試作型ベアファイター

ゾイドが製品化される際には、その前に幾つもの試作モデルが作られる。
それはゾイドのみならず、商品としての立体物全般の宿命だ。
こうした試作モデルは、新作商品をいち早く掲載する雑誌などで稀に見る事が出来る。

試作モデルに注目してみると、製品化されたモデルと幾らか差がある事に気付く。
例えば、最も有名なのは、ジェノザウラー試作モデルだろう。


左はコロコロに掲載された試作モデル。右が製品。

最も目立つ差は尾の展開ギミックだと思う。また、細かく見ると目の色が緑色とか牙がより鋭いとかの差が分かる。
こうした差は、試作モデルでは珍しい事ではない。

例えば、デスザウラー試作モデルは、成型色パターンがやや違っていた(尾の下側は赤でなく銀色をしていた)。
マッドサンダー試作モデルの大口径2連衝撃砲は「穴」が開いていたし、シールドライガー試作モデルの尾のディティールは製品版と異なっていた。

 
その他、数え上げればキリが無い程にある。

中には「試作の方が良かったなー」という変更もある。ただ基本的には我慢できる範疇の変更であり、そういった変更に目くじらを立てるよりは、むしろ試作モデルと製品の違いを比較して楽しむ事がディープゾイダーのたしなみなのかもしれない。

またそれを上手く利用し、自分なりの解釈を試みるのも楽しいと思う。
例えば、「それは先行型である」とバトスト的に解釈してみたり…。
解釈すれば思い入れも深まると思う。ただ同時に、何とかして試作モデルの方も手に入れたいという気持ちにもなるのだが……。

 

ただ数ある試作モデルの中で、一機種だけどうしても気になってしまうゾイドが居る。
試作モデルと製品版では全く別物と言っていいほど激しく変貌しているゾイドが一機種だけある。 

RHI-6 ベアファイター

ブラックライモスとも互角に戦える重パワーを持った名機。
本機の試作モデルの造形は、あまりにも製品版と違っている。

では早速、試作モデルと製品版を見比べてみたいと思う。

この写真はゾイドバトルストーリーでも頻繁に使用されている為、目にした方も多い事と思う。
小さい画像で分かりにくい部分があるのは残念だが、スタンダードなアングルで撮られており製品版と比較しやすいと思う。

まず顔が劇的に違う。
頬のエアインテーク状のパーツに相違が見られる…というか全体的にかなり違う。もはや同じ箇所を見つける事の方が難しい位だ。

背中の装甲も違う。砲も大きさが異なっているし、脚部もかなり違うように見える。
足先は、牙を強調したデザインであり、どちらかというと2000年以降の新世代ゾイドのテイストに近い印象を受けるのは興味深い。


こちらは、学年誌のプレゼント告知ページより抜粋のもの。
顔の形状の特異さがより分かる。このアングルでは、下あごの細さが際立って分かると思う。
製品版ベアファイターの下あごもかなり細いが、この試作版ほど薄べったくはない。

また、更に注目すべき点があると思う。爪の色だ。爪の成型色が茶色である事に注目されたい。
先に出した方の画像を見て頂きたい。爪は灰色をしている。
という事は、この2つの試作ベアファイターは「別物である」という事だろう。
よく見ると、装甲形状の一部も異なるように見える。下の画像のものの方がやや角張っている。
また顔つきも微妙に違うように見えるようにも感じるが、これはアングルが違うせいかもしれない。もっと鮮明な画像が無いのは悔やまれる。

試作モデルがこうして何度も作られているという事は、当時のスタッフがベアファイターに込めた思いが伝わってくるようでとてもアツい。

 

続けて立ち姿も見よう。
 
立ち姿も大きく印象が異なる。
試作モデルでは、肩から首にかけて急激に細くなっている。
また砲の大きさは先にも書いたが、この角度で見ると改めて巨大さ分かる。
試作モデル方は、首から先が細くなっている分、下半身がしっかりどっしりした印象を受ける。


もう一枚、同じく立ちアングルだがやや正面に近い位置からの画像も見つけた。
このアングルで見ると、頬のエアインテーク状のパーツの出っ張り具合がよく分かる。
やはり製品版よりどっしりした印象を受ける。

また、キャップの色が青い。これはこの画像の試作モデル特有の特徴だ。
細かい点ではあるが、キャップの色も試行錯誤あったという事だろ。細部まで何度も検討しているのは素晴らしい事だと思う。

この画像では、更にもう一つ注目したい箇所がある。
コックピットのパイロット位置がよく見えるので注目されたい。なにやら、ずいぶん前の方に乗っているように見える。
他の試作ベアファイターの画像も、よく見るとかすかにパイロット位置が確認出来る。
そのいずれもが、やたら前の方にパイロットを乗せているように見える。

一連からパイロット位置がやたら前寄りである事は間違いないと思うが、何故そんな位置にしたかは疑問が残る。
強いて言うなら格闘戦時の視界を稼ぐ為だろうか?
あるいは、キット的に考えるなら後頭部側には変形ギミックの為の部品が詰まっていたのかもしれない。

いずれにしろ、微妙な配置だ。もう少し後ろにずらした方が良い。
下手すればパイロットの足にひっかかってキャノピーが完全に閉まらない光景が目に浮かんでしまう。

 

この試作モデルのベアファイターは、実はかなりの回数バトストに登場している。


小学一年生87年11月号より抜粋。同学年におけるベアファイター初登場の記事でもある。
ブラックライモスで一部が隠れているのは残念だが、画像が鮮明なこともありディティールが非常に分かりやすく貴重な資料になっている。

 

以上、ベアファイターの試作モデルを追ってみた。
資料をあさり、ある程度は試作モデルを追及する事が出来たと思う。

これほどまでにデザインが変わった理由は何だろう…?
そう考えずには居れない。

思うに、ベアファイターが「四足歩行」と「二足歩行」の切り替えを実現した機体だからだろう。
二足歩行は四足歩行よりバランスが難しい。バランスを誤るとすぐに転倒する。
ベアファイターはクマ型だから、恐竜型のように尾でバランスを取る事は出来ない。
ゴドスやアロザウラーは二足歩行だが、尾を設置させているので厳密に言うと「三足歩行」だ。
このような解決法はクマ型だから望めない。

しかも四足と二足を切り替えるのだから、より絶妙なバランスが要求されただろう。
おそらく、試作モデルはよく転倒したのだろう。
そこで、根本的改修が行われ、製品版の姿になったと思う。
それを裏付けるのが、脚の爪のデザイン変更だ。明らかに、製品版の方が接地面積が多く安定感がある。

全身のディティールの変化は、その改修に併せ、より良い案が出たのでついでに改修したのだと思う。

 

図面化もしてみた。

試作モデルの方は、手持ち資料からラインを推測してできる限り「再現」した。
真横からのアングルの資料がないので完全には再現できていないかもしれない。が、だいたいこんな風だろうという程度には再現できていると思う。

試作ベアファイター、いかがだろう。
私としては製品版の方が好きではある…が、試作モデルも捨てがたい魅力がある。両方好きだ。

ゾイドバトルストーリー劇中にも多数登場している機体だし、先行型のベアファイターであると思っている。
そんな解釈ができるとこも魅力だ。

腕に覚えのあるモデラーの方なら、この試作タイプを再現してみても面白いと思う。
試作モデルと製品版、貴方のお好みはどちらだろうか?

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