デスザウラー部隊の編制

前回と前々回のコラム(デスザウラー部隊を倒せゴジュラスMK-IIを存分に活躍させる)では、ゴジュラスMK-IIとデスザウラー部隊の戦いを想像した。
これについて興味深い見解を頂戴したので、今回はそれについて。

これまでのコラムで、デスザウラーを撤退させるには……、

1:デスザウラーは単独ではなく部隊として運用されているはずである。
2:共和国軍はデスザウラー自身ではなく周囲の部隊を撃破すれば良い。
3:味方機を失ったデスザウラーは目的を遂行する能力を失う。よって撤退するであろう。

と考えていた。それについて頂戴した見解は以下の通り。

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帝国軍は、共和国軍の射撃によってデスザウラー随伴部隊が壊滅する恐れがあるのに、部隊を随伴させるだろうか?と思いました。
デスザウラーは、単機で大軍を敗走させられる「超戦力機」です。
当時考えられる最強主力ゾイドの能力をふた周りは軽く超えてるのはみなさんご存知のとおりで、そしてそれはデスザウラー1機に敵部隊全機が襲い掛かってくることでもっとも効果を発揮します。
「敵がデスのみに襲い掛かる→デスだけで返り討ちにする→帝国部隊の被害ゼロ」という図式ですね。
デスザウラーは最初に登場したときから単機で共和国軍を撃破する活躍を見せ、その後も強敵となるマッドサンダー参戦までは有力なライバルはいませんでした。
恐らくですが、随伴部隊はデスのずっと後方にいて、砲撃してくるウルトラやゴジュラスmk2部隊をデスが撃破してから後を追いかけたのではないでしょうか。
もしデスが撤退せざるを得なくなっても、射程外なら部隊に被害は出ません。占領と補給のための随伴部隊ならば、超特化編成ではありますがこれで事足ります。

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これを見て唸ってしまった。確かにその通りだと思う。
「デスザウラーが単機で前進して敵を撃破。安全を確保する」「その後に占領部隊や補給部隊が到着し各種任務を遂行する」

これは完璧な戦術で共和国軍は防ぎようがない……!

むろん単機だと攻撃が集中するだろう。
被弾多数は避けられない。作戦成功したとしてもデスザウラー自身に相当のダメージが出よう。
一時的なドック行きはするかもしれない。しかし、コアが健在ならば修理して再戦力化するのは比較的容易だろう。

 

随伴する部隊……、護衛……。

……太平洋戦争時の空母は駆逐艦を必ず護衛に付けていた。
これは、潜水艦への対策が空母は巨大すぎるサイズゆえに苦手である。機敏に動き対潜用の爆雷などを多数備えた駆逐艦が最適だったからだ。
また敵からの空襲を受けた際、空母自身の対空火器だけでは不安がある。そこで周辺の艦も対空火器を持っていれば空母を守れるというわけだ。
護衛は多ければ多い方が良い。なぜなら空襲を受けた際は艦数に応じて対空火力が高くなるし、攻撃する側からすれば目標が多いという事は狙いを絞りにくい事でもある。
状況によっては空母以外に攻撃が向く事もある。本来は空母に向かうはずだった攻撃を周辺の艦が吸収できるわけだ。

さて、デスザウラーで考えてみればどうなるだろう……。
確かに護衛は必要ない気がする。デスザウラーは防御力が凄まじいから。
空母は魚雷の5、6発も受けたら沈んでしまう。だがデスザウラーは言ってみれば「魚雷100発くらいなら耐える空母」という感じだろうか。
これだけ防御力が高いなら、たしかに少々のダメージくらいは「構うな、どうせ沈まん、後から修理すれば良い」として強引に単艦で任務を遂行しそうだ。

 

……太平洋戦争当時の空母は他にも意外な弱点を持っていた。
それはアンテナが低いので通信力が弱いことだ。これは大型アンテナを持つ戦艦などに比べてかなり劣っている。

なので行動時は通信力の高い艦を随伴させるのが普通だった。

これはデスザウラーにも当てはまるかもしれない。
デスザウラーは通信力や索敵力はそれほど優れないないだろう。ディメトロドンを随伴させたい所だ。
思うに……、ここにヒントがありそうな気がする。

 

私は、やっぱりデスザウラーは部隊として行動していたと思った。
これについて、以下のように想像した。

帝国軍としては、当初は

1:デスザウラーだけで進撃
2:敵地の戦力をデスザウラーだけで殲滅
3:遅れてブラックライモスやブラキオスが到着し、敵地の制圧やデスザウラーの補給を完了する

という流れを想定していたかもしれない。
だが重要な一戦がその流れを変えたと思った。
それはゾイドバトルストーリー3巻にも収録されている「デスザウラー捕獲作戦失敗」のエピソードだ。

この作戦は、サラマンダーとウルトラザウルスが連携し、デスザウラー唯一の弱点であるところのオーロラインテークファンを撃ちぬいてから鹵獲しようとした作戦。
結論として言えば作戦は失敗した……のだが、「帝国軍には大きな影響を与えた」そんな可能性を考えた。

作戦を今一度おさらいすると
1:単独行動するデスザウラーを見つけて作戦開始
2:サラマンダーが攻撃し隙を作る
3:ウルトラザウルスがキャノン砲を発射し背中を撃ちぬく

という内容だった。


この作戦。
失敗はしたものの、極めて惜しい所まではいった。
帝国軍として考えねばならなかったのは、ウルトラザウルスの存在を探知できていなかった事だ。
これはデスザウラーの索敵力の低さを示している。

ウルトラがどの距離から撃ったかは分からない……が、共和国軍はもともと「主砲弾でピンポイント射撃」するような距離まで詰める予定であった()。
限界射程の半分として、だいたい50km程度と想定しよう。
共和国軍が、「デスザウラーが単機ならその程度の距離まで近づいても不意打ちが可能」と考えていたということだ。
(※サラマンダーが予想以上に早くデスザウラーとの交戦に入ったので、それよりも長い距離から撃つ事になってしまい、命中しなかった)

さてこの一戦は、共和国軍全体に「サラマンダーとウルトラザウルスが共同してもデスザウラーを倒せない……」という絶望を蔓延させる結果になった。
ヘリック大統領も作戦は失敗だったと認識している。
ただ、実は帝国軍にしてみたらこの一戦は背筋の凍る思いだったのではないだろうか。

たまたまキャノン砲が外れたから助かった。だが砲弾は極めて惜しい位置に落下した。
もう少しで当たっていた。当たっていれば共和国軍は鹵獲の目標を達していたであろう。
あわや大惨事であった。

サラマンダーが適切なタイミングで攻撃を開始していたらどうなっていただろう?

 

帝国軍はデスザウラーが居なければ圧倒的に不利な戦力だ。
しかしデスザウラーが居れば優勢になる。
そんなデスザウラーだから、鹵獲される事態は絶対にあってはならない。
そんな事が起これば共和国軍がデスザウラー対策を進めることは明白。荷電粒子砲の機構をコピーされるかもしれない。

共和国軍は同じ作戦を二度と行わないようにした……のだが、そんな事は帝国軍は知らない。
また行われるかもしれないと考えただろう。
今回は運良く外れた。だが、何度も繰り返されればそのうち鹵獲されかねない……。
そんな最悪の事態を想像した筈だ。
この作戦の後、帝国軍は同じ事態を絶対に防ぐべく「最低でもディメトロドンを随伴させる」ような取り決めを作ったんじゃないかと思った。

ゴジュラスVSデスザウラーのコラムではまた、オーロラインテークファンに注目した意見も多数頂戴した。
ここを狙うのは効果的だ、という内容。

私としては、コラムを書いている途中では「オーロラインテークファンはそこまでの弱点ではない」と思っていた。
そうそう被弾するような位置ではない。大砲でピンポイントを狙うなんて極めて難しい話だから、あまり気にしなくても構わない。
なのでゴジュラスVSゴジュラスの戦いのシミュレートでは、ノーマルだろうがMK-IIだろうが「本体」にダメージを与える戦術を採っていた。
「一発逆転(ファン破壊)を狙っても成功する確率が低い。そればかり狙っていたら逆に被害が増えかねない。覚悟を決めて本体を狙った方が得策」
という考えだ。

だが頂戴した意見を読んだりデスザウラー鹵獲作戦失敗のエピソードを読み返したりすると、やはり大きな弱点である。ここを狙う価値は十分にあると思い直した。
帝国軍の立場で言うと、ここだけは絶対に守らねばならない。

デスザウラー鹵獲作戦失敗から、帝国軍はデスザウラーの単独運用を禁止した。それは遠距離からファンを撃たれる危険を考慮してである。
索敵力の低いデスザウラーでは遠距離のウルトラザウルスを探知できず、不意打ちを喰らう可能性がある。
そこでディメトロドンを随伴させ敵の位置を確実につかめるようにした。

また、敵の位置をつかんだところで敵の方が射程が長いのだから撃たれる事態はある。
これに備えて、「迎撃を強化したい」とも思った筈だ。

今回この文章を書いていて、デスザウラーの背部にある16連装ミサイルポッドに気付いた。
もしかして、これはファンを守る目的の装備ではないだろうか。

ゴジュラスキャノン砲やウルトラキャノン砲。この砲弾がファンを狙って飛んでくる。
それをミサイルで迎撃し事前に破壊する。この配置はそんな思惑を強く感じる。


図で示すとこう。

「ミサイルでキャノン砲を迎撃し破壊する」
これは実際に可能だ。
なにせ砲弾は回避運動をする事なく一直線に飛んでいるだけ。軌道が読みやすい。
ミサイルは飛行ゾイドに撃つ事もある。飛行ゾイドを分かりやすく言うと、「キャノン砲よりも速く飛び、回避運動も行う」そんな目標だ。
こう言うと砲弾を迎撃する事が可能と分かろう。

ただし、むろん容易ではない。
自身に向けて一直線に飛来するキャノン砲の砲弾。着弾するまでの時間はそんなにない。
その少ない時間でミサイルを発射し確実に迎撃するのはかなり難しい。

敵飛行ゾイドに向けて撃つ場合は「敵の動きは速いし回避運動もとられる。だが、こちらとしては発射タイミングを見極めたうえで撃てる余裕がある」
キャノン砲砲弾に向けて撃つ場合は「砲弾の動きをとらえる事は楽だ。だが今すぐに撃たないとやられる。発射のタイミングを見極めたりする余裕は一切ない」
そんなトレードオフでもある。

キャノン砲を連射された場合は、無数の弾が一斉に飛んでくる。
そうした場合は、目標が多すぎるので迎撃する難度は飛躍的に上昇してしまう。

ファンを狙う多数の砲弾を迎撃する。そんな事態に備えているので、デスザウラーは16連装という凄まじいミサイルを背部に装備しているのだと思った。

 

更に、より確実な防衛を目指して周囲に砲弾の迎撃が可能なゾイドを随伴させたとも思った。
やはりファン=撃たれたらおしまいだ。
デスザウラーの16連装ミサイルであらかた迎撃できるだろう……が、更に万全を期したい。

それはブラックライモスだ。背中にレーダと二門の優秀なミサイルを持つ。

ブラックライモスの対空能力は同クラスの帝国ゾイドの中では最高で、プテラスをも撃墜できる。
このゾイドを砲弾からの防衛に使う。そんな風に思った。

 

もうちょっと飛躍させてみよう。
今回は電子戦機としてデスザウラーにはディメトロドンが随伴すると導いた。
デスザウラー部隊はブラックライモスやブラキオスが多く配備されている。
ディメトロドン、ブラックライモス、ブラキオス。実はこの3種類のゾイドはキットの箱裏バリエーションが共通している。

いずれも「対空」仕様があるのだ。
デスザウラーに随伴する各機は一定数がこのような仕様であったかもしれない。
そしてファンを守っていたのだろう……と思った。

今回のコラムでは、帝国軍はデスザウラーの鹵獲を絶対に防ぐべく「部隊」としての行動を強いられていた。
そんな風に考えてみた。
帝国軍もかなり苦労していた事情が見えてきてとても面白い。

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