さない。
ただ、「何らかの理由で、背中にコックピットを設ける必要がある。またミサイルを放つ以外にも任務がある」としておきたい。

 

疑問はまだある。
「なぜキャノピーが無い?」
これも大問題に思える。何故なら単純な話、寒いし辛い。

ただ、通常我々は「戦闘機にキャノピーはあって当然である」と考えがちであるが、それは違う部分もある。
「速度を出せば風圧で息ができないし、そもそも風圧で体が吹き飛んでしまう危険性があるのでは?」と思われると思う。
これは違う。
戦闘機には、第二次大戦初期以前のものは特に、キャノピーの無い開けっ放しのコックピットのものが多い。
多いというか、密閉式のキャノピーがある機なんて世界中探してもほとんど無い。

例えば96式艦上戦闘機(96艦戦)。
これはかの零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の前に、日本海軍が使用していた戦闘機で、傑作機とされる。
卓越した性能は、間違いなく当時世界最強を名乗れるものであった。
そしてこの戦闘機も、当時の他の機と同じくキャノピーが無かった。
ただ、実は一度キャノピーがある形に改修され、生産された事があった(96艦戦2型と呼ばれる)。
ただこの時、パイロット達からはすこぶる不評で、散々「無くせ」と言われ、以降は再び無くされたものが生産された。

「速度を出せば風圧で息ができないのでは?吹き飛んでしまう危険性があるのでは?」
この二点を説明したい。
確かに、直立姿勢のまま速度を上げれば苦しくなる。
60km/h位から苦しくなり、100km/hを越えた辺りから呼吸も困難になってくる。
ただ、バイクで考えると分かりやすいだろう。
バイクも時として100km/hの速度を出すのに、息が出来なくなるという事は無い。
これはなぜかと言うとフェアリングがあるからである。

    

フェアリングとは前方に付いた”はね上げ”の事で、これがある事で空気の流れが上画像右側の様になる。(※赤線が空気の流れ)

フェアリングで空気の流れを変え、安全な空間を作り出す事が出来る。
この図ではライダーが居ないので少し分かりづらいが…、少し前傾して操縦すれば安全圏内であることが分かるだろう。

とはいえ、飛行機の場合は完全でもない。
当然気温は低いし(高空に行くほど寒い)、空気の流れの大局は図の様に行くといっても、それでも巻き込んでくる風もある。
体を浮かすほどの風は来ないが、それでも辛い事は辛い。

サラマンダーの背部コックピットを見てみると…、ちょっと苦しいが、一応前方の形が空力的に整形されているので、ずいぶんマシではあろうか。

もうちょっとコックピット位置直前にフェアリングを付けてあげてほしい気もするが。
(こういう意味ではダブルソーダやサイカーチスはずいぶんマシであると思う)

ところで、何故昔の戦闘機において開放式が好まれたかを、96艦戦を例にとり説明したい。
ひとつは視界の問題。
いくらガラスで透明とはいえ、そりゃぁ無い方が綺麗に見えるのは当たり前。当時のガラス生成技術だと余計にそうである。
戦闘機のものともなると防弾ガラスなので、通常のガラスよりかなり分厚い。当然それだけ透明度も下がる。
また、ガラスにわずかでもゆがみが発生していたら、レンズ効果で敵との距離を測り間違える。
戦闘機対戦闘機では、いかに早く敵を発見し距離を正しく測るかが勝利の必須条件なので、これは納得できる問題である。

もう一つは、操縦において重要であるという事。
当然ながら外気にさらされるので(風圧が少ないとはいえ)、気流の流れを肌で感じられる。これが非常に重要である。
気流を肌で生に感じれるということは、つまり異常な気流になった時に瞬時に分かるということ。
機体が横滑りしだした時(これは飛行機にとって非常に具合の悪い状態)など、すぐに分かる。
密閉されたキャノピーの中だと、密閉空間=気圧が変化しないので、分からない。

確かに、キャノピーがないと寒いのは寒い。
パイロットは電熱服というニクロム線が入った服を着ており、要はそれはポカポカの服である。
とはいえ、96艦戦は実用上昇限度が1万m近い。高空に行けば服など効果がないほど凍える。
だが一歩間違えれば撃墜される状況において、寒さよりも飛行を優先しキャノピーを廃止したのは納得がいくものでもある。

後継機の零戦においてはキャノピーが採用され、ここに開放式コックピットの時代は終わりを告げた。
とはいえ、零戦でも飛行時はそうする必要がある時(雨天時など)以外は、開放しながら乗るパイロットも、特にベテランにおいては多かった。
それ位、外気を肌で感じるというのは重要な事でもある。

では何故、零戦以降ではキャノピーが付いたかというと、高速を求めすぎると少しでも空気抵抗を減らしたい。
それには、開放式よりもキャノピー式にした方が良い。また実用上昇限度も上がってくると、さすがに付けないわけには行かなくなる。
そのような理由でで開放式コックピットは廃れていった。

少しずつではあるが、ミサイル座席に希望が見えてきた気がする。
すうなわちイメージほどは危険ではないという事。
ただし、まだまだ問題は山積みだ。
高度3万m程にまで上昇できるサラマンダー(その飛行高度で飛ぶ事は稀だと思うが)は寒さはどうしているのだろうか。
コックピット前部に、もっと効果的なフェアリングを付けないのは何故?
(現状でもマシとはいえフェアリングを付ければ劇的に良くなるだろう)

ひとまず、ここでも問題は未解決だが次に行こう。

 

まだ疑問はある。
「なぜ背中にコックピットを作ったのか」
個人的に、何故腹部じゃないのかなと思う。
腹部(もちろんキャノピーあるいはデスザウラー式のハッチ付き)でバルカンファランクスを操作する要員とした方が、単純に良かったと思える…。
まぁ、それはそれでバルカンファランクスの操作は頭部コックピットで出来んのかいと突っ込まれそうではあるが。

その他、いっそ完全に内部に埋め込む事は不可能だったのだろうか。ちょうどマルダーのような…。
この、コックピットを背中に何故作ったかという点も考える必要があるだろう。
結論はまったく出ていないが、ともかく、そうなっているのだから、「背中である必要があった」と捉えた上で進みたい。

 

さて今までに導いた事を集約すると3点になる。
①背部コックピットは、ミサイルを放つ以外にも、パイロット同士がケンカををしない程度に充分な仕事がある。
②キャノピーが無いのは、現時点の考察としては不自然さが残る。
③位置は背中である必要があった。

以上を踏まえ、更に続けたい。

ぱっと思いつくのは、サラマンダーの背中のミサイルは、実はコマンドウルフの背部コックピットと同じではないかというもの。
コマンドウルフの背部コックピットもまた、サラマンダーのものと似ている。
  
むき出しであるし、左右に火器が付いている(こちらはビーム砲であるが)。
そしてコマンドウルフの背部砲であるが、実は単独で飛行できる。
機体解説によると、
「背中の二連ビーム砲座は本体から分離して独自に攻撃用ビークルとして飛行することが可能で、分離後の砲座は空中からの支援攻撃や情報収集をう」
との事。

そういえばサラマンダーの背部コックピットも、キット的にはそれごと外す事が出来る。
もしかしてこれは、コマンドウルフの砲座と同じように飛行可能なのではないだろうか。
攻撃目標近くまで接近し、背部コックピットを単独で射出し、詳細な偵察を行う…。
そしてミサイルがあるから、上手く行けばそのまま攻撃することも可能、と。

なるほど、ここで①と③が解決できた様に思う。
特に③は、腹部でなく内部でなく背部である必要が明確になったと思う。

ただ①は、まだ仕事としては足りないとも思えるので、後でまた彼の別の仕事を考える必要があるだろう。
まぁ、それは後でまた考えたい。
とりあえず、次に②を考えたい。
キャノピーが無い飛行機(96艦戦)を例に説明した文章を思い出しながら、考えを進めたい。
96艦戦がキャノピーを無くした大きな理由の一つは「視界」だった。

ゾイド星のガラス生成技術は…どうだろう(キャノピーの材質がガラスではなく強化プラスチックの可能性もあるが)。
一般的な共和国ゾイドのキャノピーを見てみると、オレンジか茶色をしている。正直、完全な透明とは言いがたい。
その具合から考えるに、飛行ゾイドとしては、より視界が良いものを求められたのだと推測する。
そうまでして視界を求めた理由は何だろう?
これを考えると、サラマンダーの航続力ゆえのものではないかと思う。

つまりサラマンダーは従来グライドラーやペガサロスが成し得なかった「ゼネバス帝国領土への本格爆撃」を可能とした。
航続距離の関係でせいぜい中央山脈の少し向こう側までしか爆撃が出来ないだろうグライドラーや、そもそも戦闘機だから敵領土に深入りはしないであろうペガサロスと違い、サラマンダーは奥地まで行く。
当然、そこは見知らぬ地であり、またその航続力の長大さゆえに護衛機が居ない状況下となる。
地形から現在位置を把握するため、またいつ襲いくるとも知れぬ敵の迎撃機をいち早く察知するために、少しでも視界を良く取りたかったとしたら、それは充分に納得できる理由ではないかと思う。
(ちなみにレーダーはこの時代まだお粗末で、ゲーターの登場ではじめて本格夜戦が可能になった程度なのだから、いかに大型航空機サラマンダーといえどもそのレーダー力は不安があっただろうと思う) 


例えばこのような爆撃進路で飛行しただろう。敵支配域上空では何が起こるか全く分からないのだ。

 

96艦戦がキャノピーを無くしたもう一つの理由は、操縦において重要だからだった。
外気にさらされるので気流の流れを肌で感じられる。つまり機体の異常をすぐに察する事が出来るという点。
これも、サラマンダーにも当てはまるのではないだろうか。

サラマンダーを考えると不思議なのが、「一気にでかいのを作りすぎ」という点だと思う。
この点、陸上のビガザウロにも当てはまるのだが…。
ペガサロス→サラマンダーとか、ハイドッカー→ビガザウロは、大きさが一気に飛躍しすぎている。
基本、大きいものを作るのは難しい。
飛行機は、技術的に成熟しない限り、完成度の高い巨人機は作れない。
ただ、なかば欠陥機でもいいなら、でかい飛行機も作れなくは無いが…。

例えば旧日本軍では、92式重爆撃機という巨人機を1931年に作っている。
この機は翼の全幅が44mもあり、あのB-29の43.1mよりも大きい(全長や重量では負けているが)。
ちなみにB-29は1942年初飛行。日本が11年も前に、より翼長の大きな巨人機を飛ばしているのは大きな驚きである。
だが92式重爆は欠陥機だった。
大きすぎて運動性能は劣悪。大きすぎて低速しか出ない。大きすぎるので高空に行けない。
結局、これだけ巨大な重爆撃機は実戦に参加することも無く、試験飛行を繰り返しただけで終わってしまった。

しかし、この機体は全くの無意味ではなかった。
メーカーは本機の製造に際して大型機や全金属製機のノウハウを蓄積することになり、それは後々に高性能機を多数開発することになる。
同メーカーが後年完成させた97式重爆撃機や、更に後年に作った後継機・四式重爆撃機は、その高性能ぶりで大活躍を演じた。
ただ、97式も4式も、全幅は22mほどで、半分くらいのサイズしかない。
これはやはり、巨人機を作るのがいかに難しいかを物語っているだろう。
作るだけなら作れるが、技術的熟成は非常に大変である、と。

ちょうどビガザウロはそんな機体である気がする。とりあえずデカくできるだけデカくして作った機体は、一応は運用できたが、実戦では役に立てるものではなかった。
後に技術的成熟を経て開発されたのがゴジュラスやゴルドスである、と。

さて話が逸れてきたので本通りに戻す。
サラマンダーは傑作機であろう。
その長い運用実績や活躍は何よりの証明になる。
ただそれでも、グライドラー・ペガサロスから一気にサラマンダーのサイズを作ってしまったのだから、かなり無茶をして開発した事は確かだろう。
サラマンダーの場合は、それが奇跡的に上手く行って結果傑作機になったのだと思う。
そうはいっても、やはり細かい部分での不安や洗練されきっていない箇所もあったのではないだろうか。

また計算上大丈夫とはいえ、帝国奥深くを爆撃し本土まで帰還するというのは前代未聞の長距離ミッションで、その点でも不安があったのではないかと思う。
だからこそ機体に少しでも変調があったら即座に対応できるように、風を肌で感じるキャノピー無しのスタイルにしたのではないかと思う。

 

さて、これで①②③全て解決できただろうか。
①背部コックピットのパイロットの仕事は、
  ■飛行時に、機の安全を担う。飛行ルートの把握や策敵には、この位置のパイロットが必須
  ■目的地で必要があれば分離して偵察・攻撃を行う。

②キャノピーが無いのは、
  ■「透明ガラス生成技術の未熟さ」「機の異常を即座に判断したい」の二点により、無い方が良いとされた。
③位置は、
  ■分離する関係で背中が最も好位置であった。

となる。
いや、もう二つ未解決の問題があった。
「寒さ」
「フェアリングが無い」

この二点が、解決すべき点として残っている。

 

まずフェアリングについて考えると、マグネッサーシステムの恩恵ではないだろうかと思う。
上記の考察の通りであるなら、背部コックピットは単独で飛行できる。
このような形のものが飛べるなら、それはゾイド星特有の技術=マグネッサーシステムであると考えるべきだろう。

ただ、何でもマグネッサーシステムと言ってれば解決するのなら味気ない。
ここではせめて、マグネッサーシステムについて深く掘り下げよう。

ゾイドにおいてマグネッサーシステムという言葉は必須であろう。
何故なら、例えばギル・ベイダーは最高飛行速度がM4.0に達する。
ただ、空気抵抗という事を考えるなら、明らかにそれは無理だ。あの形状では、その速度を出そうものなら空中分解してしまう。
だがそれを「空力的に良くない形であるにもも関わらず、空中分解せず高速で飛べるようにする」ようなのがマグネッサーシステムなのだろう。

ただ私は、マグネッサーシステムは万能ではないとも思う。

例えばライジャー。
この機体は「ボディの空気抵抗を減らして流線型にした結果、高速を得た」との設定である。
実際、非常になめらかな流線型をしている。
然るに、やはり空気力学も無視は出来ない。

マグネッサーシステムという便利システム…、それこそ空気抵抗を無に出来たり揚力が無いものを浮かせたり出来る――、があるのに、わざわざそれを使用しないで空気抵抗を減らすために頑張っている理由は何だろう。
考え付くのは、ゾイドのメカニズムには、地球の物理学的な要素と、ゾイド星特有のマグネッサー技術が複合されているのだろう、という事だ。
どちらか片方だけではない。
地球技術だけで言うなら、ギル・ベイダーが分解せずに飛べるわけは無い。サラマンダーもあの羽で十分な揚力を出せるはずが無い。
一方、マグネッサーシステムが万能で無いのもライジャーを見ていると良く分かると思う。
マグネッサーシステムを使えば、全てのゾイドを浮かすこと・空気抵抗を無効化してしまう事など出来る。
なのにそうなっていないのは、全てをカバーできない何かがあるのだろう。

思いつくのは、精度の高い技術過ぎて量産しにくいという事だろうか。
そういえばサラマンダーの解説に「羽の改造が特殊で数をそろえる事が出来なかった」とある。
これが物語っているのではないだろうか。

ここでは、マグネッサーシステム=「便利だが全ゾイドの全システムに使うほど余裕のあるものでもない」と捉えたい。
こう考えると、マグネッサーシステムを有するゾイドが一方では空気力学を取り入れたようなデザインになっていることが説明できると思う。
■基本的には地球と同じ物理学に則り作られる。その方が様々な観点から都合が良いので。
■どうしても使わざるを得ない部分にはマグネッサーを使用する。

さてサラマンダーの背中コックピットであるが、単独で飛行可能ならばマグネッサーシステムは使われていると見るべきだろう。
つまり「フェアリングが無いけども、大丈夫である」と。
ただ補足すると、むき出しのコックピットである理由の一つとして、「外気を肌で感じれるから」としていた。
然るに、マグネッサーシステムにより全部無効化しているわけではなく、外気が感じられるレベルには調整されているのだろう。
ON/OFFも可能かもしれない。いや細かく出力レベルが調整出来るのなら理想的だろう。
巡航時は弱くしておく。最高速度時や敵の迎撃機との戦闘時、また単独での飛行時は、振り落とされないように最大出力にするなど。

これにて、コックピットのフェアリングが無い点に関しては解決されたものとしたい。

そして最後に寒いという点。
正直に言うとこれは考察が出来なかった。
マグネッサーは温度とは関係あるのだろうか…?
空気抵抗を無くする程の効果を発揮するなら、コックピット付近の気圧を保つ=温度を保つ位は出来そうでもあるが…。
ただこれは推測でしかないので、決定的とは言いにくい。

あるいは、ゾイド星の兵士はいつも頑張っている。
敵ゾイドに果敢に突撃し、効果があるのかは大いに疑問だが銃を撃ち手榴弾を投げている。
敵ゾイドが突撃してくるのに、土嚢を積み上げただけの簡易陣地で銃を持って迎え撃っていたりする。
そう考えると、寒さに耐えながら、酸素ボンベ(さすがに1万m以上にもなると酸素ボンベは必須だろう…)を背負って乗り組むことは、案外普通レベルなのかもしれない。

まぁ、最後はちょっと苦しくなったとは思う。
とはいえ、ある程度はサラマンダーの背部コックピットの安全性に対する考察は出来たかなと思う。
こう考えると、なるほど意味を見出すことも出来るコックピットだなと思えてくる。

  

ただ、やっぱりどっちがいいかと言われたら頭部であるのだけども…。

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