掲載誌の話

今回は前回のコラム(ゾイドマンモス奇跡の一戦)の続き。

学年誌、小学二年生がゾイドを連載しだしたのは88年2月から。
デスザウラー無敵時代に始まり、中央大陸戦争クライマックスに向けて大いに盛り上がった。

  

「ゾイドバトルストーリー」
この時期のバトストは、新型はもちろん大活躍するし旧型も入り乱れて戦っている。
このバランスが最高だ。

これはゾイドマンモス活躍の例を掘り下げて分かったように「途中から掲載誌が増えた」事も大きな要因だ。
どうしてもずっと連載をしていると「新型のアピール」に集中しがちになってしまう。
「旧型は既に前に登場させたからなー。今は新型アピールだろ!」
普通そうなる。
でも途中で掲載誌が変わったり増えたりする。そんなテコ入れや刺激があれば、こういう描写も生まれやすいのだろうと思う。

 

この事情を見てから、メカ生体ゾイド末期の大陸間戦争編を改めて考えてみた。
 
この時期は掲載誌が新たに増えるという事はなかった。
だからどうしても展開がどの雑誌も似たようになっている。
ギル・ベイダーが登場すればウルトラザウルスやマッドサンダーを倒して。
オルディオスが登場すればギル・ベイダーを倒して。
要するに新型ゾイドは古いゾイドを倒す。更に新型のゾイドが出れば活躍はそちらに移る。そんなのばかりだった。
新型機が登場すれば華々しい活躍をさせるのは当然だが、いくらか単調になった感じはしてしまう。

もしここらのタイミングで新しくゾイドバトルストーリーを連載する雑誌が生まれていたら……。
どうなっていただろう。
オルディオスはどの雑誌でもギル・ベイダーを撃墜しまくって正直白けた感じはあった。
しかし意外な展開、例えば旧帝国ゾイドが奮闘してオルディオスに勝つような展開があったかもしれない。
そういう事が無かったのはとても残念なところだ。

 

ただ……、88年2月以降は学年誌のほとんどがゾイドを毎号掲載している。
特に一、二、三年は「ゾイドバトルストーリー」という括りで連載していた中心メンバーだった。
(四、五はバトストの世界観の大筋に添いながら改造などの「作例」、あるいは撮影講座などをする事が多かった)

さて「ずっと掲載していると展開が単調になりがち」とするなら、中央大陸戦争後期(88年2月以降)は掲載誌も固定されて展開が単調化していた筈だ。
この時期のバトストはどうだっただろう。
最初に書いたように最高の仕上がりになっている。

何故?
この時期も掲載誌が固定されていたのに。

いや、展開が単調化したという事はだいたい合っている。
88年2月以降の内容を簡単に書くと、一、二、三年生とも
・デスラウラ―が強い。
・ディバイソンや24ゾイドでどうにか反撃を始めたぞ!
・グレートサーベルが登場したぞ!
・ゴーレムが登場したぞ!
・ついにマッドサンダーが登場したぞ! デスザウラーをついに倒した!!

というように推移している。
そのデスザウラーを倒す方法も、やはり荷電粒子砲を防いでからマグネーザーを突き刺す戦法で各学年で共通している。

でもこの時期はこれで良かったと思う。
なぜかというとこの時期は中央大陸戦争のクライマックスだったからだ。
今まで色々あった展開が「デスザウラーを倒す共和国ゾイドが開発されているようだ……」という情報、そして実際にそのゾイド「マッドサンダー」が誕生した事。
ついに行われる決戦。

雑誌の展開が全て同じでも、最終決戦…クライマックスに向けて収束していく感じがしたからむしろそれが良かった、燃えたのだと思う。

あとは…、単調といっても実はちょっとした差はあった。
というのも「24ゾイド」が充実した時期だ。88年春に共和国24部隊が登場。88年夏にはゴーレムも登場。
24ゾイドの扱いには各学年で微妙に差があった。


「24ゾイド同士の戦い」を描くのか(例えばデスピオンVSメガトプロス)、
それとも通常ゾイドの連携を描くのか(例えばチェスター教授救出作戦)、
それとも通常ゾイドに戦いを挑むのか(例えばゴーレムVSウルトラザウルス)

こうした微妙な差があった。
24ゾイドによって描写にアクセントが生まれたこと。そしてマッドサンダー後は本当に各誌とも同じようなストーリーなのだが、クライマックスなのでむしろそれが良いと思えたこと。
この幸運で中央大陸戦争後期は燃えたと思う。

しかし新たなる戦い、大陸間戦争編では……。
序盤の暗黒軍登場シーン(デッド・ボーダー鮮烈登場)なんかは同じでも良かったかもしれない。
でも通常の「勝ちつつ負けつつ苦しい戦いを続けている」というパートでは戦場の広大さを表現するべく多彩さがあった方が良い。
こうしたシーンが各誌とも同じような内容。差に乏しく活躍するのは新型ばかりなり……という状況が飽きを生んだのかなと思う。

24ゾイドは大陸間戦争時にはプッシュされる事がなくなったので、これによる微妙な差が出る事もなかった。
この時期にも特殊ゾイド「TFゾイド」は登場したが、これも良い効果を生むことはなかった。
(というか登場したのがオルディオスより後なので、この頃になるとゾイドの失速はもはや明らかで挽回が難しくなっていた……)

メカ生体ゾイドは大陸間戦争編に入ってしばらくすると失速してしまった。
その原因は暗黒軍が絶対的な悪として描かれたことや、ガル・タイガーをはじめ従来機とは印象の異なるデザインが増えたことが原因と言われる。
だが掲載していた雑誌の種類や、それを原因とする展開の単調さを考えても教訓に出来るものが大いにある……と思った。

 

新世紀のコロコロで展開したストーリーも、正直に言って新型ゾイドアピールにいそしむあまり少し前に登場した機体はもはや登場する事さえ稀な事が多かった気がする。
その事は大きな反省材料にして欲しい。

今はもう学年誌はない。これからの展開を考えれば、ストーリー展開の中心はコロコロ一本を前提に考えなきゃいけない状況だと思う。
どうにかして上手くやっていかねば。
それはとても困難な道だ。
でも、だからといって多角的な展開が不可能なわけじゃないとも信じる。
新型機は絶対にアピールしなきゃいけない。それは必然だ。
けども、新世紀ゾイドでも打ち震えるような旧式機が意地を魅せてくれた一戦があったではないか。

シンカーがウルトラザウルスを中心とする共和国艦隊を襲い壊滅させたアンダー海海戦。

これはとても印象深いエピソードだった。
掲載誌が一誌だけだろうが問題ない。新型機だけじゃない、色んなゾイドがそれぞれの役割で戦う戦場を最高にアツく表現してくれたと思う。

 

かつては学年誌がズラリと並んでいた。とても恵まれた時代だったと言えるだろう。
現在においてはもはやほとんどの学年が休刊してしまい、同じようなことはできない。
しかしこれまでの展開の見せ方を学ぶことで、今後のシリーズにおいてコロコロ一本だとしても最高の展開は必ずできると思うものである。

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