マッドサンダーVSデスザウラーに関する考察

「無敵」という言葉から連想されるゾイドは多くあると思う。
真の意味で言うならキングゴジュラスになろう。ただ「印象として」であれば他のゾイドを挙げる方も多いと思う。
初期からのファンならゴジュラスはまさに無敵だったと思う。
個人的にはギル・ベイダーが悪魔的に強かった印象が強い。
ただ最も多くの方が連想するところで言うと、やはりデスザウラーではないかと思う。

デスザウラー。
その格闘能力はかつての王者ゴジュラスを軽く上回る。尾の一撃で吹き飛ばし、左手一本で軽々投げ飛ばしてしまう。
そして必殺の荷電粒子砲。直撃はおろか、かすっただけであのウルトラザウルスが戦闘不能になる。
当時、共和国軍の一線にあったあらゆる大型ゾイドがデスザウラーに挑み、散っていった。
ゴジュラス、ウルトラザウルス、サラマンダー、シールドライガー…。

唯一の例外は雪原で戦いを挑んだゾイドマンモスで、デスザウラーを数時間食い止める事に成功している。

ただこの一戦は「極寒地」という「ゾイドマンモスにとって有利かつデスザウラーにとって不利」な場所だったこと。
ゾイドマンモスは冷凍砲(学年誌によると”マイナス・ゼロ砲”)なる特殊装備を持っており、完全に対デスザウラー型として特化していたこと。
単機のデスザウラーに対して複数で挑んでいること。

これら圧倒的にゾイドマンモス優位の状況だった為、例外中の例外と考えるべきだろう。

後に登場した対デスザウラー用ゾイド「ディバイソン」は、善戦こそした。だが、やはり正面から倒すには力不足なものであった。
以上から察するに、やはりデスザウラーは「無敵」のイメージに最も合致していると思う。

 

ようやくデスザウラーを正面から倒せるゾイドとして登場したマッドサンダーは、「無敵ゾイドを倒せる」という矛盾を、しかし納得させられる素晴らしいゾイドだと思う。


無敵ゾイドとそれを倒すためのゾイドが戦った中央大陸戦争クライマックス。この決戦は、ゾイド戦役で最も燃える戦いの一つなのは間違いないと思う。

ただデスザウラーVSマッドサンダー戦では疑問が提示される事がある。
それは「デスザウラーは何故、荷電粒子砲でマッドサンダーの前頭部を狙うのか」ということだ。

交戦時、デスザウラーはマッドサンダー頭部に向けて荷電粒子砲を放つのが定番だ。
また、この後マグネーザーに突き破られるのも定番だ。

黄金構図だが、まぁ、確かに疑問ではある。
マッドサンダーはキングゴジュラスと違い、全身をくまなくガードしているわけではない。
あくまで「前頭部の反荷電粒子シールドが荷電粒子砲を無効化できる」のみで、他の部分は耐える事ができない。
「頭以外を狙えば勝てるのでは」というのは当然の疑問と思う。

今回はこれを考えてみたい。

 

マッドサンダーに関して言えば、見落とされがちな点が二点あると思う。

一つ目は、マッドサンダーは意外と首が大きく可動する点。

バトルストーリーを見ればこれは明らかだ。
様々なシーンで、斜めや、あるいは真横に近い角度にまで首を曲げたマッドサンダーを見る事ができる。
諸説あるとは思うが、ゾイドの実物はキットの単純拡大したものではなく、バトルストーリーの写真のように動物的に可動するものだと思う。

次に、マッドの後脚は非常に頑丈である点。

マッドサンダーの改造タイプとして要注目なものに、「ビッグサンダー」「グレートサンダー」があると思う。
両者ともマッドサンダーが後脚だけで二足歩行している(なお前脚はゴジュラスのものになっている)。しかも機動性も良好との事。

ちなみにビッグサンダーは帝国領土への侵攻戦に投入されている。グレートサダーはガンブラスターなどと共に部隊を編成し、対ギル・ベイダー戦に投入されている。
マッドの重量(585t)を後脚だけで支え、なおかつ走行できるのだから驚きだ。
いや両機とも武装を増加させているから、重量はノーマルよりもかなり増えていると思う。

両機とも改造機だから、脚がかなり強化されているとは思う。
ただそれでも、外観上さしたる変化はない。だから再設計ではなく、あくまで「改造」のレベルと考えるのが妥当だろう。
よってノーマルも、少しだけなら後脚だけで立つ事が可能と推測したい。

この二点から「デスザウラーが荷電粒子砲の射角を変えようが、やはり正面装甲で受け止める事ができる」と思った。

 

デスザウラー側も考えたい。

荷電粒子砲。
私は、デスザウラーがマッドサンダーの正面に放っている理由を「そうするしかない」のではないか思った。

デスザウラーが荷電粒子砲を放つプロセスは、
1:背中のファンが回して空気中の荷電粒子を吸収する。
2:荷電粒子はデスザウラー内部のシンクロトロンジェネレーターで光速まで加速される。この過程でデスザウラーの喉元は怪しく発光する。
3:発射
となっている。

単純にこれは時間が掛かっている上、相手に「荷電粒子砲が来る」と分かりやすい。非常に大きな問題だと思う。
荷電粒子砲が絶対的な威力を発揮し、またデスザウラーの装甲が共和国のあらゆる武器を弾き返していた時期なら「荷電粒子砲発射プロセスがバレる」のは致命的ではない。
ただ、局地的にとはいえそれを跳ね返す装備が出ると話が違ってくる。

デスザウラーが荷電粒子砲の発射準備を始めた。そうすると、マッドサンダーはその射線上に前頭部…、反荷電粒子シールドを向けるだろう。
首が大きく可動し、またその気になれば後脚で立てるマッドにとって、それはさほど難しくない事だろう。

また荷電粒子砲は、一度発射したら照射終了まで射角を変えられないとも思う。
それは荷電粒子砲が威力がありすぎる点から推測したものだ。単純な話、デスザウラーは荷電粒子砲を受け止める事ができない。
ゆえに発射中に射角を変えてしまうと、荷電粒子砲の砲身そのものが壊れてしまうと思う。

実際、万全状態であってもデスザウラーは一度の出撃では荷電粒子砲を「3発程度しか撃てない」とされている()。
それ程までに超超高エネルギーを放出する必殺武器だ。
照射中に無理に射角を変えれば、悪くいけば砲身が破損し、そのままデスザウラーの頭部が爆発、なんて事も……。
もし射角を変えられるにしても、かなり緩やかな動きでだろう。それ位ならマッド側も位置調整をしながら受け止め続けると思う。
※ただし新世紀版はOSによってこれを克服している

以上をまとめると、デスザウラーが射角を変えて撃ってもマッドは受け止める。
起動性を生かして側面や背面に回っても(機動力自体は二足歩行のデスザウラーの方が上と思われる)、荷電粒子砲をチャージする段階でマッド側に回り込まれる。
結局、入念なガードを許してしまうのだと思う。

デスザウラーは割り切らざるを得なくなる。
「結局、反荷電粒子シールドで受け止められるなら、小細工をしても無駄にエネルギーを消費するだけ」
ならどうするか。

「もはや小細工は不要。最も荷電粒子砲の威力を発揮できる角度で、フルパワーでエネルギーが尽きるまで浴びせかける」

割り切って正面から撃った方がドッシリと構えられる。
上手くいけば(例えばマッドサンダーのエネルギーが底を付きかけていた場合など)、フルパワーの荷電粒子砲は反荷電粒子シールドのエネルギーを超えるかもしれない。
後年、OSでパワーアップしたデスザウラーが、やや弱体化したマッドのシールドを突き破ったように……。

おそらく、望むと望まないにかかわらず、マッドサンダーと対峙したデスザウラーには「もはや荷電粒子砲をフルパワーで浴びせかけるしか取るべき方法がなかった」のではないだろうか。
多くのデスザウラーがマッドサンダーに真正面から荷電粒子砲を浴びせた挙句にやられているのは、このような理由からだと思う。

ただ可能性を考えるなら、デスザウラーが両の腕でマグネーザーをガッシリとつかんでマッドの動きを止めた上で、背中に荷電粒子砲を叩き込めば……。
ただ、マグネーザーの回転はデスザウラーの腕など容易に突き破る。マッドが停止するのはわずかな間のみなので、やはり難しだろうか。
また、その気になればマグネーザーは切り離したり射出したりもできる。マッドがマグネーザーを破棄して防御に転じたら、やはり仕留め損ってしまうだろう。
その場合、「マグネーザーの無いマッドサンダーは、果たしてサンダーホーンだけでデスザウラーを突き破れるのか?」という別の議論が生まれそうでもあるが……。

ということで、デスザウラーVSマッドサンダーを考えてみた。
やはりマッドサンダーは対デスザウラー用の切り札というだけはある。対抗機として完璧なのだと思う。

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