輸送効率の話

前々回(グスタフの輸送システムを考える)、前回(グスタフの積載量はなぜ250tなのか)のコラムではグスタフを考えた。
輸送を支えたグスタフは本当に魅力的なゾイドだ。

戦場において輸送は極めて重要だ。補給を軽視する軍は決して勝てない。
「戦場に着くまでは補給が、着いてからは指揮官の質が勝敗を左右する」とは銀河英雄伝説ヤン・ウェンリーの名言。

さて輸送機は「効率よく輸送できる」ほど優秀と言える。
例えば同じサイズだと「10t運べる」よりも「20t運べる」方が優秀だ。
能力が同じとすれば、一方は軽自動車サイズ・もう片方はダンプカーサイズなら前者が優秀と言える。

もちろん移動力や稼働率など、単純な輸送量以外にも様々な要素はある。それは言うまでもない。
だが、そもそもサイズに比して運べる量が少なければ輸送機として本末転倒だ。

 

輸送機の効率を比較する際、「トンあたりの輸送量」という言葉が使われることがある。
これは例えば「10tの車が10tの貨物を輸送できる」とすれば「トンあたりの輸送量は1トン」となる。
「10tの車が20tの貨物を輸送できる」とすれば「トンあたりの輸送量は2トン」となる。

「自分の重さ(大きさ)に対してどれだけの輸送力があるか」だ。
輸送機はトンあたりの輸送量が高いほど優秀と言える。

身近なトラックで見てみよう。


軽トラは重量7~800kg。貨物の積載規格は350kg。
トンあたりの輸送量は0.47トンほどと計算できる。ちょっと非力だ。

とはいえ、実は350kgというのは一般道を安全に走行する基準であって性能限界ではない。
その状態で走ると違法なのでやってはいけないが、1t位までの積載は見込んで強度設計がしてある。
(ただし強度面では大丈夫でもブレーキの利きが当然悪くなるし横転の危険が高まるので禁止となっている。絶対にやってはいけない)

更に高負荷をかけ寿命が短くなっても構わないなら1.5tくらいまでならどうにか積めるそうだ。
実際、米の収穫時期には30kg米袋を何十個と山のように積んだ軽トラを見たりする……。
最大1.5tまで積めるとすると、軽トラのトンあたりの輸送量は2トンほど。
こう見るとなかなか優秀だ。


街中で見かける最大級のトラックの一つはいすゞのギガ。
これは重量9.2tで最大積載量が15.5t。トンあたりの輸送量は1.68トン。

※画像はコマツのHPより
世界最強級のトラック、先日の記事で出した980Eは重量625tで最大積載量が369t。トンあたりの輸送量は0.59トン。
輸送できる量は369tと凄まじのだが、一方でトンあたりの輸送量は低めになっている。

ではゾイド・グスタフは。

本体68t、トレーラー一基あたり21t×2。総重量110t。そして最大積載量は250t。
トンあたりの輸送量は2.27トン。
こうして見るとグスタフの優秀さが分かる。トン当たりの輸送量がとても高い。

 

基本的に動物もメカも大型化すると運動効率が悪くなってしまう。
たとえば昆虫のアリはよく力持ちであると言われる。
アリは自分の25倍程度のものを引きずって移動できる。
これは60kgの人間に置き換えれば1.5tの荷物を引きずって移動するようなものだ。
ただ、じゃあアリが人のサイズになったらとんでもない力持ちになるのかと言われたらそれはNOだ。

なぜかというと…、
・昆虫がそのままの形でn倍に巨大化するとする。
・そうすると体重はnの3乗倍になる。 (例えば全長が2倍になると体重は8倍になるし、全長が3倍になれば体重は27倍になる)
・しかし体重を支える筋肉や骨格等の強度は断面積に比例するため、nの2乗倍にしかならない。
 全長が3倍になれば、本来は27倍の強度が必要だ。なのに9倍にしかならない。これは明らかに足りない。
 すなわちそのままの形で巨大化した昆虫は自分の体重を支えることさえできない。

アリをはじめ昆虫が体格に比して凄まじい力を持つのは、その小ささゆえ。
簡単に言うと「大型化に応じて、各部を支える構造には強度マシマシが求められる」わけだ。
トラックでも重ダンプカー(980Eなど)より小型のものの方がトンあたりの輸送量が高いのはその為だ。

こうして見ると、あれだけ大型でありながらトンあたりの輸送量2.27トンを発揮するグスタフの凄さがよく分かる。
トン当たりの輸送量が高いだけでなく、あのサイズでその数値を実現しているのが凄いのだ。

 

ところで、ここまではトラックとグスタフを比べた。
船だとどうだろう。

※画像はwikipediaより
世界最大級の輸送船(コンテナ船)のマースク・トリプルEは、自重約19万t、輸送量は1万8270TEUを誇る。
TEUというのは「20フィートコンテナを幾つ積めるか」ということ。
(20フィート=6.096m)

20フィートコンテナを1万8270個・・・・・・・・。
ちょっと想像しにくいのだが、おそらく18~20万トン程度と思う。
トン当たりの輸送量は1トン程度。

それにしても20万トンを程度輸送可能………。何とも凄まじい輸送量だ………。
ウルトラザウルスなら396機。レッドホーンなら2127機。ゴドスなら8333機も積める計算。
ZAC2100年時点でのゴドス配備数は13000機だったから、二隻あれば全て詰め込めてしまう………。

ホエールカイザーやホエールキングと比べるとどうだろう。

ホエールキングは1個大隊を輸送できる。
カイザーの方も、バトスト2巻に出てくる方のタイプやニカイドス島に現れたタイプはキングに近い体積がありそうだ。
だが、残念ながらマースク・トリプルEには及ばないだろう。

ただカイザーにしろキングにしろ、「潜水可能」「飛行可能」という部分では優れている。
マースク・トリプルEは当然ながら海上航行しかできない。
あと、コンテナ船は基本的に貨物は露天搭載だ。だから船が傾いたら非常にまずい。

嵐で海面は大揺れ。大波が押し寄せる。
※画像はwikipediaより
そんな時に貨物を満載したコンテナ船は非情にヤバい。傾いたら上の画像のように…。
もちろん固定はしてある。だがなにしろ重すぎるから揺れが大きくなると外れてしまう危険性がある。

そんな状況でも、カイザーやキングは潜行してしまえばいい。
潜ってしまえば静かなもの。

飛んでしまっても良い。
こうして考えると、その優秀さが改めて分かる。

 

飛行輸送機といえば…、

ソ連で開発された地球最強の飛行輸送機「An-225」は、自重175t、最大搭載量250t程を誇る。
なお250tというのは公称値であって実際は300t以上イケるらしい。
これは飛行機としていえばすさまじいスペックだ。ソ連が生んだ狂気の産物と言える。

米軍最強の輸送機C-5は自重170tで最大搭載量が120t。An-225がいかにバケモノかが分かるだろう。
飛行機で自重以上の貨物を運べるなんて信じ難いスペックだ。

だが、それでも300t止まり。ホエールカイザーやホエールキングには遠く及ばないだろう。
ホエールカイザーやホエールキングは、巨大コンテナ船(マースク・トリプルEなど)には及ばない。だが飛行機としては超破格の量を輸送できる。
やっぱり凄いなあと思う。

 

話題が広がってとりとめがなくなってきたのでこの辺終わろうと思うが、改めて輸送は特有のロマンがあると思った。
膨大な物資をのせて、地響きをあげながら走るトラックを見ていると力強さを感じる。
とんでもない量の物資を飲み込み悠々と出港していく巨大貨物船を見ているとずっと飽きない。

今回はトン当たりの輸送量という部分から書いてみたが、ここからもグスタフがかなりリアル目な数値をしている事が分かる。
またホエールカイザーやキングは途方もない輸送量からロマンを強く感じさせてくれる。

輸送、という分野で今後更に魅力的なゾイドが登場する事を願ってやまない。

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