懲罰席を考える-尾部銃座-

メカ生体ゾイドは非常に長く続いた作品だ。そこに登場するゾイドは全部で100を超える。
それらゾイドを分類する一つの手段に「初期ゾイド」「中期ゾイド」「後期ゾイド」があると思う。


「前期」「中期」「後期」
個人的には1983~1986年ゾイドを初期、1987年~1988年を中期、1989年~1991年を後期としている。
初期としたものは開戦~ウルトラザウルスの力で帝国を追放するまで(第一次中央大陸戦争)。
中期としたものはD-DAY~マッドサンダーの力で帝国が滅亡するまで(第二次中央大陸戦争)。
後期は暗黒軍参戦以降(大陸間戦争)。

初期ゾイドはモールドがとにかく細かく、キャップ使用数も非常に多いのが特徴だ。
そしてこの時期のゾイドのもう一つの特徴に、尾部銃座の多用が挙げられると思う。

尾部銃座とは名の通り尾部先端に取り付けられた銃座の事で「懲罰席」とも呼ばれる。
主に2~3門の砲があり、専用の砲手が乗り込んで操作をする。

尾部銃座は批判の矛先になりがちだ。
曰く、「危険すぎる」「酔う」
確かに防弾板も無い座席で大した威力もない砲を専門に撃つのは酷だと思う。先端にある特性上、激しい揺れも避けられぬと思う。

驚くべきは、この尾部銃座は、パイロットの安全性に配慮しているとされる帝国でさえ採用した事だ。
更に、後年パワーアップしたダーク・ホーンさえ、この銃座に何ら改良を加えることなく使い続けているのは大きな驚きだ。

この点は昔からの疑問だった。
初期ゾイドの“らしさ”と言ってしまえばそれまででもあるが、その意図をを追及したいと思う。
今回は、この座席の意味は何かを考えてみたい。

 

さて尾部銃座を持つゾイドは、「ビガザウロ」「マンモス」「ゴルドス」「ウルトラザウルス」「レッドホーン」「ダーク・ホーン」の計6種。

さてこうして見ると、初期の大型ゾイドのほとんどは尾部銃座を持っている事が分かる。
例外はゴジュラス、アイアンコング、サーベルタイガーの3種類。
ただコングはそもそも尻尾がないし、サーベルは銃座を載せるほどのスペースが尻尾にない。ないのは当然だ。

興味深いのは、マンモスの次級でありゴルドスの前級であるゴジュラスが銃座を持っていない点だ。

ただ銃座ではないものの、ゴジュラスも尾部に砲を付けている。
ここから導き出せると思った。
ゴジュラスを見ると「その気になれば頭部メインコックピットからでも尾部の砲は操作できる」事が分かる。
尾部銃座を付けているゾイドは、その気になれば無人化できるのに「あえて」銃座という有人式にしているのだ。

わざわざ人を配している意味とは一体なんだろう。
たかだか数門の砲、そのためにむき出しの銃座を危険極まりない場所に作るなど不条理に思えるのだが……。

  

まず、ここまでの事をまとめよう。

①:「尾部の砲は、頭部コックピットなど別の場所からの操縦も可能」
②:「①の補足として、尾部にパイロットを配置した方が命中率は上がる」

となると思う。
①に関してはゴジュラスの例から導いた。
また①があるにもかかわらず有人式の銃座を採用しているなら、それなりのメリットがある筈だ。それは単純に②の内容になると思う。
尾部銃座は後方の敵を撃つ為のものだから、その方向を視認できる砲手が撃った方が良いのは当たり前ではあるだろう。

しかし②のメリットがあるとして、それだけで銃座にしてしまって良いものだろうか。
先にも少し触れたが、この砲は対ゾイドとしては甚だ威力不足である。
また、そもそもゾイドの行動に併せてずっと乗っていればかなり危険だし、激しい揺れの疲労が避けられぬと思う。

ただやはり、ゴジュラスが銃座を持っていない点は大きなヒントになると思う。
ゴジュラスと、他の銃座を持つゾイドの違いは何かを探ってみたい。


目立つ点として、尾部先端の高さが違う。
ゴジュラスが高い位置にあるのに対し、他の機体は全て地表スレスレにある。
この点は非常に大きなヒントになっていると思った。

 

ここまでくると見えてきた。
さてゾイド星の戦いというと、とにかくゾイド同士の戦いに目が行きがちだ。だがもの凄く頑張ってるのがゾイドに乗らない一般兵だと思う。


一般兵は正直「そこまで頑張るか!?」と言いたくなるほど頑張っている。
上の画像はサーベルタイガーと行動を共にしている兵士のシーンだ。
他にも、ゾイドに向けて銃や手榴弾を浴びせかける場面なんかを多く見かける。
そう、この星の兵士はたいへん勇敢である。

戦いの主力は当然ゾイドだが、数の上でいうとゾイドの数倍~数十倍は歩兵が展開しているのだろう。

この歩兵を併せて考えるに、尾部銃座を持つゾイドは、
「基本的には尾部にパイロットを乗せない状態で運用されている」
「敵と接近し頭部コックピットでは対応が難しくなれば、周りの一般兵士が乗り込み精密射撃を行う」

のではないかと思った。

それゆえ尾部銃座を持つゾイドは全て、尾を地表スレスレの兵士がすぐに乗り込める位置にしているのではないかと思う。
逆に言うとゴジュラスが尾部銃座を持たないのは、「尾部位置が高く上記のような運用が不可能だから」だと考えることができる。

またこの銃座に付いている砲は、何度も書いたが威力は低めに抑えられている。
もしかすると、この砲は対ゾイドではなく群がる兵士を撃退する対人用の砲なのかも…とも思った。

以上のように考えると、一見不条理な席であるように見える尾部銃座もなかなか考えられた席だと思う事ができ、非常に興味深いと思う。

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