対空装備の研究③

今回は、前回、前々回のコラム(対空装備① 対空装備②)に続いて、大陸間戦争期の対空装備を考えたい。

ゼネバス帝国は滅び、この時期はガイロス帝国とヘリック共和国による戦いになった。
※ガイロス帝国は呼称がややこしいので、本コラムでは「暗黒」と呼ぶ。
 以下、ヘリック共和国=共和国、ガイロス帝国=暗黒、ゼネバス帝国=旧帝国の表記を基本とする。

大陸間陸戦争で主力運用された両軍の飛行ゾイドは、
サラマンダーF2ギル・ベイダーオルディオスガン・ギャラドバトルクーガーサラマンダー(続投)プテラス(続投)レドラー(続投)レイノス(続投)
の9種類。この時代は新型飛行ゾイドが多い。新型はいずれも超強力だ。
対空装備はこれらの飛行ゾイドにどうやって対抗しただろう。

 

さてこの時期の共和国軍、暗黒軍の対空装備はどうか。
これを考えると、私はこの時期は共和国軍の圧勝だと思った。まさに圧勝だ。

暗黒軍は「旧帝国以上のハイテク装備を持つ技術立国」なイメージがあるかもしれない。だが実のところそうではないと思う。
なぜかというと、暗黒大陸という立地の関係から「グローバリーIII」の恩恵を受けていないからだ。
地球技術が中央大陸の技術を一気に向上させた。暗黒大陸は蚊帳の外だった。なので中央大陸以上というのはありえない。

ただ旧帝国とは「同盟」を結ぶ友好国ではあった。(裏切ったが……)
友好国として、旧帝国から地球技術の提供は受けていたと思う。

旧帝国はなぜ同盟を結んだのか。なぜわざわざ暗黒大陸に技術を提供したのか。
それは「見返り」があったからだろう。
内容は「ゼネバス帝国が危機に陥ればこれを救援する」というものだったと思う。

ゼネバス帝国軍は、本音を言うと暗黒軍と同盟を組んで技術を提供するなどしたくなかっただろう。
わざわざ他に技術を与えるなど。技術を独占したいのが本音だった筈だ。
だがなぜ同盟を組んだかというと、現在は国力で大きく勝る共和国と戦争をしている。そういう状況なので負ける事もありえる。
もしもに備えた保険が必要。そんな事情からガイロス帝国を利用したと思う。

ゼネバス帝国には負け戦になった時の保険がかけられるという利がある。
ガイロス帝国には地球技術を提供してもらえるという利がある。
そんな利害の一致が両国の同盟を実現したのだろう。

ただ技術提供は与える側に主導権がある。旧帝国は最低限にしか技術を提供しなかったと思う。
世は無常。「格下」の相手にふそんな態度をとることはままある事なのだ。
暗黒軍は屈辱を感じ、しかしどうする事もできない状況にあったと思う。

そんな暗黒軍だが、第二次中央大陸戦争末期には力関係が大きく変わったと思う。
この頃、ゼネバス帝国はまたしても滅亡の危機に瀕していた。暗黒軍が再びこれを助ける事態が起こるであろうと予想された。
こういう状況で、徐々に格下から同格、そしていつしか主導権を得るようになったと思う。
(この辺のくだりについて詳しくはこちらのコラムも参照されたい)

そして第二次中央大陸戦争クライマックス……、ニカイドス島の戦いで残存する多くの旧帝国ゾイドを得た。
こうして、ようやくゼネバス帝国軍が持つ技術を存分に得る事ができた。
暗黒軍はそんな状況であったと思う。

 

とはいえ、それでもゼネバス帝国やヘリック共和国と完全に同じレベルに達したとは思わない。
「現物のゾイド」を得たとしても、技術解析……、リバースエンジニアリングをするには多大な労力を要する。
開発者、技術者、各種資料などを確保していれば良いのだが……。

開発者などの人員は中央大陸で共和国軍に確保されたようなケースも多かっただろう。
なにしろ末期の共和国軍は猛攻していた。ニカイドス島に行きそびれた者も多かった事は想像似難くない。
(捕捉:先のコラムを再び参照。デスザウラーの関係者だけは優先的に先に暗黒大陸に行っていたかもしれない=その者がギル・ベイダー開発にも関ったと予想する。しかしデスザウラー関連以外の開発者は後回しにされていただろう)

人員が居なければ、それはもう独力でリバースエンジニアリングをして頑張るしかない。
技術解析、そして得た技術を確実に国の力として定着させるのはかなりの時間を要する。
暗黒軍の技術力は、実のところかなり低いレベルであったと思う。

ただ暗黒軍にも強みはある。それは発想力の高さだ。
高速機にブレードを付けて切り裂く。ジーク・ドーベルはあのサイズでウルトラザウルスを倒した。
荷電粒子砲を薄く成型してから放つ。ギル・ベイダーはこれによってマッドサンダーやキングゴジュラスをも切り裂く突破力を得た。
こうした「工夫」が抜群だ。
今ある力を最大に高めることができるのが暗黒軍の強みだと思う。

また、そうした工夫によって完成させた装備を「象徴的に見せる演出」にも優れている。
戦場で最大限に効果的に使って共和国軍を恐怖におとしめる。そんな心理的な運用は暗黒軍特有だ。
ただこれら工夫や演出は、元々が弱小国だったからこそ生まれた発想だとも言える。

 

前置きが長くなってきた。そろそろ本題に入ろう。

暗黒軍の対空装備はあんがい酷い。
新ゾイドバトルストーリーによると、大陸間戦争時期において共和国軍は偵察用としてはプテラスさえ運用している。
……この時期に運用されたプテラスは「偵察用プテラス」と書かれているので、もしかすると「ステラス」に近い性能があったかもしれない。
しかしそれにしても原型はしょせんプテラスだ。
これが十分に運用でき、しかも敵地の奥深くに侵入し戦果を挙げているのだから驚きだ。

レイノスはレドラーと激しい空戦を行った。
ただこの時期のレドラーはどうも強化タイプになっていたようで、当初の状況は互角。共和国軍は制空権を得る事ができなかった。

暗黒軍は開戦以来「最終兵器、ギル・ベイダー」の開発を全力で行っていた。
その開発中に得たデータは直ちに同じドラゴンタイプであるところのレドラーに転用されたのだろう。
「強化と新型機開発のテストが同時に行えた」という幸運があった。これがレイノスと互角にまで向上した理由だと思う。

話をレイノスに戻す。さてレイノスは空では互角。しかし陸上からの対空砲で撃墜されたことはない。
いや……、

実は唯一だけ、ノリノリだった時期の槍持ちデッドからこんなことをされた回はあったのだが……、これは例外として今回は省く。
(この時のデッド・ボーダーについてはこちらのコラムを参照のこと)

まぁ槍持ちデッドはともかく、基本的にプテラスもレイノスも倒せないのが暗黒軍の対空装備レベルだ。

暗黒軍の対空能力の低さは、改造マッドサンダー「マッドフライ」の運用からも見えてくる。

マッドフライは巨大なので飛行ゾイドとしては速度も運動性も低いだろう。また巨体なので対空砲を狙う側としては当てやすい。
だがデッド・ボーダーは何もできずにバタバタやられた。
この時のデッド・ボーダーは「警戒中の所を襲われた」ので、戦闘状況でこのザマという事だ。
完全に言い訳のできない負けだった。

さて、緒戦の状況はこんな感じだった。
共和国側から見て「地上からの対空砲は大したことないが、レドラーが強化されていたので制空権が確保できなかった」いうものだ。

 

その後、共和国軍はサラマンダーF2投入後に制空権を確保した。F2はレドラーを退けた。
F2就役後においては、F2を護衛につけたサラマンダー(ノーマル)編隊が暗黒基地を爆撃する、なんていうミッションも行われている。
この作戦において唯一の脅威はレドラーであり、F2が退けた。

一方で対空砲は全く気にされておらず、基地上空でも悠々と爆弾の雨を降らせてる。
よく見ると、かなり低空から爆撃している機さえある。

サラマンダーというと旧帝国のアイアンコングMK-IIの高高度対空ミサイル……、この時代からいうと10年以上も前の装備で撃墜できるようになっている筈だ。

なのに暗黒軍はできなかった。

前回のコラム(対空装備②)にて、旧帝国軍は「レドラー配備に伴い高高度対空ミサイルの生産を打ち切った。コングMK-II量産型ではオミットした」と推測した。
それは正しいと思う。
生産が打ち切られた。それゆえ末期(ニカイドス島の戦いなど)の頃にはもはや存在しないようになっていた。
なので高高度対空ミサイルは暗黒軍に鹵獲される事も技術が移る事もなかったのだろう。
これが暗黒軍がサラマンダーに対空装備で対抗できない事態を生んだと思う。

 

F2には全く何もできなかったようで、暗黒基地に侵入した際にはジャイロクラフターを装備したガル・タイガーが迎撃していたりする。

もうやけくそ感さえ漂う。

……余談。
ただしメカ生体ゾイドではトラがサラマンダーに挑むのは定番でもあった。
サーベルタイガーもグレートサーベルもサラマンダーに果敢に飛び掛った。そして見事に仕留めている。

もちろん条件が整わないと(特にサラマンダーが飛行高度を落とさないと)無理な話だが、タイガー乗りの凄まじい技量が分かるシーンだ。
ちなみにガル・タイガーは残念ながらF2を仕留めることはできなかった。

話を戻す。
F2で制空権を得た共和国軍。
それ以降の暗黒軍はレドラーでは対抗できず、かといって対空砲で落とす事もできず。何もできなくなった。

 

しかしその後、ギル・ベイダーの完成で「空対空」の戦いでようやくF2を含む共和国飛行ゾイドを倒せるようになった。
更にガン・ギャラドで空対空の優位性は上がった。
だが「地対空」の戦いについてはその後も苦手だったようで、最後までこのザマだ。

ダーク・ホーンはハイブリットバルカンで弾幕を張れば強そうに見えるのだが、あんがいそうでもないのだろうか。

ダーク・ホーンはタートルシップを撃ち落すシーンはある。

「対空砲を持つが、追従性がイマイチで機敏に動き回る機を狙うのは苦手」なのかもしれない。

 

暗黒軍の対空能力の低さといえば、このシーンも注目だ。

これはウルトラザウルス飛行艇が暗黒基地上空を飛行しているシーン。
ウルトラザウルス飛行艇はキングライガー3機を積んで暗黒軍勢力圏の上空を飛行した。
これは「飛行艇」という位だからかなり低速だと思う。
それでいて無事だったというのはなかなか凄い事だ。

 

暗黒軍の対空戦は終始こんな感じだった。
まとめると、プテラス偵察タイプ、レイノス、サラマンダーといった中央大陸戦争時代の各機を落とす事さえできない。
いわんやサラマンダーF2をわ。という状況。旧帝国レベルどころかそれよりも下というのが導いた見解だ。

 

では共和国はどうか。次にこれも見よう。
実はこの時代は超進化している。
超対空ゾイド、ガンブラスターが完成したのだ。

正直、ガンブラスターの正面固定砲でどうやって対空射撃をするかは謎が残るのだが……、ともかくレドラーを簡単に撃ち落してみせた。
(短時間なら後足で立って二足状態になれたりするのだろうか?)


レドラーは先述したようにこの時代は強化されている。それを簡単に落としたのだから凄い。
また、ギル・ベイダーを狙うことも可能だったようだ。

改造タイプになると更に凄い。

二足歩行タイプ「アルトブラスター」はギル・ベイダーと交戦した。 最終的に敗北したものの、かなり善戦してエネルギー切れ寸前まで追い込んだ。


コチラの名称不明タイプにいたっては、F2との共闘ではあったが基地を襲うギル・ベイダーを迎撃、見事撤退に追い込み防衛を成功させた。

ガンブラスターの他にも……、ギル・ベイダーは中央大陸を爆撃した際には真っ先に対空陣地を潰している。それが脅威になる事をよく分かっていたのだろう。

改造ゴジュラス各種は特殊装備でギル・ベイダーの動きを止めた(ボルガ、マグネ、レーザーネット装備タイプ)。

特にコチラのレーザーネット装備タイプはギル・ベイダーを完璧にとらえた。
このギルは動きを止められている間にオルディオスに突撃され深刻なダメージを負い撤退した。

改造ディバイソン「コブラ」は巨大ミサイルを直撃させている。
 
ただこの一戦はギルの防御力が高すぎ致命傷にならなかった。それはは無念だったが、命中させたというだけでも凄い。

まだある。

改造マッドサンダー「グレートサンダー」も対空爆雷を直撃させた。

暗黒軍の切り札、M4.0を誇る不死鳥ギル・ベイダーだがあんがい捕捉されていたようだ……。
従来の新型飛行ゾイドは、「その飛行性能でもって対空砲などものともせずに悠々と飛ぶ」感じだった。それと比べるとあまりにも被弾している。

この時代の共和国軍対空装備はなぜこんなにも一気に向上したのだろう。
おそらく、それはゼネバス帝国の技術を得たからだと思う。

暗黒軍の旧帝国技術吸収において、
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とはいえ、それでもゼネバス帝国やヘリック共和国と完全に同じレベルに達したとは思わない。
「現物のゾイド」を得たとしても、技術解析……、リバースエンジニアリングをするには多大な労力を要する。
開発者、技術者、各種資料などを確保していれば良いのだが……。

開発者などの人員は中央大陸で共和国軍に確保されたようなケースも多かっただろう。
なにしろ末期の共和国軍は猛攻していた。ニカイドス島に行きそびれた者も多かった事は想像似難くない。

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と書いた。

共和国軍は、中央大陸内に残されていたであろう旧帝国ゾイドの現物、そして技術者の多くを得ていたのではないか。
旧帝国の技術者は暗黒軍の裏切りに憤り、共和国軍に全面協力する事を決意した。
技術者が協力したのでリバースエンジニアリングをするまでもなく技術は共和国軍のものになる。
更に技術者は憎き暗黒軍を倒すべく新型対空装備の開発も行ったのではないだろうか。

そんな風に考えると、この時代の共和国軍対空装備の向上が説明できると思った。
また今回の趣旨とは外れますが、この時期の共和国ゾイドが一気に帝国化したのにも同様の原因がありそうだ。

 

共和国をまとめると、レドラーを楽に撃墜可能。更にギル・ベイダーをも捕捉できる高性能対空装備も持つ(ただし威力不足により当たるが撃墜には至らない)。
凄まじい向上だ。

 

という事で、3回のコラムでメカ生体ゾイド時代のヘリック共和国、ゼネバス帝国、ガイロス帝国(暗黒)の対空能力を考えた。
大陸間共和国>>第二次帝国>>第二次共和国=大陸間暗黒>第一次帝国>>>第一次共和国
位だろうか。

結局最終的に最強になったのは共和国軍だが、それを支えたのはゼネバス帝国軍の技術であった。
ゼネバス帝国の技術はやっぱり偉大だと思う。

 








最後にもう一つ余談。
大陸間戦争時代の共和国軍対空装備といえば…、


素手でレドラーを捕まえたキングゴジュラスのシーン。
これはいったいどうやって捕まえたんだろう……。

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