休戦期のゾイドマンモス

今回は、前回のコラム(ゾイドマンモスの生産や配備状況を考える)に続いて更にゾイドマンモスを考えたい。

前回のコラムで、

・マンモスは第一次中央大陸戦争後期には既に戦力不足になっていた。
・だが設備の関係でしばらくは生産が続いていた。

と導いた。
それはその通りだと思う。
いやしかし、それでもなぁ……という疑問もある。

・グローバリーIII飛来後に技術革新が起きた。
・今までにない規模で既存機の改良や新型機の開発が行われた。
・その一方で地方には設備が古いままの工場もあった。
・そうした工場では旧式機(ゾイドマンモスなど)の生産も引き続き行われていた。

この事情があったとして、それはせいぜい第一次中央大陸戦争の期間であろうと思える。
第二次中央大陸戦争の時代には、さすがに古い工場施設は消え新しい設備に一新されていそうな気がする。

それなのになぜ、第二次中央大陸戦争前期までゾイドマンモスの生産は続いていたのだろう。
第二次中央大陸戦争。ゴジュラスさえ容赦なく破壊されるような激戦になった時代。明らかに新型機を製造しなきゃいけなかった筈だ。

これを想像すると、解き明かす鍵は「休戦期間」にあると思った。

 

ZAC2039年、バレシア湾撤退作戦、第一次中央大陸戦争終結。
ZAC2041年、D-DAY上陸作戦、第二次中央大陸戦争開始。

この二年の休戦期間を想像すると……、
第一次中央大陸戦争末期、共和国軍は帝国首都を徹底的に破壊した。
「白い町」と呼ばれた美しい街並みは瓦礫の山に変わった。


おそらく、これ以外の場所も多少の差こそあれ大きく破壊されていただろう。
休戦期間において、共和国軍はこれの復興をした筈だ。
バレシア湾撤退作戦で暗黒大陸に逃れたのはゼネバス皇帝と帝国兵のみ。
「帝国の一般市民」は残されていたのだから。

 

復興はどのように行われただろう。
これを想像すると、「ゾイドマンモスは最適じゃないか?」と思った。

グスタフほどではないが輸送力は高い。
瓦礫除去などの作業では最適だろう。鼻でもって大きな瓦礫でもすぐさまどかしてしまえる。
地ならしなんかも容易い。
その他の作業も何かと効率的にできそうだ。

ゴジュラスではこれはできない。ゴジュラスの腕では高い位置の作業しかできない。
「かがめば良い」かもしれないが、かがむ途中で周囲に頭をぶつけて余計な破壊活動をしてしまいそうでもある。
また、そもそも気性の荒いゴジュラスは作業用に適しているとは言い難い。
ゴルドスやウルトラザウルスもあまり適しているとは言えない気がする。「作業」に適した装備がない。

小型ゾイド…たとえばゴドスやガイサックなら作業用にも適していると思う。ただサイズゆえに一度にこなせる仕事量が低い。
大型かつ器用に動く鼻があるゾイドマンモスは最強の作業用ゾイドだ。

ゴジュラス、ゴルドス、ウルトラザウルスは復興というより帝国軍残党をあぶりだすような任務についていた気がする。
その裏でゾイドマンモスは必死に復興をしていたのだろう。

 

ゾウという動物は賢く温厚。しかしその一方で敵に対しては激しい攻撃を加える。
対極的な気性を持つ生物だ。復興時のゾイドマンモスは前者の優しいゾウの気性が出たのではないだろうか。

さてさて、帝国領土は首都をはじめ各地が悲惨な状態だった。
復興は超超大規模なものだっただろう。
ゾイドマンモスの力をもってしても一筋縄ではいかぬ。
しかし早めにしない事には帝国市民からの不満が爆発しそうである。
(何しろ破壊したのは共和国軍なのだ……)

そんな状況で、この時期に作業効率化の為にゾイドマンモスの一時的な大増産があったのではないだろうか。
生産されたゾイドマンモスは各地で奮闘し迅速な復興を実現。帝国市民の気持ちをなだめたのであった……。

 

本来は、休戦期間中にゾイドマンモスの生産ラインは完全に取り壊し新型機の生産ラインに切り替える予定であった。
だがしかし、復興に役立つ土木作業用ゾイドとして予想外の需要が発生したので生産ラインは残されたままになった。

復興後は改めて生産ラインを取り壊す予定だっただろう。
しかし帝国軍の軍備再建は予想をはるかに超える速度で行われていた。
生産ラインが取り壊されるよりも早くにD-DAY上陸作戦が行われ、第二次中央大陸戦争が開戦。
そこからは激戦に継ぐ激戦。
D-DAY後の帝国軍はとにかく猛攻した。共和国軍は一機でも戦力が欲しい。
そんな状態で、いまだ健在だったゾイドマンモス生産ラインは戦力不足なのは百も承知で稼働されたのであった……。

そんな状況を想像した。

その後、さすがにデスザウラーが登場する頃になると「いくらなんでも止めろ」となり、ここに生産は停止した。
そして「第一戦を退いた」扱いになる。
残存する機は寒冷地を中心に「共食い整備」をしながら運用され続けた。
マンモスはデスザウラーを撃退する奇跡を見せたりと、予想以上にしぶとく生き残っていた。
だが更にその後、ベアファイターやディバイソンの完成でついに退役したのであった………。


ゾイドマンモスが戦災復興に使われていたとすれば、これは戦史を読み解く上でとても重要なものが見える。
上では「ゾイドマンモスが頑張ったから帝国市民の怒りを沈める事ができた」という功績の面を書いた。
だが別の面もある。

帝国軍はD-DAY上陸作戦後に猛烈な勢いで侵攻した。
わずか半年で大陸西側を取り戻し、更にそこから勢い途切れる事なく東側への侵攻を始めたのだ。
西側を取り戻した帝国は、すぐさま「国境の橋争奪戦」を経て東側に大軍を送った。

 

私は、D-DAY上陸後の帝国軍の猛攻を支えたのはある意味ではゾイドマンモスだと思った。
いくら「新鋭機を引きつれ無敵軍団と化した帝国軍」であったとしても、西側(帝国領土)がボロボロだったらそれを放置する事はできまい。
まずは市民の生活を最低限は安定させない事には国家として成立しない。支持も得られない。
まずは戦災復興を行い、それから東側侵攻となった筈だ。

いやしかし、帰還した帝国軍にとってまことに都合が良い事に戦災復興は見事に達成されていた。
ゾイドマンモスの力によって。
だから帝国軍は復興という手間をする事なくすぐさま東側への侵攻が出来たのだと思う。

帝国軍は、西側奪還後に新型ゾイド開発研究所や生産設備も続々と造っただろう。
新型ゾイド開発研究所とはもちろんデスザウラーに向けたものだ。

復興の必要がない……、既にインフラがあるというのは、「こうした設備の建設も容易である」という事だ。
ゾイドマンモスは、こうしてデスザウラーの出現時期を早め帝国軍の増大を意図せずに手助けしてしまったのかもしれない。

D-DAY後の帝国軍はとにかく猛攻した。
もしも帝国軍帰還時に西側の復興が半端な状態であったら、少なくとも多少は手間を取られていたであろう。
東側への侵攻、デスザウラーの開発は若干の遅延が起きただろう。
それは共和国軍に反撃するチャンスを与えていたかもしれない。
共和国軍が一大反撃作戦を決行し、復興に手間取る帝国軍を攻撃し今度こそこの時点で勝利をしていたかもしれない。
そんな可能性も感じた。

復興に大きく貢献した一方、残酷な言い方をすればそれゆえに帝国軍の力を大きく高めてしまい、デスザウラーの開発をも許した。
しかしその責をとるように老兵ながら第二次中央大陸戦争でも寒冷地で黙々と戦い、最後はデスザウラーを撃退し一矢報いてから退役していった。
あの勝利はゾイドマンモスが「ここだけは何としても……!」という意地をみせたものでもあったのだろう。

ゾイドマンモス。やっぱり魅力的なゾイドだと思う。

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