対空装備の研究②

今回は、前回のコラム(対空装備①)に続いて、第二次中央大陸戦争期の対空装備を考えたい。

ZAC2039年、ゼネバス帝国は敗北し暗黒大陸に逃げた。しかしそこで軍備を再建し、再びヘリック共和国に挑んだ。
ZAC2041年、D-DAY上陸作戦敢行。ここからは、より激しさを増した第二次中央大陸戦争が始まった。

第二次中央大陸戦争で主力運用された両軍の飛行ゾイドは、
レドラーレイノスシンカー(続投)サラマンダー(続投)プテラス(続投)シュトルヒ(続投)
の6種類。
さて、対空装備はこれらの飛行ゾイドにどうやって対抗しただろう。

 

この時代は両軍とも対空装備に大きな発展があった。
それがよく分かるのがゾイドバトルストーリー3巻の戦力比較表だ。
この表には「現在は対空装備が向上したので、飛行ゾイドであっても撃ち落されるケースが増えた」との記述がある。

それではまず、帝国飛行ゾイド対共和国ゾイドの成績を見てみよう。


3巻戦力比較表には残念ながらシンカーは登場していないのだが、シュトルヒは登場している。
そしてシュトルヒは惨敗に次ぐ惨敗!
ほとんどの共和国ゾイドに負けているではないか。

この時代、共和国軍の対空装備はシュトルヒを墜とせるレベルに達していた。
シンカーが表に載っていないのは残念だが、シュトルヒをザコ扱いできる程に向上しているのでシンカーなど更に楽に墜とせるだろう。
そりゃぁ第一線を退いた扱いにもなるかもしれない。飛行させるのは危険すぎる。仮に載っていれば全敗だっただろう。

シュトルヒの成績を1巻時と並べるととても興味深い。


1、3巻の比較表で共通して登場するゾイドを並べてみると、こんな風に変化している。

バリゲーターが1巻ではシュトルヒに「負け」判定なのに3巻では「勝ち」に変化しているのは注目だ。
バリゲーターは1巻だとシンカーにさえ「負け」判定だったのだが、この時代はシュトルヒにさえ勝つ。
この時代、対空装備の能力は別次元に強化されたようだ。
これは背中のミサイルが最新型に換装されたからだろう。


見た目こそ同じだが中身はまるで別物になったのだと思う。
国力の高い共和国軍は、このように「最新装備に換装し既存機を効果的に近代化・延命」する事をしていたようだ。

しかしシンカーさえ墜とせなかった共和国軍が、数年でシュトルヒをザコ扱いできるまで向上したのは凄い。
どうやったのだろう……というと、鹵獲したマルダーなりイグアンなりを解析して対空装備をコピーしたんじゃないかと思う。

サーベルタイガーを徹底的に解析・コピー改良したのがシールドライガー。
もちろん同様の事がされたのはサーベルだけではあるまい。鹵獲した帝国ゾイドはすべからく解析されただろう。
その結果、優秀な帝国対空装備を共和国軍が吸収したのだと思う。

第二次中央大陸戦争時代の共和国軍対空能力は「第一次中央大陸戦争時代の帝国軍装備のコピー改良」によってここまで向上したのだろう。

 

では次に共和国飛行ゾイド対帝国ゾイドも見てみよう。


帝国軍も向上している。プテラスを撃墜できるゾイドとしてブラックライモスが存在する。
だがプテラスはこの時代にも強い……!
ブラックライモスとレドラーを除いては、全ての敵に「勝利」判定を得ている。
(シーパンツァーやブラキオスは引き分け程度に戦えても良さそうにも見えるのだが……)

それでも、帝国軍の装備は第一次中央大陸戦争時代より大きく向上していると思う。
なぜか。
これはシュトルヒとプテラスを比べると見えてくる。

シュトルヒとプテラス、両機は1巻の戦力比較表では互角になっていた。
しかし3巻の表ではプテラスの勝ちとなっている。どういう事かというと、これはプテラスが改良タイプになったのだろう。

他にも、プテラスは1巻表ではイグアンと引き分けになっていた。だが3巻表ではプテラスの勝ちになっている。
改良されたプテラスの飛行性能は、イグアンの対空装備……第一次中央大陸戦争レベルの対空装備は防げるようになったという事なのだろう。
そんな改良型プテラスをも撃ち落すブラックライモスは凄い。だからかなりの向上があったと思った。

ところで、ブラックライモスのミサイルを他のゾイドにも搭載するという案はなかったのだろうか。


バリゲーターはシンカーにさえ勝てなかった。それがミサイル換装でシュトルヒに勝利できるまでになった。
同様の事を、例えばハンマーロックにできないのか。背中のミサイルを換装すれば割と簡単にイケそうなのだが……。


というと、これは国力の低い帝国ではできなかった。新型強力ミサイルをガンガン生産できるだけの力がない。
多くのゾイドは古い装備を引き続き運用していかねばならなかったという事情だろう。
もしも帝国に共和国と同じ国力があれば、多くのゾイドがプテラスに「勝ち」の判定を得ていたと思う。
3巻戦力比較表からはそんな事情も見えてくる。

……それにしても3巻の比較表を見ているとシュトルヒはかわいそうだ。
これだけ撃墜されるようになったのか……と哀愁を感じる。

こちらもプテラス同様改良する案はなかったのだろうか。
なかったと思う。
なぜかというと新鋭機レドラー開発に集中していたからだ。
国力で劣る帝国は既存機の改良と新型機の開発を同時並行する余力がなかった。
リソースは限られている。それならば新鋭機レドラーに集中しようとなったのだろう。

改良型プテラスを撃墜できるミサイルを持ちながら、それをブラックライモスにしか搭載できなかった。
それと同様に、常にギリギリの帝国軍は飛行ゾイドもレドラーに集中しシュトルヒは陳腐化を承知で据え置きせざるを得なかったのだろう……。

一旦、ここまでのまとめ。

共和国軍の対空装備:第一次中央大陸戦争時代の帝国軍を上回る。第一次中央大陸戦争レベルの飛行ゾイド(シュトルヒ)を撃ち落せる。
帝国軍の対空装備:第一次中央大陸戦争時よりも大きく向上している。改良されたプテラスをも撃ち落す。が、国力的な限界から配備は限定的でもある。

という感じになろうか。

 

次に大型ゾイドも見てみよう。
この時代の帝国軍は、あのサラマンダーをも撃墜できる装備を配備した。
アイアンコングMK-II限定型が持つ「高高度対空ミサイル」だ。


正確に言うとコングMK-IIは第一次中央大陸戦争末期に登場しているのだが、その時はエースが乗る超超少数配備機だった。また防空には使われていない。
コングMK-IIが本格的に投入されたのはD-DAY上陸作戦から半年後の「国境の橋争奪戦」においてだ。
先行機が以前から活躍していたとはいえ、本格的な運用はこの時代からとみなすべきだろう。


さて高高度対空ミサイル。
これは超高空を飛ぶサラマンダーを撃墜する恐るべき装備だ。
いくら「そうする必要があった」とはいえ、超高空を飛ぶサラマンダーを撃墜できる装備を実現できた帝国は凄い。何とも凄まじい。

ただ一つ不思議なのは、アイアンコングMK-II量産型では高高度対空ミサイルを撤去している事だ。
量産型はバックパックとサーチライトを残し、大型ビームランチャー、四連装ミサイル、高高度対空ミサイルは撤去した。

思うに、これは「レドラー」の配備の影響だろう。
コングMK-II量産型が本格的に戦場に現れたのは、ちょうどレドラーが登場した時期と重なる。
レドラーはプテラスに圧勝できる空戦力を持つ。またサラマンダーにとっても脅威になっていた。
これはマイナーな資料だが、学年誌の付録「ゾイドひみつファイル(小三88年4月号付録)」の表を紹介したい。


この冊子では両空軍の飛行編隊を紹介しているが、共和国側は「サラマンダーを守ることが大切だ」と書かれている。
レドラーの強さが分かるものだ。

おそらくコングMK-II量産型の仕様を決めるにあたって、当初は高高度対空ミサイルは残すつもりだったと思う。
しかし同時期に空軍がレドラーを完成させた。

これで対抗したら良いのでは?

高高度対空ミサイルは、超高性能と引き換えに製造コストがあまりにも高かったのかもしれない。レドラー一機よりもずっと……。
それでいて対サラマンダー用専用装備だから汎用性がない。
それゆえ量産型では撤去された。サラマンダーにはレドラーが対抗したのだと思う。

中・小型ゾイドでも同じ事が言えるのかもしれない。
ハンマーロックやイグアンなどの既存機の対空装備を「ブラックライモスタイプ」に換装する案はあった。
だがレドラーが配備されたので、無理に既存機をアップデートさせずとも十分な対空戦闘ができるようになった、という。

敵飛行ゾイドに対して「自軍の飛行ゾイドで対抗できたからそうした」という考えは第一次中央大陸戦争時代の共和国軍と同じだ。
しかし大きく違うのは、共和国軍は「対空装備では対抗できなかった。でもプテラスで対抗できたから良かった」だったのに対して、この時期の帝国軍は「対空装備で撃墜する事は可能だった。でもレドラーで対抗した方が効率が良いのでそうした」という事だ。
飛行ゾイドがなかったらヤバかった。かたや飛行ゾイドが無くても対空装備で対抗できた。その違いは大きい。

 


さてレドラー。レドラーは凄まじいゾイドだった。
バトスト3巻戦力比較表では残念ながら「戦闘不能」として陸上ゾイドとは勝敗が分からない表記になっている。
だが実際のバトストを見るとレドラーが陸上または海上ゾイドを攻撃するシーンはけっこうある。
そして共和国軍は全く対抗できていない。

「フロレシオ海海戦(バトスト3巻収録)」は代表だろうか。
レドラーは海上航行するウルトラザウルスの撃沈を狙って出撃した。

この海戦でウルトラザウルスは、レドラーの襲撃に備えて「プテラス戦闘機隊で迎撃する」という方法を採った。
飛行甲板を限界まで大型化しプテラスを満載したのだ。


改造としては、甲板に機銃やミサイルをズラリ並べた「対空装備を満載し超防空ウルトラザウルスにする」という方向も可能だったはずだ。
これでもってレドラーを迎撃する。
もはやシュトルヒをザコ扱いできる時代だ。だからこの方向で改造すればレドラーを撃墜できそうな気もする。
しかしそうなっていない。プテラスに頼った。
ということは、対空装備でレドラーを撃墜するのは火器をいくら増やそうが無理だったのだろう。

レドラーの飛行性能は、共和国の対空装備などいくら撃ってこようが余裕でよけてしまう。
撃墜するなら「量」ではなく、もっと「質」を高める必要があったのだろう。


レドラーはプテラスに快勝し(重い対艦装備を付けた不利な状況で!)、更にウルトラの細い首に執念の一撃を撃ち込む高性能を見せつけた。

 

第二次中央大陸戦争時代、共和国軍は第一次中央大陸戦争時代とはうってかわって「対空仕様」のゾイドを多く作るようになった。
改造ディバイソン「ヘッジホッグ」なんかはまさに超対空仕様と言えると思う。


多くのゾイドがノーマルタイプの時点でシュトルヒを撃墜できる。
なのにわざわざ改造して防空タイプを作っている。ここからはレドラーの脅威が伝わってくる。
なお残念ながらヘッジホッグはレドラーと対戦する事はなかったのだが……。

ヘッジホッグの母体であるところのディバイソンは、ノーマル状態から割と優秀な対空能力を持っている。
腰の対空機関砲は、おそらくシュトルヒ程度なら問題なく倒せるだろう。しかしレドラー相手には全く役に立たない。
実はディバイソンVSレドラーという異色対決は行われた事があって……、


その時はディバイソンは何もできなかった。(小二88年5月号掲載、ちなみにこのときのディバイソンは集団であった)
まぁレドラーの不意打ちのような状況ではあったのだが…、共和国軍がレドラーに対抗できていない状況は証明できたと思う。

レドラーにようやく勝てるようになったのは、レドラー登場から実に5年後のレイノス登場によってだ。
レドラーを超える飛行能力、豊富な火力。これによって共和国軍は制空権を取り戻した。
けっきょく、共和国軍は第一次中央大陸戦争時と同じく敵飛行ゾイドに対して「対空装備では対抗できない。しかし優秀な空戦ゾイドによって空で勝った」という構図に落ち着いたのだ。

第二次中央大陸戦争の共和国軍対空装備をまとめると、能力は確かに向上した(おそらく帝国技術のコピー改良によって)。だが、シュトルヒを撃墜するのが精一杯でレドラーには対抗できなかった。というものだろう。

 

……そういえばマッドサンダーは防空力が低い。

キャノンビーム砲が一応は対空火器だが、対デスバード用なのだろうか。対空砲にしては明らかに巨大だ。
もしかすると、帝国軍がデスバードを量産すると予想していたのかもしれない。
(対小型飛行ゾイド用として旧日本軍の「三式弾」のような使い方ができたのかもしれないけども)

マッドサンダーの仕様は、もしかすると対レドラー戦ははなから削除したのかもしれない。
「もう無理だ」として。
そう割り切ったのは、同時期に開発されていたレイノスが良い仕上がりになると予想されたから……。
そんな事も思った。

 

さて帝国軍の装備についてもまとめ。
こちらは改良タイプのプテラスを撃墜できる程度に向上した。サラマンダーをも倒せるようになった。しかしレイノスにだけは対抗できなかった。
というものだ。
最終的には「ギリギリまで頑張ったが一歩だけ及ばなかった」という第一次中央大陸戦争時と同じ構図に落ち着いたのだ。

両軍とも最終的には同じような状況になっていて、なんだか皮肉を感じる。

帝国軍はレイノスにだけは対抗できなかった。
しかしこれは登場時期が悪すぎた。
レイノスはZAC2050年登場。そしてZAC2051年3月にはニカイドス島での最終決戦・帝国滅亡だ。
対抗兵器を開発するには時間がなさすぎた。
しかもマッドサンダーを先頭に共和国軍がずんずん迫ってくる逼迫した時期だから、悠長に対空兵器を開発してる暇や余力はますますなかっただろう。
とにかくマッドサンダーを倒す改造デスザウラーやそのサポート機が優先された事は想像に難くない。
もしあと2年もあれば、帝国軍はレイノスを撃墜できるようになっていたのではないだろうか。
そんな風にも思った。

さて、以上が第二次中央大陸戦争時代についての対空装備のまとめ。
次回は大陸間戦争期についても考えていきたい。

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