ゴルドスを考える

共和国の大型砲を語る上で避けられないのは、「ゴルドス・シャイアンがなぜに量産されなかったか」という問題だ。

シャイアンというのは「大型ゾイド用改造セット」の箱に載っている仕様。

ちなみにゾイドマンモスもキャノン砲を背負った仕様がある。


残念ながら、こちらは特に愛称は付いていない。
(本コラム内では重砲タイプと呼ぶ)

シャイアンもマンモス重砲タイプも量産される事はなかった。
キャノン砲を積んで量産されたのゴジュラスだった。

だが、ゾイドマンモスやゴルドスに積んだ方がいいのは明らかだ。
なぜかというと、ゴジュラスは格闘戦で真価を発揮する機体だ。その能力で言えばアイアンコングよりも上を誇る。

絶大な格闘能力は最大限に活かした方が良いと思う。
重いキャノン砲を積めば幾らかは格闘力が低下するだろう。あまりいい事ではない。

見方を変えれば、デスザウラー以前の時代においては、ゴジュラスの格闘力はゾイド界No.1だった。
「だから多少弱くなったところで構わない」という考えもできなくはない。
だが、格闘力No.1というのは「1対1」という前提でのもの。
戦場は多くのゾイドが入り乱れる乱戦。複数の敵に襲撃されるような場面も多かっただろう。
そう考えると、格闘力はできればやはり維持したい。

アイアンコングに遠距離から撃たれた。
これにより共和国最強ゾイド・ゴジュラスはやられた。だから共和国もキャノン砲を開発して砲戦で戦えるようにした。
この対抗は正しい。
だがキャノン砲を積むのがゴジュラスである必要はない。
特に「連携」を得意とする共和国軍なら、

1、ゾイドマンモスやゴルドスにキャノン砲を積む。
2、これらに支援砲撃をさせる(アイアンコングに対する先制攻撃)。
3、生き残ったコングはゴジュラスが格闘戦で仕留める。

そんな事を考えそうな気がする。
特に、ゴルドスはレーダーがある。装備するにはまさにうってつけに思える。

ゴルドスもゾイドマンモスも機動力の低い機体だが、「ゴジュラスと行動を共にする」位はどうにかなるだろう。
他にも利点はある。
ゾイドマンモスは寒冷地を除いては戦力不足であった。輸送機として運用された時代もあったようだが、グスタフの登場と共にそれも終わった。
だから余剰機が大発生していたはずだ。
これにキャノン砲という外付け装備を付ければ再び活躍できるではないか。
もはや「砲台」という扱いはゾイドマンモスにとって不本意かもしれない。だが兵器としてこれほど理想的なアップデート・延命はないだろう。

ゴルドスも、ゴルヘックス就役後は余剰機が大量発生したはずだ。
もはや偵察・通信機としては能力が低い。機動力も低い。ゴルヘックスに比していい所がない。
しかしこれも、キャノン砲を積んだなら再び優秀な支援機として返り咲けるはずだ。

しかし現実にはキャノン砲を積んだゾイドマンモスやゴルドスは量産されなかった。

ゴルドスは惜しい所まで行ったと思う。キャノン砲を装備したタイプには「シャイアン」という愛称が一応付いた。
もう少し頑張ればゴルドスMK-IIとして制式採用・量産されていたかもしれない。
でもゾイドマンモスの方は愛称さえ付いていない。こちらは試作だけに留まった事が伺える。

バトストで両仕様が登場する事は無かった。改造セットの箱やカード(駄菓子屋グッズ)でわずかに登場した程度だった。

 

格闘力が低下する。それを承知でゴジュラスにキャノン砲を積んだ。
これはなかなか不思議なことだ。
私は「航空戦艦」を思い出した。

航空戦艦とは、その名の通り飛行機の運用ができる戦艦だ。
戦艦伊勢は、太平洋戦争中に後部を飛行甲板に改造されて航空戦艦になった。

※画像はwikipediaより

航空機を何機か運用できるようになった(利点)のだが、逆に砲撃力は砲塔が二基撤去されてダウンした(欠点)。

もう一つ艦の改造を紹介しよう。
日本軍は開戦と同時に保有する大型豪華客船……、言い換えれば戦時中においては必要ない艦を空母に改造した。
※画像はwikipediaより
改造前と改造後。

客船としては当然使えなくなったが、戦時中なのでそんな事はまるで構わない。
これは空母として戦い有力な戦力となった。

ゴジュラスにキャノン砲を付けるのは航空戦艦伊勢のような。
ゾイドマンモスやゴルドスにキャノン砲を付けるのは客船改造空母のような印象を持つ。

もちろん共和国軍も、ゾイドマンモスやゴルドスの余剰機をアップデートし再び有力な戦力たらしめようと思っただろう。
しかしゴジュラスがキャノン砲搭載機に選ばれたのは、何らかの理由によりゾイドマンモスやゴルドスには積めなかったからだと思う。
これを私は脚部に見た。


ゾイドマンモスやゴルドスの脚はビガザウロと同じだ。もともとビガザウロを支える為に造られた脚だから、キャノン砲の発射衝撃などに耐えられなかったと推測した。
むろん無反動砲だから大きさの割りに衝撃は低い……のだが、そうはいってもそれなりには発生する。
なので、数初程度はともかく実戦部隊で無数に撃ちまくるような状況では運用できなかったのだと思う。

またビガザウロの脚は、動かす構造が後のゾイドに比べるとかなり原始的だ。
前後の脚が繋がった構造というか……。これも耐久性の低さを感じさせる。

余談。
四足ゾイドの脚部構造はレッドホーンで一新された。

レッドホーンは前後の脚が繋がっていない。それぞれ独立しており非常にスッキリとしている。
後の四足ゾイドのほとんどはレッドホーン系の構造を使用している。
大型四足ゾイドの始祖はビガザウロだが、その構造は引き継がれていない。レッドホーンが実質的な始祖と言えるのかもしれない。

話を戻す。
ゾイドマンモスもゴルドスも、装備増に伴いビガザウロから重量が増えた。特にゴルドスは圧倒的に増えている。
ビガザウロ:131t→ゴルドス:199t。
実に1.5倍以上に増えた。
これは電子機器の重さだろう。ゴルドスは、ノーマルタイプの時点で既に脚部強度が限界に近かったのかもしれない。

ゴジュラスは、ボディフレームこそビガザウロと同じだ。だが脚は独自になっている。

ビガザウロとは比べ物にならない位に太く頑丈だ。
ここをクリアしていたからこそ、キャノン砲搭載機はゴジュラスになったのだと思った。


もう少し考えられないだろうか。

この問題をややこしくしているのは機獣新世紀の事情でもある。

機獣新世紀ゾイドでは、ゴルドスのキャノン砲を積んだ仕様が重砲部隊に多数配備されているのだ。

公式ファンブック2巻によると、この時代に配備されているゴルドスは全部で400機程。
そして偵察部隊に200、重砲部隊にキャノン砲を積んだタイプが200ほど配備されているらしい。
ノーマルと同じ数のゴルドスがキャノン砲を積んだ。もはやキャノン砲を積んだタイプは当たり前になっているようだ。
これはどういう事だろう。

これについて考えたのだが、多分ゴルドスは「機獣新世紀時代の共和国ゾイドの中では最も大幅な近代改修がされた」のだと思った。

機獣新世紀の復活組は開発期のゾイドが多い。ゴジュラス、ゴドス、ガイサック、プテラス、バリゲーター、そしてゴルドスなどだ。
このラインナップを見て面白いことに気付いた。
復活組の中で、旧大戦において最も早期に退役したゾイドはゴルドスだ。

ゴジュラスやプテラスは大陸間戦争終結時まで現役だった。
バリゲーターは大陸間戦争初期まで現役だった。
ゴドスやガイサックは中央大陸戦争終結時まで現役だった。

しかしゴルドスは中央大陸戦争中期……、ゴルヘックス完成後に退役している。
なので他のゾイドと事情が違ったと思った。

機獣新世紀の時代。開戦の機運が高まり、共和国軍は戦闘ゾイドの生産を再開した。
この時、ゴジュラスやプテラスは工場の生産ラインが残っていたと思う。それをそのまま使えば良かっただろう。
ゴドスやガイサックも、比較的近年まで稼働していたから再生産の態勢を整えるのは可能だったと思う。

しかしゴルドスは違っただろう。
退役してから長い。もはや生産ラインは廃棄されていた。そんな状況を想像した。

ゴルヘックスの再就役は、開戦直後の時点では絶望的だった。何故なら、クリスタルレーダー製造技術がロストしていたからだ。
電子戦機の重要性は言うまでもない。どちらかというと、まだしもゴルドスの方が再生産できる可能性が高い。
こうして共和国軍は、ゴルドスの生産ラインを多大な苦労をして再建したのだと思う。

ゴルドスは、生産ラインを再生する中で極めて多くの調整が入ったと思う。
よく見ると、ゴルドスは設定面での改定がとても多い。尾部のレーダーはチタンスパイクになった。口にはハイパーバイトファングが付いた。
キャノン砲も、ウルトラキャノン砲の技術をフィードバックし構造がレールガンになったと思う。

この時のゴルドスにとって都合が良かったのは、「ビガザウロとゾイドマンモスには再就役の予定がなかった」事だろう。
だから両機の事は気にせずに、「ゴルドス専用」として設計を改修できたと思う。

先に書いたように、ビガザウロに比べて非常に重い。見た目こそ同じだが、その重量を支えるべく新世紀仕様の脚はかなり強化されていると思う。
またこの時代はゴジュラスが激減していた。しかしキャノン砲の製造技術はある。そんな状況であった。
なのでゴルドス再設計に際しては、ゴジュラスキャノンの運用をも見込んだ設計になったと思った。

こうして新生した結果、新世紀のゴルドスはキャノン砲を問題なく使えるようになったのだろう。

他のゾイドで言うなら、「サーベルタイガー→セイバータイガー」くらい向上しているかもしれない。
ただそれでも、そこまで向上したとはいえ元が弱すぎる。ちょっとやそっと強くなったところで地味。
ヘルキャットの群れに倒されるしデススティンガーには養分にされる。そんな所が目立っていたのは哀愁なのだが……。
しかし間違いなく名機だと思った。

新世紀の時代においては迫りくる帝国部隊をキャノン砲を撃ちまくって迎撃、メカ生体時代にゴジュラスMK-IIがデスザウラーを撃退していたような戦いをゴルドスがしていたのだと思う。
そう思うととても熱いものがある。

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