未キット化ゾイド ホエールカイザーのこと

未キット化ゾイドというのは多くある。
ただ一口に未キット化と言っても、大きく分けて二通りに分ける事が出来るかと思う。

一つは、デザイン検討用スケッチの中のゾイド…、残念ながら商品になるに至らなかったゾイド。
それらは、電撃ホビーマガジンやゾイドグラフィックスなどに、一部掲載されている。

 

特に電撃ホビーマガジンではスケッチが多く掲載された。2002~2005年位の同雑誌を集めると、とても貴重なゾイド資料となる。
上は、ゴジュラスギガの開発過程におけるデザイン検討用デザインの一つと、メカ生体ゾイド時代の未発売ゾイドの一つ。
ギガの検討デザインは、かなり悪魔的な顔つきをしているのが特徴的だと思う。
チーターと書かれている方は、ディティールなど後のジーク・ドーベルに引き継がれている部分が多いように思う。

表に出ていないだけで、こういう幻のゾイドは、商品の数十倍は軽く存在していると思う。

余談であるが、個人的には、是非そうしたスケッチ集を本にして販売して欲しいと思う。
「未キット化=商品価値としては少ない」かもしれないが、コアなファンとしてはそういうものこそを望みたいと思ってしまう。

もう一つは、ジオラマストーリー等に登場しながらもキット化されていないもので、調べていけばかなりある。

まず、ジオラマストーリーには、試作モデルが使用されているケースがかなりある。
細かすぎる差異ではあるが、極めて厳密に言うなら、このようなモデルもキット化には至っていないものと言って良いだろう。
コアなファンとしては、この辺の差を見つけてニヤつきたい。

このウルトラザウルスは、比較的製品との差が見つけやすい。
最もわかり易い所としては、胸部のミサイルポッドが製品版:8連装に対し、試作版:10連装になっている。

また、キャノン砲のディティールも異なっている。
脚部のミサイルポッドも微妙に違う……のだが、この辺になるとマニアックも極まってくる。
まぁ、ともかくそうして探すのは面白い。
ゾイドバトルストーリーの本を開き、幾つ見つけられるだろうか?

改造ゾイド…、バリエーション機も、MK-IIなど一部を除いてキット化されていないものと言える。
まぁ、これは当然であると思うが…。

とはいえ、バトルストーリーに登場する改造機はどれも魅力的なものばかりで、本当に欲しくなる。

また、試作モデルでもなく改造ゾイドでもなく、キット化されていないゾイドもある。
その代表格は、輸送艦だと思う。

機獣新世紀ゾイド時代においては、ホエールキング、ホバーカーゴ、ドラグーンネストと、輸送艦もキット化された。
(ネオ・タートルシップなどキット化に至っていない輸送艦もあるが…)
ただメカ生体ゾイド時代の輸送艦は、ついにキット化される事は無いまま終了してしまった
メカ生体ゾイド時代の輸送艦…、ホエールカイザーとタートルシップは、キット化を望まれながらついにそれが叶う事はなかった。


帝国軍 ホエールカイザー 共和国軍 タートルシップ
「キットとほぼ同じもの」である試作モデルや、「改造で再現できる(又はそれを目指すべき)」改造ゾイドに対し、欲しければスクラッチで作らなければならない
これら輸送艦は、敷居が非常に高かったと思う。

タートルシップはそもそも就役時期が非常に遅く(第二次暗黒大陸上陸作戦時に初登場でガンブラスターと同期)、活躍が画面に登場する事はあまり多くなかった。
しかも、登場時にはダーク・ホーンやギル・ベイダーに破壊され…、どうもそういう描写の方が印象に残っている。
造形に関しても、正直…、丸型ホットプレートに翼とジャンクパーツを付けたようで、それほど魅力的な造形とは言いがたいと思ってしまう。

それに対し、ホエールカイザーの魅力は圧倒的だと思う。
初陣はゼネバスの逆襲…、D-DAY上陸作戦であり、共和国の前に初めてその姿を見せつけた衝撃のゾイドだった。
当時、戦略輸送艦を持たなかった共和国にとって驚異のゾイドであり、上陸作戦の成功に多大なる貢献を果たしたのがホエールカイザーだった。
その後も帝国の逆襲をその輸送力で支え、直接戦闘こそ行わないものの、まさに縁の下の力持ち的な存在となって活躍したであろう事は想像に難くない。

何よりその体躯が圧倒的だったと思う。
何台もの大型ゾイドを積載し、何百人もの武装兵士を輸送できる巨体。
ウルトラザウルスさえ霞んでしまうその巨体は、まさにモチーフのクジラそのものを表していた。

巨大輸送艦ゾイドにクジラというモチーフを選んだのは本当に正解だったと思う。
史上最大の生物・クジラなら、他のゾイドを何台も積んで輸送出来るだけの能力を持っていても反論できない圧倒的な説得力があると思う。
(対しタートルシップはウミガメがモチーフであり、「モチーフの大きさと能力の一致」という意味においてやや疑問が残ると思う。同様の事はカタツムリ型ホバーカーゴ、ロブスター型ドラグーンネストにも言えると思う)

加えると、ホエールカイザーの形から推測するに、クジラの中でもセミクジラがモチーフであると思う。
ユーザー間ではヒゲクジラ型とされていますが、更に細かく推測したい。
ホエールカイザーはナガスクジラのようなスマートな姿ではなく、セミクジラのようにズングリしている。


左はナガスクジラ。右はセミクジラ。共にヒゲクジラ亜目である。

この選択も素晴らしいと思う。
セミクジラはクジラの中でも大型の方であるが、マッコウクジラやナガスクジラ、シロナガスクジラよりは全長で劣る。
(ただ体格が良いので、マッコウクジラやナガスクジラより重量では勝る。それでもシロナガスクジラには遠く及ばないが)
つまり、巨大輸送艦ゾイドとしてこれ以上ないほどの説得力を持つ存在でありながら、更に巨大な輸送艦も想像できる余地を残している。

その点において「決して完璧ではない」。
言い換えれば、ユーザーが自分の想像によってより巨大な輸送艦を作り出せる…、または今後の展開で更に巨大な輸送艦が出てくる事を期待できる事になる。

モチーフの特徴とゾイドの特徴は、出来る限りリンクしていて欲しいと、常に思っている。
そうすると気付いた時にニヤリと出来ると思う。
「最強の肉食獣ティラノサウルスに唯一対抗できるトリケラトプス」という構図でデスザウラーとマッドサンダーが在るように…。

D-DAY上陸作戦で姿を現した巨大輸送艦・ホエールカイザーはまさに傑作ゾイドだったと思う。
それだけに未キットのまま今に至っている事は何よりも残念に思ってしまう。

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