ゴジュラスはどこまでゴジラ型か

かなり禁断のネタだと思う。今回、扱う機体はこちら。


共和国側 RBOZ-003 超巨大陸上戦闘機械獣 ゴジュラス。
ゾイドゴジュラスとも呼ばれる。メカ生体ゾイド時代においては、こちらで呼ばれる方が多かったように思う。

書籍HISTORY OF ZOIDSによれば、初期においてはその巨体ゆえに鈍重、しかし気性だけは荒くやっかいな、”使えない”ゾイドであったらしい。
しかし地球人来訪による技術革新が起こった事により、強力な戦闘機怪獣に生まれ変わった。
それ以降は猛威を振るった。
あらゆるゾイドを上回る重パワー。大型機に似合わず機敏な運動性能。呆れる程に頑丈な防御力。備砲は貧弱だが腕や牙の力が強く格闘戦では無敵。
ゴジュラス派、長年に渡り最強・無敵の名を欲しいままにした。
またゴジュラスパイロットはベテランが多く、それもまた多大な戦果を挙げ続ける要因になった。
デスザウラー就役後は旧式化が目立ってくるものの、数々の改造タイプが生まれ、共和国の主力であり続けた。

さてゾイドゴジュラス。
「ゾイドの象徴」とも呼ばれる偉大な機体だ。この機体の発売で、メカ生体ゾイドの人気が一気に爆発した。まさに記念すべき機体と言える。
ゴジュラスの発売と同時に、ゾイドは各メディアへの露出を一気を増やしている。
雑誌コロコロや小学三年生は、ゴジュラス発売直後からゾイドを扱うようになったし、一般認知度も大いにアップしたのがこの時期だ。
そういった意味からも、ゾイドの象徴として相応しい存在だと思う。

1984年4月発売。
当時としては最大のゾイドであり、また価格的にも最高値で登場したゾイドだ。その定価は3800円。なお次点のゾイドマンモスは3000円である。

そんなゴジュラスは、東宝の某怪獣…というか、まぁ、ハッキリ言ってしまうとゴジラ。と、深い因縁をもって語られる機体でもある。

そう、曰く「ゴジラ型である」

箱の表記は「恐竜型」となっている。

また一部書籍においては「ティラノサウルス型」とされている事もあったが、ネタでも本気でもゴジラ型と言われる事が多い。

さて、ゴジラ。
1954年に初代映画が放映されるや大人気を呼び、以降数多くのシリーズが生まれてた。
東宝…、というか日本を代表する大怪獣で、国内外に熱狂的マニアを多く持っている。

まあ、ぶっちゃけて言うと、ゴジュラスがゴジラ型である事は否定できない部分も多いと思う。
中でもネーミングと背ビレは言い訳が出来ないと思う。

しかしながら、「直立である事」も、ゴジラ型である事の根拠として語られる事が多くある。これに対しては強く反論したい。
これは、的を得た意見とはいい難いものだ。
何故なら、確かに「今の恐竜図鑑と比べたなら、姿勢的に見てゴジュラスは恐竜型ではない」
しかし、ゴジュラスが発売された84年において、図鑑に載っている恐竜の姿はどうだったのだろう。

まさに直立だ。この時代はこの姿勢こそ恐竜の一般認識における常識だったのだ。

ゴジラも設定上、「恐竜の生き残りが核実験の影響で巨大化したもの」であり、そのモデルは肉食恐竜だ。
そしてゴジラが製作された1954年といえば、当然、恐竜の復元図は直立だった。
ゴジラが直立なのは、当時の恐竜の復元図が直立だったからである。

1990年ごろまで、二足恐竜の復元図は、一部先進的なものを除き、全て直立であるのが常識だった。
カミナリ竜の首は天に向かって伸びていた。ブラキオサウルスは水の中で生活していた。
図鑑も、少年が読む児童書も。

今、「古い」とされる全てが、当時は「常識」だった。
この点は理解すべきだ。

今の学説であるところの前傾姿勢の恐竜が一般に浸透し、また図鑑の挿絵も改定されたのは、1993年に公開され大ヒットしたジュラシックパークの影響が大きい。
もしかして同映画が無ければ、今でも一般認識としては「直立」が根強かったかもしれない。

実は、前傾姿勢の恐竜は、既に80年代から学会では発表されていた。そして学会で圧倒的な支持を得ていたのは事実だ。
何故なら、心臓の位置や大きさから計算し、巨大な恐竜が直立姿勢をしていたら、血液が頭まで循環しない事が判明してしまった。
更に、恐竜の足跡は見つかるのに、尻尾を引きずった跡は見つからない。
こうなると、自然に恐竜の形が改定され見えてくる。
つまり頭は、重力の影響を請けにくいように、もっと低くしていたのだろう。そしてその分のバランスを取るために、尾は上げていたのだろう。
そう、前傾姿勢だ。

しかし既に世間では「恐竜=直立」という常識が確立されていたので、一部先見的な書籍を除き、この説はなかなか浸透せず、直立恐竜が使われ続けていた。
学会で明らかにそうであると証明された事であっても、それが一般に浸透するには、非常に長い年月を要する。
ましてネットの無い時代なので尚更の事だ。
ジュラシックパークという超々大ヒット映画がポンと出て、一気に恐竜の新説が広がったのはむしろ例外的と言える。

下は、80年代~90年の学年誌より、恐竜特集のページを抜粋したものだ。

一部には前傾姿勢の絵が載っているものの、やはり直立恐竜の資料の方が圧倒的多数だ。
当時の子供は、「恐竜=直立」というのイメージを持っていた。

この時代は、徐々に前傾姿勢が浸透する草創期にあったものの、まだまだ直立が支配的だった。

以上を考えるに、84年にリリースされたゴジュラスが直立をしているのは当たり前の事だと、私は思う。
その点は強く訴えたいところだ。

さて直立=ゴジラ型ではない説を唱えたところで、もう一つ。

実はネーミングと背ビレ以外にも、ゴジュラスがゴジラを意識していると思われる所がある。
それは1984年という発売のタイミングだ。

先に書いたように、ゴジラは1954年に初代映画が放映され大ヒットを記録した。
そなると当然、続編が作られる。
当初は悪役であり核兵器の恐怖を代弁していたゴジラは、やがてキングギドラなど更なる悪役怪獣が出現するに至り、人類の味方に立場を変えていった。
造形もこの頃変わり、目が随分大きくなって愛嬌多く、キャラクターっぽいものになった。

こちらは1975年公開の「メカゴジラの逆襲」時のゴジラ。目が大きく可愛らしくなっている。

さてゴジラ映画。年々、初期作のようなヒールさが失せ、いつしか人類の味方。
しまいには、少年の「助けてゴジラ!」の声に反応し現場に駆けつけるシーンまで作られる始末。
それはそれで少年達の歓迎を受ける一方、初期作からのファンにとっては違和感・失望感が増えていくものでもあった。
その影響で、興行収入はシリーズを重ねるたびに減っていく一方。
ここへきて、1954年から続いたゴジラシリーズは、1974年の「メカゴジラの逆襲」をもって、いったん打ち切りとなってしまった。

しかしゴジラに失望した大人は勝手なもので、「最近のゴジラはダメだ。もう行かない」と言っていたのに、いざシリーズが終わってしまうと寂しい。
シリーズ打ち切りから数年、各地でゴジラ復活を望む声が高まってくる。
1979年には、一度、ゴジラ復活の企画が東宝社内で出ますが、紆余曲折へて結局頓挫。
この件もあり、ゴジラ復活を望む声は、80年代初頭にはいよいよ最高潮になってきたのだった。

各地で過去のゴジラ映画がリバイバル上映され、往年のファンだけでなく新規ファンも順調に開拓されてゆき、いよいよゴジラは復活に向け、具体的に始動していった。
この頃の少年に人気のあった怪獣は、もちろんゴジラ。そしてキングギドラ。そしてメカゴジラだ。


メカゴジラ。
ブラックホール第三惑星人が制作した、ゴジラを模した戦闘兵器。スペースビーム、フィンガーミサイル、デスファイヤーなど多彩な火器を搭載。
いずれもゴジラに大ダメージを与える。またディフェンスネオバリヤーを機体周囲に展開出来、これはゴジラの熱線を完全に無効化する。
ロケット噴射で飛行も可能。速度は不明ながら劇中ではかなり速い印象を受ける。

このメカゴジラが、当時大人気だった。
かなり初期から出ていたアンギラスや、単独で主役映画が作られているラドンやモスラすら差し置いて、大人気を博していた。
やはり「恐竜とメカ」という、少年が憧れてやまないものが合体したものは夢なのだと思う。

そう、1984年4月に発売されたゴジュラスは、世の中のゴジラブームを的確に読み、そしてメカゴジラの人気を上手く分析してリリースされたのではないかと思う。
そういう意味では、上手くゴジラブームを利用してリリースされた機体だと思う。

なおゴジュラスの発売から遅れること半年と少し。84年年末に、本家ゴジラ映画も、復活を果たしている。
ゴジュラスとゴジラの関係は、ざっとこういう風に感じる。 

さて次は、細かく造形面を考えてみたいと思う。
ゴジュラスは表記上は「恐竜型」とされているが、「ティラノサウルス型」とも表記される場合があった。
ここではティラノサウルスとゴジラの、どちらに近いかを考えたい。

まず頭部。

まずシルエットは三者とも近似している。
というか、ゴジラ自体がティラノサウルスをモデルにしているから、三者が似ているのは当然と言える。

全体のバランスを考えると、ゴジラは小顔をしているのに対し、ゴジュラスはかなり頭でっかちだ。
このサイズは、ティラノサウルスのバランスに近い。

総じて、造形面ではどちらとも言えず、大きさ的にはティラノサウルスに近い頭部であると思いう。

 

その下、首や胴体は何とも言いようが無い。
胴体はティラノサウルスもゴジラもそんなに差が無い。従ってゴジュラスがどちらに近いとも言えず、この部分での比較は省略する。 

 

次に腕部。

腕の造形はティラノにもゴジラにも似ていない。
というのもティラノサウルスは2本指。ゴジラは4本指。そしてゴジュラスは3本指だ。
ただ形状的にはティラノサウルスに近いかと思う。
ゴジュラスの3本目の指は受け皿のようなものなので、本来目指していたのはティラノサウルスのような二本指ではないかと思える形状だ。
ただ、そうしてしまうと何かを掴む事に対し難しい形状になってしまう。
そこでの処理だと思いう。

大きさのバランスは、ティラノよりかなり大きい。とはいえゴジラよりは小さい。
大きさはどっちつかずと考えるべきかと思う。
ただ設定上、ゴジュラスの格闘能力は超絶で、腕の力も他を寄せ付けぬ圧倒的なものを持つ。
なにせ90t以上もあるレッドホーンの突撃を左腕一本だけで受け止め、投げ飛ばす。

ティラノサウルスの腕はせいぜい殺した獲物を押さえる事に使用されたと考えられている。
対し、ゴジラの腕は格闘戦で強力な武器として機能し、相手を投げ飛ばすなどしている。
腕部をまとめると、造形はややティラノサウル的。機能面はゴジラ的かと思う。

 

後脚や尾は、ティラノサウルスもゴジラも大差ないので、胴体と同じく略す。

 

次に背ビレ。

よくゴジラ型の最大の根拠として語られるのが、この背ビレだ。
ただし、細かく見ると差がないわけでもない。
ゴジラの背ビレは3列。中央に大きいヒレがあり、その左右に小型のヒレがある。ゴジュラスのは中央に一列のみとなっている。
ただ後年のゴジュラスギガは完全にゴジラ並びであるが……。

さて背ビレ。
ぶっちゃけ、多少の並びの差があろうが、これは言い訳できないと思う。
「ゴジュラス」というネーミングの上に立派な背ビレがあるのだから…。
とはいえ、一応、こういう考え方も、無いわけではないというのを、加えたい。


図鑑挿絵のティラノサウルスと、その背中部分を拡大した画像。
当時の図鑑や雑誌の挿絵には、このような背ビレが描かれているものが多い。
なぜ背ビレが描かれたかは謎であるが、ともかくそういう挿絵があったという事だ。

単純に、背ビレは何だかあった方がカッコ良いし、なんだか恐竜っぽいカンジがする。
その為、当時の少年は、恐竜の絵を描く時に背ビレも描いている事が多かった。
その程度には浸透している記号だった。

ゴジュラスの背ビレは、まぁゴジラではあるのだけども、同時に「恐竜の背ビレ付き復元図を誇張して生まれたものでもある」とも言えるのではないかと思う。
機能的な面で言えば、ゴジラは背ビレを妖しく発光させ口から熱線を吐くが、ゴジュラスの背ビレはレーダーである。そして口からは何も吐かない。

以上をまとめるに、ゴジュラスはやはり多分にゴジラ要素はある。
しかしながら一般に言われているようにゴジラのみがモチーフなのではなく、ティラノサウルス要素も、少なくとも半分は入っていると思う。

特に、頭部の大きさのバランス。
逆に、ゴジラ最大の特徴であるところの熱線は吐かない。火器よりも、とにかく相手に接近して戦う野性的な戦法。
そう、けっこうゴジュラスはティラノサウルスだと思う。

例えばジェノザウラー。

このゾイドがティラノと言われる最大の理由は前傾姿勢だ。
しかしながら、前脚はティラノにしては大きすぎる上、3本指だ(とはいえ2本指に見せようとはしている点は大きいとも思うが)。
頭部はティラノというにはあまりにも小さすぎる。

後発のバーサークフューラーはある程度ティラノサウルスだと思う。

特に前脚はかなりの再現率だと思う。とはいえ、子顔である点はティラノサウルであるとは言い難い。

個人的に、ジェノザウラーやバーサークフューラーが「前傾姿勢だ!凄い!まさにティラノ」ともてはやされる一方、ゴジュラスがゴジラだと言われ続けているのは不憫だと感じてしまう。
「そのゾイドが登場した時期の一般的見解で言う所のティラノサウルス」に近い形をしているという意味では、ゴジュラスもなかなかのものだと思う。

まぁ、2000年。ジェノザウラーが登場したタイミングでの話をするなら、ジェノザウラーは初の前傾姿勢を再現した肉食獣型ゾイドとして誕生した。
その要素はインパクト抜群で、他の造形面で多少ティラノサウルス型じゃなくても、ティラノサウルス型と言い張れるだけの要素だったんだろうなぁとは思うが。

結論とすると、私としては、ゴジュラスはゴジラ的な要素があるがティラノサウルス型と胸を張っていえるだけのデザインでもあると思っている。

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