ゴルドスの強行偵察

ヒーローゾイドはとてもカッコいい。
ただそれと同時に、「不器用」なゾイドも特有の魅力があると思う。

マンモスはパワーならアイアンコングにも引けを取らない。
鼻の一撃をブチ当てればレッドホーンやサーベルタイガーに勝つこともできる。
だが動きが鈍いからそれができない……。
いやしかし、そんな不器用さがあるからこそ、練りに練った作戦でどのように戦うかという戦術に繋がる。

マンモスVSレッドホーンを想像しよう。
遠距離砲撃戦ではまず勝ち目がない。ただ唯一、接近戦で体当たりをぶちかませば可能性はあるだろう。
しかし速度や運動性は圧倒的にレッドホーンの優位。正攻法では正直勝てない。
どうにかして奇襲しないと体当たりは当たらない。
マンモスの巨体を隠せる場所はどこだ……。レッドホーンが通りがかった瞬間、どのように飛び出すか。敵の反応速度はどれ位だ。チャンスは何秒?
と考えると、正直なところ非常に困難と言わざるを得ない。しかしそれゆえに、脳内バトルで勝利を達成できた瞬間ヒーローゾイドでは味わえない感動と思い入れが生まる。

初期ゾイドはそんな不器用なゾイドが多い。
ゴルドスもその中の一機だと思う。

電子能力はゲーターを大きく上回る。ディメトロドンが登場するまではゾイド星で最高性能を持つ電子戦用ゾイドだった。
ただその反面、巨大すぎて自分が見つかりやすい(しかも「発見される=倒される」程度の戦力しかない)という、偵察機にあるまじき弱点を抱えた仕様でもあった。
「前線は小型ゴルゴドス」「後方は大型ゴルドス」という分担だったのだと思う。
しかし、それにしたって偵察機と言う割にはでかいしノロい。

そんなゴルドスだが、設定を見返していると「おや?」という事に気づいた。

 

RBOZ-004 ゴルドス <重装甲強行偵察機械獣>

強行偵察を主とするメカで、以前は輸送を主としていたが、地球人の手により改造された。
強行偵察用としての多種のレーダーを装備する。
そのために重装備となり、敵の単なる標的となることもあったが、その能力は大きかった。
又、改造型として強襲揚陸型もある。

 

ミニカタログ等での解説は「強行偵察用に改造された巨大メカ」となっている事が多かった。

読んでいて気付いたと思う。とにかく「強行偵察」が強調されたゾイドだ。
「おや?」と言うのはこの部分について。

 

強行偵察とは何か。
一口に偵察といってもこれは2種類に分かれている。
「隠密偵察」「強行偵察」だ。
(強行偵察は威力偵察と言われる事もある。また威力偵察と強行偵察を分ける場合もあるが、ここでは同じものとして扱う)

単に「偵察」といった場合は隠密偵察を指す。
これはその名の通り隠密を保ちながら偵察すること。
・ステルス機で敵のレーダーを避けながら敵基地を調べる
・潜水艦で改定から敵地に接近、港湾施設を調べる
・単身で敵地に侵入。そのまま見つかる前に調査を行い帰還する

ような、まさに偵察というイメージ通りの内容。

しかし、隠密偵察だけでは不十分な事もある。
例えば、かなりの規模の基地があった。相当数の部隊も駐屯している。
しかし、これは実際にどの程度の能力なのだろう?
索敵力はどの位だろう。また 部隊の実力はどうか。燃料や弾薬がなく動けない”ハリボテ”なのか。それとも万全な稼動状態にあるのか。
戦闘行為をする決断はどこにあるのか。領空や領海を審判したら即座に攻撃するのか、警告で済ますのか。

強行偵察を行う意味はここにある。
強行偵察とは「姿をあえてさらして」「そのうえで偵察を行う」事だ。
隠密偵察は見つかったら逃げる。だが、逃げずに偵察を強行するから強行偵察なわけだ。

敵がこちらの秘密を明らかに盗もうとしている。
その状況でどういった反応があるかを調べる。
強行偵察で、敵の見た目だけじゃない、真の意味でどの程度の交戦力を持つかを調べる事ができるのだ。

もっと言えば軽めの攻撃を行い、どの程度の反撃があるかを見る場合さえある。
こうなると一般的なイメージでいう偵察とはかけ離れたと思う。
だが「敵の内情をより深く探る」という意味では非常に効果的な偵察だ。

そんな強行偵察は、高い防御力と優れた速度を持った戦車などで行うのが普通。
何故なら攻撃される前提だから、敵弾に耐えて迅速に帰還する必要があるからだ。
ヤワかったりノロマだったら帰還などできない。

 

こう見るとゴルドスが「強行偵察に使われた」とは一体……と思ってしまう。
言うまでもなく鈍足。見つかったら即座にやられてしまうようなゾイドを強行偵察に使う共和国軍とは一体……。

まぁ、実もふたもない事を言えば「強行偵察」というカッコいい単語を使いたかっただけかもしれない。
フィクションでは実際の意味をあまり知らないけど「カッコいい響きだからとりあえず使う」事は少なくない。

ただ、もしかすると実際に強行偵察に使われていたのかも……という可能性も考えた。

 

ゴルドスの開発機は古い。
開発当初においての敵はアーリータイプのレッドホーンや小型ゾイド各種だっただろう。
アーリータイプの時代。これがキーワードだ。
極初期の時代といえばビガザウロが大活躍していた。
こう言っては悪いが、あの貧弱なビガザウロが大活躍できるレベルの戦場だった。

ゴルドスが強行偵察を行ったのは極初期……、すなわちバトスト1巻以前の時代ではないだろうか。
ビガザウロ以上の巨体を持つ。
全身の小型砲は帝国小型ゾイドを相手にするには十分な威力を持つ。

アーリータイプの帝国小型ゾイド程度の攻撃ならば装甲や巨大恐竜型ゾイド特有の耐久力で跳ね返す。
こうして初期においては悠々と敵領土に侵入し強行偵察をして帰還する……ような戦えるゾイドだったのかもしれない。

後の、我々が良く知る姿の帝国小型ゾイドは強力だ。

大型砲を持ち集団でかかればゴルドスをも仕留めてしまう。
だが極初期……、マーダやゲルダーがアーリータイプだった時代なら違う。
ビガザウロがこれらを圧倒していた時代だ。ゴルドスもまた、悠々と強行偵察を行っていたのだろう。

 

また地球人来訪後も強行偵察をしていたとすれば……、次のような姿も思い浮かべる。
ゴルドスのキーワードは電子能力と、そしてもう一つ「105mm高速キャノン砲」だと思う。
これは開発当時としてはゾイド星最強レベルの砲だった。

射程はおそらくレッドホーンの主砲よりも長い。

そう思う理由は二つ。
一つは砲身の長さ。両機の砲の長さを見るとゴルドスの方が長い。
基本的に砲は砲身が長いほど射程が長い。これは砲身内で加速が存分にできる為。

もう一つは射角。レッドホーンの主砲は360度の全周囲に撃てる。
対してゴルドスの105mm砲は前方にしか撃てない。
これは使い勝手の悪さだが、それだけに正面に限れば発射時の安定性では勝るだろう。
レッドホーンの砲は全周囲に安全に撃てるように、発射衝撃の制限などがあると思う。

・正面にしか撃てない。その代りにそれ以外の制約は少なかった。それゆえ射程を存分の伸ばせたゴルドスの砲
・全周囲への射角を持つ。それを達成する為に制約が何かと多かったレッドホーンの砲

という差を想像する。

……ちなみに補足しておくと、レッドホーンの砲はゴジュラス以外の共和国ゾイドを軽く仕留めるので、「必要十分な威力を持ったうえで全周囲に撃てる」と言える。
極めてバランスが良い傑作だ。
「ゴジュラスを倒せないので不十分では?」と言われそうでもある。
だが、ゴジュラスの数は少ない。
少数のゴジュラスにかまけて汎用性を失うより、ゴジュラス以外の共和国ゾイドを軽く仕留める上で最高の運用性も併せ持った方が良いのは明らかだ。

逆に、レッドホーンは大型ゾイドの中では「両軍を通じて最も生産数が多い」と言われるスタンダードなゾイドだ。
共和国軍にはそれを貫く火力が必須だった。
105mm高速キャノン砲の仕様は、分厚いレッドホーンの装甲(特に地球人来訪による強化後)を貫く為にこのようになったのかもしれない。

 

話が逸れてきたので戻す。
この砲を使っての強行偵察を以下のように想像する。

1、
ゴルドスが最大射程で主砲を発射する。更に敵の状況をレーダーで探知し情報収集する。

2、
敵はゴルドスに気付き反撃に出る。しかし、なにしろ帝国の砲では射程が劣る。ゴルドスまで届かない。
接近して撃つ必要があるのだが、移動する間にゴルドスは情報収集を完了し離脱してしまう。
鈍足とはいえ、射程の長さからゴルドスは安全圏に逃げおおせる可能性は高い。

ただし、帝国軍の移動が予想以上に早かった場合、あるいはゴルドスが離脱中にまごついた場合は射程内に補えられる可能性もある。
そうなるともはやゴルドスは単なる的になってしまう場合もある……。

そんな風に考えてみた。

ゴルドスは後方支援用という所が魅力的だ。
だがあえて、キャノン砲を撃ち強行偵察を能力をフルに使い果敢にこなしていたという、頼もしい姿を想像しても最高に魅力的だと思った。

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