対空装備の研究①

ゾイド戦役には多くの飛行ゾイドが登場した。
飛行ゾイドは強い。
特に初期戦役においては「飛行メカは陸上メカの三倍の戦力を持つ」とさえ言われた。
さて飛行ゾイドが強力だったからこそ、それに対抗する「対空装備」も次第に発展していった。

この対空装備を考えた時、ゼネバス帝国軍の凄さを実感した。
今回は「対空装備」という角度からからヘリック共和国軍、ゼネバス帝国軍、ガイロス帝国軍(暗黒軍)の技術力を考えてみたい。

 

ゾイド戦役を前期(第一次中央大陸戦争)、中期(第二次中央大陸戦争)、後期(大陸間戦争)に分けると、それぞれの時代に飛行ゾイドが居る。
主力運用されたものを一覧にすると

前期:ペガサロスシンカーサラマンダープテラスシュトルヒ

中期:レドラーレイノスシンカー(続投)サラマンダー(続投)プテラス(続投)シュトルヒ(続投)

後期:サラマンダーF2ギル・ベイダーオルディオスバトルクーガーガン・ギャラドプテラス(続投※)サラマンダー(続投)レドラー(続投)レイノス(続投)
※この時期のプテラスは戦闘用ではなく偵察用

位だろう。

長くなりそうなので三回に分けて書きたい。
今回はまず第一回として、「前期」の第一次中央大陸戦争期間について考える。

 

さて主力飛行ゾイド。そしてそれに対抗した対空装備。
これをみるとゼネバス帝国の技術はやっぱり凄いと気付いた。

初期戦役における共和国軍主力飛行ゾイドはペガサロスだった。

帝国軍はこれに対空装備を満載した「マルダー」で対抗した。そしてマルダーはペガサロスに勝利した。
さすがに後年のプテラスを落とすことはできなかったが、ペガサロスを相手には十二分の戦果を挙げたのだ。


これは大注目だ。地上からの砲撃でペガサロスを撃墜できたのは凄い。
この凄さは、共和国軍の装備と比べるとよく分かる。

さて一方、帝国軍シンカーに共和国軍はどうやって対抗しただろう?
何もできなかった。
シンカーは当初は「無敵」とさえ言われていた。ようやく対策ができたのはプテラスが完成した後だ。


プテラス完成前において、共和国軍はペガサロスで「空対空」の戦いはしていた。
しかし地上から対空砲で撃ち落す「地対空」の戦いはまるでできなかったようである。

ペガサロスはM2.5を誇る超高速飛行ゾイド。対してシンカーはM0.9しかない。
まぁずっと最高速度で飛んでるわけではないのだが、それでも最高速度でいえばペガサロスは2.7倍もの能力を持つ。
これを見ると、ペガサロスをとらえた帝国軍のミサイルは実に凄い事が分かる。
対して、音速にも満たないシンカーに対抗できなかった共和国軍は対空装備の技術力で離され過ぎだと思った。

もちろんペガサロスとシンカーでは防御力が格段に違う。
厚い装甲を持つシンカーはおそらく直撃でなければ撃墜できないだろう。
対して、ペガサロスは爆風だけでもヤバそうな感じがする。
それでもM2.5をとらえる帝国のミサイルは凄い。

ところで、プテラスの最高速度はM2.2で実はペガサロスを下回る。
これならばマルダーのミサイルで撃墜できそうな気がする。
なぜそうならなかったのか。それは防御力の差だと思う。

プテラスはペガサロスから防御力が格段に向上している。飛行ゾイドとしてはとても頑丈な機体だ。
ミサイルを放っても「なかなか落ちない」「当たってもしぶとく飛び続ける」そんな事があったのだと思う。

 

少し寄り道。マルダーのミサイルを詳しく考えてみよう。
対空ミサイルというのは通常……、


このように直撃して倒すものではない。(もちろん直撃させても構わないが)
どうするかというと……、


近接信管が付いているので、このようにある程度近い距離にまで接近すると「自爆」する。
すると破片などが凄まじい勢いで周囲に広がる。破片が目標にブチ当たって穴をあけたりダメージを与えたりする。
飛行機は基本的に陸上兵器に比べて防御力が低い。なので、このような方法で十分撃墜できるわけだ。

マルダーのミサイルは、こうしてペガサロスを撃墜したのだと思う。
ペガサロスの防御力なら、このような破片でも直ちに致命傷になり墜落できたのだろう。

更に言えば、多少アバウトな狙いでも良かったんじゃないかと思う。
当然、ミサイルの自爆位置と敵機位置が離れていると与えるダメージ量は減る。距離を経るごとに命中する破片は減るし、飛び散る勢いも減ってしまうからだ。
だが、なにしろペガサロスは防御力が低い。
だから少々ダメージ量が減っていようが問題なく撃墜できた……。そんな事情も想像した。

さてこのミサイルをプテラスに向けたらどうなるか。
プテラスは最高速度でむしろペガサロスを下回る。だから同程度の狙いを付けることはできたと思う。
だがプテラスは防御力が高い。
だからペガサロスと同じように当たるが、ものともせずに耐えたのだと思う。

マルダーがペガサロスを落としつつもプテラスに対抗できなかったのは、こうした理由だろう。
プテラスを墜とそうと思えば、これはもうミサイルを自爆させ破片で攻撃するなんてもんじゃなくて「直撃」させる必要がある。
さすがの帝国軍でもその精度まではなかった、と。

ただそれでも、「牽制」くらいにはなったと思う。
さすがにノーダメージってわけじゃない。無事だけどいくらかダメージはあるだろう。連続して受ければそのうち蓄積して墜落する可能性もある。
だったらどうするか。
マルダー程度なら量産もしやすいだろう。だから威力不足を補うべく大量生産して集中運用したら良いと思う。
ペガサロスに向けて撃つ時の2,3倍くらいの密度で撃てば、当たる破片の量もそれに応じて増える。そしたら撃墜に至る機もあるんじゃないかと思う。

ただし、これは言うは易し。実際に運用するのは厳しそうでもある。
というのも飛行ゾイドがA地点からB地点に向かうには…、

ルート選びは航続距離が許す限りにおいては自由。最短ルートで一直線に向かっても良いし、回り道で行っても良い。

ここでは分かりやすく3つのコースを示した。どれでも構わない。
コースが自在なのは飛行機の強みだ。
マルダー防空大隊が展開しているなら、そこを避ければ良い。

マルダーが量産しやすいといっても、さすがにゼネバス帝国領土の全域を濃密にカバーする程ではない。
共和国側は事前にマルダーの展開する位置を把握すれば容易に避けられたと思われる。
(多くの機を展開するというのは察知されやすい事でもある)

もしもマルダーにサーベルタイガー並みの機動力があれば……、プテラスの飛行ルートにあわせて急いで移動・そして迎撃する事も不可能ではなかっただろう。
しかし悲しいかな、マルダーの機動力は帝国で1,2を争う鈍足なのであった…。
(スペックだけで言うと最高速度120km/hで決して遅くないのだが、加速力や悪路走破力が低いのだろう)

サラマンダーが相手の場合はどうか。
サラマンダーはプテラスと同等の速度と超高高度性能、そして次元の違う超防御力を持つ。
こちらの場合は、もしもマルダー防空大隊が展開する上空を飛行したとしても耐え切りそうだ。

マルダーは非常に優秀なゾイドだと思う。
M2.5の飛行ゾイドをとらえるミサイルを持つ。当時の小型ゾイドとしては異例の重武装。防御力も高い。
機動力は皆無だが、とても革新的な機体だったと思う。
後年の機獣新世紀ゾイド公式ファンブック「THE AVENGE OF PROITZEN」に「再生産すれば現在でも十分な戦力になる」と書かれていたのは印象的だった。
そう、実力はとても高い。
しかし共和国側が反則級の飛行ゾイドを次々に送り出したのが悲運すぎたのだ……。

悲しきデンデン虫。書いていて私はマルダーがますます好きになった。

ところでプテラスに対しては「当たるが、重防御のプテラスは耐える」と書いた。
もし共和国軍がマルダーを鹵獲したとして、対シュトルヒ用に運用したらどうなっていただろう。

シュトルヒの飛行性能はプテラスに近い。ただ防御力は華奢なボディからして極めて低いだろう。
という事は、マルダーのミサイルならシュトルヒを落とせるのかもしれない。
やっぱりマルダーのミサイルは凄い。
そしてプテラスとサラマンダーは改めて反則級に強い。

 

サラマンダーといえば、これを唯一だけ対空砲で撃ち落したのがアイアンコングだ。
肩の六連発ミサイルを手に持ち替えて迎撃。見事に命中。そんなシーンがゾイドバトルストーリー1巻に掲載されている。

だが、これはコングを倒すべく「超低空」に舞い降りた所を撃っている。この距離ならそりゃあ当たるという状況なので例外とみるべきだろう。

6連発ミサイルで撃たれたサラマンダーだが、この距離なのでまさに直撃しただろう。だがしかしこれは致命傷にはならなかった。
「地上に引きずりおろされた」だけで、その後トドメを指したのはコングのパンチによってだった。
これはサラマンダーの驚異的な防御力を物語るものでもあった。

ところで両シーンの背景を見ると分かるのだが、ミサイルを撃ってる場所とパンチを放っている場所は全く違う場所である。
「サラマンダーはミサイルを受け飛行不能になった→陸上を走って逃走→コングが怒りに燃えて猛追→ついに追いついてパンチで仕留める」
なんていうやり取りがあったのだろうか。
逃げるサラマンダーと追うコング。背景の違いから、かなりの距離を追いかけっこしていたと思われる。
ちょっとシュールである……。

余談だが、これは学年誌では全く別の話として掲載されている。
コングのパンチのシーンなんて「ゾイドの必殺技」というストーリーというより「必殺技紹介」のコマだった。

それをバトスト1巻編集時に無理やり繋ぎ合わせて一連の流れにしたからああなったわけだ。
まぁ、おかげでサラマンダーとコングの追いかけっこなんていうシーンが想像できたので良しとしよう。

なお更に余談になるが、このコングの「その後」と思われるシーンが確認できる。

これはアマダから発売された「ビッグポーズの大型フィギュア単品売り版」だが、台紙にジオラマが載っている。
これをよく見てみると……、

非常に見えにくいのだが、よく見るとコングのコックピット装甲…ちょうどサラマンダーに撃たれた位置が激しくひしゃげている。
あのシーン、コングが重装甲で耐えたように見えるのだが、実は撃ち抜かれる寸前だったのかもしれない。
まぁ、そりゃぁあんな超至近距離から撃たれたらヤバいだろう。

コングのパイロットもさぞや恐怖だっただろう。
「マズイ、装甲が破られる! 早く6連発ミサイルを撃て!!!」
という緊迫した状況だったのかもしれない。

サラマンダーの方は勝つ気だっただろう。そしてその寸前までいった。
あと少しで装甲を破ってコックピットを破壊できる。そのまま鹵獲して共和国に持ち帰れば大戦果。
そんな事を思って低空から攻撃していたら敵が猛烈な反撃。
飛行機能を失い窮地に。離脱を試みようとしたらどこまでもコングが追いかけてくる!
これはもう恐怖だ……。

 

さてさて、余談が過ぎた。本題に戻ろう。
それでは帝国軍・共和国軍の対空装備をまとめよう。

帝国軍の地対空装備…、ミサイルは「M2.5のペガサロスを撃墜する」位のレベルにあった。
ただしプテラスやサラマンダーは防御力が高いので、それを落とすことはできなかった。

共和国軍の対空装備はシンカーを落とすことさえロクにできなかった。いわんやシュトルヒをや という感じだ。
だがシンカーもシュトルヒもプテラスが空で対応し勝利したから対空火器の貧弱さはあまり問題にならなかった。

という状況だ。
結果として共和国軍は戦争に勝っているのだが、こと対空装備の質だけでいえば明らかに負けていた。

ゾイドバトルストーリー1巻には小型ゾイド戦力比較表が載っている。
コチラも貴重な資料なので飛行ゾイド関連の勝敗をまとめてみよう。

まずは共和国側、ペガサロスとプテラスの勝率。

ペガサロスは古いゾイドの割には頑張っている。が、やはり負けるケースが多い。

プテラスはさすがに新鋭飛行ゾイドだなと思える強さだ。
しかし意外なところでイグアンと引き分けになっている。
イグアンはそんなにも対空能力が高いのだろうか。この表を見る限りでは帝国小型ゾイド中では最高の防空機のようだ。
マルダー以上というのは凄い事だ。武装を見ているとマルダー、ツインホーン、ハンマーロックあたりの方が強そうにも見えるのだが…。

まぁ、それは置いておこう。
イグアンが地上ゾイドながらにしてプテラスと互角。
すなわち「プテラスは極めて強い相手だが、帝国軍はあと一歩で撃墜できるところまできていた」という事なのだろう。
やはり凄い。

 

帝国側も見てみよう。こちらはヘリタイプのサイカーチスも混ぜておこう。

これを見ると、シンカーさえロクに墜とせない共和国軍の状況が改めて分かる。
多くの砲を持ったスネークスでようやく引き分け。
ゴドスも引き分けだが、これは背中に上を向いた砲があるからだろうか? あんがい対空能力が高い。
しかし、それ以外は負けるゾイドばかり。

シュトルヒにはまったく対抗できていない。

サイカーチスにはさすがに対抗できるようだ。サイカーチスの飛行速度390km/hならさすがにとらえる事ができたということか。
ただ、負けるゾイドもある。
全体的に、共和国陸上ゾイドは帝国飛行ゾイドにかなり苦戦している。

この表を見ると、帝国軍の対空能力の高さと明らかに劣る共和国軍の対空能力の実情が伝わってくる。

 

共和国軍について更に考えよう。
大型ゾイドの方にも触れておこう。
共和国大型ゾイドなら帝国飛行ゾイドを撃墜できただろうか?

ゾイドバトルストーリー1巻のゴジュラスの解説では「ビーム砲でシンカーなど空からの脅威にも対抗できるのが強み」と書かれている。

対抗できたようだ。まぁ、大型ゾイドだからそりゃそうだという感じもするのだが。
ただし、完璧に対抗できたわけじゃないとも思う。
パノーバー20mm対空ビーム砲の威力は「威力はそれほどないのでシンカーには効き目がない」という程度でもある(コチラはゴルドス図解ページに記載されている)。

ゴジュラスの対空能力は、「対抗できるといっても追い払うくらい」だと思う。
全身のビーム砲で弾幕を張れば、さすがにシンカーもその中に積極的に飛び込んだりはしない。
といってもそこ止まり。確実に撃墜するのは難しい、という感じ。

ゴジュラス、ゴルドス、マンモス、ビガザウロはだいたい同じ感じだと思う。
ただ唯一、ウルトラザウルスなら可能だと思う。あのハリネズミのような対空砲ならいけるだろう。

ただウルトラならそりゃイケるよなぁというか…、あの規格外のゾイドだから撃墜できるといっても例外的なものを感じる。

ウルトラザウルスVSシュトルヒはどうなるだろう。
これは交戦したシーンがないので断定はしかねる。
ただシンカーにさえこれだけ手を焼いている共和国軍なので、さすがにシュトルヒは無理そうな気がする。

 

という事で、今回はまず前期・第一次中央大陸戦争の対空装備を考えた。
帝国軍対空火器の驚異的な先進具合が分かったと思う。

次回は中期・第二次中央大陸戦争時代を考えたい。

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