マンモスの牙

絶滅した古代の生物からは大きなロマンを感じます。
それが巨大であればいっそうです。

 
上の画像、左はマンモスで右はナウマンゾウの復元模型です。

ゾイドマンモスのレビューの「モチーフ」項目で、牙を指して「ナウマンゾウ風」と書きました。
モチーフのマンモスの牙は大きく湾曲していて、先端はむしろ自分の方を向いています。
対してナウマンゾウの牙は、やや湾曲しつつも前を向いています。相手に突き刺す気が強く感じられれます。
攻撃的なのはナウマンゾウ。だからゾイドマンモスはナウマンゾウ的形状を選んだのでしょう。

さて古生物マンモスの大きく湾曲した牙。
子供の頃からマンモスの牙を見て、「カッコいいけど実用性はあるんだろうか?」という疑問をずっと持っていました。
先端が自分の方を向いているなんて……。

現代の動物で言うと、バビルサという動物も似た牙を持っています。
明らかに必要以上に巨大な牙。バビルサは伸びすぎた牙が自らに刺さってしまう個体さえ居るそうです……。

※画像はwikipediaより

マンモスにしろバビルサにしろ、この必要以上に巨大な牙に何の意味があるかというと、牙が大きいオスはたいそうモテるらしい。
メスにモテる……、子孫を残すために牙が大きく進化したのです。

マンモスの牙に対しては、以下の様な解説がされます。
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マンモスの牙は実用的でなかったかもしれないが、その先祖のまだ小さいが真っすぐに突き出た牙は、明らかに樹皮を剥いだり根を掘り起こしたり、あるいは種内、種間で戦う武器としても有効だったはずである。
立派な牙をもった個体は自然選択で選択される。そうすると、繁殖を行う場合、相手の異性が立派な牙を持っている個体のほうが、多く子孫を残せただろう。
そのような条件下では、例えばメスがオスを選ぶ場合に、牙が立派なものを選ぶ傾向が生じても不思議ではない。
そこで、そのような配偶者選択の傾向が遺伝的なものとして定着すれば、それ以後は実際の牙の機能より、異性に気に入られる牙をもつ個体が選択的に残るようになる。
このような選択を性淘汰と言う。立派すぎて機能的には疑問のある牙の出現も、これによって説明することが可能な訳である。

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これは実に興味深いです。
更に解説は続きます。

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この場合、大きすぎる牙は、機能的には生存に不利に働くが、配偶者を獲得するためには有利に働くので、その両方の働きのバランスの取れるところに牙の大きさが落ち着くことが期待される。
これも環境が変化し、性淘汰と生存可能性のバランスが取れなくなればその種は絶滅に向かうこともあるだろうと言える。

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何とも興味深いものです。
ただ……、おそらく機能性と配偶者会得のバランスが良いであろうと思えるナウマンゾウは2万年前に絶滅。対してマンモスは1万年前に絶滅。
実際は進化しすぎて機能性を失ってしまったマンモスの方が長く生きていたのだから面白い事です。


こうした謎を解き明かすのは一筋縄ではいかない。だからこそ惹き込まれるものでもあるのでしょう。

ところでマンモスの牙といえば、ツインホーンがまさにそれを再現しています。


マンモスの牙そのもの。耳のサイズ、ボディの感じ、尾の感じ。細かい所までまさにマンモスを再現しています。
完璧なバランス。最もモチーフに忠実なデザインをした一機だと思います。

しかしこの牙。戦闘ゾイドとしてみた場合に実用性はあるのだろうか。
敵……、例えばゴドスに突進したとして、当たる部分はちょうど湾曲している部分。なのでダメージ量が減る気がする。
どちらかというと、自身を守るバンパーとしての役割はありそうな気はするが……。
突撃機としては、尖っている部分を突き刺した方が良さそうに思える。

ただツインホーンは、そもそも前線で戦う主力ゾイドというより「皇帝親衛隊専用ゾイド」というかなり特殊な立ち位置のゾイドでした。
皇帝親衛隊。すなわち、首都で国民に帝国軍の象徴として示すような事も多くあったでしょう。
皇帝親衛隊は帝国軍のエリート部分を示す象徴だから、とにかく煌びやかにする必要があった。
その目的によって、本来は「前を向いた牙の方が実用性が高いが、あえて見栄えを優先して湾曲させた」のかもしれないと思いました。


ツインホーンのデザインはそんな風に見ても面白いです。





という所まで書いて、少し違った考えも思い浮かびました。
ツインホーンの牙はバンパーみたいだと書きました。より詳しく言うと、「カンガルーバー」に近いです。

※画像はwikipediaより
頑丈な鉄パイプを曲げて前面に装着。
カンガルーバーはその名の通り、カンガルーと衝突した時の対策用バンパーです。

「オーストラリアでは日常茶飯事だぜ!」
かの地では衝突事故がけっこう普通に起こるらしい……。
さて野生動物の体は頑丈なので、ぶつかったら車の方が壊れたりします。
だからそれを防ぐ目的でカンガルーバーを付けているわけ。

カンガルーバーは日本では基本的には必要ないものです……が、なにしろ見た目がカッコいい装備なので、一時期はファッションとして車に付けるブームもありました。
ただし「対人事故を起こした場合、人体に与えるダメージが大きいため、現在では各自動車メーカーはオプション設定をすることをやめている」とのことです。

「対人事故を起こした場合、人体に与えるダメージが大きい」
なるほど、バンパー付けてた方がダメージがデカいらしい……。

しかし、冷静に考えたらそりゃそうだと分かります。
バンパー無しでぶつかったら、車体前面の「面」でぶつかるから衝撃が分散される。対してバンパー付きの場合は、バンパー部分に集中して力が加わるからバキッと折れる……。
それでいて車の方にかかるダメージは低減するのだからカンガルーバーとは凄い装備です。

さてツインホーンの「大きく湾曲し内側を向いた牙」は、もしやカンガルーバーのような使い方を想定していたのかもしれないと思いました。
ゴドスに突進した場合。その際に、ゴドスの背骨(メインフレーム)を折ってしまうような強い衝撃を与える。そんな感じなのかも……。

「刺す」というのは一見して強そうですが、「突き刺す→抜く」という作業が必要です。
突き刺してその敵をぶら下げたままでは次の敵に向かえないからです。
また先端が刃こぼれしてきたら刺せないのも欠点です。
そこで体当たりで次々に敵のメインフレームをひしゃげさせるようなツインホーンの牙形状が出来あがったのかもしれない……と思いました。

今回はマンモスとナウマンゾウの牙形状から想像を膨らませてみました。
牙形状も考えるとなかなか興味深いところだと思います。

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