デスドッグのこと

以前のコラム(最強合体ゾイドの実力12345)でケンタウロスについて色々と考えた。

さてケンタウロスといえば激闘を繰り広げたのがデスドッグ。これもかなり異様な改造ゾイドだ。
ということで、今回はこのゾイドを考えたい。

まずはスペックや戦歴をおさらい。

デスザウラーを四足化した特殊タイプで、ゾイドバトルストーリー3巻の記述によると
・脚部を二足歩行から四足歩行システムに改造したデスドッグは、デスザウラーでは行動できない山岳地帯を自由に行動し、スピードもデスザウラーを上回っていた。
・胸に装備した大型のビーム砲は、荷電粒子砲には敵わぬまでも、大型ゾイドを一撃で倒す威力を持つ恐るべき兵器であった。

というもの。

さて私は今までデスドッグを「フランツがヘリック大統領暗殺の目的を達成するために改造したデスザウラー」だと思っていた……のだが、一連のケンタウロスの文章を書いていて違うなと思った。

デスドッグの性能を簡単に言うと「機動力アップ」「攻撃力ダウン」という仕様だ。

・速 度:向上
・機動力:大きく向上
・防御力:同等
・攻撃力:トレードオフ
※荷電粒子砲が撤去され一撃必殺力はダウン。ただし十分な威力を持ちなおかつ連続使用可能なビーム砲があるので使い勝手は向上。

このようになろう。

機動力は、主に山岳での運用性を大幅に向上させた。
攻撃力は「大型のビーム砲は大型ゾイドを一撃で倒す」とあるが、これはせいぜいゴジュラス以下と思う。
ウルトラザウルス級になると難しかろう。アイアンコングMK-II(限)の大型ビームランチャーと同程度の威力と思う。
荷電粒子砲と違って連続使用ができるのは優れている。ただ対部隊戦での効果は大きく劣る事は指摘せねばなるまい。
荷電粒子砲は連続発射こそできないが、一発で敵部隊をまるごと消滅させる。

 

開発されたのは共和国軍が中央山脈攻略を進めていた時期だ。
デスドッグの開発意義はここにあると思った。

山脈攻略を順調に進める共和国軍。これを見て帝国軍は大いに焦っただろう。
シールドライガーはサーベルタイガーを下す。24ゾイドも共和国側が優勢。このままでは山脈は全域が共和国軍の手に落ちそうだ。
アイアンコングは強力だが戦況を覆すには至っていない。
切り札デスザウラーは山岳ではあまり役に立たない。しかし、戦況を覆す為にどうにかして使えないものか……。

こんな状況で、デスザウラーを山岳戦に対応させたのがデスドッグなのだろう。
山岳で十分に行動できる能力。そして攻撃力もこの地帯において最適な威力に調整されている。
この地にウルトラザウルスは居ない。大型ゾイドはシールドライガーが中心。だから大型ビーム砲はこれを破壊するのに十分な威力に調整した。

帝国軍は、デスドッグの投入で共和国軍山脈部隊を蹴散らすつもりだったのだろう。そして形勢を逆転、山脈の支配権を取り戻す事が目的だったと思う。

 

共和国軍は中央山脈攻略を順調に進めていた。帝国軍は重要拠点「北部最大の要塞」の防衛に絶対的な自信を持っていたが、これもあえなく陥落。
こういう状況でデスドッグは完成した。
まさに起死回生の切り札だったと思う。

ただフランツが暴走してそれを強奪してしまったのだが……。

いやしかし偶然か必然か。デスドッグが交戦したのはケンタウロスだった。

ケンタウロスはコラムで推測した通り、開発目的の一つは中央山脈攻略の為だと思う。

もしこのゾイドがずっと健在だったなら……、多分、共和国軍の中央山脈攻略は史実よりもずっと早く達成されただろう。
グレートサーベルが完成するよりもずっと早く。そうなっていれば、帝国軍はマッドサンダーの完成を待たずして滅んでいたかもしれない。

フランツの出撃は暴走だった。だが結果だけを言えば、帝国の危機を回避したとも言えるのだろう。
山岳での最大級の脅威になりうるケンタウロスを排除できた。それはとてつもない戦果だった。

 

これは余談だが、バトスト3巻のラストはフランツが国に帰る姿だった。
普通は軍の装備、しかも起死回生の切り札たるゾイドの無断持ち出しをした。更に直前に軍服や身分証などを捨てたなんてなれば、これはもう重大な反逆者となる筈だ。
銃殺は免れまい。
それがこうなっているというのは、ゼネバスが温情を出したのかもしれない……。

優秀な軍人で帝国に絶大な貢献をしたフランツ。
軍の脱走、決戦ゾイドの無断持ち出し。これは重大な反逆行為だが、結果として言えば敵の決戦ゾイドを破壊する成果も挙げた。

デスドッグVSケンタウロス、そのクライマックス。落下するデスドッグからフランツはビークルで脱出した。
おそらく自動脱出装置が働いたのだろう。そのまま帝国領に帰還したと思う。
呆然とするフランツ。
自分がやったことは十分に分かってるつもりなので、もはや銃殺もやむなしと覚悟を決める。
だがそんなフランツにゼネバスは語りかける。
「敵決戦ゾイド登場を知ってすぐに出撃するとは大したものだ。帝国はまたキミに救われたな」
「しかし急ぎすぎてこれを落としてしまったようだな。さ、もう二度と無くさないようしっかり保管したまえ」
そうして片目をつぶって身分証などをフランツに渡すゼネバス。
あえて都合のいい解釈をして語りかけているのであった……。

……というようなドラマがあったのかなぁ……とも思った。

 

話をデスドッグに戻す。
その能力、開発目的は上記した通りと思う。
もう一つ考えたいのは量産についてだ。

デスドッグは量産できなかったのだろうか。山岳での劣勢を覆す程度の数を。
これは、やはりできなかったと思う。

まず、操縦性がかなり劣悪と思う。デスザウラーを無理やり四足化しているのだから、これはもう最悪に近いだろう。
操縦できるのはスケルトン部隊の中でも一握りのトップエース位に限られると思う。

次に、ケンタウロス程ではないにせよ改造が難しい仕様だったと思う。
無理やり四足化している。合体要素こそないが、多少はキメラ的な技術が投入された改造機だと思う。
失敗……、改造時に四足化に適応できなければコアは修復不能な傷を負う。そうなれば何の成果も出さないままデスザウラーを一機失ってしまう。
デスザウラーを失う可能性がある。
それは帝国軍にとってとてもじゃないが許容できなかったと思う。

最高のシナリオを想像しよう。
デスドッグの量産に成功した。これにて中央山脈全域は帝国軍の手に戻った。
共和国軍は反撃の糸口を失い追い込まれた。
ゲリラ戦で粘るものの、いつまでも継続できる訳じゃない。ヘリック大統領だっていつまでも隠れているわけにはいかない。
山岳での勝利を機に再び攻めに転じる帝国軍。ジワジワと共和国を締め上げ追い詰めていく。
こうして帝国軍はついに戦勝した。

次に最悪のシナリオを想像しよう。
デスドッグの量産は失敗し、帝国軍は多くのデスザウラーを失った。
中央山脈での戦いは共和国軍優勢のまま。
しかも……、それ以外の場所でも共和国軍は勢い付いた。
デスザウラーが減ったことで大反撃を許したのだ。
ジリジリと帝国軍は後退を重ねていくしかなかった。

どちらに転ぶかは分からない。
デスザウラーが改造に耐えてくれれば良いのだが、はたして……。
こんな状況で、一か八かで量産を決断する事はできなかったのだろう。
その心情はよく分かる。

 

では山脈はどうするか。
デスドッグの代替として、帝国軍はサーベルタイガーの強化に着手した。
こうして完成したのがグレートサーベルだと思う。

デスドッグとグレートサーベルは似ている。
・開発目的は中央山脈での劣勢を覆す事
・険しい山岳でも迅速に移動できる機動力
・攻撃力はシールドライガーを倒すのに十分な水準

デスドッグと全く同じ目的を遂行できる。
むろん攻撃力や防御力では劣る……が、グレートサーベルはサーベルタイガーに追加装備を載せるだけの仕様なので量産する事においては全く問題がない。
しかもサーベルタイガーの強化型なので、パイロットの問題も無いだろう。
これらは圧倒的な利点だ。

火器が増えているので多少は操縦難度が上がったと思うが、運動性の向上はむしろ喜ばれただろう。
シールドライガーに煮え湯を飲まされていたサーベルタイガー乗りにとって、グレートサーベルはまさに待ち望んだ仕様だったと思う。

デスドッグ量産が成功していれば、帝国軍は確かに山脈で勝っていただろう。
ただサーベルタイガー乗りとしては複雑な思いにもなったと思う。我らこそ山岳のエースという誇りがあっただろうから。それをズタボロにされるわけだ。

グレートサーベルでサーベルタイガー乗りのプライドは守られた。
多少の操縦難度向上ごとき、再び我らが山岳での最強になるという士気向上を前にしては何の問題も無かっただろう。

 

という事で、今回はデスドッグ、そしてそこから山岳戦の模様を考えてみた。
たった一機しか作られたなった改造ゾイドだが、帝国軍に極めて大きな影響を与えたと思う。
ケンタウロスのライバルに相応しい、実に魅力的なゾイドだと思う。

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