HMMの設定に関して

2011年現在、ゾイドはコトブキヤのHMMによって支えられている比重はたいへん大きいと思う。
正直、2006年に第一弾であるHMMシールドライガーが登場した時は全く予想外で、しかしながらおそらく単発で終わるだろうなと思っていたら急成長して次々リリースされるに至ったのはまさに衝撃的だった。

キットはフル可動化されており、動力を持つゆえにポージングに限界があるトミー版ゾイドとは違った魅力を魅せてくれた。

オリジナル版ゾイドは動力を持ち、歩行に連動した様々なギミックを魅せてくれるのが最大級の魅力ではある。
しかしながらそれゆえに停止時において動物的なポージングに難があるというジレンマも持っていたと思う。

その点、脚部関節ごとの見事な可動や頭部の自由な可動等により、躍動感のある動物的なポージングが可能となっているHMMは、そこに最大の魅力があると思う。
特に脚部の効果は素晴らしい。
全身ギミックを持つ関係上、基本的に進行方向に対し垂直なラインでしか足がとれないオリジナル版に対し、ハの字開きの出来るHMMは、いかにもドラマ性を感じる様々なポージングが可能になっている点は素晴らしい。
またフライングベースに対応しているものも多く、更に躍動感あるポーズが可能となっている点は素晴らしいと思う。

 

細かいバリエーション展開が多いのもマニア心をくすぐる。
ただ例えば追加武装分だけ別で販売して欲しいとか、せっかくのポージングも保持力に関しては弱いなど、そういった点は更なる改善を求めたいと思う。
とはいえ出るたびに進化を感じるシリーズであり、今後ともゾイドの柱の一つとしてあり続けて欲しいと願う。

デザインのアレンジに関しては各機体によって様々あるのでここでは略したい。
ただハイディティール化が盛んに宣伝されていたものの、この点はもともとゾイドはモールドの非常に多いもので、特にメカ生体期のゾイドを見慣れていた身にとしては特に「凄い」とは感じなかった。
オリジナル版は大雑把な造形をしている部分もあるが、大局で見て的確で説得力のある造形をしている。

ただ総じて素晴らしいシリーズであるとは思う。

しかし唯一、設定に関しては色々と思う部分が多い。
HMMの設定はそれこそゾイドとしてはかつてない量のテキストで構成されている。
ただ正直に言うと、それは深いなと思う部分はあるけども、あんまり好きじゃないというのが正直な所だったりする。

まぁ、好き嫌いというのは私の主観ではある。
だから好き嫌いは抜きにして考えるなら、ああいうものがあってもいいとは思う。
ただその上で更に言うなら、HMMの設定はあまりにも断定しすぎている所はあると思う。
自分が想像していたのと違う設定が明記されていて、「こうである」と断定されたらちょっと寂しいなぁっていう気になってしまう。
そういうのが多い。

まぁ、それは仕方のない事だとは思う。
私の想像が他の誰かの想像と全く同じという事はありえないのは分かる。
そしてHMMはその特性上、より深い設定を記載する必要がある。
ズレがあるのも、それが設定になるのも必然ではある。

ただ願わくば、もう少し幅は持たせて欲しいと切に願ってしまう。
HMMの設定は設定で存在するけど、キミが考えた設定の機体だって存在する可能性もあるんだよ と思えるようにというか…。

 

これは個人的な話になってしまうけども、私が数年前にゲーム会社に居た頃、ある作品の人気が出たら、続編を作るというのが常だった。
その時、私個人が担当したパートでは最も気をつけていたのが、前作のファンに対する礼儀で、それは前作でファンが感じた事を決して否定してはいけないという部分だった。
だから新しい設定やキャラを出す時はとにかく慎重すぎるくらい自分の中で検証を重ねていた。
時に初代に関わってないけど続編を任されたというケースもあってそれは凄く大変だったけども。
それでも、作る以上それが礼儀だと私は自分の中で取り決めていた。

私は、私の想像が誰かの想像の障害になる事だけはやってはいけないと思う。

新しい事を出すにしても、ユーザーが前作で得た想像力を打ち消す事が無いように隙間を作っておく事は何より大事だと思う。

 

例えばそう…、
オリジナル版とHMM版は形がずいぶん違うけども、それすら「どちらも正しい」ということで良いんじゃないかと思う。

たいていの戦闘兵器は時期によって改良が加わっていて、中にはほとんど別の姿になっているものもある。
ドイツの傑作戦闘機メッサーシュミットBf109は、最初のA型と後期のG型では随分と見た目や性能、特性が違う。
個人的には、そういう感じで、オリジナル版とHMM版が共存できるような解説にしてくれたら良いのになぁと思う。

こういう風に書くとHMM嫌いなのかと思われそうな気がして怖い。
ただそういうわけではない。
好きで居る。
買う買わないで言うなら全て買ってるし、今ゾイドがかろうじで死なずに在るのは、HMMシリーズのおかげという側面が最大であると感じている。

解説している方も、なんだかんだでHMMの盛り上がりに最も貢献している方な事は確かだと思うし、ああいう勢いのある方は必要だと思う。
ただ彼は誤解されやすい人だとは思う。

雑誌グレートメカニックDXにて、同氏はマクロスのデストロイド・トマホークの作例にて、
『「マクロスはVFシリーズだよな!」なんて言ってるヤツはまだまだコドモだぜ(笑)』
と仰られていたが、なんというかこういうのはカチンと来てしまう。

そんなこと言うんだったら、こちとらゾイドに関しては20年以上の年月愛してるわけで…。
彼はゾイドを知ったこと自体が、そもそもHMM開始時期だったとのこと。

そういうキャラなんだとは思うし、それは否定しない。
ただ願わくば文章をマスターアップされる前に読み直し、自分よりも長い時間かけて追いかけている人も居るという事を意識して欲しいとは切に願う。

 

こう書く一方で、そういうのは放っておくというか、いちいち目くじら立てずに穏やかな気持ちで読めばいいのにと、自身に思う事もある。
ただ何故そういう風に思ったのかなぁと考えると、それは旧資料の現存率というか、一般ユーザーへの浸透率によるものだと思える部分もある。

低い。
絶望的に低い。
それも当たり前の話で、メカ生体ゾイドにおけるほとんどの資料は、今簡単に見えるような形では提供されていない。

ゾイドの旧資料は封印されてると言っていい程だと思う…。
その辺は旧資料の発掘に死力を尽くしている私は随分知っているつもりだ。
私はそれなりの数の資料を持ってつもりではあるものの、その私ですらまだまだ未入手の資料の方が圧倒的だ。
将来的なコンプリートは残念ながら困難と言わざるを得ないようにも感じる。

ガンプラのコーナーを通る時、小学生くらいの子供が「アッガイだ」とか「ゲルググが」とか言ってるのを聞くと凄く羨ましくてならない。

ガンダムは、いわゆる「初代」の映像を見たり資料を探したりするのが比較的容易だと思える。
売り場の低年齢層の会話を聞けば、新作の00のプラモを求めているのと同じくらい初代のプラモを求めてる声を聞くから間違ってはいないと思う。

その点がゾイドには無い大きな所だと思う。
初代の機動戦士ガンダムを見た上でガンダム00等の新作を見て、結果的にどちらに惹かれるかというのはその人次第だと思う。
ただ長く続く大河シリーズであるにも関わらず、最初のスタート地点であるはずの部分の資料が見れないっていうのは何とも歯がゆい。
それがゾイドであるように思える。

HMMの設定というのはメカ生体ゾイドの部分にも触れている。
ここで私が思う問題は、現在、メカ生体ゾイドに関する情報はほとんど流通する形では無い。
だから今、メカ生体ゾイドの情報を発信すると、ユーザーは他の資料がない以上、その情報が100%あるいはそれに近い数値になってしまうと思える点にある。

 

その情報が旧バトルストーリーと比べて違和感のあるものだった場合があり、そしてそれが断定する書き方で書かれているから悔しいのです。
だから配慮が欲しいと強く感じると言うものであります。

 

ただこう考えていると、一方でこうも思える。
色々と考察して、さんざ、「この設定は一つの捉え方の例であって絶対的なものではないと感じられるものにして欲しい」と書いたものの、もしかすると既にそういうスタンスで書かれているものなのかな?とも思う部分もある。

例えばHMMシールドライガーMK-IIのストーリーにエリクソン大佐が登場する。
HMMではシールドライガーMK-IIの設計にはエリクソン大佐が深く関わっているとの事。
そして完成機の隊長として同機に乗り込み大活躍。

ゾイドバトルストーリー2巻を読めば、エリクソン大佐がトビー・ダンカンとの死闘の果てに天に召された事は明らかである。
なので、登場するのは単純におかしいと思う。

ただ深く考えれば考えるほど思うのは、「果たしてこんな明らかなミスを行えるものなのか?」というものでもある。
これが本当にミスとか旧資料への目通しが足りないゆえのものなら本気で憤慨するものの、そうでなければ意図的であるようにも思える。

あえてこういう風に書く事で、ユーザーに様々な解釈がある可能性を気づかせるというか……。
そういうのも…、もしかしてあるのかも…?と思えるには思える。

ただ、そうは言っても違和感の大きい部分があるのも事実だとは思う。
だからやっぱり、上記のようなスタンスであったとしても、この設定はあくまで解釈や楽しみ方の一例であるというような事を分かりやすく示して欲しいなぁとは強く思う。
でないと誤解も大きくなって互いに損だと思える。

両者が素晴らしい形で分かり合う事は可能だと思う。
そうなって欲しいと願う。

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