ゴジュラスMK-II限定型を考える

前回と前々回のコラム(ゴジュラスMK-IIVSデスザウラーvol.1ゴジュラスMK-IIVSデスザウラーvol.2)では、ゴジュラスMK-IIとデスザウラーの戦いを想像した。
その最後に、次は実際の部隊運用時における戦いも考えていきたいと書いたのだが……、今日はちょっと寄り道をしてゴジュラスMK-II限定型を掘り下げたいと思う。

ゴジュラスMK-IIは、量産型より限定型がかなり強いらしい。
デスザウラーとの戦力比較を見れば明らかだ。

前回のコラムでは、キャノン砲の威力が「量産型<限定型」ではないかと書いた。
・限定型は42cm高出力キャノン砲。威力は高いが故障しやすいデリケートな砲。
・量産型は42cm低出力キャノン砲、または38cm新型キャノン砲。威力はやや落ちたが故障が少なく信頼性が高い砲。

という考えだ。
限定型は尾部のアンカーも大きいし、その可能性は高いと思う。

これに加えて、コラムに対する非常に興味深いお便りも頂戴した。
それはまず「限定型は選りすぐりの個体が使用されているのではないか」というものであった。
確かにこれはありそうな話だ。
やはり特別仕様のゴジュラスだから、特別に”活きの良い”個体が厳選されているというのは非常に説得力が高い。
ゴジュラス野生体の中でもスーパーアスリート級の個体を使った。だからカタログスペック以上に能力を発揮した……。
ゾイドは生体だから、こうした事情を考えるとより面白い。

逆に言えば、量産型は生産数を高めるために二軍三軍的な、本来であればもう少し訓練などをしてから徴用した方が良いような個体でも、構わず改造したのかもしれない。
そんな事情も想像した。

量産型は攻められると非常に脆いイメージがある。
格闘漫画のグラップラー刃牙に以下のような台詞がある。
「金的を食らった奴の反応は二つ。一つはやられたダメだ~!と萎縮するタイプ。もう一つはやりやがったなテメェ許さん!と逆に激しい反撃に出るタイプ」
量産型は、これで言うと前者の萎縮してしまう個体が多いのだと思う。

 

次に、「部品の品質や仕上げの丁寧さも徹底して行われたのでは」とも頂戴した。
これもありそうだと思った。
量産型は名の通り数をそろえる事が第一。対して限定型は数より質を優先していると思う。
品質の高さを徹底しとにかく高性能を追及したRX-78ガンダムと、その型落ちパーツを流用して量産したRX-79G陸戦型ガンダムのような。
そんな差がありそうな気がする。

このような裏事情を想像すると、よりノーマル、MK-II限定型、MK-II量産型のそれぞれの個性や魅力が見えてきて面白い。

 

さて「活きの良い個体」「徹底した品質管理」の他にも「機動力」に注目した意見も頂戴した。

「火力と機動性を強化したゴジュラスMK-II(限定型)も、デスザウラーが相手となると分が悪い」

機動力を強化したとある。
しかし、これについては不思議でもある。
というのも、カタログスペックでは「ノーマル:75km/h」「MK-II限定型:70km/h」で、むしろ速度は低下しているからだ。

まぁ、これだけ重いキャノン砲や諸々の装備を持ったのだから、いかに選りすぐりの個体であっても5km/h低下したことは仕方あるまい。
むしろたった5km/hの低下で済んでいる事が優良個体な事を示しているかもしれない。
ノーマルとMK-II限定型の最高速度。その差は人で言うと「普通に走る/重たいリュックを背負って走る」のようなものだから。

ちなみにMK-II量産型は限定型と同じ70km/hだ。
量産型は装備が幾らか撤去された簡易版。限定型より若干速くなりそうだ。が、そうなっていないのが量産型の個体事情を物語っているのかもしれない。

ちなみに後年のゴジュラス・ジ・オーガは驚愕の125km/hを誇る。オーガノイドの力が凄まじすぎる……。

まぁ、オーガは置いておこう。
「機動力が強化された」と書かれているMK-II限定型だが、その実は最高速度が低下している。
また、下のような資料もある。


これは学年誌(小五87年5月号)に載った資料だが、ノーマルを指して格闘力はMK-IIより上であると書いてある。
この号の時期はまだ量産型が就役していない。すなわち「格闘力はMK-II限定型より上」ということだ。

格闘戦。牙や爪で戦う肉弾戦。
MK-II限定型の格闘戦を想像しよう。
速度と同じく「重いリュックを背負って戦う」ような状態だから、動きが悪くなるのは当然。身軽なノーマルタイプに比して格闘力で劣るのは納得できる話だ。

では戦力比較表の文章は誤りだろうか?
しかし、誤りと考えるのも勿体ない話だ。

限定型は「速度が落ちた」「格闘力も低下した」「でも機動力は高い」
この三つを矛盾なく解釈することはできないだろうか。

 

可能だ。
実は「機動力」という言葉は小回りの良さや俊敏さを示す言葉ではない。
そう解釈する人は多いし、そういう意味で使われている例も多いのだが……。

言葉は難しい。
例えば「ハッカー」は「コンピューターに侵入し、不正行為を行う者」という意味で使用される事が多いし、世間一般の認識もそうだろう。しかし本来の意味は「コンピューターやインターネットに詳しい者」だ。
このように言葉は現在解釈している意味と本来の意味が違うケースが少なくない。
また「語感が良いからあえて間違っていても使う」事もある。
「ゼロ距離射撃」は砲を相手に密着させて撃つ事ではない。それは「接射」と言う。でもゼロ距離射撃という響きは凄くカッコいい。だから使われる。

このような語は使う方としても極めてなやましい。
「スーパーハッカーが大活躍する物語だ」という宣伝文句で小説を発表したとしよう。
本来の意味で使っていたなら、多くの読者が誤解してしまう可能性が高い。
コンピューターに侵入し不正行為を行う者という世間一般に浸透している意味で使っていたなら、読者に誤解は与えないかもしれない。だが誤った意味で意図的に使うのはこれはこれでウムム良いのだろうかと思ってしまうだろう。

話を戻す。
「機動力」の本来の意味は「軍隊として目的地まで迅速に移動する能力」のことだ。
「移動力」と言っても良いだろう。
小回りが利く、俊敏であるというのは「運動性」と呼ばれる要素だ。
格闘戦で重要なのは運動性だ。

・サーベルタイガーやシールドライガーは機動力も運動性も高い。
・デスザウラーは90km/hの速度なので機動力は低い。だが接近戦では高速ゾイドをも捕捉する動きを見せるから運動性は極めて高いと言える。
・ディメトロドンは150km/hの速度なので機動力はそこそこ高い。だが運動性は低い。

こんな風に言える。

また機動力は移動する能力だから、単純に最高速度だけで決まるわけではない。
たとえ最高速度が高くとも、「持続力がない」「適応できる地帯が少ない」などの事情があれば到着は遅くなるだろう。
チマチマと補給が必要。走破できる地帯が少ないから良い道を探してルートを大きく迂回しなくてはならない。
こんな事情があれば、たとえ最高速度が高くとも迅速にたどり着くことは不可能。

砂漠、森林、山岳。これらを越えた先に物資を届けるとして、F1カーとジープのどちらが良いかと言えば後者であるのは明らかだ。
グスタフは最大牽引時の速度はわずか50km/hだが、あらゆる地帯を走破可能とされている。悪路でもそれほど速度を落とさず走れるのだろう。
またこれは推測だが、とてもタフそうだ。長時間の移動をしても、さほど速度が落ちないようなイメージがある。
このように考えると、グスタフはあんがい機動力の高い機体であると言うことができる。

さてゴジュラスMK-II限定型に戻ろう。
おそらくだ限定型の「機動力を強化した」というのは移動力が高まったという意味だろう。
背中に大きなエネルギータンクがある。

通常、最高速度を維持したまま走り続け るのはコアへの負荷が大きすぎるので無理な話だ。
長距離移動をするなら、ジョギング程度の負荷が大きくない走り方……「瞬間的な速度は低いが長時間安定して出せる速度」で走る必要があろう。
人で言うなら、「10km走れ」と言われたら、100m走並のダッシュではなくそこそこに抑えた速度で挑むものだ。
これがノーマルゴジュラスだ。

しかし限定型はエネルギータンクがある。
これによって高負荷がかかる動きをしてもコアへのエネルギー補充が常に行われる。だから最高速度を継続して長時間出せる。
よって移動力・機動力が高いのではないかと思った。
その機動力は最高速度90km/hのデスザウラーをも凌駕するレベルなのではないだろうか。

「火力と機動性を強化したゴジュラスMK-II(限定型)も、デスザウラーが相手となると分が悪い」
この解説をより深く考えよう。
機動力が重要なように書いてある。
これはおそらく「適切な位置に迅速に移動しキャノン砲を最大限効率的に撃てる」のではないかと考えた。

キャノン砲を撃つ時に場所は重要だ。例えばデスザウラーが岩の陰に居たとすれば、回り込んで撃たなねばならない。
回り込むというのは大幅な移動を伴う。これが迅速にできれば、キャノン砲を有効に使える機会は大いにUPするだろう。

逆に、回り込めないならあきらめてそのままの位置から撃つしかない。
そうすると岩が防御になるからデスザウラーにはさしたるダメージが入らない。

この図の赤丸はデスザウラーを、黒い板は遮蔽物を示している。
現在ゴジュラスはA地点にいる。残念ながらこの位置からではキャノン砲を撃っても遮蔽物に防がれ大した効果が挙がらない。
しかしB地点に移動し撃てば、遮蔽物を避けてデスザウラーに当てる事ができる。

量産型はキャノン砲が付いて重量が増えた。移動時にコアにかかる負荷がノーマルに比べて大きい。
それでいてエネルギータンクがない。更に個体も二軍三軍級のものを使っている。
当然、機動力はデスザウラー以下である。というかかなり劣る。なので、適正な射撃位置につく事が難しいのかもしれない。

限定型はエネルギータンクの恩恵で最高速度を維持したままの長距離移動ができる。上図でいうA地点からB地点への移動も容易い。

これが
・「ゴジュラスMK-II限定型2機VSデスザウラー1機が互角」機動力の高さを生かして適切な射撃位置につける。最大限に効率的な撃ち方ができる。
・「ゴジュラスMK-II量産型5機VSデスザウラー1機が互角」適切な射撃位置に付くことが難しい。結局”ムダ撃ち”する事が多く、キャノン砲を活かしきれていない。

よって2機と5機という差になっただろうと思った。
ということで、今回はゴジュラスMK-II限定型を考えてみた。

 

さて、ここからは補足。

限定型の機動力がUPしているというのは新しい気付きだった。
なかなか説得力のある説になったと思う。
エネルギータンクの効果により最高速度(またはそれに近い速度)を維持したまま長距離を移動できる。その機動力は量産型よりはるかに上である。
デスザウラーよりも上。だからキャノン砲を存分に活かした戦いができる。

量産型はエネルギータンクがなく、最高速度を出したまま長時間移動することが難しい。
だから好位置に付けない事も多く、活躍の場を逃しがち……。

しかしここで疑問が出る。
じゃあ、なんで量産型はエネルギータンクを外したのだろう?
付けておけという話だ。

まぁ、コストは凄まじくかかると思う。あんな大きな外付けエネルギータンクは他に例がない。
グレートサーベルも大型エネルギータンクを持っているが、それでさえ比較にならない大サイズだ。

強いて言えばギル・ベイダーの背中のフェルタンクは同じくらいの大きさだろうか。

だがギル・ベイダーは、暗黒大陸から中央大陸まで飛行し爆撃する超長距離飛行ゾイドだ。この航続距離の為に巨大タンクが必要になったのだろう。
改めて、陸戦ゾイドでありながらあそこまで巨大なエネルギータンクを装備したゴジュラスMK-II限定型の凄まじさが分かる。

構造は、通常時に発生する余剰エネルギーを貯めておくものだと思う。要するにバッテリーパックだ。
これだけ巨大なバッテリーパックだから凄まじいエネルギーを貯めておけるのだろう。そして製造コストもべらぼうに高いのだろう。

とはいえ、共和国はなにしろ国力が凄い。コスト問題があろうが、無理やり採用しそうでもある。
量産していれば、そのうち量産効果で徐々にコストも下がるだろうし。

こう考えると、なぜゴジュラスMK-II量産型はエネルギータンクを外したのだろうか?
そうせざるを得ない理由があったのだろうか?

量産型の就役はデスザウラー登場直前くらいだ。
この時期のバトストの文章を引用してみよう。

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共和国司令部は驚きと恐れに包まれた。シールドライガーとコマンドウルフの活躍で、帝国軍の猛攻を何とか押し留めているというのに、この上強力な新型ゾイドの攻撃を受ければ、共和国軍は総崩れになってしまうだろう。 
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ゾイドバトルストーリー2巻の、帝国軍の新型巨大ゾイド開発が明らかになったシーンより抜粋。

ゴジュラスMK-II量産型が就役したのは、帝国軍が猛攻していた時期だった。
引用した文章のように、シールドライガーとコマンドでどうにか戦線を維持していた。
苦戦。かなり不利な戦況だった。
こんな状況で、製造コストが高く手間もかなりかかるであろうエネルギータンクは、ひとまず省略しようとなったのだと思った。
この時は、「戦況が落ち着いたら再び付けよう」という目算があったかもしれない。

しかしその後、デスザウラーは共和国首都を制圧した。帝国軍は大陸の大部分を支配下に収めた。
共和国軍はゲリラ戦で反抗することになった。
使える工場などは激減。そんな中でエネルギータンクの製造は行えず、ズルズルと時間が流れた。
そして新型機「ディバイソン」が完成すると生産はそちらが優先され……、結局最後までエネルギータンクが付かないままになってしまったのかもしれない。
そんな風に想像した。

 

やられシーンの多い量産型だが、有効な戦力だったのは確かだ。
極めて登場回数が多い。これは戦力として十分な成果を残していた事をよく示している。
幸か不幸か……、エネルギータンクがないままでも十分な成果を挙げてしまえる程度には強さがあった。
それがゆえに「このままでいい」となってしまったのかもしれない。

何かのタイミングが違えば、量産型はエネルギータンクが残っていたかもしれない。あるいは後期型で再び付いたかもしれない。
そうすると活躍シーンは幾らか増えていただろう。
ただその分、量産型以外のゾイドの生産には影響を与えていただろう。
シールドライガーやディバイソン。これらの数が減ったり、あるいは就役時期が遅れたりしていたかもしれない。
そうなっていたら、戦況は一体どうなっていただろう。

結果だけ言えば、中央大陸戦争は共和国軍の大勝利に終わった。
だから、戦いのコマとして見れば極めて適切な働きを見せたゴジュラスMK-II量産型は、やはり最強ではないが「最良」の仕様なのだろう。

 

ついでなので、アイアンコングの事も少し絡めて続けよう。

ゴジュラスMK-II限定型は、エネルギータンクの追加で行動力が増した。
こう考えた時、アイアンコングMK-II限定型とは真逆の仕様だなと思った。


限定コングは巨大なバーニア―が付いたし、大型ビーム砲も膨大なエネルギーを消費する。
それでいてエネルギータンクの増設はないので、稼働時間が大きく低下している事は確実だと思う。
敵を見つければ一直線に突撃、限られた極短い時間の中で爆発的に戦うのだろう。
その短時間で全ての敵を倒せるエース中のエースが乗る。そんな仕様をしている。

アイアンコングとゴジュラス。ノーマルタイプからしてコンセプトが大きく異なるゾイドだ。
そして、MK-IIになってもコンセプトが大きく違う。
しかし一貫して両軍の主力大型ゾイドとして運用された点では共通している。
何とも面白いことだ。

 

ということで、今回はゴジュラスMK-II限定型についての研究。そして補足としてエネルギータンクやコングMK-II限定型を考えてみた。

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