対空装備の研究④

前回、前々回、前々々回と「対空装備」について考えた(対空装備① 対空装備② 対空装備③)。
その中でふと思う事があったので、今回はそれについて補足的に考えたい。

ゾイドで飛行タイプといえば、プテラスやレドラー等の超音速飛行できるものが主役だ。だが低速の戦闘ヘリとしてサイカーチスやダブルソーダも居る。
サイカーチスは390km/h、ダブルソーダは415km/hの最高速度。

さてサイカーチスとダブルソーダ、この両機の戦力比較表を見ていると不思議な事に気付いた。

サイカーチス

上段はゾイドバトルストーリー1巻、下段は3巻の戦力比較表。

いずれの時代も共和国軍はそこそこ対処できている。
特に新鋭機はやはり強い。
まぁ、サイカーチスは低速だから納得だ。

サイカーチスやダブルソーダは、昆虫の中でも硬い外骨格を持つ「甲虫」がモチーフ。だから装甲の強度はかなり高いと思う。
ただ気の毒なのは「飛行が基本」になってる所だ。
サイカーチスもダブルソーダも戦闘ヘリとして常に飛んでいる。
甲虫は背中側は硬い装甲で覆われているが、腹側は柔らかい。
サイカーチスやダブルソーダは下から撃たれたら脆い感じがする。
低速という事に加えて、下から撃たれたら脆いという事も弱点かもしれない。

ま、それはさて置き。不思議なのはダブルソーダだ。ダブルソーダの戦力比較表を見てみよう。
ダブルソーダは3巻比較表にのみ登場する。


さて見ての通り圧勝!
陸上ゾイドでダブルソーダに勝てるのはブラックライモスだけのようだ。
対陸上ゾイド戦での成績は実にプテラスと同じ。これは凄まじい。

ダブルソーダはサイカーチスよりも飛行性が高い。
といっても、ちょっと強すぎでは。
そしてサイカーチスが泣いてそうでもある……。

第一次中央大陸戦争時、多くの帝国ゾイドがペガサロスに勝ちまたは引き分けだった。
イグアンにいたってはプテラスと引き分けにまで持ち込んでいた。


とすると、ダブルソーダくらいは楽に撃墜できそうなイメージを持ってしまうのだが……。

何故だろう?

これを考えた時に、もしかすると戦術の変化が原因かもしれないと思った。

サイカーチスは対地攻撃を得意とするヘリだ。機獣新世紀ゾイドでは「地上ゾイドから最も恐れられるゾイド」と言われている。
だが、もともとは「長距離砲で後方から支援砲撃を行うゾイド」だった。
飛行ゾイドとしてはパワーがあるから大型長距離法を搭載して飛べる。しかも安定感も高い。
なので、


これは突撃するマーダを援護するべく支援砲撃をしている図。こんな風な運用を行うわけだ。
(詳しくはこちらのコラムを参照)

しかし、実際に完成したらこんな風に使われることは稀だった。
むしろ対地攻撃機として使われる事が多かった。
サラマンダーを運ぶグスタフを襲撃したり、当初の想定とは大きく異なる運用をされている。
これが思わぬ効果を挙げたので、以降そのような運用が定番になった。
そして共和国軍も「対地ヘリ」という部分を真似してダブルソーダを作ったわけだ。

サイカーチスはそのような経緯を持つので、「対地攻撃は可能だが最適化はされていない」という仕様だと思う。
もともと長距離の支援砲撃を行う予定だった。頭部の角状のビーム砲は長距離攻撃用だ。対地攻撃では使いにくかろう。
おそらく両脇の小口径加速ビーム砲が対地攻撃のメイン武器だと思う。

対地ヘリという地上ゾイドにとっては恐怖の対象だが、その武器は対地攻撃に最適化されていない。
攻撃に移る際に隙が生まれる。
これにより敵の反撃を許してしまっているのかもしれない。

ダブルソーダは対地ヘリという部分を開発当初より意識しており、それに特化した仕様で完成している。
頭部には使いやすい4連砲があり、大火力で地上ゾイドを圧倒できそうだ。
また背中の二連ビーム砲も射角が広いので弾幕を張ることができそうだ。

サイカーチスやダブルソーダはヘリなので、戦闘機タイプのゾイドよりは遅い。
だが「障害物に隠れながら飛ぶ」というような特殊な飛行が得意だ。
敵に隠れながら接近(あるいは見つかったとしても障害物を盾にしながら接近して)、いよいよ目前まで近づき攻撃。
しかしサイカーチスは搭載している武器の関係で攻撃に移る際に好きが生じる。だからその瞬間にやられる。
一方、ダブルソーダは搭載している武器が対地攻撃に使いやすいので隙がない。
それこそイグアンレベルの火力を持つゾイドであっても攻撃される前に仕留めてしまえる……という事なのかもしれない。

サイカーチスを対地攻撃用に最適化させるという改修案はなかったのだろうか。
3巻戦力比較表を見る限り、メカ生体ゾイド時代には残念ながらなかったようである。
やはり貧乏国家、ゼネバス帝国の無念か……。

しかし機獣新世紀の時代には最適化の改修が完了していると思う。
機獣新世紀ゾイドのファンブック2巻の戦力比較表(コチラは単純な勝ち負けではなく優位/不利の割合が示してある)によると……、


サイカーチスが強いのなんの。コマンドウルフにさえ優位を示している。
ステルスバイパーは対空火器の塊みたいな仕様だが、それにさえ優位なのが驚きだ。
超火力機とも言うべき新鋭・ガンスナイパーでようやく五分。
ガンスナイパーの充実した火器は小型ゾイドという枠を大きく超えている。
8連ミサイルポッドは対空戦で威力を発揮しそうだし、腕のマシンガンも強そうだ。更にレーダーもあるので、敵の動きを捕捉することも得意だろう。
この仕様でようやく五分とは……。

本来は支援砲撃機として開発されたが、いざ完成したら対地攻撃で意外な強さを見せたサイカーチス。
しかしその仕様から運用には困難もあった。
それが新世紀の時代にようやく最適化を完了。こうして強さを見せたのは何ともアツい事だ。

……贅沢を言ったらコックピットに防弾板も付けてあげれば完璧だったと思う。

なおダブルソーダも強い。


凄い。ヘルディガンナーさえ倒してしまう。

 

というか、この時代は飛行ゾイドが無茶苦茶強い。
プテラス、ハンマーヘッド、シンカー、レドラーも見直すと驚いた。

共和国飛行ゾイド

飛行ゾイドがべらぼうに強い。
プテラスもだが、それにも増してハンマーヘッドが凄まじい。
陸上ゾイドさえ越える驚異的な火力、プテラスには劣るもののそれでも超音速で飛べる飛行性能。これが陸上ゾイドにとっての脅威になったのだと思う。
一方で、やはり飛行性能がものをいう対飛行ゾイド戦ではプテラスには及ばない感じになっている。
ハンマーヘッドの性能はナカナカ面白い。

帝国側も飛行ゾイドが強い。


レドラーが強いのはまあ当然としても、シンカーもなかなか強い。
これだけ強くてしかも海空両用なんていう超便利なゾイドだから、そりゃぁ切り札として大量生産されるわけだ。
シンカーは対バリゲーター戦で圧倒してるのも印象的だ。
両機の対決は旧大戦バトルストーリー1巻ではシンカーの勝ち、3巻ではバリゲーターの勝ちだった。そしてこの時代は再びシンカーの勝ち。
翼下のホーミング魚雷の性能向上だろうか?
時代を考えれば、新世紀シンカーの魚雷はメカ生体ウオディックと同等以上の性能があってもおかしくない。

しかし飛行ゾイドは強い。
両軍とも、この時代なら飛行ゾイドを楽に撃墜できそうな気もする。
旧大戦末期の共和国軍は、レドラーを簡単に撃墜してみせた。
帝国軍も、プテラス位なら楽に撃墜できたはずだ。

何故だろう。
おそらく、飛行ゾイド側の対策も高レベル化したのだと思った。
電波誘導式のミサイルに対しては高性能のチャフ、熱追尾式のミサイルに対しては新型のフレア。
こうした迎撃用装備が充実しているのだろう。

旧大戦末期は飛行ゾイドの存在感がいっそう増した時期だ。
戦況を変えたのはギル・ベイダーであり、それに対抗したのがオルディオスであり、オルディオスに対抗したのはガン・ギャラドだった。
またオルディオスを補佐したのはバトルクーガーだ。
最後はキングゴジュラスが全部もっていっちゃった感じもするのだが……、飛行ゾイドが存在感を大いに増した時期というのは確かな事だ。
そんな飛行ゾイドが存在感を増した時期なので、自然と飛行ゾイド側の防御も研究・向上していったのだろう。

ということで、今回はヘリ型ゾイドの事と新世紀の事情を考えてみた。
なかなか面白い事情が読み解けたと思う。

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