ゴルドスの105mm砲


ゴルドスのキャノン砲の口径は105mm。
今でこそ何てことない装備ですが、登場時としてはゾイド星最大最強の砲でした。
威力、射程ともに最強とゾイドバトルストーリー1巻で解説されています。
105mmという口径はゴルドス発売当時(1984年)の地球主力戦車の主砲と同じです。


これは陸上自衛隊の74式戦車。
私が最も美しいと思っている戦車です。


105mm砲を搭載。
74式戦車、すごく好きです。曲面装甲を持ちスマートで、より新型の90式戦車や10式戦車よりも好きです。
大型の投光器があるのも良い。これがデザインを微妙に左右非対称にしているのも好きなポイントです。
10式戦車が登場した現在はさすがに退役間近になっていますが(2024年3月完全退役予定)、割と近年まで陸自の戦車と言えば74式でした。


ゴルドスと比べるとこんな大きさです。ゴルドスは全長30.3m、74式は9.41m。
全長もさることながら、ゴルドスは高さが圧倒的にあります。
ゾイドは改めて巨大すぎる……。

これだけの大きさを誇るのにゴルドスの主砲は105mmです。
かなり控えめなことが改めて分かります。せめて200mmくらいまで引き上げてもいい気がします。
この105mmという口径の設定はどこから来たのだろう……というのが今回のテーマです。

 

さて74式戦車。
80年代当時は絶大な人気を持っていました。
「最新鋭の主力戦車」だから人気は当然ですが、他にも理由があります。
というのも、一つ前の61式戦車はちょっと中途半端な完成度でした。


こちらが61式。
なんというか、見た目からして一世代古い事が分かると思います。
車高もかなり高いし。

主砲は90mm。開発当時としては標準で攻撃力は及第点です。
ただし欠点も多く、まず馬力が低い。そのくせ燃費が悪い。そのうえ燃料搭載量が少なく航続距離が非常に短い。
操縦もクセが強く兵員の育成に時間がかかる。世界一操縦の難しい戦車との評価もある程でした。
更に致命的な点として、開発が遅延してしまった。そのせいで完成した頃には他国はもっと先進的な戦車を開発完了してしまっていたのでした。

61式は『戦後第一世代戦車』に分類されます。欠点がありつつも、第一世代戦車の中では並程度の能力は持っていました。
しかし完成時期は他国が新型高性能戦車を開発。時代は『戦後第二世代戦車』に移っていったのでした。
こうして61式は完成直後から既に型落ち感のある戦車と相成ったのでした。
華がない。これではときめきにくい。

そこで早くも後継(第二世代戦車)として開発されたのが74式で、61式の経験を活かして飛躍的に完成度の高い仕上がりになりました。
主砲は90mm→105mmにパワーアップ。
更に姿勢制御や主砲発射で最新の高性能システムを積んだのも特徴です。これは能力を飛躍的に向上させました。
戦後第二世代戦車の中では最強との評価もあります。まさに汚名返上と言えましょう。

やりようによっては第三世代戦車(90式など)とも互角にやりあえると言われています。
今では旧式。それでも、総合力では劣るが全く勝てないわけではない……というのも何だかロマンがあります。


74式はデザインも低姿勢・曲面多用で優雅です。
61式のこれはこれで味のあるデザインながら戦中戦車の設計から抜けきっていない感じがするものから大きく進化しています。

74式を見てから61式を見ると、全体的な印象に加えて主砲先端にあるT字のマズルブレーキが非常に古臭く感じてしまうというのも大きいです。
まぁ、戦中戦車から戦後世代へ流れる「過渡期」を感じる意味では61式も魅力的ではあります。ゾイドで言うとゾイドマンモス的なポジションです。
ただ、やっぱり私は74式が好きです。

74式戦車で熱くなり過ぎたので話を元に戻します。


そんなわけでゴルドスの105mmキャノン砲は当時の主力戦車の主砲が由来だと思います。
ゴルドスは高性能レーダーに加えて「最新戦車2両分の火力を持っているんだ!」というわけです。

ゾイドはトレンドをよく取り入れています。
ビガザウロのカラーは当時のチビッ子のあこがれ0系新幹線を模しています。
デスザウラーの目は当時最新の100系新幹線がデザインモチーフです。
ジーク・ドーベルはステルス機の設定で丸い曲面装甲を持っていますが、これは当時話題になったF-19ステルスファイター(イタレリ社のキット)のデザインを思わせます。

機獣新世紀ゾイドでも、映画ジュラシックパークIIIでスピノサウルスが一躍有名なヒーロー恐竜になった翌年にダークスパイナーを出しています。
大型イベント「恐竜博2002」でセイスモサウルスが話題を呼んだら翌年にゾイド版セイスモサウルスを出しています。

ゴルドスもまた、トレンドを取り入れたゾイドなのだろうと思います。全体ではなく主砲という「部分」ではありますが。

ゴルドスの主砲は当時かなりアピールされた点でもあります。
対象年齢が低い雑誌になるほど、レーダーよりも大砲がアピールされている印象です。
電子戦は低年齢には少し難しいのかもしれません。ただ、大砲はもう単純明快でドカンと撃つだけでいいから誰にとっても分かりやすい。


唯一だけ惜しい事があるとすれば、主砲の色が本体と同じなので、紛れてしまい目立っていない事です。

「ウルトラザウルス=本体:黒、キャノン砲:灰色」
このように大型砲を持つゾイドは砲の色を本体と分けていることがほとんどです。
ゴジュラスキャノンも、アイアンコングのミサイルも、マッドサンダーのマグネーザーも。
武器を目立たせる配色は後期になるほど激しくなり、末期においては金色にさえなります。


大型武器を持ちながらも色が本体と同じなのはレッドホーン、ゴルドス、カノントータスくらいでしょうか。
初期は武器の色も地味に。ミリタリー的にリアルにする方針だったんだなぁと思うと興味深いものです。

最後は少し話が逸れてしまいましたが、ゴルドスの主砲の話でした。

 

……蛇足で少しだけ余談を加えます。
本コラムを書いている2023年現在の基準では、105mmという主砲口径にインパクトは全くなくなりました。
2023年現在、主力戦車の主砲は120mm砲が標準です。今後は130mm、140mmと大口径化する可能性もあります。

あれだけの巨体で2門しか持っていない。ゴルドスが新発売された1984年なら「105mm砲を2門! 凄い!!」だったかもしれませんが、現在では「あんな巨体なのに非力な砲を2門しか持っていない……」になってしまう気がします。
105mm砲でもディバイソンのように17門もズラッと並んでいるならインパクトがあるんですが……。

なのでゾイドがこの先新展開してゴルドスが復活する事があれば、形は変更せずにそのままで構わないので、口径の設定だけを変更して20.3cm(203mm)か28cm(280mm)くらいにしても良いと思っています。
キットの砲の大きさ(太さ)を見ても、実際105mmというのは「小さすぎないか?」と思えるし……。

20.3cm砲というのは第二次大戦当時の「重巡洋艦」が搭載した主砲です。
重巡洋艦は戦艦に次ぐ砲撃力を持った艦種です。
ウルトラザウルスは36cm砲を持ちますが、これは戦艦クラスの口径です。
大戦艦ウルトラザウルスには劣るがそれに次ぐクラス。その意味でもゴルドスを重巡と同じ20.3cmにする事は「ニヤリ」な措置だと思います。

28cm砲というのは艦砲としてはマイナーですが、ドイツ海軍が一部の艦艇に採用しました。
ドイッチュランド級装甲巡洋艦やシャルンホルスト級巡洋戦艦です。

第一次世界大戦以前に活躍した前弩級戦艦や弩級戦艦は30.5cm砲が標準でした。
ただ何となくですが、個人的にはウルトラザウルスが36cmとすればゴルドスが30.5cmなのはやりすぎな気がします。
28cm以下がシックリくるのかなーと思っています。何故かというと先頭の数字の印象だけですが……。

いずれにしろ、ゴルドスの主砲が今後も注目され活躍する機会がある事を願っています。

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